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メルカリはどのように海外展開を進めているのか
前回の”メルカリ, JCB, スタートアップ弁護士に聞く – なぜ日本企業はサンフランシスコ・ベイエリアへを目指すのか【イベントレポート】“でも紹介した通り、最近日本企業のシリコンバレー進出が加速しており、過去最大の日系企業がオフィスを開設している。その中でも特筆する点としては、大企業に加えて、スタートアップもサンフランシスコ市をUSの本拠地として海外展開を進めている点であろう。
その中でも、日本のスタートアップでグローバル展開しているスタートアップの最右翼として、メルカリがある。当社、btraxのCEOであるBrandonとメルカリのCEOである山田 進太郎氏は、数年以上前からの旧友であり、メルカリUSAの代表である石塚氏とも交流が深い。
その縁もあり、福岡市主催によるグローバル起業家育成プログラム、『Global Challenge! STARTUP TEAM FUKUOKA』の一環としてサンフランシスコのbtraxオフィスにて開催されたパネルディスカッションにて、メルカリのがグローバル展開に対して”大切にしていること”を聞いてみた。
このイベント参加者はメルカリの米国法人トップの石塚氏に加え、JCBシリコンバレーの中西氏、スタートアップ向けに多くのサービスを提供する弁護士吉田氏。
btrax CEOであるBrandonのモデレーションによリ、それぞれの立場で見るベイエリアの魅力とチャレンジなどをディスカッションする2時間のセッションイベントを開催した。その様子をトピックごとに複数回に分け紹介する。
メルカリが最重要視している3つのバリューを浸透させる方法は?
前回の記事にも紹介したメルカリが大切にしている3つのバリュー。ではそのバリューを具体的にどのように社内に浸透させているかについて。
仕組み作りがバリューの浸透へ
質問者: バリューが大事っていうのはわかるんですけど、浸透させるっていうのは非常に難しいと思うんですが、バリュー浸透のために気を付けていることとかがあれば教えていただけませんか。
石塚: 例えば採用時においてバリューの採点をするようにしているし、評価の時もバリューを用いて行う。だから自然と社員がバリューを意識するようになる。日々の会話の中で自然にその、みたいな会話が起こるようになっている。
まずは仕組みとしてバリューを意識させることを作る。それが採用軸だとか評価軸になるようにする。その後バリューに対する社員投票とかをクォーターごとに入れるとか、経営陣から賞を出したりする。こういった仕組みがあるから日常のコミュニケーションでもバリューが浸透するのかな。
Brandon: アメリカだともはや宗教のようにバリューは浸透させられますね。日本でも社訓というのがあるんですけれども、アメリカは本当にそれを信じるっていうのがすごい強い。スタートアップとかのピッチとかを聞いてると「We believe」っていう表現が非常に多い。
これは「信じてる」っていうことなんですけども、これに賭けてるとかこれを信仰してるくらいの勢い。国家の法律とかスタンダードに反していても、信じているからやるみたいな感じで、バリューはバイブルみたいな感じになっている。JCBはそういうのあるんですか?
中西: 今考えていたんですけれども金融機関は、どうしても「安心、安全」みたいなのが第一に来ちゃってシリコンバレーにはそれは合わないんですよね。だからシリコンバレーに来ると何もできないみたいな。(笑)なので今IT系だとバリューは通用するけれども金融機関は通用しないかなと思って。
フィンテックとか学びに金融系の人が結構こっちに来るんですけど、考え方が違って「安心安全」を壊さないと進めない所はありますね。だからIT系の部門を作ったりすることで、内側から少しずつ変えていく事が必要かなと。これから日本の金融機関に勤めている人は自分たちのバリューを考えていけないのかなという風に思いますね。
アメリカでの展開に資金はいくらぐらい必要なのか?
日本で稼いだ利益全部をアメリカにぶっこむ覚悟で
石塚: 正確なことは言えないですが、日本で出した利益の多くをこっちで使ってます。(笑)
中西: うちも一緒ですね。日本で儲けたカードの利益を海外に出してますけど、海外苦戦してるんですよ。JCBは日本で成功したモデルを海外に持ち込んでるけれども、現在はあまりうまくいってないですね。恐らくローカライゼーションの部分で日本とは違うことが必要だと思うんですけど、そこら辺何かアイデアとかやり方とかあったりしないですか?
石塚: そこはうちは振り切っていますね。アメリカファーストで改善していって、アメリカで成功したものを日本で逆ローカライズするっていう形ですね。エンジニアとかはほとんどが日本にいるんですけど、そのエンジニアたちもアメリカで成功するためにサービスを作っていますね。
Brandon: 自動車メーカーはそういうところもありますね。工場とかは日本にあるけど、企画とかUX考えるときとかシリコンバレーで最初にやる。その後データとかシステムを持って帰って、後は日本のモノづくりの職人さんがカチッと作って世界展開をしていくみたいな。
中西: じゃあうちがやってるチャットボットとかも、もしかしたらその一例になれるかもしれないですね。
Brandon: チャットボットすごい期待していいですね。
中西: 日本だとチャットボットってやっぱりやらしてもらえないんですね。というのはやはりチャットボットが何かわからないから「安心、安全」の基準から外れちゃうんですよ。ベイエリアでは基準がないので簡単にやれちゃいますね。後は日本に逆輸入してそっから世界展開できていければいいなと思いますね。
プロダクトファースト?マーケティングファースト?
プロダクトを優先するチームづくりが最優先
質問者: 日本の企業とかってプロダクトを作るのにフォーカスしているイメージがあって、海外の企業はマーケティングが先にあって、ユーザーの需要があるからそれを作れるエンジニアを探しているイメージですが、どちらに重きを置いているんですか?
Brandon: スティーブ・ジョブス (マーケティング) かスティーブ・ウォズアニック (エンジニア) かの話ですね。
石塚: それに関してはジョブスとウォズが本当にいい例だと思っていて、こっちで一人で創業するっていうのはこっちではないんですよ。しかもそういった会社に投資をするVCもないんですね。なぜかというと皆チームで創業して、それぞれ得意なことをカバーし合う方が理に叶ってるし、成功するということも分かっている。
例えばアップルだとマーケティングでジョブスがいてエンジニアでウォズがいてカバーし合っていますよね。そのようにスタートアップでは得意なことをカバーし合うというようなケースが多いですね。創業メンバーはチームでやるというのが鉄則ですね。
どのように仲間を集めるのか?
アメリカではスタートアップの経験が転職活動の際に有利になる
質問者: 亮さん以外にメルカリは二人いると思うんですけど、お三方はどういう出会いをされたんですか?複数で創業するのがいいとは思うんですが、そもそも出会う機会がないように感じるのですが?
石塚: 自分は二回起業しているんですけれども、一回目は大学の時の同僚。二回目のメルカリは山田進太郎とはもともと知り合いですね。昔いたRock You!のつながりでアメリカで知り合って、富島とは山田を介して知り合いました。なので元から知っている人たちですね。
Brandon: 前イベント登壇した時にメルカリの技術担当者の人も登壇したんですよ。それでどうやってメルカリが人集めたかということを聞いたら、「Twitterで山田進太郎が“面白いことするけどやらない?”みたいなことをつぶやいたら、同じ志を持った仲間が集まったみたいです。」と言われて。
エンジニア募集中
— 山田 進太郎 (@suadd) January 9, 2013
山田進太郎っていうのはすごい発信力があるのでこうなったんだと思いますね。
それに加えて、こちら、サンフランシスコベイエリアは人の密度が非常に濃いので、気が合うやつとかビジョンが合うやつを集めやすいという魅力がある。なので、この地域で同じ志をもつ人材を集めるのも比較的おこないやすいです。
吉田: 自分のクライアントのドライブモードとかで、みんなどう仲間を集められるかという話になると皆さんやっぱりもともと知り合いですね。人間関係がある上であなたがこういう風にやるなら私も手伝うよみたいな。
Brandon: アメリカはそういうところは非常に良い意味でドライで、取引先の企業とかでもこの人優秀だなと思ったら覚えてるんだよね。それで何か行動起こす時に声かけて、気が合えば一緒にやる、この流動性の高さが便利かな。日本だったら立場上難しいとかがあるけどアメリカはそういう意味ではやりやすいね。
吉田: 日本では大企業で働くような人材がスタートアップで働くことがアメリカでは普通にある。こちらではスタートアップでやってダメなら大企業に戻るかみたいな感じで、日本の中小企業を見下す感じが全くない。
Brandon: それは本当にあって、アメリカでは起業経験っていうのがレジュメでは高く評価されるののでむしろいいんだよね。いざとなればいつでも大企業に戻れるし。
吉田: 日本では中小企業にしか入れなかったという見方をするけど、アメリカでは逆に優秀だからスタートアップの企業に入ったという見方をする。この発想の違いは非常に大きい。
まとめ
今回のパネルディスカッションを通してコストが高くてもベイエリアでビジネスを行う最大の魅力というのは
人材×バリュー×距離の近さ
であると感じた。ベイエリアにはテクノロジー・デザイナー関連の優秀な人材が集結している。そしてそういったメンバーが「We believe」の精神で、自分たちが心底面白いと思えるサービスの追求ができるというのは心躍ることなのである。
スタートアップカルチャーが根付くベイエリアでは「We believe」のマインドセットが浸透している。自らが信じるプロダクトを優秀な仲間たちと作り上げたいと人々が思うからこそ、コストが高くてもベイエリアに残り続けることを選ぶのだ。
メルカリ石塚氏の「採用は優秀か優秀じゃないではなくフィットするかフィットしないか」という言葉はまさにバリューで人を選ぶという典型例であるように感じられた。人が人を呼ぶ、これがまさにベイエリアが栄える本質なのではないだろうか。
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