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D2Cブランド拡大の秘策!小売版シェアスペース「コリテール」のメリットと実例
※この記事は2021年1月に最新の情報に更新されました。
昨今、AmazonやShopify、ソーシャルメディアなどオンラインで商品を売るビジネスのためのツールが充実し、D2C(Direct to Consumer)をはじめ多くのデジタルネイティブブランドが勢いを増している。
そしてこれらのデジタルブランドはオンラインでのビジネスがある程度軌道に乗り始めると、オフライン・実店舗にも進出をする。実際、AWAY、Everlane、Warby Parkerなど多くのD2Cブランドが店舗拡大をしている。
こういったスタートアップD2Cは何百万ドルもの資金調達に成功し自社店舗を拡大させている。一方でまだ彼らほど大きくないスタートアップやブランドの間では、小売版コワーキングスペースの”コリテール” (Co-Retailing)と言われる実店舗展開方法が広がり始めている。
そもそも「コリテール」とは
コリテールとは、お店の一部をブランドが間借りして商品を販売する、いわば「実店舗のシェアスペース」だ。
より気軽にオフライン販売を開始して、リアルなユーザーのフィードバックを素早く得られるアジャイル型商品開発、マーケティングを行うのに適している。
より気軽にオフライン販売を始めることができることに加え、物理的に店舗を構える必要性がなくなり、お店の家賃コストを通常の半分以下に抑えることが可能になる。
そこで今回は
1)デジタルネイティブなブランドがEコマースサイトに加えて実店舗で販売をしていくことのメリット
2)小売版シェアリングエコノミーとも言える実店舗間借りサービスを行っているスタートアップ
を紹介する。
小売ブランドがコリテールするメリットとは
実店舗のシェアリングを行うコリテールは、モノを販売するブランドに限られるが、そのメリットは大いにある。特にスタートアップやスタートアップ的な動きを求める組織にとって、特に効果的と考えられる。主なメリットは以下の3点だ。
- コストリスクが低い
- スピード感のある商品開発が可能
- 深みのあるファン構築・コミュニティ形成が可能
1に関しては、特に多くのブランドが進出したいと考える都市部ではメリットが顕著になるのではないだろうか。自前でやろうとすると、実店舗出店先にしたい土地・物件のリサーチから契約、内装、オペレーションの準備など非常に多くの労力とコストがかかる。
コリテールの場合はコリテール運営スタートアップのベネフィットを最大に生かして出店することが可能。テスト的に行えるので、たとえ実店舗での反応がイマイチでも引き下がって改善に戻るというシフト変更もしやすいのである。
これは2のスピード感にも通じる。サンクコストになる部分を最低限にすることで、始めやすい、終了しやすいという意思決定も気軽に行える。
最後に、コリテールの実店舗を通して得られるリアルな人との繋がりが得られる。今回紹介するコリテールスタートアップはどこも一貫したミッションに基づいたコミュニティ形成を行っており、これに合致した小売ブランドが集まることでさらに強いネットワークが広がっていくのである。
なかなかオンライン上では実感しづらい繋がりの強さだったり、ブランド同士、ユーザー同士の横のつながりが増えていったりと、コリテールにしかできない点でもある。
コリテールスタートアップ紹介
アメリカ都市部を中心に、コリテールのサービスを行うスタートアップが増えてきている。それぞれ扱う商品やコリテールが作りだすコミュニティに異なる特徴があることがわかる。
今回はさまざまな特徴を持ったコリテールスタートアップを3つ紹介する。
1. コワーキングスペースのWe Companyが運営:WeMRKT / Made by We
WeMRKTはWeWorkの中にあるWeWorkの小売店である。現在はニューヨークでパイロット営業をしているが、次の数年のうちにこのコンセプトを500のWeWorkオフィスに広げる予定だという(さらにeコマースも行う予定)。
基本的にはWeWorkに登録しているメンバーがお店の棚を間借りすることができるようになっているが、選考を通過する必要がある。
お店で置かれている商品の主なカテゴリーは健康的なスナックだったりオフィス文房具などだという。さらにWeMRKTで販売権利を獲得したスナックブランドは、WeWorkがパートナーシップを結ぶSnackNation(お菓子のサブスクリプションサービス)を通して提供されるといった新たなチャンスもあるのだ。
またWe Companyは会員でなくても誰でも使えるコワーキングスペースとしてMade by Weもオープンした。
WeWork会員とそうでない人をつなぐという目的がある。オフィス内にはカフェやショップもあり、もちろんWeWorkメンバーが作った商品やパートナーブランドのコーヒーやお茶、ソフトドリンク、食事、スナックなど限定で販売している。
こちらもまだニューヨークに1店舗しかないが、お店の部分は一般公開もされているのでより多くの人の目に触れる機会がある。
世界の起業家からなるWe Companyのコミュニティベネフィットを十二分に発揮している例と言える。
We Companyのこうした取り組みはWeWorkの登録者に対するベネフィットを増やすことが目的だという。例えば最近ではジムやコーティングに関する教育部門にもビジネスの幅を広げている。
コリテールのサービスは、世界中の起業家が集うコミュニティをもつWe Companyならではの強みを生かしたメリットが非常に高い。例えば新商品の開発をチームメンバーだけで試すのではなく、WeMRKTの選考試験を受け、実際に販売することで、より質の高いフィードバックを得られるのだ。このようなプロセスを簡単に、効率よくできるようになるのがまさにWeMRKTのコンセプトだ。
さらにここでの販売成果が、WeWork会員やパートナーとの繋がりを生んでいくというサイクルがある。
2. セリーナ・ウィリアムズともコラボ:Neighborhood Goods
Neighborhood Goodsは厳選したブランドを扱う、新しいタイプの実店舗型デパート。第1号店はテキサスにあるが、最近880万ドルの資金調達に成功し、2019年にはニューヨークに第2店舗目をオープンする予定の注目次世代型コリテールだ。
彼らはブランディングやコンセプト、商品が優れているものを選び抜いて販売している。また、商品の販売だけでなく、同じようなブランドを支持する人たちが集まって買い物や食事して学び合えるようなコミュニティでもあるという。
また、Neighborhood Goodsはプロテニスプレーヤーのセリーナウィリアムズが手がけるアパレルブランド、Serenaともパートナーシップを組み、販売をしている。
このブランドは、プロテニスプレーヤーであり、起業家であり、母親である彼女が、完璧を目指すのではなく、自分の持っている個性を大切にできる・自信に変えられるようなアパレル商品の提供をしている。
彼女はスピーカーとしてもNeighborhood Goodに訪れたことがあり、彼女のファンやブランドを支持するユーザーとのがエンゲージを高める場となった。
他にもスキン・ヘルスケアD2CのHimsやHers、コンタクトレンズD2CのHubbleなども販売されている。Himsは男性の脱毛や性器不全などの悩みを解決するための商品を販売する。HersはHimsから生まれたブランドで、女性の髪、肌、性などに関する商品を販売する、どちらとも勢いのあるD2Cブランドだ。
どのD2Cも実店舗をまだ持っていない。Neighborhood Goodsでの販売は期間限定のようなので、試験的に実店舗展開をして、反応を見ているのだろう。
3. フェミニストでポップなコリテール:Bulletin
2015年創業のBulletinはフェミニストとして知られる、Yコンビネーター出身の小売スタートアップだ。実店舗の間借りサービスをマンハッタンやブルックリンなど3店舗で行っている。今後も店舗数を拡大していく予定だ。
3店舗目であるニューヨーク、ユニオンスクエアの旗艦店ではオープン当初、2,000弱のブランドからBulletinで販売をしたいという依頼があったという、非常に勢いのあるコリテールなのだ。
Bulletinは女性起業家による、主にデジタルから生まれたブランドの商品をキュレートして扱う。その多くのブランドは女性の意思表示に対するミッションをあげているところが多く、そのターゲットユーザーもインスタグラムなどで政治に関することや自分の主張を表すようなミレニアル世代と言える。
実際に取り扱う商品は女性向けのアパレルやアクセサリーなど。ユーモアがあり、少し物議をかもすようなものが多い。
Bulletinはコリテールであると共に、テックスタートアップでもあり、実店舗販売に関する分析ソフトウェアも提供を開始している。在庫や売上管理はもちろん、Bulletinの店舗スタッフが実際にお客さんから聞いたフィードバックや彼らの様子も共有しているという。今までの販売代理店ではなかった透明性と、実店舗の販売についてもオンライン同様にデータ化し、提供しているのだ。
さらにBulletinは女性起業家や女性のセルフブランディングなどに関するイベントも行っており、商品販売にとどまらない、同じ思考をもつ女性たちのコミュニティ形成を行っている。
まとめ:スタートアップの性質にあったコリテールという新たなブランド拡大方法
コリテールを通した販売方法は、ミッションが明確でスピード感のあるビジネス拡大を狙ったブランドにとって非常に有効であると考えられる。
出来るだけ低リスクで素早く展開し、質の良いフィードバックを得て商品開発に役立てながらファンとの関係を築くことが期待できる。コリテールによって得られることは新たな販売チャネルとしての機能だけでないのだ。
ブランド拡大の一つの手段としてコリテールへの展開を検討してみてはいかがだろうか。
btraxではユーザーのインサイトに基づいたブランドのグローバル進出をサポートしている。サンフランシスコのアーリーアダプターを中心としたプロダクトマーケットフィットの仮説・検証からウェブサイトのデザインと構築、新規顧客獲得など一貫したマーケティング戦略立案を行っているので、ご興味のある方はぜひお気軽にお問い合わせを。
参考:
・Retail startup Bulletin is giving brands new tools to manage their in-store presence
・Feminist startup Bulletin is reinventing brick and mortar retail
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