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アップルを動かしているのは、いまでもジョブズだ【インタビュー①】元アップル エバンジェリスト/VC ガイ・カワサキ
「道に迷わなかった?アップルの新しいマップを使っていたら、いまごろパリに着いていただろうね!」
インタビュー会場に到着して開口一番、ガイ・カワサキ氏はそう言って笑顔を見せた。
米アップル共同創業者スティーブ・ジョブズ氏が亡くなってもアップルの勢いは衰えず、最近発売されたiPhone5の売れ行きも好調だ。株価は最高値を更新し続け、時価総額で世界一の企業になっている。しかし一方で、iOS6のマップの不具合に対して世界中から不満が続出し、それに対してCEOティム・クック氏が謝罪を表明するなど、ユーザーに「ジョブズ氏亡き後のアップルは変わってしまった」と感じさせる出来事も見受けられる。
今回、そんなアップルの黎明期だった1984年に参画、マッキントッシュの成功に寄与し、現在は起業家/ベンチャーキャピタリストとして活躍しているガイ・カワサキ氏に話を聞いた。インタビューはシリコンバレーにある落ち着いた雰囲気のレストランで、昼食を取りながら始終リラックスした雰囲気で進められた。
◆話者プロフィール◆
ゲストトーカー:Guy Kawasaki (ガイ・カワサキ)
Guy Kawasaki
起業家、ベンチャーキャピタリスト。Alltop共同創業者、Garage Technology Ventures共同設立者。アップルでエバンジェリストとして活躍し、その後の起業した経験を元に「人を魅了する」「起業成功マニュアル」などの本を執筆。人気ブロガーとしてWEBでの影響力も大きい。カリフォルニア大学ロサンゼルス校MBA。ハワイ生まれの日系アメリカ人。
(ガイ・カワサキ氏に関するNAVERまとめは、こちら。)
インタビュアー:Brandon K. HIll (ブランドン・片山・ヒル )
btrax, Inc. CEO @BrandonKHill
サンフランシスコ州立大学デザイン科卒。北海道札幌市出身の日米ハーフ。高校卒業時までほぼ日本で育ち、1997年アメリカサンフランシスコに移住。現在は サンフランシスコに本社のあるグローバル市場向けBranding / Marketing 会社btrax, Inc. CEO。今後の目標は日本の若い起業家、起業家志望者に向け、より多くの成功事例を見せる事により、世界進出の夢を与えること。
アップルの製品は、今もジョブズの意志で作られている
ブランドン・ヒル氏(以下BH):今日は何の日だか分かりますか?
ガイ・カワサキ氏(以下GK):うーん、なんだろう?
BH: 今日はガイさんがジョブズの死後、「スティーブ・ジョブズから学んだこと」という記事を発表した日からちょうど1年目です。ジョブズが亡くなったのが10月5日、ガイさんが記事をC-NETに掲載したのが3日後の10月8日でした。あの記事にはFacebookのLikeが7300もついてましたね。
ジョブズが亡くなってから1年経ちましたが、アップルは変わったと思いますか?
GK: アップルの製品は、今もジョブズの意志で作られていると思う。7インチのiPad miniがでるみたいだけど、これもおそらくそうだろう。アップルの大きな失敗は、もっと早く7インチのiPadを作らなかったことだね。いまネクサス7を使っているんだけど、これは完璧なサイズ。iPadは持ち運ぶのに重すぎる。
iPhoneの新しいドック・コネクターもあまりよくないね。SIMカードのサイズも変えたみたいだし、Macbook系もコネクターが新しくなっている。何かを変更することは別にいいと思うけど、でも何のために?この変更でアップルは何を得るのか?全く理解できないよ。
でも、「スティーブ・ジョブズがいたらこういう事はしなかっただろう」って言われるかもしれないけど、僕は「スティーブがいても同じ事をしただろう」と思うよ。
「もうiPhoneは使っていない。Androidに切り替えた」
BH: iPhone5は持っていますか?
GK: ああ、持っているよ。2つもらって、1つは息子にあげた。もう1つはオーストラリアでもらったものだから、ここで使えるかどうかわからない。今使っている携帯のSIMカードを入れるだけならいいんだけど、そんな簡単な話じゃなさそうだからね。AT&Tストアに行ってみなくちゃいけないんだけど、いろいろやり取りが出てきそうで…ちょっと今は試す気はないな。
もう1人の息子はiPhone4をiOS6にアップデートしたんだけど、新しいマップにイライラしていたよ。
僕は、Macは使っているけど、iPhoneやiPadのようなiOS機器は実は使っていないんだ。Androidのみだよ。前はiPhoneを使っていたんだけど、Googleネクサスの時にAndroidに変えた。今はサムソンのギャラクシーを使っている。ウィジェット、同時に複数のアプリを起動できるところ、NFC(近距離無線通信、いわゆるおサイフケータイ)が気に入っているよ。
自分にとってiPhoneを使うことは義務ではないんだ。僕はただいいものを使いたいだけ。今はAndroidの方がいいと思っている。これこそThink Differentだろ?
BH: Apple製品を使う義務は無いのですか?
GK: なぜだい? 誰からも頼まれて無いのに? 僕はその時に一番使いやすいと思うものを使うんだ。
エバンジェリストという仕事
BH: 既に知っている方も多いとは思いますが、念のために、少しガイさんの経歴についてお話いただけませんか。
GK: 僕はハワイのホノルルで生まれ育って、大学はスタンフォードに行ったんだ。そのあとカリフォルニア大学のロースクールに入ったんだけど、2週間で辞めて、UCLAに入り直してMBAを取得。卒業後は宝石のセールスを5年間経験した。その後、コンピューターが大好きだったから小さなソフトウェア会社に転職したんだけど、その会社が買収されてしまってアトランタに移ることになったから辞めたんだ。
それからスタンフォード大でルームメイトだったマイク・ボイチの紹介でアップルに入社。アップルではエバンジェリスト(製品の啓発/PR活動をする役職。直訳は「伝道師」)をしていて、その後、ソフトウェアの会社を始めるためにアップルを辞めた。それで会社の経営、執筆、講演などをしていたんだけど、再びアップルに戻ることになる。それからまた会社を始めるために辞めて、今は基本的に執筆や講演をしているよ。
BH: 「エバンジェリスト」という仕事はガイさんが作ったんですか?
GK: いや、エバンジェリストは僕が入った時にすでにあった。当時のマッキントッシュ部門のマーケティング責任者が作ったもので、はじめのエバンジェリストはマイク・ボイチ、僕は2番めのエバンジェリスト。エバンジェリズムはマーケティングの一部だよ。
BH: エバンジェリストはどうやって評価されるんですか?
GK: リリースされたアプリケーションの数で評価される。
※マッキントッシュ発売当初は対応している外部アプリケーションがほとんど無かったため、他社にマック用のアプリ開発を説得する必要があり、エバンジェリストがその役割を担っていた。
アップルに関係する人間で最も有名な3人は?
BH: シリコンバレーでガイさんはとても有名ですが、それはアップルの経験からでしょうか?それとも…
GK: アップルの経験からだろうね。「アップルに関係する人間で有名なのは、ジョブズとアップルの共同設立者のウォズ、そしてガイ・カワサキ」だって言われるんだ。フィル・シラーを知っている人はいったい何人いると思う?ジョナサン・アイブは?…フィルはマーケティング、ジョナサンはデザインの担当。知らない人が多いよね。ウォズと僕はもう何年もアップルと関係がないのに、不思議だよ(笑)
僕が働いているとき、スカリー、スピンドラー、アメリオ、ジョブズ…たくさんCEOが変わったよ。
はじめアップルで働いていた期間、84年から87年はソフトウェアエバンジェリスト、その次にアップルに戻ったとき、95から97年はチーフエバンジェリストだった。
BH: どうしてアップルに戻ったんですか?
GK: 95年、アップルは死にそうだと言われていたからね。僕はアップルを愛していたから、また戻ろうと思った。そのままアップルに残ったら、大金を稼げたんだろうけど…でも僕の仕事は完了したと思ったから、2度目に戻ったあともまた辞めたんだ。まあ、今から考えると残っていたらもうひと財産稼げたんだろけど…。惜しかったな (笑)
続き(インタビュー②)はこちらから
Twitter、Facebook、google+…3つのソーシャルメディアの違いとは?【インタビュー②】
編集後記
あのガイ・カワサキさんにインタビューできるということで緊張して望んだのですが、とてもフレンドリーに接していただき、すごい人ほど謙虚であるという事を実感しました。
日本ではご存じない方もいらっしゃるかもしれませんが、ガイさんはオピニオンリーダーとしてアメリカではとても影響力が強く、ベンチャーキャピタリストとしてだけではなくベストセラー著者、ブロガーとしても有名です(Twitterのフォロワーは117万人、google+だと320万人)。
今回、「ジョブズがいなくなってアップルは変わってしまった」というお話を伺えるかと思ったのですが、実際は全く逆で、長年ジョブズの近くで過ごしてきたガイさんにしか見えない「アップルの今」がある、ということが感じられました。またiPhoneもiPadも使っていないということも驚きで、「とにかく今の自分にとっていいと思えるものを使いたい」というこだわりが印象的でした。
このインタビューでは他に日本についての話や、ガイさんが最近出版した本などについてもお伺いしました。続きの記事はまたこちらにアップ予定ですのでしばらくお待ち下さい!
【追記】
インタビュー②、③も掲載いたしました。
インタビュー②
Twitter、Facebook、google+…3つのソーシャルメディアの違いとは?
インタビュー③
セルフパブリッシングと日本の英語事情
【お知らせ】
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文責:佐藤茜 (@AkaneSato)
写真:Greg C. Viloria(@socialgreg)
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■開催日時:
日本時間:2024年12月6日(金)9:00
米国時間:12月5日(木)16:00 PST / 19:00 EST
*このイベントはサンフランシスコで開催します。
■参加方法
- オンライン参加(こちらよりご登録いただけます。)
- 会場参加(限定席数) *サンフランシスコでの会場参加をご希望の方は下記までお申し込みまたはご連絡ください。(会場収容の関係上、ご希望に添えない場合がございます。予めご了承ください。)
- 対面申し込み:luma
- Email(英語):sf@btrax.com
世界有数の市場規模を誇る日本でのビジネス展開に向けて、貴重な学びの機会となりましたら幸いです。皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。