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オンラインブランドのソーシャルメディア活用事例 ー 成功の秘訣はエンゲージメント
従来型の広告の力が弱まっていく中、ECサイトにおけるソーシャルメディアマーケティングはより重要性を増している。企業はユニークなコンテンツを考えたりインフルエンサーを活用したりするなど様々な努力をしている。
特に実店舗を持たないオンラインのみのショップにとってソーシャルメディアは顧客と関わることのできる重要なプラットフォームだ。今回はアメリカでのオンラインショップにおけるソーシャルメディアマーケティングの成功事例をいくつか紹介したい。
Facebook成功事例:Nomad Goods
まずはFacebookを活用し認知度、ローヤリティを高めているNomad Goodsから。Nomad Goodsはポータブルチャージャーやケーブル、充電のできるウォレットやスマートウォッチのベルトなどスタイリッシュなテック製品を売るオンラインショップである。
サイトのトラフィックを見てみると、全体のアクセスのうち23%がソーシャルメディア経由になっている。このうち89%がFacebookから、次に多いのはYoutubeだ。
この数字がどれほど大きいかは、アメリカの家電量販店で最大規模を誇るBestBuyのソーシャルメディアのトラフィックを見てみるとわかる。Best Buyへのアクセスのうちソーシャルメディア経由はわずか3%だ。Nomad GoodsのFacebookマーケティングは成功と呼べるだろう。その秘訣「フォロワーをワクワクさせる」ことだ。
ブランドイメージを写真で表現
まず目を引くのが投稿されているスタイリッシュな製品の写真だ。製品そのものもおしゃれだが、Nomadの製品であるレザーウォレットが引き立つような革靴、カメラなどと一緒に撮るなど写真も工夫されている。メンズ雑誌の一コマのような大人の男性をイメージさせる写真を投稿することでスタイリッシュなブランドイメージを作ることができる。
ブランドテーマに関連した情報をシェア
また、彼らは投稿を通じてブランドテーマを伝えることにも長けている。彼らはDesigned for adventureというテーマを掲げているのだが、アドベンチャーに関連した情報や写真を発信している。
Facebook上では、ハイキングスポットが紹介されたウェブサイトのリンクやキャンプイベントの情報、ユニークなキャンピングカーの写真をシェアすることで、ブランドテーマに共感するカスタマーのエンゲージメントを高めることに成功している。
フォロワーがコメントしたくなるポスト
さらに、フォロワーの興味として考えられるテック系ニュースにも反応し、彼らを「参加」させるようなポストをしている。たとえばAppleのWWIC(Worldwide Developers Conference)後には、”What new features do you think the iPhone 8 will have?”(iPhone8の新機能を予測しよう)とポスト。120の「いいね」、60近くのコメントを集めた。ここでもNomadは、コメントへ頻繁に返信するなどして議論を活性化させることに成功している。
このようにNomad GoodsのFacebookページを分析してみると、Facebookページが単なる製品のプロモーションで終わっていないことに気づく。フォロワーや自社製品のファンを分析し、彼らの興味や自社製品のテーマに沿ったトピックの情報を提供することでフォロワーを常にワクワクさせる。時にはフォロワーが気になっているであろう内容の質問を投げかけ議論する。
ファンページというより、コミュニティとして成り立っているのだ。毎日見るFacebookのフィード。商品の紹介だけであれば読み流してしまうが、Nomad Goodsのような工夫があればフォロワーの”読み飛ばし”を避けられるかもしれない。
Instagram成功事例:Fit Girls
ソーシャルメディアマーケティングは自社メディアへの誘導が大きな目的だ。ビューアーはFacebookから誘導されてくることが多い。しかし、Instagramからのトラフィックが60%近くあるウェブサイトがある。それはダイエットガイド、ダイエット食のレシピやエクササイズマニュアルなどををオンラインで販売するFit Girlsだ。
使うハッシュタグを指定してコミュニティを構築
#28DayJumpstart(Fit girlsのメインダイエットプログラム名)など使うべきハッシュタグをFit Girls側が決めて、これに沿って投稿するようユーザーに広めている。現在#28DayJumpStartが付いたポストは130万もあり、これらのハッシュタグをクリックするとFitgirlsで頑張っている仲間のリアルな姿を見ることができる。
Youtube ビデオ上では、Fit GirlsのあるユーザーのThe best part is the community girl you need who are so supportive they cheer you on they’re always there for you, and it’s amazing.(FitGirlsを使って一番良かったのは、私のダイエットをいつも応援してくれてそばで見守っていてくれたFit Girlsコミュニティの仲間だ。)というコメントが紹介されている。ダイエットは続けるのが大変だ。でも、同じく努力し、頑張った結果をシェアできる仲間がいることは間違いなくモチベーション維持に役立つだろう。
匿名性のあるInstagramだからこその気軽さ
ジムでダイエットに励む人たちは、知り合いでもない限り言葉をかわすことは珍しいだろう。実店舗を持たないブランドはユーザーとの関りの場が少なくなりエンゲージすることが難しい。
しかし、Fit Girlsはオンラインの気軽さ、インスタグラムの匿名性を逆手に取りオフライン以上の、ユーザーが愛着を持つ(思い入れの深い)コミュニティを構築することに成功した。
今までInstagramは商品の写真を載せる等あくまで宣伝として使われてきた。しかしFit Girlsは製品の使い方のところにPost to Instagram(インスタグラムに写真をポストしよう)と明記。Instagramに写真をポストし仲間と繋がり助け合うことでモチベーションを維持するというサイクル(エコシステム)を作りユーザーを誘導、それが見事機能した。ソーシャルメディアの双方向性を十二分に活かした例だ。インスタグラムがきっかけで人とつながることが当たり前のミレニアル世代。ハッシュタグが生むコミュニティは他にも需要がありそうだ。
Youtube成功事例:THINX
次に紹介したいのは、THINXという次世代型生理用ショーツのブランドだ。なんとこのショーツ、ナプキンなどの生理用品を使うことなくこのショーツがすべて経血を吸い取ってくれるというすぐれもの。従来のサニタリーショーツとは異なりデザイン性にもこだわっている。
斬新な動画で性能をアピール
THINXのウェブサイトへのトラフィックの実に50パーセントがYoutube, Facebook等のソーシャルメディアからだ。あるTHINXの動画の中では生理中の女性がTHINXを履き(ナプキンなどの生理用品も着けずに)白い台の上にすわる。食事や読書をした後に彼女が立ち上がっても台には赤いシミなどはなくTHINXの吸収力の高さを映像で伝えている。この動画は120万ビューを記録しより多くの人にTHINXが知られることになった。
また、別の動画ではあらゆる動きをするダンサーがthinxを着けて踊り、どんな動きにも対応するという機能性の高さを伝えている。
インフルエンサーがユーザーの気持ちを代弁
https://www.youtube.com/watch?v=U99VrXSSiWE
日本の若者と同様、アメリカのミレニアル世代にとっても買い物をする際に口コミは重要な情報源だ。THINXはインフルエンサーを上手に活用した。Youtube上で日常的に動画をアップロードし大きな影響力を持つユーチューバーにTHINXを試してもらい、思ったことをそのまま彼女たちのチャンネルで伝えてもらう。
実際に動画を見てみると、まるで友達の感想を聞いているようだ。生理用品の代わりになるなんて、すごく厚くて着け心地の悪いものなんじゃないの?本当に吸収してくれるの?といった一般消費者が持つであろう疑問や不安を代弁してくれるからだろうか、彼女たちをとても身近に感じさせると共にTHINXを試してみたいという気持ちにさせるものになっている。
女性を引き付ける社会貢献要素
THINXの社会貢献要素も女性の支持を集める要因だ。途上国では十分な生理用品が手に入らないため、生理の間女の子たちは学校を休まなければならないことが珍しくないという。
そこで、THINXは以下の仕組みを生み出した。下着を1枚買うと途上国に住む女の子たちに1パックの再利用可能な生理用品が寄付されるのだ。Sometimes when you change your underwear, you end up changing the world (使う下着を変えることで世界を変えられる)で終わる、この制度を説明したYoutube動画は約86万viewを集めた。
THINXの成功の秘訣は、ミレニアル世代の女性の共感を集めたことではないだろうか。それは、若い層が好むようなヒップでミニマリズムな背景や衣装を用いるなど、彼らの動画が細部まで細かくこだわった作りになっているだけでなく、動画のなかで従来の生理用品のコマーシャルが現実離れしていることを指摘したことが大きいと考えられる。
実際にYoutubeのコメント欄はI love this ad, it’s so much better and more real than regular period commercials(この動画は従来の生理用品のコマーシャルよりずっとリアルでずっといい。)I need this now! (今すぐ欲しい!)といったように、ポジティブな反応で溢れている。
THINXはターゲットであるミレニアル世代が不満に思っていること、従来の生理用品の宣伝への違和感を代弁したことで共感を生んだ。日本でもそういったギャップに注目しメッセージ性のある動画を作ることでブランドイメージをアップデートできるかもしれない。
まとめ
ここに挙げた3つのブランドのソーシャルメディア戦略に共通するのは、「ユーザーをうまく巻き込んでいること」だ。ソーシャルメディアのアカウントがあるだけではもう十分ではない。
フォロワーを分析し効果的なコンテンツでユーザーを巻き込んでいけるブランドが生き残っていくのではないだろうか。日本企業は作る製品は素晴らしいが、クオリティだけを強みに、消費者に”見つけてもらう”のでは世界中の競合に負けてしまう。
あなたの会社はソーシャルメディアを100%活用できているだろうか。とりあえずすべてのソーシャルチャネルでアカウントを作り、各チャネルに同じようなコンテンツを漫然とポストしていないだろうか。ここで紹介した3つの例は自社製品に合った特徴のソーシャルメディアを選んで使っている。
各チャネルの強みを活かし、フォロワーの属性や興味を分析し、彼らに響くようなポストをしている。見てもらえるかわからない広告に高額な予算を充てるよりも、今回挙げた例のようにユーザーを巻き込んだソーシャルメディアマーケティングをすることがたくさんあるオンラインショップの中で埋もれない秘訣なのかもしれない。
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