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結果に繋がる海外ユーザーテスティング 8つのプロセス
海外向けにプロダクトを展開するにあたり最も重要なプロセスの一つにユーザーテスティングが挙げられる。企画段階もしくは海外向けにローカライズを行う前の段階でターゲットとするユーザーのユーズや嗜好をしっかりと捉えておく事が出来れば正しいディレクション設定が可能になり、開発段階でのコスト削減とリリース後の成功率が格段に上がる。
その一方で、ユーザーテスト一つとっても、そのやり方ひとつで、正しいデータを獲得する事が出来なかったり、データに対しての間違った解釈をしてしまう危険性もある。今回はbtraxでの多くのテスティング経験から割り出された、成功を生み出す海外ユーザーテスティングに於ける8つのプロセスを紹介したい。
基本情報: フォーカスグループとユーザビリティテスティングの違い
日本語では”ユーザーテスティング”もしくは”ユーザーテスト”と呼ぶ事が多いが、厳密にはその中に、企画・コンセプト段階で行うべきフォーカスグループと、モックアップやプロトタイプが完成した時点で行うユーザビリティテスティングの二つが含まれる。
フォーカスグループ:
コンセプトや企画段階で行うテスト。ターゲット顧客のニーズや嗜好、生活習慣、デバイス保有率、及び競合他社商品の利用状況等、ユーザーからのアイディアをざっくばらんに話してもらう事で、戦略立案に必要となるバックグラウンド情報を手に入れ、企画全体の方向性を定める為に行う。
ユーザビリティテスティング:
デザインやプロトタイプが完成した段階でターゲットユーザーに見て、触って、使ってもらって、素直な感想をもらう為のテスティング。商品であれば試作品、Web/モバイルサービスであれば、モックアップやプロトタイプを利用する。その際にはユーザーに対して具体的なゴール設定を行い、それにかかる時間や、成功率、行ってみた感想と改善点等のアイディアを集計する。
それではこちらから実際のプロセスをご紹介:
1. テスター集め
テスティングプロセスのまず始めは、テストをしてもらえる人を集める事から始める。通常1テストにつき、5人から10人が目安。これよりも多くても少なくても良い結果が得られにくくなる。集めるテスターのプロフィールは、対象となるプロダクトによって最適化させる。例えば、老若男女多くのユーザーに使ってほしい場合は、性別と年齢に幅を持たせ、バランス良く構成させる。
逆に特定の層にフォーカスしたい場合は、年齢性別だけではなく、教育レベル、収入、生活パターンに至るまで、かなり限定する必要がある。特にアメリカでは、都心部と郊外では、すんでいる人のライフスタイルにかなり大きな開きがあるため、しっかりとターゲットに合致した構成のユーザー選定を行いたい。
Web系サービスのアーリーアダプターの声を聞きたい場合等はシリコンバレーやサンフランシスコが最適だが、一般大衆に受け入れられるサービスを望む場合は、郊外が望ましい。また、友達同士のユーザーを一つのテストに参加させるのは極力避ける。なれ合いが生じているので、正確なデータ収集の妨げになる。
2. テスト会場決め
テスター集めが完了したら、テストのスケジュールと会場を設定する。実はこの会場の場所と室内の構成でかなり結果に差が出る。まず覚えておかなければ行けないのは、交通の便が悪かったり、車が止めにくい場所が会場となった場合、当日になって実に多くの事前に予定していたテスターが来ないケースがあるという事。
また、場所が分かりにくい場合も、見つけられずに途中で断念される事もあるので、要注意。誰もが分かりやすく来やすい場所を選定する必要がある。また、室内はなるべく静かでディスカッションをしやすいクローズドスペースが望ましい。カフェ等でカジュアルに行う事も可能ではあるが、機密保持やノイズの面であまりおススメできない。そして、テスターはなるべく円になる形で座ってもらうのが良い。これはディスカッションを活発にする効果がある。
3. テストスケジュール
テストはなるべくテスターが来やすい時間帯に設定する必要がある。基本的には仕事や学校が終わる18時以降が一般的だが、アメリカの場合、ランチブレイクの際に外でのミーティングを行うケースも頻繁にあるので、ランチタイムに軽い昼食を振る舞いながら行うのも良い。
ちなみアメリカではシラフでも基本ざっくばらんなディスカッションが期待出来るので、お酒を振る舞う必要は無い。また、週末にテストを設定するのは止めた方がよい。多くの人々が週末モードになっており,参加者を集めるのが非常に困難になる。テストに費やす時間は60分から90分程が目安。これ以上長くなってしまうと集中力が途切れ、よい意見が出にくくなる。5分前スタート、5分前フィニッシュが基本。
4. 設問作り
どのような事柄をどのよう聞いて行くかによって、結果のクオリティに大きな差が生まれる。一般的には”テストデザイン”と呼ばれる、この設問作りにはかなり時間を費やし、テスターにとって答えやすく、かつ利用価値の高いデータ収集を可能にするのが目的。設問の数は8問から12問が基本で、一般的な質問からスタートし、徐々に具体的な質問に移行して行く。その際にはなるべくユーザー同士がディスカッションしやすい様に、複数の答えが出しやすい質問内容が良い。
また、意外に思われるかもしれないが、自由回答の方が選択式の質問よりも精度の高い答えや、新たなアイディアを得られるケースが多い。選択式にしてしまうとその中にベストな答えがない場合、どうしても”強いて言うなら”となってしまい、回答データにブレが生じてしまう。ユーザビリティテストの場合は、一般的な設問に加え、”xxをxxしてください”等の具体的なゴール設定を行い、ユーザーの反応やつぶやきを見る事もある。
5. 司会進行
ユーザーテストを行うにあたり恐らく最も重要な存在になるのが、司会進行を行う人である。どんなに優れた設問を用意し、ターゲットにあうユーザーを集めても、当日の進行がスムーズでディスカッションを喚起出来るか否かでテストの結果が大きく左右される。この”モデレーター”と呼ばれる進行係は、テスターに安心感をあたえ、緊張させる事無く、ごく正直な感想をざっくばらんに言ってもらえる様に最新の注意を払う必要がある。
また、かなりの頻度で発言の量に偏りが生じ、一部の人だけが発言しまくるケースになりがちなので、複数のテスターからバランス良くアイディアを受け取り、活発な議論をさせるのも重要。もちろんモデレーターがしゃべりまくるのは言語同断。8割聞き手、2割進行のバランスが望ましい。良いモデレーターになるには、必然的にかなり経験を積む必要がある。
6. テスト内容の記録
必ずテスト内容はその場で記録に取っておく事。ベストなのはビデオでテストの様子を録画する事だが、テスターによっては嫌がったり、同意書にサインをもらう必要があったりするので多少ハードルが高くなる。その一方で、音声録音はほぼスタンダードとして認識されているので、スマートフォン等での録音をオススメしたい。それと同時に、テスト中気になるポイントや、後半にまとめてもう一度聞きたい内容等を随時ホワイトボードやスクリーンに箇条書きとして書き留めておく。
この場合、司会進行の他に1-2人記録係の参加が必要とされる。ここで気をつけたいのは、あまりスタッフの数を増やしすぎると、テスターが緊張してしまいスムーズな進行の妨げになる。スタッフの数はテスターの数の半分以下が目安となる。
7. テスト結果をまとめる
テストを行った後、その内容をドキュメントにまとめる。その際には必ずテストデータに対して主観を全く入れない様にする事が重要。少しでも客観性が失われた時点で、データの価値が下がってしまう。サマリードキュメントの内容はそれぞれのテスターの性別、年齢、職業等のプロフィールとそれぞれの設問に対するユーザー毎の答え。そして、全体の答えを総合して、”共通した意見”をまとめる。そして、そのドキュメントを元に、上司やクライアントに向けてのレポートを作成する。レポートはなるべくシンプルで伝わりやすいプレゼン形式が良い。
8. テスト結果を分析する
上記のドキュメントとレポートがまとまったら、その結果を分析する。ユーザーから発せられた答えに対して、その”行間”を読み、彼らが本当に意としている事や、より良いアイディアを導きだせるような分析結果が必要になる。この分析を行うときも忘れてはならないのが客観性。アナリストの主観が入ってしまう事は避けたい。
また、ユーザーの声をそのまま鵜呑みにするのも危険である。フォードモータース創設者のヘンリー・フォードの発言: “ユーザーの声をそのまま商品にしたとしたら、我が社はとても早い馬を作っていただろう”の通り、ユーザーの声を分析して、彼らの想像を超える商品やサービスの開発に結びつけるのがユーザーテストの最大の目的である。
最後に: 結果につながるテストにするために
以上、ユーザーテスティングの流れを見てきたが、最も意識すべきことは、”ユーザーを緊張させず、本音を引き出す環境づくり”と、”客観性を保った分析”だと考えている。特にサービスを海外展開する場合は、ユーザーのニーズも違えば、こちらが”欲しい言葉”と”ユーザーが実際に感じていること”が全く違う時もある。
そういったユーザーの声の違いに真摯に耳を傾け、十分な分析を行うこと。そしてユーザーテスティング後は”最大10のアクションプランに絞る”といった、テスト内容をしっかり反映させる工夫も、結果につなげるテストにするためには欠かせないと感じている。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
ちなみに現在btraxでは、海外ユーザー向けのテスティングサービスを提供しています。ご興味のある方はこちらからご連絡下さい。
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