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D2Cブランドに学ぶ Webサイトに必要な3つのUX要素とは
今やあらゆるビジネスにとってオンラインストアは欠かせない販売チャネルとなった。むしろオンラインストアはもはや実店舗をもつブラントがサブ的に持ち始める販売チャネルではなく、主流の販売チャネルになりつつあると言える。
このような流れの中で、オンラインを中心とした購買体験の最適化がブランドに求められてくるだろう。
そこで今回取り上げたいのはアメリカのD2Cブランドのウェブサイトにみる特徴点だ。D2CとはDirect to Consumerの略であり、製造から販売までを自社で一貫して行うことで仲介業者を減らし、より手頃な価格で品質の良いもの、ニーズにあったものを消費者に届けているブランドだ。
彼らのほとんどはオンラインストアを中心とした購買体験を提供することで注目を浴びているブランドなのである。
ブランドと顧客とのタッチポイントはソーシャルメディアやオンライン広告、ニュースレター、ウェブサイトと多岐にわたるが、その中でもオンラインストアは売上に繋がる最後のステップであり、重要なチャネルだ。
実店舗のように販売員による営業はできないものの確実に存在感を伸ばしているD2Cブランドのオンラインストア。そこにはユーザーのことを考え抜かれた工夫が凝らされていることがわかった。
アメリカD2CブランドのウェブサイトUI/UX特徴点とそれが好まれるわけ
1. ブランド認知と販促要素のバランスが取れている
D2Cブランドの多くのウェブサイトは、ブランディングのためのデザインと商品を売るための情報やデザインがバランスよく掲載されていることが多い。特に彼らのホームのページを見るとこの点がわかりやすい。
D2Cブランドの中には品質や技術力に優れた商品を扱うブランドも多く、普通なら自社商品の質のよさやブランドの価値についてアピールを多めにしたくなるところだ。
しかしながら多くのD2Cブランドのウェブサイトではブランドアピールと同時に優れた購買導線が設計されている。これは多くのD2Cブランドが資金調達とそのための売上のスケールを意識したビジネスモデルや価格戦略などを採用していることと無関係ではないだろう。
実際のウェブサイトからいくつかの例を紹介する。
サステイナブルかつ機能性に富んだニュージーランド製ウールで作られたシューズブランド、AllbirdsはD2Cとしてお馴染みのブランドだ。Allbirdsの場合、まずメインビジュアルでブランドイメージを伝えている。「素足で履くウールや通気性のある素材の心地よい靴」といったところだろうか。
これに加えてWoolの靴とTreeの靴の選択肢を表示しているセクションには、買い物かごへの近道として「SHOP XX」のCTAボタンがある。Allbirdsは商品タイプが多くないということもあるが、「See more」といったボタンではなく、より購買行動に直結するアクションがクリックボタンとして採用されているのである。
フィットネスウェアブランドのOutdoor Voicesもブランディングと販促のバランスが取れている。ホームのページトップはその時期のキャンペーンが掲載されている。新商品は新規顧客にも既存顧客にも興味を持ってもらって販売に繋げるためコンテンツとして最適である。
その次に商品のより詳細なリストが続き、買いたいと思ったらすぐに商品に辿りつける設計にすることで購買意欲を削いでしまうリスクを減らしている。
販促を意識したコンテンツの後に、ブランドを伝えるためのセクションが続く。
続く創業者のメッセージとユーザージェネレイテッドのコンテンツ(インスタグラムポスト)はブランディング重視の内容で売ろうとしすぎない、ブランド価値/カラーを伝える役目を果たしている。
創業者のメッセージにはOutdoor Voicesが「自分たちのゴールはより多くの人が日々アクティブになれるようにインスパイアすること」と綴り、硬くなりすぎることなくブランドのコアバリューを伝えている。
ここではブランドが大切にしていることやユーザーとブランドの関係性(どのようなコミュニケーションのトーンなのかなど)をユーザーに知ってもらい、共感と関係構築への一歩へと繋げている。
ちなみに大手のアパレルブランドはホームのページに創業者やブランドメッセージを載せている例がなく商品の羅列だけというパターンが意外と見られる。
2. 少ないシンプルなデザインでより多くの情報、メッセージを伝えている
D2Cのような店舗を持たずに始まったブランドにとって、ウェブサイトやソーシャルメディアが主にメッセージを発信する場になる。特に若いブランドは、自分たちがどのようなブランドなのか、どんな商品・サービスの優位性があるのか、詳細な情報を伝えたいところだ。
しかしながら情報は多ければ良いということでもなく、むしろ多くのD2CブランドがUI/UXを工夫し、ユーザーにとってよりわかりやすく、少ない量でも最適な情報を届けている場面をよく見かける。
例えばサブスクリプション系ブランドであればサブスクリプションの仕組みとベネフィットを伝えるための説明がよく載っている。
しかしそれを全て文字の羅列にするのではなく、アイコンやアニメーションを使ってわかりやすく、またユーモアを加えることでブランディング要素としての役割も持ち始めているように思う。
男性向けカミソリのサブスクリプションで有名なDollar Shave Clubのサービス説明の例
Allbirdsは商品の機能、特徴をテキストでの説明に加えてアイコンでわかりやすくまとめている。スマイルマークや緩やかな線のアイコンはAllbirdsのはき心地のよさというブランドイメージを伝えるのにも一役買っている。
もちろん、ビジュアルだけに大量の情報を込めているわけではない。
ブランドや素材、製造工程などに関する専用ページが別にあったり、詳細情報はクリックで開閉可能なエリアに収められていたり(デフォルトは非表示なのでテキストで見た目が重くなりすぎない)と、見せる場所を分けて必要としている人に適切に情報を届けているという特徴もある。
3. Aboutページが充実している
前に述べた通り、ホームページや商品ページに全ての情報を詰め込まず、なるべくスッキリとしたわかりやすい見た目、説明文にまとめるのがD2Cブランドの主流だ。
しかしながらブランドのアイデンティティーや理念は大いに語るべきである。というのも、多くのD2Cブランドはもともと日常の問題や不都合を解決したいという思いから誕生していることが多く、その問題解決ストーリーに共感してもらうためにもブランドに関する詳しい話は伝えるべきなのである。
そしてユーザーもまた、今まで以上にブランドの社会的責任に対して期待し、それをもとにブランドを支持するようになってきた。「いまブランドが捉えるべきは“ユーザーの意識変化”ーサステイナビリティーが重要視される理由とは」でもお伝えした通り、特に「ミレニアル世代の73%がサステイナブルな商品に対して余計にお金を払う」のである。
彼らのAboutページは会社のバリューからブログのようなコンテンツまで様々である。特にブログはAboutページとはさらに別に設置され、そのページだけでも立派なメディアとして成り立ちそうなくらい充実したコンテンツが載っていることが多い。
サステイナビリティや価格の透明化への取り組みでも有名なアパレルブランドReformationはAboutのページで商品の素材や製造元やサステイナビリティ達成への到達度、労働環境に関するレポートなど非常に多くの情報を開示している。
また、本当に健康なビタミン剤を届けたいという思いから生まれたビタミン剤D2CブランドのRitualは、オンラインストアと併設してビタミンや栄養に関するブログページを持っている。
これはビタミン剤への疑わしさをなくすためにブランドにとって重要なコンテンツとなっている。
もはやAboutページは創業理念、歴史といったただの企業情報を載せるたけのページではないである。
アメリカの特徴を踏まえて見る日本のD2CブランドのUI/UX
これらの特徴を明らかにした後に、日本のD2Cブランドのウェブサイトに上のような特徴があるのか、もしくはどのような別の特徴があるのかを見てみた。そもそも日本にはD2Cブランドはあまり多くなく、あってもアパレル系のブランドがほとんどであった。
今回はD2Cブランドとして注目を浴びつつあるFABRIC TOKYO、RiLi STORE、STYLE DELIに注目し、これらのブランドにおいても上で述べたような点が共通して見られるのかを比較した。
全て当てはまったのはFABRIC TOKYOのみ
オーダーメイドの紳士服ブランド FABRIC TOKYOは原料選びから自分たちで行い、サステイナビリティも目標にあげているあたり、日本の中でも先進的なD2Cブランドだ。彼らのウェブサイトはアメリカのD2Cブランドに似ている点が多い。
①ブランド認知と販促要素のバランスが取れている
ホームページにの一番上にはシーズンものの紹介があり、その後にはAbout Usへリンクするセクションもあるホームページにはブランドを紹介するようなコンテンツがそれほど多くは掲載されていないものの、商品のリスティング数はビジーになりすぎない程度になっている印象で、販促しすぎないという調整も見られる。
②少ないシンプルなデザインでより多くの情報、メッセージを伝えている
商品詳細ページやものづくり説明ページではアイコンが使用されていて、文章が詰まりすぎないような工夫が見られた。こだわりが強くてたくさん説明を加えたくなる点こそ、シンプルなデザインの出番ではないだろうか。
③Aboutページが充実している
Aboutページの充実は3つのブランドの中でもダントツ1番である。会社の理念、ものづくりの話、スマートオーダーの説明、生地に関するさらに詳しいコンテンツがある。ブログではFABRIC TOKYOのスーツを売り込むような内容ではなく、スーツやジャケットをきて自分らしく働く男性を取り上げるという内容だ。
いいものを便利な方法でただ売るだけでなく、ウェブサイトを使ったブランドの見せ方やコミュニケーションが非常に洗練されていてアメリカのD2Cとも近い印象を受けた。
RiLi STOREとSTYLE DELIは日本独
残る2ブランドについては、アメリカのD2Cブランドで見られたような特徴は少なかった。
まず10代~20代前半の女性に人気のファッションメディアから始まったRiLi STOREはインスタグラムで出てきそうな女の子が映ったイメージ写真を中心に、商品、写真をとにかく羅列している。
インスタグラムに買い物機能が加わったようなレイアウト。ブランドバリューの違いのせいもあるかもしれないが、ブランドに関する記述はほとんど見れらなかった。
商品の一覧になっているRiLi STOREのホームのページ。ウェブサイトより転載
一方、品質の高さとお値頃感で30代~40代の女性から人気を集めているSTYLE DELIは当てはまる部分がいくつかあった。ブランドメッセージははっきりと書かれており、ブログやユーザーが質問をできるQ&A掲示板、最適な靴を探すためのコンテンツもある。
しかしながら、ブログは日記、スタッフ商品レビュー調であり、Q&Aもあまり最新のUI/UXが使われている印象はない。
さらにこちらのウェブサイトもホームのページに非常に多くの商品が並んでいる。新商品、売れ筋、トップスなどほとんど全てのカテゴリーからそれぞれ5個以上の商品がリスティングされている。前に述べたブランド要素の強いコンテンツはあまりみられなかった。
これらは日本特有の特徴ではないだろうか。特に感じたのはとにかく情報を詰め込む、量を多くするということである。一度に見せる商品数だったり、商品ページに載せる注意書きも含めた商品の情報量である。
このことは以前、ブランドンが講演でサンフランシスコにて日本の消費者に見られるUX特徴点に関する講演で述べたこととも繋がる(動画はこちらから視聴いただけます)。
日本には商店街の看板から、雑誌の表紙、Yahoo! JAPANや楽天などのウェブサイトには1ページに非常に多くの情報が載っているという話をさせていただいた。
改めてみると一見情報が多すぎて見づらいと感じるかもしれないが、非常に多くの場面でこのようなビジーなUIが存在し、日本のユーザーはこの中から情報を見つけだずことに慣れており、一部これはJust in case(念のために)としてあると落ち着く安心材料にもなってという見方もできる。
まとめ
今回はアメリカD2Cブランドのウェブサイトににおける特徴点を見てきた。個人の感覚にはなるが、デザインが美しくないアメリカD2Cブランドのウェブサイトを見たことがないし、ソーシャルメディアの広告デザインで惹かれて新しいD2Cブランドを知ることもある。
その中でも共有している特徴は、非常に今のアメリカに合ったユーザー中心のデザインではないだろうか。
1つめの特徴点であるブランドと売りのバランスは過剰な売り文句を嫌うミレニアルにあっているし、2つめのわかりやすいデザインというのはユーザーが直感的に理解できることを追求した結果と言える。
さらに3つめのコンテンツは同じくミレニアルを中心にブランド存在意義に共感して商品を選びたいというニーズの高まりや、アメリカのボランティア精神豊富な面にも通じるところがあると思う。
一方で日本のD2Cブランドがこれらの特徴を完全に備えていないという事実は自然なことだ。主なユーザーが変われば提供すべきUXも変わる。重要なのはユーザーにとって最適なUXであるかどうかということなのである。
ただ今回取り上げた事例とその特徴というのは今後日本のD2CブランドのUI/UX改善にとってもを非常に参考になるのではないだろうか。
btraxではユーザーのインサイトに基づいたD2Cブランドのグローバル進出コンサルティングを行っている。ウェブサイトの構築を含むブランド認知のためのマーケティング戦略立案、ユーザー獲得のためのプロモーション活動などを一貫してサポートできるのが強みだ。ご興味のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせを。
参考:
・How Ritual Is Marketing a Direct-to-Consumer Vitamin Brand in the Age of ‘Pseudoscience’
・「D2C」で育つ新興アパレル ネット限定、コスト強み
・初日売上400万円達成!メディアコマースの「RiLi」ECサイトをリニューアル
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