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ブランド構築に役立つリーンブランディング その基本と3つの活用シーン
リーンブランディングという言葉をご存知だろうか?おそらく「リーンスタートアップなら知っているが…」という思いで、今この記事を読んでいる方も一定数いらっしゃるのではないかと思う。
筆者もまさにその一人だった。この記事では、リーンブランディングの定義から実際にリーンブランディングを実践する際のポイントまで、その基本をご紹介していく。
リーンブランディングの定義とその特徴
リーンブランディングの定義だが、その発想の基となるリーンスタートアップについて簡単に触れておきたい。
リーンスタートアップとは「新しいビジネスモデルの開発」を目指すマネジメント論である。
そしてリーンスタートアップでは、その過程において、特徴的な2つの要素を重要視している。
ひとつは、必要最低限のリソースで進める「生産効率性の向上」。そしてもうひとつが、細かくフィードバックを得ることやボトルネックを明らかにしておくことによる「問題の顕在化」である。
そして、本記事で取り上げていくリーンブランディングは、上記のようなリーンスタートアップを踏襲したものだ。
具体的には、リーンスタートアップでいうところの「新しいビジネスモデル」の代わりに、「柔軟なブランド」の構築・開発を目指すものであると理解していただけると理解しやすいだろう。
現代においてリーンブランディングが重要な理由
先で「柔軟なブランド」と記載したのには理由がある。ブランドはあくまでも、不変ではなく、柔軟であるべきだからだ。
というのも、社会そのものもユーザーや顧客の心理も移ろいやすい現代では、ブランドも変わらずにあることは難しい。
ブランドに対し、変えずに守っていくものというイメージをお持ちの方も多いかもしれない。これはおそらく、いわゆる有名ブランドたちは、長い歴史を持っている印象があるからだろう。
ブランドの構築や浸透、発展に年月を要することは事実である。しかし、その間、ブランドを「変えない」ということではないはずだ。むしろ、時代に合わせて変化をしてきたからこそ、彼らは時が経っても色褪せず、愛されるブランドであり続けることができているのだろう。
ここで、リーンブランディングの重要性を補填する大きな変化について触れておきたい。
20世紀から21世紀にかけて起きたビジネスプロセスの変化
ひとつは、世紀を跨いで起きたビジネスプロセスそのものの変化だ。
20世紀型のビジネスプロセスは、一言で表現すると、企業起点。企業側がどんな製品を作りたいか、どんな技術を持っているか、という視点から製品が作られることが多かった。
それに対し、21世紀型のビジネスプロセスはユーザー起点。ユーザー自身の理解や彼らのニーズを捉えることから発想が始まり、彼らのニーズを最適な体験を提供することによって、満たす動きにシフトした。
なお、ここでの「体験デザイン」とは、製品それ自体という点ではなく、サービスを利用する前やその後も含めた、線的な顧客への提供価値を総合的にデザインすることである。
デジタルがブランドに与えるパラダイムシフト
また、上記のプロセスの変化のきっかけとなったのが、デジタルの登場だろう。
デジタルがもはやサービス開発の前提となった現代においては、「サービスのアップデートが比較的容易にできる」というデジタルの特徴的な強みを活かしたサービスおよびブランド開発が重要である。
つまり、作り切り・売り切り型の直線的なビジネスモデルから、顧客の声を定期的に吸い上げ、それらをサービスやブランドに還元し、更新していくサイクル型に移行しているのだ。
デジタル以後のサイクル型のビジネスモデルでは、顧客とのタッチポイントを増やす、あるいは関係を維持することによって、ファンという属性のオーディエンス層を作り出すことに重きが置かれる。
というのも、顧客はファンから生まれるからだ。ファンは将来の顧客であると言い換えることもできる。ファン層を厚くすることで、顧客になりうる層も厚くなる。
したがって、これからの企業は、サービスに対価を支払う顧客ではなくとも、ブランドに対して好感を抱き、繋がりを継続してくれるファンを増やしていくことへの注力が求められる。
そして、将来的に彼らがファンから顧客になることを目指すことが重要なのである。
変わらないブランドをつくるのではなく、その時の時代の流れやファンや顧客の声に耳を傾け、変化に柔軟に対応できるブランドをつくることこそ、これからのブランド開発に不可欠な姿勢だろう。
そして、そんなブランドをつくるためにリーンブランディングのプロセスは相性が良く、効果を発揮すると思えるのだ。
リーンブランディングのプロセス
では、実際にリーンブランディングをどのように進めていくのか。リーンブランディングにおける基本のプロセスはこれだ。
そう、実はこれはリーンスタートアップで採用されるプロセスとほとんど同じである。もっと言うと、これはいわゆる「PDCAサイクル」として、広く浸透しているもので、ブランドの構築にもこのプロセスが有効と考えられている。
ちなみに、従来の一般的なブランディングプロセスは以下の図の通りである。リサーチから始まり、戦略立案、ブランドデザイン、マーケティング戦略やブランドの管理と着実に歩んでいくのが一般的なプロセスの特徴だろう。
このメリットは一つ一つを固めた上で次のステップに進むため、足並みを揃えつつ着実にブランディングを推進することができる。
一方デメリットがあるとすれば、それゆえ、スピードアップが難しかったり、短いタイムラインで行うことが困難になりがちだったり、コストやリソースがかかる、といったところだろう。
ここでは、一般的なブランディングプロセスを否定するつもりはない。あくまでブランディングの方法論の一つの選択肢として、今回はリーンブランディングをご紹介しているまでだ。
では、ここからはリーンブランディングにおけるそれぞれのステップについて触れていく。
ブランドコアの策定
まずは、ブランドのビジョンや提供価値を言語化・可視化し、そのコアを策定する。
これは、リーンスタートアップでは「仮説検証」にあたるが、「仮説」というよりは「ブランドの立ち位置や目指す場所の確立」段階に近いため、この記事ではそれを「ブランドコアの策定」としている。
ブランドとして自分たちが実現したいことと、ユーザーや社会を巻き込んで将来的にどんな世界観を作りたいのかを掛け合わせてブランドコアを導いていく。
検証
次に、実際にブランドとして動き始め、ブランドに対するユーザーたちの反応を見て、ブランドの浸透の仕方や伝わり方を検証していく。
具体的には、ユーザーインタビューなどを通じて、彼らの生の声を聞いていくケースが多い。ここでは、ユーザーのみならず、ステークホルダー全般のフィードバックを得られることが望ましい。
ブランドは、ブランドとユーザーという一対一ではなく、ブランドと株主、従業員、クライアントなど、そのブランドに関わる属性の人との間に築かれるもの。彼らの声を多方面から聴くことがブランドの死角をなくし、信頼感を醸成することに繋がるからだ。
学び
ユーザーたちからのフィードバックを紐解き、改善に活かせそうなことを見つけていくのがこの段階。
ここでは、最初のステップで立てた仮説やブランド側から見えていたことと、ユーザーやステークホルダーたちから見えていたことのギャップが「学び」に値する。
自分たちではこうだと思っていたが、実は違った。本当はこのように思われていたのか、などといった気付きが大きな意思決定材料になる。
意思決定
最後に意思決定の段階だ。「学び」で得た意思決定材料を目の前に、それらをどうブランドに還元するかを決定する。
ユーザーたちの声を鵜呑みにするのではなく、彼らの声を「客観的なブランドの見え方」として認識した上で、「自分たちがブランドとして持っているコア」と突き合わせる。そして、その化学反応を新規事業のコンセプトアイディアとするなどして、ブランドの新たな側面に活かしていく。
ブランディングはブランド側の独りよがりでは成立しない。また反対に、ユーザーの声を聞きすぎても、本来ブランドが伝えたいことや実現したい世界観が薄まってしまうことも想像に容易い。
ブランド側で決めたことに関して、ステークホルダーを仰ぎ、その声を持ち帰って、再度ブランド側で意思決定をする。一連のプロセスにおけるブランドとステークホルダー間のキャッチボールが、均整の取れたブランドづくりに繋がるのだろう。
こんな時こそリーンブランディング
定義、プロセスと続いて最後に、リーンブランディングの「活かしどころ」についてまとめたい。リーンブランディングが効果を発揮する3つのシーンだ。
1. 新たに事業やサービスをローンチした時
新たに事業やサービスが生まれたタイミングは、ブランディングの観点でも出発点と言える。
新たなサービスがブランドに対し、どのような変化をもたらすのか、コーポレートブランドとプロダクト/サービスブランドがどのように繋がりを持つべきなのかを検討する時に、リーンブランディングが活用できる。
2. サービスをピボットした時
リーンブランディングの活用シーンは、ゼロからイチを生み出した時のみに限ったものではない。生まれた時だけではなく、生まれ変わった時にもリーンブランディングは効果を発揮する。
むしろ、リーンスタートアップにしたがってサービス価値に対して仮説の構築と検証を繰り返していると、ピボットの可能性は高くなるものだろう。
そして、提供するサービスやプロダクトが変われば、そのブランディングも考慮することが重要だ。
3. 組織やチームが変わった時, もしくは変わってしばらく経った時
ブランディングにおける重要な姿勢の一つは「一貫性を持つこと」だろう。組織内での認識、顧客やユーザーに届ける価値など、複数の視点から一貫性が求められる。
しかし一方で、組織には新陳代謝が伴う。メンバーを新たに迎えたり、入れ替わりが起こったりすると、次第に組織が持つ色も変わってくるのは必然で不可避なことであろう。
そうなると、どうしてもブランドに対する認識のズレが生まれてくる。このズレが徐々に開いていき、結果、同じ組織にいるメンバーでも各人から語られるブランド像が異なる状況が生じてしまう。こうなると、ブランドとしての一貫性に欠けてしまう。
こうした状況の打破に役に立つのが、主に「インナーブランディング」を目的とする場合のリーンブランディングの発想だと考えている。
この場合、前述した「ブランドコアの策定 → 検証 → 学び → 意思決定」の方法に則るとこのようになるだろう。
まずは、ブランドとしての強みや譲れないものを今一度明らかにする。そして、メンバーそれぞれにヒアリングをするなどして、個々人のブランドに対する声を吸い上げていく。この流れは、ワークショップのような形で場を設けて行うのも効果的だろう。
組織内の濃度を均一にすることで、どこを切り取っても同じ認識に基づく、いわば金太郎飴のような状況をつくることができると考えている。
ブランドに始まり、ユーザーたちを経由し、またブランドに戻っていく。この動きを繰り返すことがブランドとしての想いを強固にしたり、細かな軌道修正を可能にしたりするのだろう。
ブランディングに終わりはない
ブランドもどんどん変わっていく時代だ。むしろ変わらなければ生き残れないと言っても過言ではないだろう。
実は、btraxも小さなリブランディングを繰り返している。リーンブランディングだと明言せずとも、実は、今まで行ってきたことは、ここでご紹介したリーンブランディングそのものである。
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