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Appleを3兆ドル企業に成長させた6つのデザイン哲学
2018年8月2日, Appleの時価総額がアメリカ企業として初めて1兆ドル(約130兆円)を突破した。
そしてその一年後には倍の2兆円を、そして2022年初頭には3兆ドルを突破した。
1997年には一時期倒産も危ぶまれたが、スティーブ・ジョブス復帰後、デザインに対してのこだわり、そして革命的なプロダクトを作り出すことにフォーカスをさだめ、iMac, iPod, iPhoneなど、次々に世の中を変える製品をリリース。
その後の躍進も加速し、世界一の時価総額と驚異の利益率を達成している。
その一番の要因が「デザイン」にあることは明白で、プロダクトのデザイン性から経営に対してのデザイン的思考の活用など、ビジネスにおけるデザインの重要性を具体的な結果として示している。
スティーブ・ジョブスが信じた6つのデザインフィロソフィー
Appleが手がけるプロダクトやサービスには共通して、かっこよさ、可愛らしさ、使いやすさの要素が組み込まれている。
そのデザイン性の高さの裏にはどのような哲学が存在しているのであろうか。
今回は、スティーブ・ジョブスが当初よりこだわり続けた6つのデザイン哲学を紹介する。
1. 細部にこだわりまくる
単に、こだわりを持つだけでは足りない。こだわりまくるレベルまで追求する必要がある。ユーザーに「そこまでやるか!」と思わせるほどの「狂気じみた」こだわりをプロダクトに忍ばせることを追求した。
例えば、2世代目のiMac. 通常であれば見ることのほどんどないような、本体の裏面にもこっそりとAppleのロゴの刻印が刻み込まれている。
単純に考えると無駄でコスト高に繋がろうように思われるこんなところにも、狂気のこだわりが隠されている。その心遣いに思わずユーザーは”やられた!”と感じ、Appleのファンを生み出すきっかけにもなっているのだ。
2. ユーザーをとことん理解し、彼らに共感する
ご存知かもしれないが、これはまさにデザイン思考における最初のステップである、エンパサイズ (共感) である。
Appleでは、何を作るかよりも、なぜ作るかに重点を起き、解決するべきユーザーのニーズに共感することから全てをスタートしている。そのためにはユーザーをしっかりと理解することから始めなければならない。
例えば、初期のiMacの場合、多くのユーザーがリビングルームにパソコンを置くことを前提に、インテリアとしてのクオリティーも重要視し、グリーンの半透明の一体型ハードウェアを開発した。ユーザーに共感することで「パソコン = 四角いベージュの物体」の前提条件を打ち崩した例である。
3. おもてなしの精神を大切にする
ユーザーを理解し、彼らの目線にあったプロダクトをデザインする。企業目線ではなく、ユーザー目線で何が使いやすいのか。
主役はあくまで人間であり、機械ではない。テクノロジーはユーザーの目的を達成するために存在しており、使いにくいものは必要ない。
実はこの考えは元々日本のおもてなしの概念からきている。顧客を理解し、彼らが喜ぶ方法を考え、それができなければ企業側に落ち度がある。Made in Japanに憧れていたジョブスならではの発想かもしれない。
このフィロソフィーは、iOSにGUIを採用したことからもうかがえるだろう。
コマンドラインがコンピューターへの一般的であった当時、より人間に近い機械との対話方法として、直感的に使いやすいインターフェースの存在をゼロックスで発見し、心臓の高鳴りを感じたジョブスのエピソードがある。
4. フォーカスを定める
ジョブスが復帰後にまず初めにやったこと。それは製品ラインの整理であった。
それまで様々なユーザー向けに複数のプロダクトをリリースしていたのをバッサリと切り捨て、本当にフォーカスすべきユーザー、そして、スタイルにフォーカスを定め、全てをリセットした。
その後もAppleがデザインするプロダクト全てにおいて、極限までにその機能を絞り込み、研ぎ澄まされた物だけをリリースしている。
初代のiPhoneがリリースされた時、最も驚いたのがその物理的ボタンの少なさである。ホームボタンを含め合計で5つのボタンしかない。
ここまで絞り込むことで究極の使いやすさを実現した。日本のガラケーと比べてみても、その機能性は異次元であった。
5. 親しみやすさを生み出す
Appleの製品にはなぜか親しみを感じる。そう思ったことはないだろうか。
見た目のデザインだけではなく、細かな演出が機械にも「人間味」を与えている。例えば、スリープモードに入ると寝息をしているように光るMacのライトや、注目してほしい子供のように跳ねるアプリケーションのアイコンなどがそうだ。
初期のMacも人と人間を繋げることを一つのテーマになっており、アイコンやデバイスなど、そのプロダクトを取り巻く全ての要素に親しみやすさが盛り込まれている。
これは、Macのデザインをする際にジョブスが地元の家電量販店に行き、キッチン用品を徹底的に研究した結果、主婦にも親しみのあるフードプロセッサーのデザインを参考にしたとされている。
6. シンプルに、そしてシンプルに
“Less-is-More (少ない方がより多くを得られる)” Appleのプロダクトの最も優れていところ、それはそのシンプル性だろう。デザインにおいて、これ以上削る要素がない状態こそが完成とされる。
無駄を極力廃し、最も重要なポイントだけを実装する。それによりユーザーは迷いが少なくなり、安心感を感じる。これこそがデザインが行うべき役目としての、目に見えないルール作りだろう。
これ以上足せない、ではなく、これ以上削れない。のがポイント。これはジョブスがハマっていた禅の精神からインスパイアされたものでもある。
その一方で、なぜか今の日本でデザインされる多くのモノはゴテゴテしがちである。
削る美学、自信があるからこそ達成できる境地でもある。この辺は企業の経営陣にもしっかり理解してほしいと感じる。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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