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【対談】孫泰蔵氏 x Brandon Hill -スタートアップがグローバルに展開するための5つの秘訣-
先日、2016年中旬より約半年間、btraxが運営を行なってきた福岡のグローバル起業家育成プログラム『Global Challenge! STARTUP TEAM FUKUOKA』の最終報告会が開催された。そのメインプログラムとして、九州出身の連続起業家である孫 泰蔵氏とbtraxのCEOであるBrandonがスタートアップがグローバルに展開するためのポイントに関してのディスカッションを行なった。
サンフランシスコ・シリコンバレーをはじめとし、東南アジアやヨーロッパなど、世界各地で活躍するスタートアップを数多く見てきた2人がこれからの日本のスタートアップ企業が世界規模で展開するためのポイントについて語った。また、後半では孫氏が考える社会変革に対するビジョンや投資に関しての考え方、そして多くの優れたスタートアップが生み出される環境のために日本に必要な事柄などを説明いただいた。
グローバル展開するための必要なステップとは
今回の福岡市主催のプログラムの最大の目的はグローバルで活躍できる起業家を輩出し、育てること。そしてその仕組みを作ることで地域としてのムーブメントを生みだすことである。国内に留まりがちな日本のサービスをどのようにすれば世界規模で展開できるのか。そこにはいくつかの秘訣があった。
1. グローバルでやると決めること
あまりにも当然すぎて、そんなの当たり前だと思うかもしれない。しかし、日本のスタートアップが作るプロダクトのほとんどが「まずは国内向け」になっている。その国内デフォルトの考えをやめ、最初からグローバル向けのプロダクトと戦略づくりを行う。
実は今の時代であれば海外向けにサービスを展開すること自体はあまり難しくはない。多言語のサイトを公開したり、アプリを海外でもダウンロード可能にすることの技術的難易度は高くはない。しかし多くの人たちが「自分たちには難しい」と勝手に思ってしまっている。
一番重要なのは最初から海外でも展開しようというマインドセットを持つこと。まずは国内から、という思い込みを取り払うこと。これがシリコンバレーのスタートアップであれば、最初から世界中のユーザーをターゲットにサービスを作ることを考えている。
2. 悲観的な人の話は聞かない
ディフォルトのマインドセットが日本国内になってしまっている原因の一つが、周りの人たちの感覚がそうであるから。近くのエリア向けに展開することですら難しいのに、グローバルでやる事なんてまだまだ先、と思っているのが一般的である。それもそのはずで、どの地域に対して展開するにしてもビジネスは難しい。もしグローバルでも国内でもチャレンジングであれば、成長性の高いグローバルな方が良いだろう。
そして、重要なのは「いきなりグローバルは無理」みたいな悲観的なコメントは無視する事。そのようなマインドセットを持つ人達の話は無理して聞く必要はない。あまりそのような周りの声を聞きすぎると、いつのまにか気づかないうちに自分のサービスの展開規模が小さくなっているケースもあるので注意。
3. グローバルマインドの奴らで集まる
次は、グローバルで活躍することを信じている人たちを見つけて、その輪に入る。シリコンバレーでは「世界を変えてやる」っていう人がとても多くいる。あの地域では、スタートアップをやる理由 = 世界を変える、が当たり前になっている。そこでは、世界中から人が集まり、スタートアップを作り、日々切磋琢磨している。
最近では”シリコンバレー”とは地域名であるだけではなく、この”世界にインパクトを与える”というコンセプトの代名詞にもなっている。日本にも規模は大きくないが、このような”シリコンバレー的考え方”を持っている人が必ずいる。まずはそういう人たちを見つけて、その環境に身を置くこと。もし周りにそういう人たちがいなかったとしても、オンラインで繋がったりしながら自分でそのような環境を作り出すこと。
4. 最初から英語で作ること
グローバルに展開すると決めたのであれば、プロダクトも最初から英語で作るべきである。英語圏で作られるサービスが世界で使わられやすい理由の一つは、単純にそれが英語で作られているから。したがって、これから作る場合は、例えそれが日本国内向けのサービスであったとしても、あえて英語で作ること。
プロダクトだけではなく、サイトやビデオ、仕様書もあえて英語で作る。そうすることで、よりプロダクトのクオリティーも上がる。得意な日本語であれば、難しい言葉を駆使して”説明”をしてしまいがち。それを英語にすることで、言葉では説明しにくい部分をアイコンや、直感的なUI、ビジュアルだけで伝わる動画などで補うことで、プロダクトのわかりやすさと使いやすさが研ぎ澄まされていく。
言葉で説明できない部分は映像やデザインなどで補う。そうすることで、世界中の誰からみてもそのプロダクトの価値 = 誰のために何を提供したいのか、が簡単に伝わるプロダクトが出来上がる。
英語で誰にでもわかりやすく作れば、逆にたとえ自分の地域向けを想定していたとしても、英語で作ってリリースすれば、YouTube経由で世界各地のユーザーに認知が広まり、ダウンロードされたり、問い合わせがきたりする。しかしこれが日本語であれば、日本人以外から注目されることはほぼない。逆にTwitterやGoogleのように、英語だけで作ったとしても、それが使いやすければ日本でも使われるはず。
5. スケールできるビジネスを設計する
ベンチャー企業だからと言って、スタートアップであるとは限らない。英語では緩やかな成長を目指す場合はスモールビジネス (中小企業), 急激な成長とスケールを目的としてするのがスタートアップと呼ばれており、その二つはその成り立ちとゴールが大きく異なる。
例えば、今回のプログラムにも訪問先として参加していたサンフランシスコのスタートアップ、Off the Gridが良い例。元々はファウンダーのMattがラーメン屋台を展開しようとしいたが、よりスケールさせるために、複数のフードトラックを集め展開するためのプラットフォームを提供。それにより一気にサービスが広がった。それにより世の中に与えられるインパクトも大きくなった。
グローバル規模で拡張するビジネスは、労働集約型のローカルスモールビジネスの延長線上にはない。グローバルスタートアップを目標にするのであれば、スケーラビリティ (拡張性) を念頭に置いてビジネスを設計するべき。地元に根ざした堅実なビジネスを行なっている場合は、例え同じテーマのサービスだったとしても、スタートアップとして再設計する必要がある。
グローバルスタートアップのキーワードは急成長と世界へのインパクト
今回の二人の対談で何度となく出てきたキーワードが”インパクト”である。急成長をし、世界的に展開するビジネスの一番の目的は世の中に良いインパクトを与えること。
これはシリコンバレー地域ではすでに常識とされているが日本ではまだまだイメージが湧きにくい。しかし、ビジネスを行うのは例えその規模が小さくても大きくてもその手間と大変さは変わらない。なのであればいっその事大きなことをやったほうがより世の中にインパクトを与えられるし、リターンも大きいはず。
Go Big, or Go Home. (やるならでっかく) – Mark Zuckerberg
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