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Facebook, Twitterに学ぶ DX時代の組織戦略・人材マネジメント
2020年が始まって半年余り、世界各地で凄惨な出来事が立て続けに起こっている。自然災害や経済的な不況、そして各国のナショナリズムや反人種差別運動など、企業に大きな影響が及ぶ出来事が後を絶たない。
コロナ禍でのリモートワーク対応だけでなく、今後のこのような状況を乗り切っていくためには組織にとって必要なこととは何なのか、そんなことが各企業に問われる時代なのではないかと感じさせられる。
優秀な人材がイノベーションを創出し続けられる状態を目指し、企業がフレキシブルな働き方を提供することの重要性が、今後より一層見直されるだろう。また、少子高齢化が進み、優秀な人材の確保がどんどん難しくなってくるという別の要因もある日本で、これから企業が取っていくべき組織戦略に注目が集まる。
今回は、変革が必要となっている日本の組織のあり方を改善すべく、アメリカ全体の働き方に関する変化・トレンドと、アメリカの企業のリモートワークを含む組織戦略について紹介する。少しでも意思決定の指針となる内容を届けられれば幸いだ。
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アメリカ市場全体の今後の働き方や組織戦略のトレンド
①リモートワーク率は確実に高くなっていく。一方で対面を重視するGAFA企業も
世界有数のリサーチ&アドバイザリー機関であるGartnerの市場調査によると、コロナ前に30%だったリモート率が、コロナ禍では約18ポイント増え、全体の約半数の労働者たちが少なくとも就労時間の一部をリモートワークで行う・行っていく、というアンケートでの回答結果が得られた。さらに、これからもこの数字は増えていくだろうと考えられる。
とはいえ、リモートワークが進む米国のIT企業たちでも、リモートワーク恒久化の動きだけなのかというと、それは間違いである。
Appleなどのハードウェアを開発している企業は、やはりリモートワークだけでは賄えない作業も多くある。Googleも、今年いっぱいはオフィスに戻らないという方針を出してはいるものの、イノベーションを生み出すためには対面でのコミュニケーションが必要であるとの考えを未だ変えていない。
そもそも、GAFAのようなシリコンバレーのIT企業たちが、多額の資金を注ぎ込み、広大なオフィスを構える理由は、開放的で心地よい空間での対面コミュニケーションが生産性を高め、次世代のイノベーションを創造する糧になるのだということを信じていたからである。
重要な部分では対面コミュニケーションを残しつつ、リモートワークを基本とした働き方が模索されている。
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②リモートワークの普及により、従業員管理ツールの需要の急増
そしてこのリモートワーク率の上昇がまた別のトレンドを引き起こしている。それは、従業員を遠隔的にモニターするテクノロジーの普及である。もちろん、以前からそういったサービスの需要があったが、今回の一連の流れが従業員管理ツールの需要に火をつけたことは言うまでもない。
PCを各従業員に配布している企業では、そのPCのアクティビティを管理するようにしたり、他の企業でもEmailやコミュニケーションツールの使用率を確認したりと、従業員を遠隔でも管理する何かしらのツールを頻繁に使用しているマネージメント層はコロナ前と比べ、16%増えているという。
③社員の心のケアも大事に
勤務態度を管理することはもちろんであるが、従業員の心のケアをしようとする企業も少なくないという。今までのように生産性だけを重視した働き方から、人材の心身に支障を来たさないように、耐久性・持続性がある働き方を模索し始めた企業も多いのだとか。
企業たちはこぞって従業員たちのデータを集め、リモートワークでの生産性や勤務パターンと従業員の心身の健康などにおける相関性を解き明かしていくと考えられる。
ちなみに日本でも、カルビーや富士通などの企業が原則リモートワークという方針を取り、生活と仕事のシフトを起点に、従業員の心身をともにケアしていく考えを全面に押し出している。業務に差し支えがなければ単身赴任を解除し、家族と共に過ごすことも許可している。
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④新たなスキルの需要・人事評価にも変化が
加えて、以前より会社の日常業務の遂行が不自由になったことにより、新たな視点から人材を評価する会社も増えているのだという。今まではあまり目につかなかった、会社のワークフローを円滑にするスキルをもった人材が重宝されるようになってきたということが調査によって分かったそうだ。
むしろそういった会社の潤滑剤になれる人材に、技術的なスキルなどを習得させる機会をより多く与えて、成長を促した方が良いという考えも出てきているのだとか。つまり、働き方のシフトによって人材の評価制度も変わりはじめたということである。ここにいち早く気付く企業が上手くリモートワークにも適応できるだろう。
では、このようなトレンドの中、多くの従業員を抱える組織となった今も、変化を恐れずに市場のリーディングカンパニーとなっているテック大手企業はどのような動きを見せているのか。いち早く会社の方針を順応させたツイッターやFacebookの例を紹介する。
終身リモートワーク!?ツイッターの大きな転換
(Ted Talkにて語るツイッターCEO、ジャック・ドーシー氏:画像転載元リンク)
リモートワークのアーリーアダプターでも知られるツイッターでは、CEOのジャック・ドーシー氏が2020年5月12日に全従業員宛にこんなEメールを送った。「リモートワークを好きなだけ継続することを許可します。」
ツイッターが本社を置くサンフランシスコ市内では、当初4月いっぱいとされていた外出禁止令を5月末まで延期することが4月27日に発表された(現在は6月中旬から段階的に外出禁止令が解除され始めている)。
これを受けてツイッターでは、仕事に支障を来たさないのであれば、どこからでも、そしていつまでもリモートワークを認める方針を明らかにしたのだ。また、オフィスの開放は9月から始めていくが、社員の安全を最優先に考え、とても段階的に、慎重に行っていく姿勢を見せた。国内・国外問わず、出張に関しても同じで、9月までは特例措置を除き、全社員の出張を禁止した。
また、今年中は物理的なイベントの開催は如何なるものであれ中止、または延期することも発表しており、今まで以上にリモートワークを加速させていく体制を取り入れた。ちなみに、ジャック・ドーシー氏は、フィンテックスタートアップのSquareのCEOも務めている。Squareは金融系なのだが、ツイッターと同じ方針を取り入れており、従業員の終身リモートワークを許可している。
この方針は、社員たちが1番クリエイティブ、かつ生産性が高まると感じられるところで働いて欲しいという考えからきており、社員を信頼しているからこそできる施策であるといえる。
もちろん、セキュリティ上オフィスでしか働けない従業員たちに関しては引続きオフィスで勤務することが必須であることも明らかにしているが、社員の安全と自主性を第一に尊重した試みである。
そんな働きやすい環境を求め、この方針が発表された直後からツイッターでの仕事を探す人が増えたことをGoogleトレンドなどでも確認できる。
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リモートワークを恒久化しつつ、対面にも価値を見出しているFacebook
(社内会議にて初のオンラインQ&Aを行うFacebook CEO、マーク・ザッカーバーグ氏:画像転載元リンク)
Facebookも他のテックジャイアント同様に、Face to Face(対面型)コミュニケーションが生産性を高めると信じていた企業の1つである。
現に、Facebookは本社から10マイル(16キロ)圏内に住む従業員たちに対してキャッシュボーナスを付与していたことがあったり、2018年には本社ビルの大々的な拡張を有名な建築家にデザインさせたり、他の地域でもオフィスの拡大を計画している旨をひっきりなしに語ってきた。
実は、同社CEOのマーク・ザッカーバーグ氏は、在宅勤務下では従業員の生産力は落ちるものだと今まで考えてきた。しかし、コロナ禍で従業員の安全を最優先させるために、全社リモートワークにせざるを得ない状況になった。そしてその結果、彼の考えとは裏腹に、従業員達の生産性が予想を遥かに上回っていたことが明らかになったのだという。
リモートワーク導入に積極的な姿勢になってからは、Facebook社内のライブ配信会議でも、「次の5年から10年以内には社員の半数(約2万2〜3千人)はリモートワークになるだろう」との見解を示している。
それに伴い、同社は来年1月から社員の給料を各社員が住む地域の生活費レベルに合わせて変動させるシステムを取り入れることも発表した。つまり、物価が安いところ、平均賃金が安い地域に住んでいる従業員たちの給料はそれに合わせて安くなり、逆にFacebookの本社があるような、都心で物価が高いところに住んでいる従業員たちの給料は高くなるようになるということである。
Facebookがこういった方針を打ち出したことにより、他のIT企業もリモートワークの従業員たちに、この生活費ベースの給料変動システムを適用させていく可能性がある、と米メディアは見立てている。
さらに、このリモートワーク勤務オプションを広げていくことは同社の雇用の強みにさえなるだろう、ということもマーク・ザッカーバーグ氏は述べている。勤務地に縛られない採用が可能になるため、今まで発掘できていなかった全世界の優秀な人材を獲得できるようになるからだ。このことからも、Facebookは年内に10,000以上の雇用を追加する、という話もある。
アメリカを筆頭に世界中でレイオフ(一時解雇)や、一時帰休を行っている企業が続出している。しかし、Facebookはこれを逆手にとり、仕事に溢れた優秀な人材をグローバル規模で確保していく、という雇用戦略が見て取れる。
これからの組織戦略に大切なこと
1. 社員ファーストの考え方
企業にとって、従業員たちが生産性高く働いてくれることは1番のゴールなのかもしれない。だが、ここで述べてきた、変化を取り入れている企業に共通していることは、社員の健康をまず最優先し、そして社員が安心できる場所で、クリエイティブに働いてくれることが、社員が生産性の高い仕事をしてくれることに繋がるのだと理解していることだ。
つまり、社員が起点になっており、会社の利益が先行しているわけではないということだ。結局は社員の生産性が高まれば会社の利益として還元されるわけなので、同じように見えるかもしれないが、これは全くもって別の考え方である。
企業が、いかに優秀な人材たちに生産性が高い状態で働ける最適な環境・最高の働き方を提供してあげれるか、ということが社員ファーストな企業の人材戦略に共通していることなのだ。
日本でも経済産業省と東京証券取引所が2015年から始めた『健康経営銘柄』なるものがあるが、社員ファーストの企業が長期的にみて、業績を伸ばす可能性が高いということがデータでも如実に現れてくるだろう。
2. 組織のカルチャー醸成を物理的に離れたところでも行える会社になること
リモートワークは働き方を変革させていくための手段でしかない。しかし、これから益々離れた場所から働くことが増えてくる世の中で、ここで述べてきた企業に共通していることは、透明性の高いコミュニケーションをとり、オンラインの会話ですら心理的安全性が担保されたコミュニケーションを取り入れていることである。
富士通などでも上司が部下の意見を多く取り入れたリモートワークの仕組みを各部署ごとに形成していたり、カルビーでも人事部の執行役員が「全員活躍」や「心理的安全性」を会議ごとに再認識する方針を提示していたりと、日本の企業の中でもリモートワークを恒久化させている会社には人材を最大限に活かすコミュニケーションの取り方が根付いている。
Facebookでは毎週金曜日にCEOのザッカーバーグ氏が自ら社員たちの質問に答えたり、会社の課題・ミッション・方針などを赤裸々に語ったりする社内会議を行っていたりする。
オンラインでも組織の個々人にトップの思想を共有できるような仕組みづくりや、オープンで生産的なコミュニケーションなど、オンラインでもそういった組織のカルチャーを醸成することが今、企業に求められているのである。
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3. 柔軟さを重視し、自分たちの最適解を見つけ出すこと
激動の世の中で、企業の存続や成長のために必要なことは、柔軟に状況に対応していく適応力だ。古い慣習を持つ企業は消えていき、新しい社会に順応できる企業が次の時代を作っていく。多くの企業で行われているが、「リモートワークするかしないか」という次元の議論ではない。リモートワークはあくまでも手段で「自社では何を最優先し、何が課題で、どう改善していくべきなのか」という議論をした方が建設的であろう。
会社の風土や人材、組織構造ですら会社ごとに違うので、組織戦略にも違いがあって当然なのだ。時代の流れに従うと組織の変革はもはや必須だが、各企業が試行錯誤を繰り返し、その企業ならではの方針を打ち出す必要がある。
新しい時代には新しい組織づくり、新しい人材戦略を
btraxでは変化の激しい時代に適応し、さらにイノベーション創出に繋げるため、Workplace from Facebookとパートナーシップを組み、組織カルチャーDXと題し、企業の組織戦略・人材戦略の変革にも一石を投じている。ご興味のある方は、こちらからお問い合わせください。
組織カルチャーDXとは?詳しくはこちら▼
日経ビジネス電子版スペシャルサイト:「組織カルチャーDX宣言」から。
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