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XR市場の未来予測:XRが変える3つの分野
最近Oculusのスタンドアローン型VRヘッドセット「Oculus Quest 2」や、MR(Mixed Reality)技術を使用して、現実の空間内でレースゲームを楽しめる「マリオカートライブホームサーキット」などの登場でXR界隈が盛り上がってる。
しかし、今のところ大きく話題になるのはゲームやエンターテイメント分野でのサービスが多く、我々の生活を大きく変えるような、生活に密着したサービスは登場していない。しかし、XR技術は、既に多くの分野で使われ始めており、近い将来にXR市場はコロナ禍でも大きく成長すると見込まれている。
ここでXRについて、おさらいをしておこう。仮想現実技術は、主にVR(Virtual reality: 仮想現実), AR(Augmented reality: 拡張現実), MR(Mixed Reality: 複合現実)として分類され、そしてそれらをまとめてXRと呼ばれている。
既にいくつかのXRサービスは将来的に大きく普及する兆しが見えてきている。そこで今後、どういった分野でXRサービスが普及し、我々の生活に定着するのか考えていきたい。
1. VRミーティング
ご存知の通り、新型コロナウィルスの影響でGoogle MeetsやZoomなどによるオンラインミーティングは多くの企業で導入されており、もはやオンラインミーティングは一般化したと言える。
しかし、オンラインミーティングは便利ではあるが、対面でのミーティングに比べると、相手とのコミュニケーションを十分に再現できているとは言えず、オンラインでは効率が悪くなると考えている人も多い。そういったニーズに答えてくれるのが、VRミーティングだ。
新型コロナの影響で、オンラインミーティングは定着し、ビジネスに欠かせないツールとなった。その次に来るのがVRミーティングだと注目されており、多くのサービスが登場してきている。
VRミーティングには、オンラインでのミーティングでは感じられない人と人が対面している感覚を再現することができる点に加えて、現実では不可能な、空間に3Dオブジェクトを設置できるという強みがある。
例えば、参考資料として簡単に車の3Dモデルを用意でき、ミーティング中に車の外観や色を変えるなども可能だ。VRヘッドセットがなくてもスマートフォンだけで参加できるサービスも登場してきており、VRミーティングが普及する下地は十分に整っていると言えるだろう。
VRヘッドセット不要なVRミーティング
Spatialはニューヨークのスタートアップで、VR/AR技術を用いたVRミーティングサービスを提供している。2020年の1月には1400万ドルの資金調達に成功している。
バーチャル空間の中では、各個人の「アバター」を介し、現実での対面時と同じように身振り手振りを交えながら会話し、時には文章や図形を書いたり、バーチャル空間上でプレゼンテーションをすることもできる。
また、現実では不可能な、会議の資料としてモックアップのような3Dオブジェクトを空間に出現させたり、空間に付箋を貼ったりすることも可能だ。
Spatialのサービスはヘッドセットの使用を前提としてはいるが、スマートフォンさえあれば誰でもすぐにミーティングに参加することができる。また、Spatialのサービスは無料プランも用意されており、こういったハードルの低さがSpatialの強みであり、まずは試してみたいという人にお勧めだ。
2. VRトレーニング
従業員の教育コストの増加は常に経営者を悩ませている。技術の発展と共に習得しないといけないスキルやツールが増え、取り扱うサービスは複雑になっていく一方だ。そして、コンプライアンス等の倫理教育も必要だ。
Harvard Business Reviewによると、全世界で3,500億ドル以上が人材開発のトレーニングに費やされているがそのコストに見合った効果は出ていないという。
70%の従業員が仕事に必要なスキルを習得しておらず、さらにトレーニング学んだ新しいスキルを仕事に応用できている従業員は、わずか12%とのこと。また、トレーニングによってパフォーマンスが大幅に向上したと考えている回答者はわずか25%に過ぎないという調査結果もある。
これは納得できる話だ。膨大な量のテキストブック、パワーポイントのような資料や研修動画では、短時間でのトレーニングは難しく、結果として、満足できる研修の効果は見られず実際の現場で先輩社員などに指示を受けながら時間をかけて技能を身につけていくという企業が多いだろう。
しかし、VRトレーニングでは、仮想空間上での研修を自身の体験として身に付けることができ、従来のトレーニングに比べて短時間での高い効果が期待されている。
VRトレーニングは、旅客機パイロット向けのフライトシミュレーターに例えられることがある。基本的な研修内容から特殊な状況下での訓練まで多種多様なトレーニングを受けることができる。
近い将来に、VRトレーニングがより充実したトレーニングを提供できるようになれば、フライトシミュレーターのように、研修を受けた時間が業務経験の一部として評価されるだろう。
また、VRの没入感は1対1でトレーナーから研修を受けているのに近い感覚を得ることができる。トレーナーは自動音声の研修プログラムだけでなく、遠隔地にいる専門家が担うこともできる。
汎用的なVRトレーニングプラットフォーム
シリコンバレーに拠点を置くStrivrは2015年に創立されたVR技術を用いたトレーニング・プラットフォームをサービスとする企業だ。既に、米大手のスーパーマーケットチェーンのウォルマートやBMWなどでVRトレーニングの実績がある。
特にウォルマートでは2017年から積極的にVRトレーニングの導入を進めている。、17,000台以上のヘッドセットが導入され、140万人以上の従業員がVRトレーニングを受けており、トレーニングを受けた従業員のうち70%が高いパフォーマンスを発揮している。
トレーニング内容には、繁忙期となるブラックフライデーの擬似体験も含まれており、重要なイベント日に従業員を備えさせるのにも効果的だという。
またStrivrのサービスにはアメリカン・フットボールを始めとしたスポーツでのVRトレーニングもあり、ニューイングランド・ペイトリオッツをはじめとしたNFLのプロチームにもサービスを提供するなど幅広い分野でVRトレーニングが普及している。
3. XR医療
医療分野でも、XR技術の貢献が期待できる。例えば、医療従事者がXR技術を用いて、患部や臓器などの3Dモデルを活用することで、より精度の高い診断ができると期待されている。
また手術の計画作成やリハーサルにVRを用いることで、その精度の向上をすることができ、手術時にはARで患部の拡大画像を重ねて見えるようにするなど、XR技術を活用した医療現場の発展に貢献する研究も進められている。
患者側は、VRを通じて治療方法やケアプランを説明されることでより理解を深めることができる。また、リハビリ治療にVRを取り入れることで、効果的な治療が期待されている。
従来のリハビリ治療は、しばしば退屈で困難なものになりがちだったが、VRではスポーツやビデオゲームを題材にしたケアプランを提供することができ、患者の状態に合わせて日々のタスクを調整することも可能だ。さらに、VRの没入感は筋肉だけでなく認知力の向上にも役立つといわれており、これは神経回路の早期回復の効果も期待できる。
将来的には、病院に行き治療を受ける際にVRヘッドセットを装着するようなことも一般化するかもしれない。
VRによる手術リハーサルプラットフォーム
Surgical Theaterはロサンゼルスの医療VRベンチャー企業だ。Surgical TheaterはVR技術による外科手術のリハーサルプラットフォーム提供している。これは手術計画の作成に役立つだけでなく、患者も一緒にシミュレーションを体験することができ、VRシナリオを見ることで、その手術の過程や効果を共有することができる。
また、新型コロナウイルスの医療従事者向けにVRデータを無料で公開しており、ウィルスが肺にどのような影響を与えるかなどをVR空間上で、360°どの方向からでも見ることがきる。
Surgical TheaterのVRモデル。新型コロナウイルスが肺に与える影響を立体的に見ることができる
コロナ対策にも活躍する医療向けVRトレーニング
医療向けVRトレーニングは、新型コロナウイルスの対策にも役立っている。Shiftは医療機関向けのVRトレーニングサービスを提供しているオレゴン州のスタートアップ企業だ。彼らは、新型コロナウイルスの流行を受けて、新型コロナの医療従事者向けのVRトレーニングを無料で提供している。
Shiftによる新型コロナウイルス対策向けのVRトレーニング
VRでリハビリ治療をサポート
Neuro Rehab VRはマシン・ラーニングを取り入れたVR体験を通じてリハビリ治療を行うサービスを提供している。患者の状態やリハビリの進捗など様々なデータを分析し、トレーニング内容にフィードバックする。
そして患者に状況に合わせて、最適なトレーニングプランを提供できるという。そしてVR体験はゲーム的な楽しさをリハビリ治療にもたらすことができ、患者が治療を継続するモチベーションを保つ効果も期待されている。
Neuro Rehab VRのVRを用いたリハビリ治療
まとめ
2016年ごろは「Oculus Rift」や「PSVR」の登場などでAR/VRが話題になったが、ライフスタイルを変える変革はなかった。しかし、水面下ではXRで何が出来るの研究が進んでおり、AppleのARKitやGoogleのARCoreのようなスマートフォン向けのAR開発環境など、手軽にXR技術を試せる環境も整備され続けてきた。
そして、最近では手頃な価格のVRヘッドセットやスマートフォンのARアプリも次々と登場し、XRは徐々に身近になってきている。
また、ゲームやエンターテイメントだけでなく、より実用的なXRサービスも次々と開始されている。また、XR技術で必要な高速かつ膨大な通信が必要な点も、5Gネットワークにより解消されると言われている。著者の個人的な予想では、2021年にはXRが生活の一部になるようなイノベーションが起きるのではないかと期待している。
btraxでは、XRのような最新のテクノロジートレンドの動向を考慮してクライアントの方々と共にイノベーションを起こすべく、日々取り組んでいる。興味があるという方はお気軽に問い合わせを。
参考記事
- Where Companies Go Wrong with Learning and Development
- How VR is Transforming the Way We Train Associates
- Surgical Theater Responds to COVID-19 Pandemic with Free Remote 360° VR Services
- COVID-19 VR Training With Virus-Free Headsets
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