デザイン会社 btrax > Freshtrax > 日本企業がデザインスプリントを...
日本企業がデザインスプリントを実践すべき理由とは【btrax voice #10 Jensen Barnes】
btrax社員の生の声をお届けする「btrax voice」シリーズ。
今回のインタビューは、Director of Design and DevelopmentのJensen Barnes (JB) 。今回JBには、これまでの日米における幅広いデザインワークの経験や、彼の得意分野であるデザインスプリントのファシリテーション、また国をまたいだプロジェクトのあり方についての彼なりの考察を伺いました。
Who is Jensen?
Jensen Barnes (JB)
役職:Director of Design and Development
所属:btrax, Inc.
アメリカでの9年以上の広告デザインの経験に加え、日本企業で6年間広告や新規サービス開発デザインに従事し、2018年にbtrax入社。
これまでの経験で培ったクロスカルチャーな視点をbtraxで活かすことを目指している。
btraxに参加を決めた理由は?
まず、btraxでは日本とアメリカという2つのユニークな場所にまたがって働ける点とても面白いと思いました。私はアメリカのデザイン業界で働いていたので、日本で仕事を始めたときはその違いにとても驚きました。
そんな背景から、btraxで働くことで、そういった自分の経歴から学び得た両国のデザインのあり方の違いについてクライアントに共有し、そのコントラストを伝えていくことができると感じたんです。
私は日本での経験をアメリカに持ち帰り、日本に深く関係するアメリカの企業で働いていくことになります。これまで自分がやってきたことと、これから自分がやっていくことが繋がっていくことに非常にワクワクしています。
そういう意味でbtraxで働くことは自分にとって自然な選択でした。それに、btraxのようなサービスに取り組む人や企業にはまだあまり多くないと思うので、価値のあるサービスだとも感じています。
日米の異なる文化や働き方の橋渡しをすることで、学んだり楽しみを見つけたりしながら、両者の良い点を取り入れていけるのは良いですよね。
日本で学んだことを無駄にしたくなかったということも、btraxに参加を決めたもう1つの理由です。日本での仕事には「高品質」であることが求められます。日本のクライアントと仕事をしていると、「職人文化」が多くの物事に好影響を与えていることがわかります。
そののおかげで、日本のものづくりは常に一定のレベル以上なんですね。私はそういう日本のものづくりのあり方がとても好きです。
一方アメリカでは、そういった品質を担保しようという面が少しおざなりにされがちです。デザインや開発の仕事において、そういう品質を大事にするの考え方は日本から学ぶべき点だと思います。
インタビュー中の風景
広告デザインからサービスデザインへ
ーカリフォルニアで育ち、東京で6年間を過ごしたという経歴は、デザインの仕事にどんな影響を与えてきたと思いますか?
日本とアメリカには、異なる価値構造が存在していると思います。何か素晴らしいものを作り上げるというゴールは共通していますが、そこまでの道筋のあり方やものづくりにかける時間に対する価値基準が異なります。
私は広告デザインの仕事からキャリアをスタートさせ、日本でも最初の3年間は広告業界で働きました。その業界では物事が進むペースがとても速く、様々な課題に対して最新技術を用いながら、上層部の人々や大きなチームと働くという経験をすることができました。
その後の3年間はエン・ジャパン株式会社で、プロジェクトや組織構造をデザインし実行していました。私が働き始めたとき、エン・ジャパンには社内で新しい製品を作るインキュベーションプログラムはありましたが、さらに新規製品開発に特化した枠組みを作るために、AIR(Artificial Intelligence Resources)という会社を社内に立ち上げたんです。
そこでは目標の設定と共有・承認、組織内を横断した調整、ブランディング、チーム内でのバリューの設定などを行っていました。
日本でも少しずつ始まっているように感じますが、新たなアイデアを創造する人を会社が採用することは、ものすごく重要なことだと私は思います。AIRは最新テクノロジーを用いて、採用プロセスを改善するための製品を生みだすプラットフォームでした。
実際のところ、私たちが開発したモデルが社内の別のチームで使われ始めるまでにそう時間はかかりませんでした。とてもポジティブな気持ちでその様子を見ることができましたね。何か素晴らしいものを成し遂げたいという欲求は文化を問わずデザインに影響を及ぼすのです。
関連記事:【デザイン × 経営】ビジネスにおけるデザインの価値を追求する7人の起業家
ー15年以上の経験の中でも特に誇りに感じていることは何ですか?
私がこれまで共に働いてきた人々は本当に素晴らしい成長と学びの機会を与えてくれました。イェール大学の修士課程に在籍中もたくさんの素晴らしい人々や企業とプロジェクトを行う機会がありました。
その過程では彼らがどのようにそこにたどり着いたのか、どれだけ一生懸命に仕事に取り組んでいるのかを知る機会に恵まれ、それによってどうやって彼らが成功し物事を成し遂げていくのか学ぶことができました。
デザインの世界で仕事をする上で大切なことを学ばせてくれた、そういった人々とのつながりが自分にとって大きな誇りです。
ー最近のデザイン業界から学んだことや触れたもの中で、ぜひbtraxで実践してみたいと思っていることはありますか?
最新テクノロジーのおかげで私たちはこれまでにはない可能性を見つけることができています。これは本当に素晴らしいことです。テクノロジーには、少し怖い面もありますが、私はテクノロジーは人々を助けてくれるものだと信じていますよ。
私たちは未来を見据えて自分たちの達成したいビジョンに向かって動いていかなくてはなりません。例えばもしあなたが新鮮な食べ物や健康的な環境が欲しいと思っているのなら、必要以上の消費活動を推進するのではなく、テクノロジーをオーガニック農業に応用して、その価値を大切にするコミュニティを育てるという方法がビジョンに合った行動です。
また、利用者に還元するということも考えられます。アイテム課金のシステムを導入して、企業が利益のために使っていたデータを彼らに還元するというのも面白い考え方だなと思います。
またブロックチェーンテクノロジーにも興味があります。ブロックチェーンがアートや新しいビジュアルシステムにどのように応用されていくのか注目しています。ARやVRはデザイナーなどにも使われるようになっていくと思いますね。未来は明るいですよ!
クライアントと共にデザインスプリントを実施している様子
日本で学び実践したデザインスプリントの美学
ーどのような経緯でUXデザインやプロダクトスプリントに興味を持つようになったのですか?
デザインスプリント(以下スプリント)の考え方が今ほど確立されていなかった時代に、AIRプロジェクトのために採用したデザイナーから学んだのが始まりです。まだスプリントが業界でもそれほど一般化されていなかったころ、チーム全体を巻き込んでデザイン思考を実践する1つの方法として利用し始めました。
チームというのは、そのポテンシャルを十分に発揮できないでいることもあります。例えば、契約社員として雇われたデザイナーはインキュベーション期間の間、他から切り離されたような環境で過ごし、案件をこなしていきます。それはそれで良いようにも見えますが、他の社員たちと各々の視点や経験を織り合わせることはできていないんです。
スプリントの場では、参加者全員の得意分野や視点を全て取り込もうと試み、プロジェクトをより良いものにしていこうとします。それがスプリントの本当にエキサイティングなところです。
関連記事:【デザインスプリント入門】話題の高速サービス開発法とは
ーこれまでにどれくらいスプリントをこなしてきたのですか?経験を積むにつれて、そのプロセスに変化はありましたか?
変則的なものを合わせて、社内外で年間10回ほど行ってきました。スプリントを行うメリットはあらゆる面においてあります。スプリントの1週間のうち、各曜日に何が起こるのかを理解するのはとても簡単なのですが、私たちが取り組む内容自体はとても複雑なこともあります。
クライアントや会社、チームのニーズによってそのプロセスは必ず変動します。そこにいる全員が何かしら貢献することができますが、その貢献は自身が経験したことにのみ基づきます。若い層に関連した問題に取り組む場合であれば、若いデザイナーやメンバーをチームに組み込みたいですね。
なぜなら、彼らは自分たちが何に影響されるかを理解しているからです。一方、より集合的な問題に取り組む場合であれば、チームはよりダイバーシティに富んでいる必要があります。
スプリントはどんな難しい問題でも簡単に解決できるものではありません。スプリントの美はそのスピードにあります。取り組んでいるプロジェクトにおいてどの段階にいるかという基準が得られるのです。
スプリントから出てくるアウトプットは突拍子も無いものになることもあるでしょう。でも解決したい問題に対する仮説全体における現在地の評価という点ではとても建設的なものになるはずです。
「チーム」がスプリントを成功に導く
ースプリントにおける良いチームに必要な要素とは何でしょうか?
取り組む課題によりますね。もし子どもに関係する課題に取り組むのであれば、私は子どもをチームメンバーに入れたいです。それくらいスプリントはシンプルであるべきなんです。それから、必ずしもエキスパートをチームに入れる必要もないと私は考えています。
ただ、私たちbtraxのチームが提供するサービス、これまでに自力での解決が難しかった複雑な問題を抱えたクライアントたちが相談に訪れるくらい高い水準ではありますが。
スプリントではチームのデザイン、つまり誰がチームに入るべきか、そしてそれはなぜかというところにより力を注ぐ必要があります。しかし、「Ask the Experts」の日である2日目には、何人でも欲しいだけ投入することができますよ。
もう1つ知っておいて欲しいことですが、スプリントは解決策ではありますが、自身のプロダクトやこれから作り出すものに対してあなたが持つべき視点とは少し違います。
より建設的な視点で見ればスプリントは失敗に終わることもあるかもしれません。しかし、その結果によってこれまでのアプローチをピボットする必要があるとわかることもあります。スプリントの後、製品を変えていくことにもなるかもしれませんが、その改訂はレベルの高いものになるはずです。
btraxでスプリントを行う場合、クライアントのサービスやプロダクトが実施前に比べてずっと高いレベルになることを保証します。スプリント後に出るアウトプットは超ハイテクなものになるかもしれませんが、その後にもっと簡単なものにできるかどうかエンジニアと話し合って決めていくことも可能です。
単に見た目が美しかったり、洒落たものを作ったりするのではなく、効果のあるものを作ることを考える必要があるんです。
デザインスプリントではチームワークが重要に
ースプリントを利用するのに最適なクライアントについて教えてください。
大きな問題を解決しようと取り組んでいるのであればどんな会社にもフィットすると思います。そのクライアントがイノベーションを起こしたいと考えていて、これまでとは異なる方法で問題を解決しようとしているのなら、まさにぴったりですね。
スプリントは、検証もされず実際のユーザーの動線にも合っていないようなものづくりとは一線を画しています。それよりもっとパワフルで、効果のある未来のデザインワークだと思います…つまり…その未来というのは今っていうことになりますね!
ースプリントを行う上で最も大変なことはなんだと思いますか?
事前準備、スプリント自体のハードさ、そしてスピードです。しかし、それらがあるからこそスプリントはとても効果的なんです。多くの場合綿密な事前準備が要求されます。参加者は事前に知識があるほど、スプリント中に進んでいることも把握しやすくて、自信を持って進めていけます。
私はスプリントの前にマーケットや競合について理解を深めるという独自のアプローチを通常のスプリントに追加しています。そうして、問題を事前に多少理解し、場合によってはクライアントと問題定義を定める準備をしているのです。
Lean canvasやクライアントのニーズや課題に対する理解は重要ですが、クライアント側でそれができていないことは往々にしてよくあります。
クライアント側で事前のユーザーリサーチなどをもとにアイデアの基盤となる情報を持っていると、スプリントを行う際にとても役立ちますし、その効果をぐんと底上げできます。
ースプリントを行う中で何か「やってはいけないこと」はあるのですか?
ユーザーテストでの結果をクライアントが受け止める場面でのみ「やってはいけなこと」があります。5日目に行われるユーザーテストの結果は真摯に受け止めるべきですが、それだけで製品生産に向けての青信号だと見なしてはいけません。
それよりも、その結果は何を修正し、何を新たにデザインすべきか、何が欠けているのか、そういったことを理解する材料になります。これらは難しい質問ですがが、プロダクトの機能がまだ開発されていなければ素早く答えを見つけ出すことができます。
無駄に機能に固執し、その後ある程度開発が進んでしまった段階で方向性の間違いに気づくことは好ましくありませんし、初期の段階で間違いに気づくよりコストもかかります。
スプリントを成功に導くキーとは?
スプリントルームにいる人々やチームのキャパシティが成功を左右します。彼らが主役ですからね。デザイナーはプロトタイプを作って見せることができますし、エンジニアやマーケッターは、技術的にどこまでが可能なのか、またこれまでにどのようなことがなされてきたのかについて彼らのインサイトを共有することができます。そこにいるメンバーから持ち寄られたあらゆるものが、プロジェクトリーダーが仮説を評価するための材料となるのです。
また異なったレベルの経験をもつ人々が集まることで、素晴らしいアイデアや情報が得られます。クリエイティブなプロセスが開かれていくのを目の当たりにするのは、本当に素晴らしいです。
たとえ内向的な人であっても意見をシェアしてチームの役に立つことができる点もスプリントのいいところです。スプリントの生産性を上げるのはチームなのです。
ー1年後、btraxのdesign and developmentチームはどうなっていると思いますか?
ぐんと成長していると思いますよ!楽しみです。そのために重要になるのは、恐れずにできる限り挑戦し続けることです。恐れ知らずでモチベーションの高いメンバーが欲しいですね。
デザイン業界での経験があって一生懸命仕事にぶつかっていきたいと考えているのであれば、恐れずにbtraxに応募して欲しいと思っています。
※本記事の原文(英語)はこちらよりお読み頂けます。
CES 2025の革新を振り返りませんか?
1月11日(土)、btrax SFオフィスで「CES 2025 報告会: After CES Party」を開催します!当日は、CEOのBrandonとゲストスピーカーが CES 2025 で見つけた注目トピックスや最新トレンドを共有します。ネットワーキングや意見交換の場としても最適です!