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人々の心を掴むブランドストーリー 5つのポイント
物が溢れている現代において、プロダクトの魅力だけで差別化を図るのはかなり難しくなってきている。見た目や性能の良さだけでは、消費者の心を掴むことはできない。
それは同時に良いものを作れば売れる時代の終焉であり、品質以外の “何か” がないと企業は生き残っていけない時代の始まりでもある。
その “何か” はブランド力であり、ストーリーであると考えられる。
ネット上に偽物が氾濫している今日では、広告やキャンペーンなどの “売るため” のブランド戦略よりも、よりリアルな物語を包み隠さず伝え、ユーザーに共感してもらう方法が求められる。
自分たちのルーツを語り夢を与えるNetflix
先日、有料ネット配信サービスの大手であるNetflixがとあるビルボードを展示した。
通常は広告の掲示に利用されるビルボードに表示されたのは「夢を諦めんな!俺たちだって最初はDVDレンタルから始めたんだ!」の文章。
そう、今でこそオンラインで動画を視ることが一般的だが、Netflixが創業した1997年当時はネット回線スピードの問題もあり、多くの人々はDVDをレンタルして観ていた。そこでNetflixはオンラインでDVDをオーダー、郵送するサービスを開始。
今から考えるとかなりベタなビジネスだが、その後少しずつストリーム配信を開始し、現在のモデルに辿り着いた。その過程で、米国DVDレンタル大手のBlockbusterに買収されそうになるが、最終的にはBlockbusterの方が倒産した。
このストーリーは、どんな広告よりもパワフルに人々の心に響く。特に力強いメッセージを添えると。
正しいブランドストーリーの伝え方
どのようにしたらこんなにも素晴らしいストーリーを伝え、ブランディングにつなげることができるのだろうか?
コンテンツを作成したからといって、効果的にストーリーを伝えられているとは限らない。そこには必ず外してはいけないポイントがある。
しかし、まだまだ多くのブランドは「質より量」という考え方に陥っており、製品・性能中心のコンテンツを作っても、実際には結びつかないのが現状である。
我々はこれまで数百社のグローバルブランドに対してブランディングサービスを提供してきた。その経験を元に、今回は、インパクトのあるブランドストーリーを伝えるためのヒントを紹介する。
下記のプロセスを活用して、より興味深く、魅力的で、記憶に残るストーリーを伝えてみよう。
優れたブランドストーリーの5つのポイント
まずは、心に響くブランドストーリーを作り出すためのポイントを紹介する。受け取り手がそのストーリーを通じて共感したり、感銘を受けたりする内容には、下記のポイントがいくつか含まれていることが多い。
1. 受け手とって意義がある内容である:
現代の世の中はコンテンツで溢れかえっている。それも、SNSなどを通じた自己満足系の物が多い。そんな状況で、本当に自分の生活に意義がある情報は意外と少ない。
これはブランドメッセージでも同じで、多くが消費者のメリットよりも「私はこんなに素晴らしい」という自己中な内容ばかり。
優れたブランドストーリーの第一歩は、相手のメリットを最優先に考えた意義のある内容を考えることから始まる。
2. パーソナルな内容である:
ブランドストーリーには複数の種類がある。有益な情報を配信したり、ビジュアルでインパクトを与えたり。そんな中でも、より受け手の共感を得やすいのが、パーソナルな内容。
言い換えると、それを受け取った人が自分を投影できるようなタイプのストーリーである。例えば、大成功しているような企業の創始者が実は自分以上に苦労していたと知ったらどうだろう?自分ももっと頑張んなきゃ、と共感してしまう。
アリババ創始者ジャック・マーの例:
- 高校受験に2回失敗
- 3回目の受験でやっと大学に合格
- 卒業後30回も就職活動に失敗
- 警官になろうとしたが、5人の応募者中、彼だけが断られる
- KFCが中国に来た際に24人がスタッフに応募し、23人が合格。彼だけが断られる
- ハーバード大学に10回入学を断られる
- アリババで成功するまで40社以上の企業を興し、いずれも失敗
3. エモーショナルである
人間はロジックよりも感情で判断する生き物。素晴らしいブランドストーリーは心に響く。当然だがストーリー自体がかなりエモい。
これが得意なのがNikeだろう。去年のBLMムーブメントよりもかなり前に、人種差別とそれに立ち向かう選手を起用したストーリーを発信した。直後にはかなり物議を醸し、炎上もしたが、長期的には売り上げも株価も上昇し、ファンの獲得に成功した。
4. 出来るだけシンプルにわかりやすく
ブランドストーリーを考える際に最も陥りがちな間違いが、複雑にしすぎること。デザインと同じく、メッセージもシンプルな方が伝わりやすい。
ストーリーの場合は、可能な限り登場人物は一人に絞り、提示する課題も一つ。そうすることで短時間で物語が伝わりやすくなる。
例えばこの写真を見るだけでもAmazonのストーリーが伝わってくる。
5. オリジナルであること
ありがちなブランドキャンペーンの問題点は、それが他のブランドであっても違和感がないこと。そう、受け手を感動させるストーリーはよく考えられている分、どうしても「ありがち」な内容になりがち。
そこで、ぜひ自分のブランドにしかないオリジナルな内容の追求をしてもらいたい。
自動車を販売したことのない会社がF1に挑戦し、見事に優勝を成し遂げた。それだけでもHONDAのThe Power of Dreamsの凄さが伝わってくる。どんな作り込まれたキャンペーンよりも説得力がある。
複数の要素を含めるとよりパワフルに
さて冒頭のNetflixのビルボードであるが、これが素晴らしいのは上記の五つのポイントを全て網羅しているから。自ずと下記のツイートも多くの人々の心を掴んでいる。
“夢を諦めんな!俺たちだって最初はDVDレンタルから始めたんだ!” っていうNETFLIXのビルボード。最高だね。 pic.twitter.com/Sm8UmlcHZd
— Brandon K. Hill | CEO of btrax 🇺🇸x🇯🇵/2 (@BrandonKHill) September 30, 2021
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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