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ビヨンドミートだけじゃない。食品産業に革命を起こす次世代フードを実食。
食品産業にも「破壊」が起きようとしている。大手の食品産業が市場シェアを奪われる時代が訪れようとしているのかもしれない。
代替肉食品に代表される代替食品産業は今までにない盛り上がりを見せている。植物ベースの代替肉食品だけではなく、代替卵食品のJUSTや、まだ試験段階ではあるが、動物の細胞から生体触媒にて鶏肉や鴨肉を研究室で育て上げるSuperMeatやMemphis Meats など、次世代フードの開発を行っている会社を数えるとキリがない。
代替肉の開発販売を行うフードテックスタートアップたちは現在急成長中であり、我々の生活に浸透しつつある。
日本でもビヨンドミートが三井物産からの出資を受けた販売計画を行っていたが(2019年8月に取り止めとなった)、アメリカでは既に多くの代替食品スタートアップが市場に参入しており、食品スーパーで購入したり、ファストフードレストランで食べることが可能になっている。
今回は、そのビヨンドミートの競合相手であるインポッシブルフーズという代替肉食品スタートアップを紹介する。なぜ代替食品が注目なのか、インポッシブルフーズの特徴、そして実際に食べてみた体験についてもまとめたい。
参考記事: 食の多様性を支えるフードテックスタートアップ3選
なぜ今、代替食品産業が注目されているのか。
次世代の代替食品産業が世界中から注目を浴びている理由は、主に4つある。
①家畜産業が排出する温室効果ガスの大幅削減が可能である。
②世界的な食料自給率の上昇が期待できる。
③生活習慣病の改善に繋がる。
④動物の無駄な殺生の抑制が可能である。
この中で、代替食品産業に一番期待されているのが、地球温暖化防止への貢献である(世界の温室効果ガス排出量の14.5%が食生活に関わる家畜から発生していると言われている)。
世界の人口増加に伴い、このままの食生活を人類全体が続けていったとすると、家畜産業から排出される温室効果ガスの排出量が、2010年から2050年の間に78%も上昇するという研究結果も、オックスフォード大学から出ている。
これが、代替肉を使ったハンバーガーの場合は、一般的なハンバーガーを消費する時と比べて、最大90%もの温室効果ガスの排出削減ができるようになるのだ。このような経緯で大きく注目されている代替肉会社の1つがインポッシブルフーズである。
インポッシブルフーズとは
インポッシブルフーズは、2011年にスタンフォード大学の生物化学者であるパトリック・オーライリー・ブラウンによって創立された、植物由来の代替肉で作られたハンバーガーのパテやソーセージを販売しているスタートアップ会社である。
日本では代替肉スタートアップというと、今年5月にIPOも果たした2009年創立のビヨンドミートが最初に注目されるが、アメリカではインポッシブルバーガーの知名度はビヨンドミートと同等かそれ以上である(インポッシブルフーズは未上場)。
(米国では、ビヨンドミートの検索数と比較してもインポッシブルバーガーは劣っていない。Google Trendsのデータを元に作成)
インポッシブルフーズの強み
競合代替肉ブランドが増え続けるアメリカで、インポッシブルフーズにはどのような特徴があるのか、以下に注目の点を3つあげる。
①代替肉なのにミネラルやビタミンも豊富に含まれている。
インポッシブルフーズの「肉」はオーガニック食材が多く含まれており、ミネラルやビタミンもビヨンドミートより豊富だ(原材料一覧はこちらから)。ただ、肉の代わりの食材としてなりたつだけでなく、栄養価的にも肉より優れる点もある。
一方で、原材料に含まれる大豆は遺伝子組み換えのものを使用しており、インポッシブルフーズの肉自体がオーガニック食品とされている訳ではない。
遺伝子組み換えだから健康ではない、オーガニックだから健康、という訳ではないが、口にするものということもあり、多くの人の関心があることは間違いない。
②B2Bの強みを活かした市場の参入
インポッシブルフーズのマーケティング戦略もとても興味深い。もともとB2B向けに販売していた頃から、「業務用の肉」ではなく「インポッシブル」ブランドを前面に出して卸していた。
つい最近まで、レストラン等にのみ卸売り販売をしており、その後、Burger KingやApplebee’s、Umami Burgerなどのファストフードチェーンにて販売する際も、「インポッシブルバーガー」という名前で商品を展開している。そして、今年9月から一部のスーパーで一般販売を開始した。
レストランに卸売りする際に、「インポッシブル」という名前を商品名につけてもらうことで、インポッシブルバーガーという名前のブランドが根付き、ネームバリューを獲得することに成功したのだ。そうする事で、BtoCに販売路線をさらに拡張した時に、一般消費者が既に商品を認知しているという状況を作り出した。今後はBtoBとBtoCの両刀で、市場シェアの更なる拡大を狙っている。
③いかに本物に似せられるかが勝負
インポッシブルフーズとは、本物と見分けをつけるのが「不可能(インポッシブル)」というアイデアから名付けられている。つまり、いかに本物の肉に近い肉を作るかどうかにこだわっている。
代替食品だから当たり前に聞こえるかもしれないが、競合のビヨンドミートは、文字通り「肉の上、肉を超えた」ものを作ることを目指しているため、「次世代の肉に取って代わるもの」という思いがある。極端なことをいうと、肉と認識されなくても肉に置き換わる新たな食べ物になっていれば良いのだ。
ゆえに、一般の評価としては、インポッシブルバーガーの方がビヨンドミートより牛肉っぽく、これが代替肉だと言われなかったら気付けなかっただろう、というような意見もある。ビヨンドミートはもちろん美味しいが、牛肉っぽさは少し弱く、植物由来のプロテインの味が顕著であるという声もある。
お味のほどは。インポッシブル・バーガーを食べてみた
今回はbtraxのサンフランシスコオフィスから歩いて5分ほどの距離にある、Umami BurgerのSoma店にてインポッシブルバーガーを食べてみた。
お昼の時間帯なので、店内はとても賑わっており、同僚達と楽しんでいる人たちが多くいる。意外にも、ランチミーティングをしているような人達がいたのも印象的だった。
早速、インポッシブルバーガーを頼んでみた。テーブルに運ばれて来るや否や、最初の見た目に驚きを隠せなかった。牛肉を焼いた時に出る特有の肉汁がパテから滴っており、植物由来のパテというよりも、少し肉厚な本物のパテのようだ。パテはミディアムレアのような見た目で、この赤みはサトウダイコンの一種であるビーツという赤紫色の野菜からきているらしい。
一口食べてみても、正直本当にこれが植物由来のパテであるとは思えない。肉のジューシーさやしっとりとした舌触り、はりがありつつも柔らかい歯ごたえは、本物の肉のものを再現できていると言える。
もし誰かが私にインポッシブルバーガーを買ってきてくれて、それが代替肉だと言われなかったら、何の疑問を持たずにただの美味しいバーガーだと思って食べていたに違いない、と感じた。
私はインポッシブルバーガーに対してそこまで大きな期待をしていなかったのだが、このクオリティには本当に感激した。これだけ美味しくて本物の肉と比べても遜色がないのなら、将来本当の肉に置き換わって世界中のレストランで愛用される日がやって来るかもしれない。次世代の食品開発がここまでやってきたのかと実感した瞬間であった。
人にとって「本当に良い選択」か。サステイナブルが新たな商品価値になる。
インポッシブルバーガーは見た目だけでなく、味も本物そっくりであった。ここまで本物に近い代替肉が存在するのなら、むしろ本物の肉を食べる必要があるのだろうか。
現在、私たちは食楽を追求するあまり、家畜を人間のためだけに育てて、食べる為に殺している。私はベジタリアンではないのだが、現代人の食生活には甚だ疑問を感じており、本来密接に関係があるはずの命と食事を切り離し、実感がなくなってきているところに私自身も含め、人間のエゴイズムを感じている。
本物と同じくらい美味しく、コレステロールなどの観点から考えてもヘルシーで、しかも環境に優しく、動物を殺さなくても良い「肉」があるのなら、その代替肉を選ばない理由がどこにあるのだろう。
また、代替食品が注目される理由4点で述べたとおり、長期的にみて、代替肉の方が環境にも人にとっても良い選択となるという判断もできる。食品の美味しさ、安さと言った短期的なベネフィットではなく、こういった長期的に持続可能であるというサステイナビリティが、インポッシブルフーズをはじめ、多くの代替食品ブランドの価値となっていることは言うまでもない。
マーケットのトレンドを理解し、人を理解し、ユーザー中心型ビジネスを目指す
自動車産業に完全電気自動車を普及させ、破壊をもたらしたテスラ・モーターズは、「車はガソリン」という業界の常識を覆えし、消費者に新たな価値を提供している。現に、去年の第3四半期におけるアメリカ国内での新車売上台数で、テスラ・モーターズは、あのメルセデス・ベンツを抜いた。
自動車産業でも新参者が革命児となったように、もしかするとインポッシブルフーズやビヨンドミートが食品産業全体に革命を起こす日も近いのかもしれない。
こういった革新的な市場の変革や、ユーザーがどのような価値を訴求していて、どのような体験を求めているのかということを理解することは、これからの時代を生き抜くためには欠かせなってくる。
btraxでは市場全体の最新情報だけでなく、体験に特化した、ユーザーの価値に焦点を当てたリサーチやサービス開発、グローバル展開サポートを提供している。
また、それらを行うために必要なマインドセットや手法を養う人材育成プログラムまで一貫して行っている。ご興味、ご相談などがあれば、是非一度お気軽にご連絡を。
【イベント開催!】Beyond Borders: Japan Market Success for Global Companies
日本市場特有のビジネス慣習や顧客ニーズ、効果的なローカライゼーション戦略について、実際に日本進出を成功に導いたリーダーたちが、具体的な事例とノウハウを交えながら解説いたします。市場参入の準備から事業拡大まで、実践的なアドバイスと成功の鍵をお届けします。
■開催日時:
日本時間:2024年12月6日(金)9:00
米国時間:12月5日(木)16:00 PST / 19:00 EST
*このイベントはサンフランシスコで開催します。
■参加方法
- オンライン参加(こちらよりご登録いただけます。)
- 会場参加(限定席数) *サンフランシスコでの会場参加をご希望の方は下記までお申し込みまたはご連絡ください。(会場収容の関係上、ご希望に添えない場合がございます。予めご了承ください。)
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世界有数の市場規模を誇る日本でのビジネス展開に向けて、貴重な学びの機会となりましたら幸いです。皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。