デザイン会社 btrax > Freshtrax > シリコンバレーで自動車部品のイ...
シリコンバレーで自動車部品のイノベーションをおこす【インタビュー】株式会社ROKI、IT室長 小野田 明弘氏
世界の自動車業界のトップを走り続ける日本の企業たち、しかし彼らはアメリカのTeslaやGoogle Self-Driving Carやシェアリングエコノミーを代表するGetaroundやUberの存在を気にしている。
高い技術をもつ自動車の部品メーカーも新しい製品の芽と生産改善等に繋がるアイディアを発見し、次のイノベーションに繋げていきたいと考えている。
今回は卓越したフィルトレーション技術で地球環境に貢献し、自動車やオートバイのエアフィルターを研究開発・生産する株式会社ROKIのIT室長である小野田 明弘氏にお話を伺った。ROKIは世界12カ国に拠点を構えるグローバルカンパニーであり、本社の静岡県浜松市にはGlobal Innovation Centerを所有する。
他の会社がやっていないこと、現地の本質を知りたい
Q1. どのような経緯でイノベーションプログラムを導入されましたか?
サンフランシスコ・シリコンバレー起きている先進的な事例を調査し体感して、自社にフィードバックして欲しいという指示が経営者から出たのですが、当初はなんのつてもなくてどうしたら良いのか分からない状況でした。
調査を進める中で、以前に当社のGlobal Innovation Centerを創る際に一緒に仕事をしていたご縁があって岡村製作所さんにbtraxを紹介して頂きイノベーションブースターへの参加を決めました。
イノベーションブースターは大企業の新規ビジネスの開発を支援し、グローバル市場に向けて大きく飛躍させるためのサービスです。イノベーションブースターに参加したメンバーは現在世界で最もイノベーションが起きているとされるサンフランシスコでイノベーションのマインドセットを取得し、既存の製品やサービスを顧客・市場調査をもとに見直し、新しい価値を生み出す可能性を得ることが出来ます。
ただ現地で座学をするだけではなく、現地企業やスタートアップに訪問してビジネスチャンスを得られることにも魅力を感じました。 プログラムメニューにあるフィールドワークではオフィスから飛び出して、ターゲットユーザーにインタビューし、周りの環境を観察する事によって新しい発見がありました。
プロダクトやサービスを開発者の視点で想像しながら、開発のコンセプトやプロセスを考え、ユーザーの立場でサービスを使用するシチュエーションを考えることにより、多くの新しい発見が得られます。
表敬訪問は全く受け入れられない
Q2. 実際に訪問した企業で何を得ましたか?
ベイエリアのスタートアップエコシステムを強大させていくのに大きな役割を担っているインキュベータのひとつ、 Runway Incubatorを訪問しました。
はじめての訪問は、日系企業がよく陥ってしまう表敬訪問になってしまい、インキュベータ内のスタートアップ達と深い話に発展することはありませんでした。
2回目に訪問した際は弊社に関連しそうなサービスを提供しているスタートアップ出会い、彼らが開発しているAR技術を使った遠隔技術指導のプロダクトのデモストレーションを見せてもらいました。
2回目の訪問では私達も事前にプレゼンを用意しておいたので、当社の商品と技術についてとこれから必要になるサービスや知見についても説明しました。当社について話したことでスタートアップ側からも良い提案をもらうことができ、満足のいく結果となりました。
彼らは極めて前向きに、そしてシビアにビジネスに取り組んでいることを実感しました。
現地のスタートアップと交渉を成立させるためのマインドセット、姿勢、手法を実践を持って学ぶことができました。彼らとは今後もコラボレーションしていく予定です。
組織から切り離すことでイノベーションを生み出す
Yamaha Motor Ventures & Laboratory Silicon Valleyの CEO & Managing Directorの西城氏を訪問し、シリコンバレーでの会社設立の経緯や目的、現地でどのようなイノベーションを目指していてそのためにどのような活動をされているのか、イノベーションを起こすための組織のあり方等についてお話を伺いました。
Yamahaは当社にとっての得意先様であり、日本だと気軽にお話する機会を得るのは難しいのですが、シリコンバレーでは環境の助けもあって、深い話しをすることが出来、大変刺激をうけました。
数あるスタートアップと効率よく会うことが重要
その他にも、バイオテックのスタートアップに特化したアクセラレータIndie Bioを訪問しました。
サンフランシスコのバイオテックスタートアップは良質な材料の提案を多々持っているものの大量生産やそれに伴う品質管理が課題ということでしたが、私共を含む日本の製造業はそこは得意な分野であり、よい意見交換ができるのではないかとbtraxのアドバイスを受け訪問しました。
Indie Bioに属するバイオテックのスタートアップのひとつはすでに当社に大変興味を持っており、課題を解決に導く技術を持っていたため、この企業ともビジネスの話を進めることになりました。
イノベーションブースターでは事業活動に近いところのスタートアップを紹介してもらえたので、ビジネスの話を迅速に進めることが出来ました。弊社と現地スタートアップ、両方を知っている企業に間に入ってもらうことが相性が良いスタートアップとマッチング出来るポイントだったのではないかと思います。
Q3. どのような現地イベントに参加しましたか?そこで何を得ましたか?
フランスのアクセラレータ主催のモビリティに関するピッチイベントに参加し、スタート
アップの方々がどういう風に自分のイノベーションをピッチしているのかを実際にみることができました。
多様なフィードバックを受け入れる文化を自社にも取り入れたい
プレゼンではなく、2分間で重要なこと伝えるというピッチを実際に見て、自社にも取り
入れたいと強く思いました。
特にピッチをしている人がフィードバックを快く受け入れる姿勢が良く、多様なフィードバックを得ることを日常的にやっているからユーザー目線のプロダクトやサービスができるのではと思いました。日本だったら基本的には上司のフィードバックしか受けませんからね。
会社で新企画を提案する際に上司に評価されなかったら諦めるのではなく、その他の人の意見も聞き、提案をブラッシュアップしてより良いものにして再提案するくらい信念を持って提案することが出来る社内環境を作っていきたいと考えています。
Q4. イノベーションブースターでは何をしましたか?そこで何を得ましたか?
イノベーションとは「技術革新」と訳すのではなく「社会に新しい価値をもたらすこと」なのですが、実際にイノベーションを起こしてきた企業たちはどのようなアプローチでイノベーションを実現したのかをイノベーションブースターで学びました。
持続的イノベーション(得意領域をさらに伸ばしていく)は当社でも当然実践しているのですが、このプログラムで学んだのは尺度を変えて物事を見ることが新しい価値を創造する上ではすごく重要ということです。
得意な領域ばかりやり続けていると視野が狭くなるので一度視野を広げて、もう一度みなおしてみることが大切だと感じました。
サンフランシスコ・シリコンバレーといえど、日本の技術よりすぐれているものばかりではなく、日本と同じ、または日本の方が進んでいる領域も多々あるとも思いました。
まだまだこの先に発展する可能性のある領域や技術を見つけることも出来たので、現時点で実現出来ていないことはチャンスと捉え、自社の新事業展開に結びつけていけたらと思います。
Q5. これからプログラムで得たことをどのように活用しますか?
サンフランシスコでわたしが出会った人達は仕事以外でもビジネスに対するアンテナが非常に高いことを感じました。彼らは自分にない知見をイベントやネットワーキングに集めに来ていて、自分の持っている技術やサービスと組み合わせたらなにか面白いことができるのではないかということに期待して集まっているのではないでしょうか。
学びを広める社内セミナーを開催
社内へのフィードバックとして社内イベントを開催して今回得た経験を発信しています。イノベーションは商品開発の目的のみで使うのではなく、 古いものをとっぱらって新しいものを埋め込むこと、つまり、販路の開拓、新しい供給源の開拓、新規産業組織の構築もイノベーションとなりうる。そういった話しをするとどの部署からも良い反応を得られ、自分ゴトとして認識してもらえるようになりました。
特にエンジニアからはすでに良い反応を得ています。今後はマネジメント層に対してもイノベーションのマインドセットを伝えていく予定です。
現在のポジションに留まらず、常に前進していかなければ行けない事業環境下において、従業員の意識改革は常に必要と考えていますのでそういった観点からも非常に有効なイベントとなっています。
Q6. プロジェクト全体を通して問題解決、目的を達成することができましたか?
最終的な目標はイノベーションを起こすことなのですが、まずはスタートラインの最後尾に並ぶことが出来たかなという感覚です。
イノベーションとデザインシンキングを学んだあとに現地企業を訪問することが出来たのが順序としても良く、1ヶ月という長期間を費やすことが出来たことでより現地の「リアル」を体感出来ました。
これからサンフランシスコ・シリコンバレーに来ようとしている人・企業にひとこと
会社と自分を変えたいと思っている人はぜひ、サンフランシスコへ行ってみてください!
CES 2025の革新を振り返りませんか?
1月11日(土)、btrax SFオフィスで「CES 2025 報告会: After CES Party」を開催します!当日は、CEOのBrandonとゲストスピーカーが CES 2025 で見つけた注目トピックスや最新トレンドを共有します。ネットワーキングや意見交換の場としても最適です!