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インスタ14周年 – パクリサービスから世界一のSNSへの道
インスタグラムは今から14年前の2010年10月にリリースされた。
当時2人の若者によって作られたこのアプリが、現在では全世界で10億人のアクティブユーザーを獲得するまでに成長した。
そして、リリースからわずか2年で10億ドル (1,400億円) という高額でFacebookによって買収された。そのストーリーはまさにスタートアップの成功物語そのもの。
今回はインスタ12周年を記念して、当時のことも振り返りながらその道のりを振り返ってみよう。
始まりはサンフランシスコ湾沿いのコワーキングスペース
インスタの始まりは2人の若者の出会いだった。
その二人の若者とは、スタンフォード大学在学中にTwitterの前身であるOdeoでインターンをし、卒業後にはGoogleで働いていたKevin Systromとブラジル出身のエンジニアのMike Kriegerである。
この2人は当時サンフランシスコ湾沿いのピア38の中にあった、Dogpatch Labsと呼ばれるコワーキングスペースのデスクを借りてアプリ作りをしていた。
ちなみにこのコワーキングスペースは、我々btraxのオフィスから徒歩5分の距離にあり、当時のbtraxインターンだった土屋尚史と一緒に訪問した。それがきっかけとなり、彼はのちに創業した会社をDogpatchを逆にし、Goodpatchと名付けた。
最初は既存SNSのパクリサービスからスタート
当初インスタはその原型となるBurbn (バーボン) というHTML5をベースにしたチェックイン型ソーシャルアプリとしてリリースされた。
その当時はチェックインアプリとしてFour squareが人気を集めており、それを真似た仕様だった。
そもそもそのアプリ自体はファウンダーのKevinが一人で自作で作ったものであり、かなりお粗末な内容でもあった。
そして、すでに先発のサービスがある中で、人気を集めるのに苦戦していた。
ユーザーデータから意外な事実が判明
そこでユーザーの動向を調べたところ、アプリの利用方法に1つの特殊なパターンがあることに気がついた。それは、チェックインアプリにも関わらず、チェックインもせずに写真だけアップしているユーザーが多いということ。
それも、どうやら写真をアップする際のフィルターに人気の秘密があると突き止め、勇気を持ってBurbnを終了させ、Instagramとして作り変えた。
当時は写真を保管するアプリとソーシャルアプリは多く存在していたが、その2つを上手に掛け合わせ、それもユーザーがフィルターを選んでいる最中にアップを行うことで、スムーズな利用体験を提供した。
サービスをピボットしたことが転機となる
このサービスの内容を変更したのは、俗に 「ピボット」と呼ばれる手法。
サービスはしばしば、ユーザーの利用パターンを分析して、より喜んでもらえる体験を提供するためにその価値を変更することがある。
多くの人気サービスは元々異なる内容でスタートし、ピボットすることでヒットしたケースが少なくない。
実は最初はサイドプロジェクトだった
ちなみに、ファウンダーのKevinが一人でBurbnを作っていた頃は、Nextop.comというトラベル系のサービスを提供するスタートアップでプロダクトマネージャーをしており、インスタはサイドプロジェクトであった。
多くのサービスがそうであるように、シリコンバレー界隈のスタートアップは週末の趣味の一環としてサイドプロジェクト的に始まることが多い。
資金調達のきっかけは、とあるパーティーでの出会い
自身のスタートアップを “本職” にするためには資金調達が不可欠になってきていた。しかし、彼らには投資家とのコネクションがなかった。
それを救ったのがHunchと呼ばれるスタートアップのオフィスでのカクテルパーティー。そのパーティーでKevinはベースラインベンチャーズとアンドリーセンホロウィッツの投資家2人にプロトタイプを見せたところ興味を持ってもらえた。
後日カフェでミーティングを行い、両社から合計50万ドルの投資を受けたことで、仕事を辞め、インスタの開発に専念することとなった。
その資金を元手にエンジニアを採用
資金調達を成功させたことで、スタンフォード大学のプログラムで出会ったエンジニアのMikeを共同創業者として迎えた。
このブラジル出身の25歳のエンジニアは、UXデザインの知識も持ち合わせており、プロダクトの成長に大きく貢献することになる。
1つの機能だけにフォーカス
Mikeがジョインしたタイミングで創業者の2人は、プロダクトを全面的に見直すことにした。彼らのテーマは 「1つの機能だけに徹底的にこだわること」。
そう、多くのサービスが複数の機能を実装しようとしている中で、その逆を考えた。1つのことしかできないけど、それが優れているサービスを作ることを。
一度サービスを停止し、作り替える
そこでインスタの前身となるBurbnのサービス停止を決断。ユーザーデータを分析し、最も使われている機能だけに集中することにした。
その結果、写真のアップロードとそれに対するLikeとコメントだけを抽出することを決め、新しいサービスに作り替えることを決定。
名前もInstagramに変更
ちなみに、このピボットでアプリの名前もBurbnからInstagramに変更することにした。この名前の由来はインスタント (Instant) と テレグラム (Telegram) の造語。
当時より本人たちはカメラっぽい響きもあるこの名前を非常に気に入っていた。
初期バージョンのインスタ開発秘話
それからの8週間、創業者の2人は昼夜を問わずInstagramを完成させるために開発を続けた。
友人に共有し、ベータ版でテストし、バグを修正した。例えば、当時はパスワードに「@」記号が含まれていると、ユーザーの携帯電話上でアプリがクラッシュするというバグがあった。
また、最初は30種類以上あったフィルターから11種類に絞った。
これらの決定は、「根拠も理由もなく、ただ多くの実験とベータユーザーからのフィードバック」によってなされた。まさに追い込みの時期だった。
その理由はただ一つ、「できるだけ早くリリースしたかったから」だ。
そしてついにその日が来た!
2010年10月6日の午前0時15分にインスタはついに産声をあげた。
構想に1年、開発にはわずか8週間しか費やしていないこのアプリがその後世界のユーザーを熱狂させ、彼らを大金持ちにすることになる。
真夜中にアプリをリリースした創業者の2人は、しばらく誰も気づいてくれないと思い、少なくとも6時間は待ってみようと思っていた。
しかし、リリースの数分以内に、世界中からダウンロードが殺到し始めた。
いきなりダウンロードが急増
リリース後数時間で1万を超えるユーザーを獲得し、その日の終わりにはあまりにも増え続けるので、本人たちは「数え間違えてるのではないか?」と思ったほど。
もちろんサーバーの容量を追加するためにその日、彼らはほとんど睡眠を取れなかったという。
その後、発売後1週間が経過した時点で、インスタグラムは10万ダウンロードを突破。
その1週間後にはさらに10万人がアプリをダウンロードし、そして12月中旬には、100万人のユーザーを抱えるまでに成長した。
ヒットの秘訣はそのリリースタイミング
インスタがここまで当初からヒットしたのは、おそらくそのリリースのタイミングであったと考えられる。
というのも、世界初のスマホ、iPhoneが発表されたのが2007年。App Storeが公開されたのが2008年。
一般ユーザーがスマホを使い始めるのに1-2年かかったことを考えると、インスタがリリースされた2010年は、モバイルSNSアプリにとっては最高のタイミングだったと考えられる。
そしてマークザッカーバーグによって10億ドルで買収される
世界中から3000万人以上のユーザーを獲得したインスタは、リリースからわずか551日、スタッフ数は12人。全く収益のない状態でFacebookに10億ドルで買収されることになった。
インスタ成功の時系列
これまで12年のインスタの歴史を時系列で振り返ってみよう。
2009年
- 10/21 Instagramの前身となるサービス「Burbn」が登場。Kevin Systrom氏が開発
2010年
- 10/6 Instagramをリリース。リリース1週間で10万人のユーザー数が集まる
- 12/12 ユーザー数が100万人を突破
2011年
- 1月 ハッシュタグの機能が追加される
- 6月 MAU数が500万人を突破
- 9月 MAU数が1,000万人を突破
2012年
- 4/3 Andoroid版のアプリがリリース。1日経たずして100万回以上DLされる
- 4/19 FacebookがInstagramを約10億米ドルで買収
- 4/30 MAU数が5000万人を突破
- 6/1 発見タブ機能が搭載される
2016年
- 3月 日本国内における月間アクティブユーザー数が1200万人を突破
- 3/15 フィード投稿の表示順が時系列からアルゴリズム順に変わる
- 5/11ブランドのアイコンとUIデザインが刷新。 カメラをモチーフにしたシンプルで虹色のグラデーションを強調したアイコンとなった
- 5月「Instagramインサイト」が搭載される。 これにより、投稿に対するインプレッション数やリーチ数などが分析できるように
- 6月 MAU数が5億人を突破
- 8/2 ストーリーズ機能が搭載される。日本でも同時期(2016年8月)に導入
- 9月 位置情報機能が削除される。ユーザーに広く使われなかったことが削除の理由とされている
- 11/21 ライブ配信機能が搭載される
- 12/10 日本におけるMAU数が1600万人を突破
- 12/15 MAU数が6億人を超える
2017年
- 2/22 カルーセル機能が搭載される
- 10月 日本におけるMAU数が2000万人を突破
- 12月「インスタ映え」がユーキャンの流行語大賞に
2018年
- 6月 日本版Instagramに「ショッピング機能」が搭載される
- 10月 IGTVが追加される
2019年
- 3月 米国で「チェックアウト機能」がリリースされ、Instagram上で購買が可能に。 本格的なソーシャルコマースの開始
- 6月 ブランドコンテンツ広告機能を搭載。企業はクリエイターの投稿を広告配信可能に
- 10月 フォローしているユーザーのアクティビティが表示される「アクティビティタブ」の機能が削除される
2020年
- 5月 ガイド機能が搭載される
- 7/8 短尺のフルスクリーン動画機能リールズが搭載される
- 9/29 消えるメッセージモード(DM) が搭載される
- 11月 米国でキーワード検索機能が搭載される
2021年
- 5月 いいね!の非表示が選べる機能が搭載
- 6月 地図検索機能が正式にリリースされる
インスタの成功の要因は「スピード感」
ここまでインスタの成功事例を綴ってきた。インスタがこれほどまでのヒットをが成功に至った要因はなんといってもそのスピード感といえるだろう。
完璧な状態でなくとも、アプリのアップデートができ次第すぐに世に出し、ユーザーの反応を見て良い方向に作り替えていく。とにかく「まずはやってみる」その姿勢が、2010年の最高のタイミングでアプリをリリースできた要因の一つである。
もしかしたら次はあなたの番?
このストーリーを読んでいる方の中にも、将来は世界に羽ばたくようなサービスやプロダクトを生み出したいと考えている方もいらっしゃるかもしれない。
もしそう考えているのではあれば、インスタの事例から学べることは、とにかく海外展開に向けて今できることを「始めてみる」ことが成功につながるということだ。
ぜひ、何かを始める際にはこのストーリーのエッセンスを思い出していただきたい。
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