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日本企業にイノベーションをもたらす次世代リーダーを育てる秘訣
新しい技術やサービスが発表されるスピードが格段に速くなり、競争が激化している現代において、日本企業はどのようなイノベーションを求めているのだろうか。また、どのようにイノベーションを起こそうとしているのだろうか。
イノベーションと一口に言っても様々な切り口があるが、今回は Disruptive Innovation (破壊的イノベーション) を中心に話をしたい。
破壊的イノベーションとは
既存製品やサービスに比べて性能が低くともユーザーの的確なニーズを抑え、既存市場のユーザーとは別のユーザーから強く支持されるようなイノベーションのこと。有名な例では、AppleのiPodやGoogleの検索エンジン, UberやAirbnbなどのシェアリングエコノミー企業が挙げられる。
これらの企業はご存知の通り、破壊的イノベーションを起こして急速な速度で成長し、世界の人々の生活や習慣を変えるほどの影響を及ぼしている。そこで今ではどの企業も破壊的イノベーションを起こす、又はその恩恵に預かろうと躍起になっている。
日本企業ももちろん例外ではない。簡単に50年から100年を超える歴史を持つ企業が多い日本だが、このままでは少子高齢化や人口減少などの深刻な問題から国内マーケットは収縮の一途だと恐れられている。
そこで事業のグローバル化が叫ばれるのだが、その「グローバル化」「イノベーション」というキーワードだけが横行し、具体的なアクションが暗中模索なケースが多い。
そこで以下のような疑問が浮かんでくる。
- 日本企業として目指すイノベーションとは何かしっかりと議論できているだろうか。
- 経営層以外にイノベーションについて議論しようというモチベーションのある社員はどの程度いるだろうか。
- モチベーションがあったとしても、彼らが芽を出せる場は与えられているだろうか。
イノベーションを起こすのも受け入れるのも人
イノベーションを起こすのは技術ではなく人
どんなに世界にインパクトを与えたイノベーションも最初は一人の人のアイディアから生まれるのだ。今サンフランシスコ・シリコンバレーでは世界中からアイディアを持った起業家が集まり、世界をよりよくするべくこぞってサービスを立ち上げている。何千人も優秀な社員を抱える日本企業はその人の強みを発揮できているのだろうか?
イノベーションを受け入れ、育てていくのは人
市場経済は神の見えざる手といって利己心による自由競争が生産と消費の均衡を保つと学校で習うが、当たり前のことながら消費するのは全て個人の集合体である人である(少なくとも今の時代までは)。いかにして人に選ばれ、愛され、繰り返し長期間利用されるサービス/製品を世に送り出せるかが勝負である。
イノベーションを起こすのも受け入れるのも人
当たり前のことのように聞こえるが、少し前の時代までは技術革新こそがイノベーションの真髄だと理解されていた。しかし技術革新が進むにつれ、技術だけで差別化を測ってユーザーにアピールすることが困難になってきた。
そこで10数年ほど前からシリコンバレーで主流になっているのがデザイン思考、人間中心設計だ。
これがイノベーションを起こすマインドセットである。
イノベーションを起こすマインドセット
Design Thinking (デザイン思考) とは
デザイン的プロセスを利用しクリエイティブなアプローチから、様々なビジネスの問題を解決する方法のことである。そのデザイン思考の重要な構成要素として、Human Centered Design (人間中心設計)・User Centered Designがあげられる。文字通り、テクノロジーや市場よりもユーザーや顧客のニーズにフォーカスし、彼らのニーズや問題を解決するようなサービスや製品をデザインすることである。
今シリコンバレー・サンフランシスコで大活躍しているユニコーンと呼ばれるスタートアップはどれもこれらのマインドセットやフレームワークを活用して破壊的イノベーションを起こしている。
詳しくはこちらの記事を参照:
- デザイン思考入門 Part 1 – デザイン思考の4つの基本的な考え方
- 【やっぱりよくわからない】デザイン思考ってなに?
- ビジネスにおけるユーザーエクスペリエンス (UX) の重要性
- デザインがビジネスに与える影響 〜収益週200ドルのAirbnbが急成長した秘訣とは〜
- デザイン最優先のAirbnbがユーザー獲得のために行う3つのマインドセット と4つのコアプロセス
デザイン思考の企業での活用方法
デザイン思考が重要なのは分かってる。問題はどのように自分の企業で実践すればいいのかが分からない。そんな時にまず考えて欲しいのが、なぜどのようにデザイン思考を社内で活用したいかということ。まとめるとデザイン思考は、下記の課題を達成したい全ての企業に有効だと言える。
- 新規の製品やサービスのプロトタイプを作成したい
- 潜在的なビジネスチャンスをみつけたい
- 外部からのアイディアが欲しい
- 企業のカルチャーや組織構造に変革を与えたい
- イノベーション創出のきっかけが欲しい
企業によってどんなステージにあるかは異なるであろう。意思決定のタイミングやプロセスも大きく影響するだろう。ただ企業として10年後、30年後も前線を走り続けるために、イノベーションを起こすための人材のマインドセットを変え、育てていくことはそう簡単に達成できるものではない。
そんな日本企業のために、弊社btraxでは、デザイン思考・人間中心設計を基盤としてイノベーションを起こすマインドセットを体得するというサービスを次世代リーダー育成 兼 新規サービス創出のために提供している。
btraxのInnovation Programとは?
我々のInnovation Programとは、基本的に日本企業から3〜5名ほどの小さなチームを作ってサンフランシスコへ渡米し、約5週間かけてデザイン思考・人間中心設計のメンタリティや手法を学びながら実践し、最後には実際に考案した新サービスアイディアを多種多様な人が集まるサンフランシスコの地元オーディエンスにピッチをしてフィードバックを得て日本へ持って帰るというもの。
btraxが提供するInnovation Programの基礎カリキュラム
- Innovation Bootcamp
企業の意思決定者・経営層向けに「なぜInnovation Programに投資して人を送る価値があるか」を理解していただくための3日間。多種多様な企業から集まって参加者をつのり、SFのスタートアップエコシステムの理解とデザイン思考ワークショップの体験が中心。 - Innovation Sprint
Bootcamp同様の目的だが、いち企業から複数の部署の意思決定者を集めて行う。 - Innovation Academy
冒頭で説明したような5週間のプログラム。スタートアップ訪問、フィールドワーク、ユーザーリサーチ、アイディエーション、バリュープロポジション、ラッピドプロトタイプ、ピッチを行う。参加者は3〜5名程度で、過去のクライアントでは平均して4年目〜10年目の方が中心。職種は問わず、ビジネスクリエイターからエンジニア、研究開発者まで。 - Innovation Lab
Innovation Academyで作り上げたサービスアイディアのラフプロトタイプを作り、それを用いてユーザーテスト・インタビューを行い、そこで得られたフィードバックを元にイテレーションをするというプロセスを約5週間で3回ほど繰り返す。その間にターゲットユーザーペルソナやカスタマージャーニーマップ、バリュープロポジションを仕上げていく。最終的に現地のユーザーへ向けてピッチをし、コンセプトバリデーションをして日本へ持ち帰る。
実践の重要さ
どのプログラムにおいても始めに「なぜ日本企業に今イノベーションが必要なのか」という問いかけから始まり、デザイン思考や人間中心的デザインがイノベーションを起こすのにおいてどのくらいパワフルなのかということを伝授する。
そこまでにおいて頭では何となく理解できることかもしれないが、実践を通じて自分で実感するほど納得のいく方法はない。逆に言うとそこまでしないとマインドセットを変えることはできない。
そこで弊社のInnovation Programではただの研修や出張ではなく、デザイン思考のカルチャーが染み渡っているサンフランシスコの地に身を置いて、スタートアップと肩を並べ、人間中心的デザインの発想をもって新しいサービス・製品アイディアを考案し、コンセプトを検証するという実践を重視している。
上記では4つの基礎カリキュラムを紹介したが、各企業の希望やニーズに合わせてテーマを設定したり、日程を調整したり、カスタマイズしながら短期間で最大の効果を引き出す努力をしている。
実際のInnovation Programの成果とは?
参加される企業によって、次世代リーダー育成と新規サービス創出の二つの目的のバランスは異なる。しかしあくまでもメインは次世代リーダー育成であり、イノベーションを起こすためのマインドセットの体得やそれを周りを巻き込んで伝播していける人に育てることが重要視される。
人の成長や変化を数値で測ることはとても難しいことなのだが、ほぼ毎回「あのタイミングであの人の思考や行動が変わったよね」と分かるようなポイントが来るのだから不思議である。
渡米してから2週間後に「AHA!モーメント」が訪れ腑に落ちる
多くの場合、初めはイノベーションについて考えることに慣れていなかったり、デザイン思考について頭では分かっていてもどこか納得がいっていない場合が多い。
アイディアを考える時も日本で勤めていた時の感覚ですぐにビジネスモデルを意識してしまったり、上司の評価を気にしたり、ターゲットを絞ることに抵抗感があったりと理由は様々だが、なかなかユーザーのニーズや課題が本当に何かを深く考えるところでつまづいてしまう。
また、世界中から集まっているスタートアップのピッチを聞いても「何そのしょうもないサービス」と、テクノロジーや目新しさのみで判断してしまう。
しかしサンフランシスコのスタートアップとの交流を通じて彼らがデザイン思考を実践している様子を目の当たりにすると彼らの熱意やユーザー目線のメッセージングに感銘し、人間中心的にデザインするためのフレームワークを使い網羅的に考えていく中でAHA!モーメントが訪れ腑に落ちる。
面白いことに平均して渡米されてから2週間経ったあとくらいにこのAHA!モーメントを迎える人が多い。やはりマインドセットを変えるにはそれなりに解釈して納得する時間が必要であり、それをブーストするためにはきっちりとステージングを用意する必要がある。
それが慣れ親しんだ日本という環境を離れ、大企業という母体から切り離されて、サンフランシスコでスタートアップと肩を並べて集中して取り組むという我々のプログラムなのだ。
まとめ
イノベーションを起こすのも受け入れるのも人。日本企業にイノベーションをもたらす次世代リーダーを育てる秘訣はやはりマインドセットを変えること。イノベーションについて考え、デザイン思考・人間中心的デザインのマインドを持って潜在的ユーザーのニーズや課題の核心を定義し、独自の解決策をサービスとして作っていける人材を出来るだけ社内で増やしたい。
また大企業である限り、そのような人材を評価できる意思決定者の理解とコミットメントは不可欠である。
次回はInnovation Programのケーススタディを通して実際に日本企業から参加してくださった方々のマインドセットがどのように変わったのかをみてみたい。
会社を変えたいがどうしてよいか分からない、日本にもアメリカと似たようなサービスがあるのになぜ広まらないか分からない、デザイン思考について独自に学んでいるが仕事に活かせていない、イノベーションについて知りたいがどこから始めていいか分からない、
優秀な部下を育てたいがそこらの研修じゃ満足がいかない…などなどお悩みをお持ちの方は、まずはぜひ気軽に弊社までご相談いただきたい。
また、Innovation Programに興味があるが質問や疑問のある方もぜひお声がけ頂きたい。
Come talk to us!
筆者: Itsuko Yamada / Innovation Project Manager, btrax, Inc.
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