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ここがちゃうねんデザイン思考。5つの誤解とは
「デザイン思考」という言葉が一般的になって久しい。あらゆる領域で、もはや基礎教養のような位置付けになっているように感じる。しかしながら、「結局デザイン思考て何なん?」状態の人は多いのではないか?
筆者が初めてデザイン思考という言葉を聞いた時は、「なんだか、つかみどころがない…」という感想だった。その感想は本や記事を2、3冊、読んでも正直変わらなかった。
1番の理由は、今まであらゆる業界がやってきたこと、いや、何なら自分が普段心がけていることと何ら変わりがないように思えたからだ。
「ユーザー中心」、「素早くイテレーションする」、「プロセスを意識する」など、どこの業界もやっていることだし、正直、何の新鮮味も無いように感じた。
デザイン思考を紹介する本や記事は、デザイン思考とはそもそも何か、どのような原則があるのか、なぜ広まっているのか、をポイントに書いているものが多い。
つまり、デザイン思考そのものについて書いているものであり、従来の考え方や手法とどのように違うのかを書いているものが少ない。
そもそも従来の考え方との違いというのは、人それぞれの「従来の考え方」によって異なるため、この点を重点的に書いている本は多くない。
この記事は、一通りデザイン思考の基礎を勉強し、「デザイン思考とは何か」を理解したものの、いまいち何がそんなにスゴイのか分からん!という人に対し、他の考え方との違いを示すことで、デザイン思考の本質と価値を改めて理解することを目的にしている。
「デザイン思考は今までとここがちゃうねん」という点を理解した上で、デザイン思考の活用をより有意義なものにしていただきたい。
1. ユーザー中心とお客様第一主義とはちゃうねん
デザイン思考の原則の中でも一番重要視されるのが、この「ユーザー中心主義」という原則だろう。初めて聞いた時、個人的にはこれの何がスゴイのかあまり理解できなかった。
ユーザーを中心に考えることなんてどこの会社もやっているし、個人レベルでも「ユーザーを中心に置いているかどうか」と聞かれた時に「No」と答える人はほぼいないだろうと思った。
しかし、ユーザー中心主義とは、ユーザーの欲しいものが何かをとにかく聞き、その通りに行うという「お客様第一主義」の考え方とは違う。
例えば、freshtraxでもよく紹介されるアメリカの大手自動車メーカー、フォードモーターの創設者であるヘンリー・フォードはこんな名言を残している。
“If I had asked people what they wanted, they would have said faster horses.”
もし私が、人々に何が欲しいかを聞いたならば、彼らは「より早い馬車」と答えただろう。
彼は、ユーザーの要望を聞いたのではなく、ユーザーの言動から彼らの欲しいものをより深く分析してフレーム(再定義)することで「より早い移動手段」という要望を定義したのである。
ユーザー中心主義というのは、ユーザーよりもユーザーのことを深く理解することで、ユーザー自身も気づいていない問題を解決することなのである。だからこそ、他社との差別化ができ、イノベーティブなプロダクトへと繋がるのだ。
自分の欲しいものというのは自分が一番わからないものである。だからこそ、デザイナーというプロがそれを明確化してあげるのであり、デザイン思考はその考え方を体系化しているのである。
2. プロセス重視はプロセス厳守とはちゃうねん
デザイン思考の原則の中で、本当の意味で最も理解するのが難しいのが「プロセスを重視する」というものである。デザイン思考といえば、下図の5つのプロセスを思い浮かぶ人も多いのでは無いだろうか?この図は、デザイン思考の考え方を実際の課題解決に応用するときのプロセスを体系化したものである。
(d.schoolの作成したプロセスをまとめた図。こちらのサイトより)
このようにはっきりとプロセスが定義されていると、このプロセスをフォローすることにどうしても気持ちが行ってしまう。
ところが、デザイン思考おける「プロセスを重視する」ということは、プロセスを守ることはなく、「プロセスを意識する」ことを意味していて、このプロセスをこの順番通りに行えと言っている訳では無いのだ。
実際は、このプロセスを行ったり来たりすることもあれば、全く違うプロセスに飛ぶことだってある。それでもデザイン思考の原則を重視した上で取り組んでいるのであれば、何も問題はない。
一方で、今どの段階のフェーズを行っているのか?を意識することが重要なのだ。なぜなら、ユーザーに深く「共感」するフェーズと素早くプロトタイプを作るフェーズでは、重視する姿勢が異なってくるからだ。
3. デザイン思考はメソッドちゃうねん、マインドセットやねん
デザイン思考は、それを実際の問題解決に応用する際に体系化したプロセス(上図の5つのステップ)が紐づいているため、「メソッド(やり方)」と捉える人も多い。しかし、デザイン思考は読んで字のごとく「思考」のこと。つまり、「マインドセット(考え方)」のことを指しているのだ。
また、デザイン思考は、身近な課題解決に応用できるマインドセットであるため、活用できる場面はプロダクト開発のみならず、身近な人の悩み相談や恋愛などあらゆる場面の課題解決に活用できる考え方である。
関連記事:イノベーションにはマインドセット変革!シリコンバレーが最適な理由
4. ソリューションやなくて、問題定義の方で差別化するねん
この誤解はデザイン思考の考え方を活用した新規事業開発をしていく中で、よく直面する。
ものすごく深くユーザーに共感し、ものすごく本質的(だと感じられる)ユーザーの課題を定義し、ものすごくたくさんソリューションを出して素早く形にして…と、うまく行ったと感じたのに、ソリューションは意外にしょぼい…というシーンがよくある。
ここでいうしょぼいというのは、「ものすごい画期的なアイディア」に見えないという意味だ。
しかし、ここでヘコたれる必要はない。なぜなら、デザイン思考を活用したプロダクト開発で重要視すべきは、導き出したソリューションでなく、定義した問題の方だからだ。
今の時代、「そんな画期的なソリューションなかった!」というプロダクトやサービスを作り出すことはかなり難しい。
また、ソリューションが画期的かどうかはユーザーにとってそこまで関係ないのだ。
なぜなら、画期的なソリューションであっても、自分の課題を解決してくれないプロダクトにユーザーはそんなにお金を払いたくないからだ。
それよりも、このVUCA(Volatilie 変動する、Uncertain 不確実な、Complex 複雑な、Ambigous 曖昧な、という意味を現す造語)と言われるこの時代に、ユーザー自身も気づいていない問題を探し当てることの方が価値がある。
新規事業が差別化すべき点は「そのアイデア画期的やわ〜!」というソリューションではなく、「その目の付け所、画期的やわ〜!」という問題の部分なのだ。
5. ニーズの広さちゃうねん、深さやねん
マーケティングのバックグラウンドのある人にとって一番デザイン思考が掴みづらいところであり、なかなか理解できないのがこの点だろう。(筆者もマーケティングを勉強した背景から、もっとも掴むのに苦戦した。)従来のマーケティングの考え方では、いかに広いパイが取れるか?を目指すことが多い。
そのため、なるべく多くの人がもつニーズを探し出すことに注力することが多い。一方、デザイン思考では、(特に初期は)ニーズの広さよりも深さを優先することが多い。つまり、「浅く広いニーズ」よりも「狭く深いニーズ」を重視する考え方だ。
なぜ「狭く深いニーズ」を重視するのかというのは、デザイン思考でよく活用されるエクストリームユーザーインタビューを理解するとわかりやすい。エクストリームユーザーインタビューとは、あえて「とても極端な人」をインタビューすることによって、多くの人が抱えているニーズをあぶり出す考え方だ。
(エクストリームユーザーを説明した図。こちらのサイトより)
例えば、もっともよく使われるエクストリームユーザーインタビューの例として、キッチンツールの例が上げれらる。キッチンツールといえば、ターゲット層は主婦・主夫となる。
しなしながらここであえて年齢的にもキッチンの利用頻度的にも極端に異なる子供にインタビューをしてみる。
すると、子供はキッチンツールを使うのにあまりにも握力が足りないということがわかり、「握力がなくても使えるものが良い」という強いニーズが見えてきたのだ。
そしてこの「握力がなくても使えるものが良い」というニーズは、大多数の主婦・主夫も抱えている問題であるという結論に導くことができる。
メインユーザーに「何が欲しいか?」を聞いても、握力が必要であるというペイン(不満点)に慣れすぎていて、そのニーズをニーズとして認識していない場合が多い。そのため、キッチンツールへのニーズを聞いても出てこないのだ。
このように、「極端」なユーザーが持つ「狭く深いニーズ」に注目することで、実は多くの人に共通するニーズが見えてくることがある。そのため、デザイン思考では、ニーズの広さよりも深さを重視することがあるのだ。
まとめ:百聞は一見にしかず。サンフランシスコでやってみなはれ。
上記にリストアップしたもののうち、「そういうことか!」と合点がいったポイントは人によって異なる(か、全くなかった。笑)だろう。それは当然である。なぜなら冒頭に述べたように、「従来の考え方との違い」はそもそも「従来の考え方」が何かによって違うからだ。
しかし、同じ業界、業種、役職、ひいては同じ企業の人であれば、ある程度同じ「従来の考え方」というのができているのではないだろうか?考え方の似ている人同士であれば、上記で合点のいくポイントも似てくるはずだ。
もし、仲間内で同じようにモヤモヤしている人がいそうであれば、ぜひ自分なりに上記のポイントを言語化し、仲間たちを「スッキリ」させて欲しい。
また、頭でスッキリしたとしても実践が伴わないと意味がない。
スッキリするだけでなく、ぜひ、ここサンフランシスコにて我々と共にデザイン思考を実践することで理解を価値へと繋げて欲しい。どこから始めれば良いかといったお話から具体的なお話までお気軽にお問い合わせください。
サンフランシスコでは、上記のようなモヤモヤを一瞬でスッキリさせてくれるようなお手本となるスタートアップやデザイン会社が無数にある。
この地でのデザイン思考の実践は間違いなくあなたのデザイン思考の実践をブーストすることだろう。
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