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イノベーションの権威 クリステンセン教授が提唱 : 顧客に選ばれる商品の秘密とは
今や日本でも東京を中心にデザイン思考、ユーザー中心的デザイン、UXデザインのイベントが開催され多くの人が関心を持つようになってきているようだ。「デザイン思考、うちの会社でもやらなきゃ」と、何か使命感と切迫感に突き動かされるようにイベントへ足を運んでいる方も多いのではないかと見受けられる。
私も機会があり 11月13日に行われたNEC C&Cユーザーフォーラム&iEXPO 2015というイベントに参加してきた。
NUA(NEC C&Cシステムユーザー会)、NEC主催で、大きな会場にクラウド、セキュリティ、教育、環境など様々な分野のNECの最新テクノロジーを紹介するブースが立ち並び、非常ににぎわっていた。
今回はこのイベントの目玉セッションのひとつハーバード・ビジネス・スクール 教授クレイトン・クリステンセンによる「破壊的イノベーション~新たな成長事業をどのように生み出すのか~」の一部を紹介したい。
クレイトン・クリステンセン
クリステンセンは『イノベーションのジレンマ(The Innovator’s Dilemma)』において破壊的イノベーション(disruptive innovation)の理論を確立させたことで知られ、企業におけるイノベーションの研究の第一人者である。自身のコンサルタント、研究者としての経験から多くの実例を交えて理論の説得力を強化することに非常に長けている。
本セッションにおいては彼の3つのセオリーを紹介してくれた。一つ目はイノベーションの種類とその発展過程について、二つ目はイノベーションのマネジメントについて、そして三つ目は顧客に選ばれる製品開発についてである。
ここからデザイン思考・ユーザー中心的デザインをより理解していただくために、三つ目のセオリー「顧客に選ばれる製品開発について」を詳しくご紹介していく。
顧客に選ばれる製品開発
Market understanding that mirrors how customer experience life. People’s characteristics don’t make a cause to buy a product. What causes them to purchase products is their jobs. People are buying something because there’s a job needed to be done.
市場は顧客の日々の生活を反映する内容となっている。実は、顧客の特性や性格よりも、彼らが成し遂げたい事柄によって左右されるのである。
クリステンセンは顧客のデモグラフィーや性格を理解することよりも、顧客が成し遂げようとしている仕事や事柄を理解することこそが人に選ばれる商品を作るのに必要であると説く。
一般的にデザイン思考やユーザー中心的デザインの手法ではターゲットユーザーのペルソナをまず設定したり、ユーザーを集めて直接フィードバックをもらったりすることが多いが、それでは労力がかかりすぎる。
それよりも実際に製品が使われている、又はサービスが提供されている現場に出向いて、それを買っている人たちが本当に達成しようとしていることは何かを探ることが重要だという。
例えば、クリステンセンは63歳、身長が203cmもあり、5児の父である。HBSの教授であり会社経営者という職業。
これは彼のデモグラフィーとペルソナにあたる。しかし、これが分かったからといって、彼がなぜアイスクリームが好きで買うのかを導きだすのは難しい。
マクドナルドのミルクシェイクの例を見てみよう。
ある時マクドナルドがミルクシェイクの売上を増加させるために製品開発に取り組んだ。
まず行われたのはある店舗で一日中、朝から晩までミルクシェイクを買っていく人を観察すること。「誰と来店しているのか?一人で来ているのか?」「どんな服装なのか?」「他に何か一緒にものを買っているのか?」など注意深く観察を続けた。
そこで面白い発見があった。なんと最もミルクシェイクがよく売れるのは、早朝で、長距離運転しなくてはならないドライバーの男性達。彼らは他に何も買わず、ミルクシェイクだけを片手に店を出ていく。
明くる日、その朝にミルクシェイクを買っていく男性陣に質問をぶつけた。
What job are you trying to get done?
Think about the last time when you had the same job and didn’t hire milkshake to do?
「どんなことを達成するためにミルクシェイクを買ったのか?」急にそんな質問をされても答えが出てこなかったので、「ミルクシェイクでなければ代わりに何を買ってその仕事を達成していましたか?」と聞いた。すると、「長くてつまらない運転中、ハンドルを握っていない方の片手で何かすることが欲しかったんだ」という声が。
つまり「長くてつまらない運転中に時間をつぶすこと=a job needed to be done (達成したいこと) 」だったのだ。ミルクシェイクの代わりに、バナナだとすぐに食べ終わってしまい、朝からそこまで空腹ではないのに食べる気が起きないことも多い。
またドーナツは好きすぎて3、4個と食べ過ぎて妻にしかられてしまう。ベーグルは乾燥しすぎているし、食べづらく手がふさがりすぎて逆に困ってしまう。それに対してミルクシェイクは片手で簡単に持つことができ、飲みきるのに23分もかかるということで、彼らの達成したいことを適正に満たしてくれることで選ばれていることが分かったのだ。
製品をデザインする四つの段階
上記のピラミッド上の図では、顧客に選ばれる製品をデザインする四つの段階を表している。
まずは一番下の、クリステンセンが繰り返し説明している「顧客が達成しようとしていること」を明らかにし、次にそれを達成させるためにどんな経験や価値を購買や利用シーンを通じて提供するのかを決め、実際に何をどうやって製品に盛り込むのかを考え、そこまで実現して初めて製品の目的やブランドが確立されるとしている。
The customer rarely buys what the company thinks it sells him. One reason for this is, of course, that nobody pays for a ‘product.’ What is paid for is satisfaction.”
消費者は、企業が思っている理由で商品を購入する事は少ない。なぜなら、彼らは’商品’ではなく、’満足’にお金を払うからだ。
by Peter Drucker
クリステンセンも引用していた、このピータードラッカーも言うように、顧客は自分たちが想像している理由で製品を購入していることの方が少ない。共通しているのは「製品」を買っているのではなく、その製品の購買行動や利用体験(User Experience)によって得られる「満足感」を期待して買っているということだ。
しかし、現実ではそう簡単には解は得られない。クリステンセンは顧客の本当のニーズ・目的を探るのに2つのスクリーンが立ちはだかっていると言う。
一つ目は「製品のデータ」。要するに社内で「この商品の特徴はこれで使用方法はこれ」という固定概念を自然と自分たちの中で作ってしまい、その枠を超えるような使い方や目的を見逃してしまう。二つ目はマネジメント層の理解だ。本セッションでの詳しい紹介はなかったが、彼はIKEAの例を勉強すると良いと勧めていた。
If you designed the product to nail the job perfectly, your brand name will pop up in people’s mind.
顧客を理解することは製品をデザインするのに正しい道ではない。顧客が何を達成しようとしているのかを理解するのが必要なことである。
クリステンセンが繰り返し提唱していた姿が今も印象に残る。
顧客にどのような体験を提供し、満足してもらえるかを実現するためには、顧客が何を達成しようとしてその製品を購入したいのかを徹底的に観察、調査、議論するべきである。
頭で分かっていてもなかなかやり方が分からない、業務では実行に移せないと言ったご相談をよくお伺いするのだが、これが日常的に行われて浸透しているのがサンフランシスコ・シリコンバレーエリアだ。
弊社ではそのサンフランシスコで、デザイン思考・ユーザー中心的デザインの手法を用いて集中して製品/サービス開発にチャレンジするプロジェクト、Innovation Programを提供している。ご興味ございましたらいつでもこちらまでご連絡ください。
画像:lds.net
【イベント開催!】Beyond Borders: Japan Market Success for Global Companies
日本市場特有のビジネス慣習や顧客ニーズ、効果的なローカライゼーション戦略について、実際に日本進出を成功に導いたリーダーたちが、具体的な事例とノウハウを交えながら解説いたします。市場参入の準備から事業拡大まで、実践的なアドバイスと成功の鍵をお届けします。
■開催日時:
日本時間:2024年12月6日(金)9:00
米国時間:12月5日(木)16:00 PST / 19:00 EST
*このイベントはサンフランシスコで開催します。
■参加方法
- オンライン参加(こちらよりご登録いただけます。)
- 会場参加(限定席数) *サンフランシスコでの会場参加をご希望の方は下記までお申し込みまたはご連絡ください。(会場収容の関係上、ご希望に添えない場合がございます。予めご了承ください。)
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世界有数の市場規模を誇る日本でのビジネス展開に向けて、貴重な学びの機会となりましたら幸いです。皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。