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ウーバーはどのように人工知能テクノロジーを活用しているのか
先日の記事、Airbnbはどのように人工知能を活用しているのか? では、テクノロジー企業という印象が低い、Airbnbの人工知能の利用の取り組みをご紹介した。
今回はAirbnbと同様に、シェアリングエコノミーを代表する企業であるウーバーの取り組みをご紹介しようと思う。日本では法律の問題上、アメリカと同じビジネスの展開が難しいので、実際にどのようなサービスを提供されているかがあまり知られていない。
また、ただのタクシー会社のように見えるため、テクノロジー企業という印象が薄いかもしれない。 しかし、実態は多くのエンジニアを抱えるテクノロジー企業である。先月(2016年8月)には、自動運転タクシーの試験運用を始めた。今回は、ウーバーが、代表的サービスのウーバープールにおいてどのようにテクノロジーを活用しているかをご紹介する。
世界各地で使われるウーバープール
ウーバーは、2014年からウーバープールという相乗りサービスを提供している。同じ方向に向かう人たちが相乗りさせることで、料金が低価格で抑えられる仕組みである。つまり見知らぬ人が途中で自分の車に乗り込んでくるのだ。 この驚くべき仕組みは、シリコンバレーやパリなどの世界各国で使われている。
ウーバーのコファウンダーのTravis Kalanickは、TED2016にて、ウーバープールの成果をプレゼンテーションしている。ロサンゼルスでは、最初の8ヶ月間で1260万キロ(790万マイル)の自動車の移動を削減した。
サンフランシスコでは、市街地での交通量を減らすことができ、より少ない車で、より多くの人を輸送できるようになったと述べている。ウーバープールは、世界中の都市部の交通問題を解決するポテンシャルがあるのだ。
日本ではウーバーはまだまだハイヤーの配車サービスで、高価格なイメージが強いようだが、誰もが使う安価なサービスとなっている。もともとタクシーよりも数十%以上安かったのだが、ウーバープールを使えばさらに安くなる。数キロの移動が5ドル程度で済む場合もあり、ウーバープールでは2人まで乗車できるため、バスとほとんど変わらない。短距離であれば、タクシーやバスを使う気にならない。
参考: Uber’s plan to get more people into fewer cars | TED Talk
ウーバープールに必要な経路検索と所要時間予測
それでは、ウーバープールはどのようなテクノロジーに支えられているのだろうか。ウーバープールは、通常の(相乗りでない)ウーバーと比べると、はるかに複雑である。 どのユーザーとどのユーザーを相乗りさせるかを瞬時に算出する必要がある。このために必要なのが高速で最適な経路を算出し、かつ正確に到着時間の予測を行うことである。
都市部での自動車の移動時間は、距離以上に、混雑状況に左右させる場合が多く、混雑状況はリアルタイムに変化していく。もし最適な経路算出と正確な時間予測が高速で実現できないならば、ウーバープールには以下のような問題が起こる。
- 運転手とのマッチングに時間がかかる
- 前の車が遅れて、いつまで経ってもウーバーがこないことが頻繁に起こる
- 通常のウーバーよりも所要時間が長くなる
しかし、サンフランシスコのような密集した都市であっても、ウーバープールは現在地と目的地を入力してから10秒程度で運転手とマッチングし、最初に表示された到着予定時間とほぼ同じ時刻に到着する。呼び出してから自分の場所に到着するまでの時間が少し長いことと、途中で別の乗客を乗り降りさせる分時間がかかる以外は、トラブルやストレスを感じる機会は多くない。このような優れたユーザー体験は、ウーバーが自ら開発した経路検索と、所要時間予測技術が生み出している。
独自エンジン Gurafu
ウーバーは以前は、OSRM(Open Source Routing Machine)を含むいくつかの経路検索エンジンを用いて経路と到着予想時間を算出していた。ウーバープールなどの新規サービスを提供するにつれて、より高速で、より正確な、ウーバーの性質や利用状況に特化したエンジンが必要となった。そこで開発されたのがGurafuである。 ウーバーは技術ブログの中で、Gurafuによってこれまでよりも高い経路予測が可能になったとし、従来の方法との比較図を掲載している。
リアルタイムの交通状況を加味した最適な経路検索と、到着予測時間の算出は、高度なアルゴリズムとデータ分析が必要になる。より優れた顧客体験、快適な移動を実現するために、Gurafuはウーバーのサービスを支えているのである。
ウーバーはタクシー会社ではなく、テクノロジーカンパニー
ウーバーは、一見すると高度なテクノロジーとは無縁のように思えるが、実態はIT企業である。もちろん、美しいアプリや、Webサイトを提供しているものの、ビッグデータ解析や人工知能の活用の部分に注目すべきではないだろうか。つまり、ユーザーからは直接見えない部分で、テクノロジーが活用されており、サービスの品質を向上させている。ウーバーは、他にも以下のようなテクノロジー活用を行っている。
- 需給バランスに応じて価格がリアルタイムで変わるシステム
- 街中のUberの運行状況のリアルタイムのビジュアライズ化
- 不正利用の検出
全ての企業はIT企業に
弊社の記事、”デジタルワールド」となる未来に向かって「破壊的イノベーション」を”の中でご紹介したように、今後は全ての企業がIT企業になり、テクノロジーをどう活用するかが、企業の運命を左右するようになる。
自分たちをIT企業と捉え、テクノロジーを活用してユーザー体験を向上させることができるかどうかが、大きな分かれ目になるだろう。「自分たちのビジネスはテクノロジーとは無縁、難しいことはよく分からない」と考えて、時代遅れになるか、いち早く転換できるかが、大きな分かれ道になるのではないだろうか。
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