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デザイナーがコロナ禍にサンフランシスコに行って感じたこと
筆者は普段、btraxの日本オフィスで働くUI/UXデザイナーだ。本社がサンフランシスコにあるにもかかわらず、自分はアメリカに足を踏み入れたことがなかったのだが、今回コロナ禍でのサンフランシスコへの出張をすることになった。
初渡米ということもあり、サンフランシスコの街の中にあるサービスの便利さに驚かされることが多かった。また、コロナに対する対応も素晴らしく、あまり不安を感じずに生活することができた。
しかし、中には日本と比べると劣っている部分もあった。そこを補おうとしているためにサンフランシスコ発のサービスはUXのクオリティが高いのではないかと思わせるポイントもいくつかあった。
この記事ではそんな筆者がアメリカで3ヶ月ほど生活してみて気づいたことや、学びを書いていく。
安心感と気軽さがあるワクチン接種
筆者はワクチンを打たずにPCR検査のみでアメリカに入国したため、ワクチンはアメリカで接種しようと考えていたが、ここで驚きがあった。
まず、筆者のような外国人であってもワクチン接種のための病院の予約は必要ない。そもそもTargetというアメリカのスーパーの中に併設されているCVS(薬局)のレジの横がワクチンの接種会場であり、とてもカジュアルな感じだった。
そこに出向き、ワクチン接種をしたい旨を伝えるだけで、すぐにワクチンを用意してくれる。また、日本外でのワクチン接種ということで不安もあったが、打つ前に確認するべき事項が書かれた書類が様々な言語に対応したものが用意されており、とてもスピーディーに安心して受けることができた。
こういった、アメリカ人だけにではなく、アメリカにいる人全てに対してコロナを収束させるための施策を平等に行うことは、アメリカ国民にとっても良いことだと思った。また、そのためにワクチン接種を気軽で誰にでも安心してできるような環境づくりの方法は、さまざまな人種が住まうアメリカならではの合理的な施策だと感じた。
PCR検査の気軽さ
PCR検査もとてもスムーズであった。筆者が利用したのはcarbon healthという企業のものだ。空き地のような場所にテントを張っただけの最低限の施設ではあるが、検査会場がいくつかあり、最寄りの検査会場を探すのもホームページからすぐなので会場選びには困らなかったし、すぐに行くことができた。
検査自体も無料で、予約も不必要。必要な情報も住所と名前、生年月日、結果を受け取るためのメールアドレスだけ。特別な準備も必要なかった。
日本で検査をしようとした際にはまず検査ができる病院の情報が1つにまとまっていないので、検査を実施している病院探しから始まり、予約が必須で予約時間に行ってもそこそこ時間が取られるということがあったがそんなストレスがここでは感じなかった。
そのため、検査へ行くために予定を立てる必要が無くフラッと行って検査ができるのはとてもユーザーにとってストレスフリーと感じ検査へ行くことの積極性に大きく貢献していると思った。
移動手段の選択肢が多い
サンフランシスコは坂が多く徒歩での移動は大変不便である。かといって電車やバスは遅れることが当たり前なので基本移動はUberか自転車、電動スクーターなどのマイクロモビリティに限られていた(自家用車は持っていなかった)。
電動スクーターは日本では道路交通法などが厳しく、乗ることを躊躇っていたがサンフランシスコではそこのルールが日本に比べて規制が少ないこともあり、大変重宝した。
そもそもアメリカの道には、自転車と電動スクーター用の道路が、自動車道路とは別にほぼ必ずある。そのため、歩行者や車を気にすることなくスムーズかつ安全に移動ができた。
また、筆者はUberの電動スクーターのサービスを利用していた。返却場所は自由なため、返却場所を探す手間がなく、借りるときのハードルが低いと感じた。また、借りる際は近くに置かれているスクーターがマップ上に表示されるため、一番近くのものを選ぶだけだった。
ちなみに、これらシェアサイクルサービスの始まりとも言える「Bird」について調べると、サービスをサンフランシスコ市の許可を待たずして展開したらしい。サンフランシスコ市はそのサービスの便利さから、法律に影響があることに関しても柔軟になおかつ迅速に対応していったとのこと。
市の許可を待たずしてサービスをローンチさせることは、日本で生まれ育った筆者からすれば、考えられないことであると思ったが、生活をする上で便利であるため、結果的に市も協力したというエピソードがとてもスタートアップの聖地らしいと思った。
逆にわかった日本のすごいところ
ここまでで、サンフランシスコの便利だった点を書いてきたが、逆に、生活に慣れていくにつれ、日本の方が優れている点も見えてきた。
宅配がちゃんと届く
筆者は出張中にUSのメルカリを利用して商品を出品していた。実際に商品が売れたため、バーコードを印刷して商品に貼り付けUPS(配達業者)経由で発送した。
すると後日、商品が届かないと購入者からクレームの連絡が来た。アプリを確認すると、発送完了のお知らせは受け取っているが、肝心の商品がUPSの倉庫から動いていないと出るのだ。
そこでUPSに問い合わせたが、そもそも商品が倉庫にないとのこと。後にネットで調べるとアメリカでは宅配業者や倉庫の労働者がお金になる商品を盗んだりすることがあるらしく、今回の場合もこの可能性が高いということで話は終わった。
この件で思ったのが日本での商品が予定日にしっかり届く(しかも配達日の指定もできる)というのは、とてもすごいことである、ということだ。
接客サービスの質の平均が高い
日本における飲食店などのサービスは、クオリティが高く、なおかつ店員によってばらつきがあることも比較的少なく、一定の高水準であると感じた。一方、サンフランシスコでは、どんな人に接客してもらうかでサービスの品質が大きく変わると思った。
特にファーストフード店では顕著で、日本の場合はどんな人でも丁寧に接客してくれる。個人的には日本のマックの接客は丁寧すぎると感じるほどに。
しかし、サンフランシスコでは店員がぶっきらぼうなことがある。筆者がマクドナルドに行った際は、どうやら店員の機嫌が悪かったらしく、あからさまにめんどくさそうに対応されたことが記憶に強く残っている。
また、Uber eatsを使った際にもなかなか商品を届けてくれない人もいた。
そういった経験から、サンフランシスコではどんな人に配達や接客がされるのかが結構気になったゆえにUber eatsなどの配達員へのレビューはサンフランシスコでは比較的重要な要素だということに気づいた。
アメリカ生活から学んだこと
特に筆者はサンフランシスコでの生活で、現地で暮らしている人がサービスに合わせるというよりは、サービスが暮らしている人のライフスタイルに合わせていると感じる場面が多いと感じた。
これは一見当たり前のことをいっているようだが日本では逆に個人の都合を後回しに頑張ってサービスを使いこなそうとしている、もしくはサービスのやり方に従おうとしていることが多いのではないだろうか。
ユーザー中心設計
コロナのワクチン接種では、アメリカの人種が多いという特性に合わせ、ワクチン接種時に不安を与えないような施策があるだけではなく、摂取会場にいったら必要なものは身分証明書くらいですぐにワクチンを打ってくれる。
日本でのワクチン摂取までのフローを見るとまず摂取券が必要だったり、会場も住んでる地域によって異なる。
これを見るとどちらかというとワクチンを提供する側の都合をユーザーの都合より優先しているように見える(日本はワクチンをアメリカから買っているため仕方ないことなのかもしれないが)。
人に頼らずサービスで体験の質をあげる
他にも改めて日本人は真面目であるとサンフランシスコで宅配や接客サービスを受けて感じた。反対に日本に比べて「不真面目」な人が多いサンフランシスコで良いUXを提供しようとすると、誰にでも完全に同じ機能を提供できるアプリなどの機械に頼るべきであるため、UXのクオリティを上げることは日本以上に重要視しているのではないだろうかとも考えた。
バイアスを捨てることがデザイナーには重要と考える
これまで自分が日本国内に留まっていた時は「ユーザーは皆真面目である」という暗黙の了解があった上でサービスのデザインを行っていたため、デザイナーの理想をユーザーに押し付けていた面があったのではないかとこの出張を通じ強く反省と共に感じた。
また、優れたUXデザインや人間中心設計をすることとはユーザーの歩く道をデザイナーが決めるのでなく、ユーザーが歩いた道をデザイナーが後から整えるくらいのほうがいいのかもしれないとも思った。
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