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今から知っておきたい、注目のオープンハードウェア10選
オープンソースと聞けば、何を思い浮かべるだろうか。ほとんどの人は無意識のうちに、Android、Firefoxなどのソフトウェアを思い浮かべるだろう。確かに様々なオープンソースが身の回りには溢れている。しかし、最近ではオープンソースの概念がハードウェアに広がってきている。
オープンソースハードウェアとは、ハードウェアの設計(3D CADデータ等)、エレクトロニクスの設計(基板上の部品配置、回路図)、ソフトウェアなどの情報を無償で公開することを指す。これらのデータと3Dプリンターなどの製造機械があれば製品を自分で作ることができる。
さらに自分で変更を加えることもできる。ソフトウェアの世界では、お互いにソースコードを共有し、改良することで、よりよいソフトウェアを作ることが広く行われてきた。ハードウェアでも、これまでソフトウェアで起こったことと同じことが起こるのは間違いない。
このムーブメントについて、詳しくは、静かに始まった革命、オープンソースハードウェアを読んでほしい。
IoTは今後5年間で、5倍程度と、爆発的に増えると予想させている。IoTが大きく世の中を変えることは間違いない。驚くべきことに、すでにオープンハードウェアのプロジェクトはすでにいくつも動き始めている。その中でも興味深いプロジェクトを10個選んでご紹介しよう。
写真はオープンソースの家、WikiHouse
驚きのオープンハードウェア10選
1. 自動車 OSVehicle
OSVehicleは、自動車のオープンハードウェアプロジェクト。2013年に誕生したこのプロジェクトは、10,000人のメンバーを抱え、設計とプロトタイプ開発が完了しており、テストフェーズに入っているようだ。
目的の1つとしてパーソナライズをあげており、2シート、4シート、都市部向け、オフロード向けなどの様々な用途に合わせてカスタマイズすることができる。
オープンソースのソフトウェアの世界では、元のオープンソースから分岐して様々なオープンソースが生まれた。自動車のオープンソースも、地域や用途によって様々なものが生まれてくると面白い。
ぐに一般道を走ることは難しいだろうが、ゴルフ場や遊園地、工場内の私有地で用途に合わせた利用が期待できる。
2. 住居 WikiHouse
WikiHouseはなんと、オープンソースの家を作ってしまおうというプロジェクト。CNCやレーザーカッターにより、部品を作り、それを組み立てて家を作ることができる。IKEAの組み立て家具をそのまま大きくしたようなイメージだ。
組み立ても簡単にできるように設計させている。専用の工具がなくても組み立てられるし、建設現場でよく見かける足場を組む必要もない。なんと、1日もあれば家の大枠を完成させることができる。
今後、貧しい人への住居や、災害時の仮設住宅などへの利用が見込まれる。また、家自体の設計書が手に入るため、スマートホームデバイスを組み込みやすい。オープンソースの家が、最先端の家のコンセプトを実現する可能性もある。
3. ロボット Poppy
Poppyは、オープンソースのロボット。ヒューマノイドタイプは、高さ85cm、重さ3.5kgで、25の部位をモーターにより動かすことができる。カメラや小さなLCDスクリーンも搭載。2足歩行が可能である。
3Dデータが公開されているため、3Dプリンタを使ってボディを作成することができる。また、プログラミング言語はPythonが採用されている。個人での利用はまだまだ難しいだろうが、大学などでの研究での利用や、ハッカー達が貢献することで、進化していくことが期待される。
4. パソコン Pi-Top
Pi-Top は、シングルボードコンピュータのRaspberry Piを、ノートパソコンのように使うためのプロジェクトだ。Raspberry Piはわずか4,000円程度だが、ブラウザでWebサイトを閲覧でき、ひと昔前のコンピュータと性能は対して変わらない。
Raspberry Piでfreshtraxを閲覧している様子
Raspberry Piは消費電力が低いため、スマホの予備のバッテリーでも数時間稼働できる。格安PCとして意外と使えるかもしれない。Pi-Topはオープンソースであるため、用途や利用者にあった形に改造することができる。
例えば、お年寄り向けや子供向けなどに、使いやすい形にすることもできる。パソコンはどのメーカーから出ているものも、基本的な構造は一緒だが、それに一石を投じるようなものが登場するかもしれない。
このプロジェクトは、Indiegogoで、192,685ドル(約2,400万円)を集めた。なお、Raspberry Pi自体はオープンソースではないので注意してほしい。
5. ミツバチの巣箱 Open Source Beehive
Open Source Beehiveは、その名の通りオープンソースの養蜂箱。工作機械を用いて1枚の板を切断してパーツを作り、組み立てると巣箱ができる。中にはセンサが取り付けられており、Webブラウザから巣箱の温度や湿度などの情報を得ることができる。また、ミツバチの活動の様子もセンサーにより検出することが可能で、巣分かれなどのときには、スマートフォンでアラートを受け取ることができる。
養蜂のようなこれまではテクノロジーとは無縁であった分野にも、IoTが導入されていくとみられている。このようなニッチな分野では大企業やスタートアップがすぐにプロダクトを送り込んでくることは少ないだろう。オープンハードウェアが採用される可能性がより高いと考えられる。
2014年4月には、クラウドファンディングサイトのIndiegogoで約700万円を集めた。Indiegogoキャンペーン
6. ミニ植物工場 FarmBot
FarmBotは、オープンソースの野菜の栽培キットだ。クレーンがミリ単位の精度で動き、水やりなどの世話を行う。野菜栽培ゲームのようなUIのWebの画面から、操作を行うことができる。すべてが機械で管理されるため、気候条件などを元に、栽培方法を最適化することもできる。
このプロジェクトが発展すると、誰でもこの装置を設置するだけで、小さな植物工場を家に持つことができる。サンシャイン牧場などの農業系のゲームが日本では人気があるが、このプロジェクトを使ったゲームを開発されて、友達や世界中の人と一緒に栽培を楽しめるようになるなどの、効率的に植物を育てること以外の価値が生まれる可能性もある。 技術としては、IoTのDIY(Do It Yourself)で広く使われる、Raspberry PiとAdruinoを利用している。ソフトウェアもRubyとAngular、MongoDBなどの汎用的な技術を用いている。 2015年中にKickstarterのキャンペーンを開始することを予定している。まだまだ完成度は低いが、今後楽しみなプロジェクトである。
7. 3D プリンタ Eventorbot
Eventorbotは、オープンソースの3Dプリンタだ。他の3Dプリンタと比べて、40%のパーツとコストを削減できることが特徴である。3Dプリンタで印刷する3DのCADモデルは、Thingiverseなどでオープンソースとして共有されている(シリコンバレーではヨーダがサンプルとしてよく作られている)。さらに、3Dプリンタ自体がオープンソースになることは興味深い。
これは、3Dプリンタを購入するだけでなく、自分で作れるようになることを意味している。まだまだ個人の手に届くような価格帯の3Dプリンタでは難しいだろうが、3Dプリンタの高性能化と低価格化が進むと、所有している3Dプリンタなどの製造装置を使って3Dプリンタを作り、使うことができる。
これによりハードウェアの革命も加速するだろう。2014年には、Kickstarterで137,508ドル(約1600万円)を集めた。
8. テーブル OpenDesk
OpenDeskは、設計図が公開されたテーブルを集めたサイト。この記事内ですでに家を紹介しているため、インパクトは弱いかもしれない。
しかし、このサイトが優れているのは、設計図をダウンロードして自分で作ることはもちろん(といっても板を切断する工作機械が必要だが)、板を切断してくれる近くの施設を探して、IKEAの家具のような形で、配送してくれることだ。
あとは届いたものを組み立てれば使うことができる。このようなオープンハードウェアの製作まで請け負うサービスは今後増えていくだろう。その先駆けとして注目すべき存在だ。
9. オープンソース版 Nest
Googleに32億ドル(約4000億円)で買収された、スマートホームデバイスのNestをご存知だろうか。サーモスタットと火災報知器が主な機能のコネクティッドデバイスだ。このNestをDIYで作る取り組みがParticle社(旧Spark社)のブログで紹介させており、ソースコード等が公開されている。
これはIoTの開発キットなどを提供する会社が、自社のパーツを使って作ることによるプロモーションを主目的として公開したもので、継続的に開発されるプロジェクトではない。
しかし、MicrosoftのOfficeの互換性を持ったOpenOffice.orgが作られたように、有償の製品をコピーするようなオープンソースのハードウェアが登場することが予想されることから、その一例として興味深い。
10. Arduino
最後の1つはArduino。これはマイクロコントローラである。ハードウェアを作るための「部品」であるが、これを外すことはできない。 ハードウェア設計、つまり回路図および基板のパターンが公開されている。
技術を持つ人なら、回路を変更して自分の用途にあった形状にすることが可能だ。実際にArduinoを使う場合も、ごく一部の機能しか使わないことも多い。使わない部分を省いて小型化することなどができる。
Arduinoは電子工作の定番アイテムであるが、個人の利用にとどまらず多くのオープンソースハードウェアでも使われており、オープンハードウェアという概念を広げた意味でも功績は大きい。
オープンハードウェアが解決すべき課題
いかかだっただろうか、多くのオープンハードウェアプロジェクトが誕生していることに、驚いた人も多いだろう。しかも、家や車といった大きなものまで含んでいる。しかし、オープンハードウェアがオープンソースのように、技術者以外の人が利用するようになるのには時間がかかる。
バグの問題
オープンソースソフトウェアは、バグがむしろ発見されやすいという特徴があった。ただ、ハードウェアはバグがあった場合に、それが人命に影響する可能性がある。直接人体に影響を及ぼしそうにないロボットなどの小型のハードウェアでも、不具合が原因となり火災が起こると人命に関わる。これは普及において深刻な問題となる。
サポートの問題
オープンソースソフトウェアは、サポートがほとんど提供されないことが多い。ハードウェアでまったくサポートが提供されないと困ることも多いだろう。設計図が公開されているといっても、それを使って直せる人ばかりではない。
利用者がハッカーばかりの現状では問題になることは少ないが、オープンハードウェアが広がるにつれて、問題も大きくなるだろう。
これからの問題を解決する動きは徐々に広がっていくと考えられるが、法律の整備などが必要な場合もある。大きな可能性を秘めたオープンハードウェアが、どのように発展していくか、目が離せない。
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