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なぜ「日本でヒットしてからグローバル展開」がダメなのか 10の理由
とある起業家は言った。
「成功のスケールが小さすぎるし、どうせアメリカの真似事のようなサービスばっかりなんで」
彼は日本の大学を出た後にサンフランシスコに来て、起業した。世界トップレベルの才能が集まるこの街は、スタートアップの中心地でもある。それゆえにとてつもなく競争は激しく、コストも高い。
だったら、日本で起業して上場を目指す方がより高い確率で成功できるのではないか?それも、比較的コストを下げながら品質の高いチームを構成して。
でもその選択肢を選ばなかった。最初から世界に勝負して、グローバルに通用するサービスを生み出したい。その気持ちが現在の彼を動かしている。
まずは国内で成功してから海外進出はNG
その一方で、多くの企業がまずは日本国内でサービスを展開し、その後でグローバル展開を進めようとするケースが多い。これは一見ロジカルで、理に適っているように思われる。
国内でしっかりとした顧客と経営基盤を整え、黒字化し、そこから得られる資金をもとに次のステップとして海外進出を行う。
でも実はこのやり方、変化のスピードが速い現代においては、かなり難しい。これまでにも実際にそうしようとして失敗したり、いつまで経っても国外への進出ができずにいるケースをたくさん見てきた。
では、それが良くないと思われる理由をいくつか説明する。
日本向けのガラパゴスなプロダクトが生まれる
まず日本市場向けに展開していくデメリットがこれ。世界的に見ても日本のユーザーはかなりユニークな特性を持っており、そのニーズに対応するプロダクトのその多くが、海外ユーザーには使ってもらいにくい。
例えば、B2C系のサービスであれば、日本だとある程度複雑な利用体験でも教育レベルの高いユーザーがちゃんと理解して使ってくれたり、B2Bであれば、それぞれの企業に対してカスタマイズした機能が求められたりなど。
総じて、日本国内のユーザー向けプロダクトのその多くが海外ユーザーからすると、かなり使いにくいものになりがち。楽天市場やLINEが良い例だろう。
営業ヘビーな集客方法
日本国内向けの商品やサービスを展開する際には多くの場合、営業手法が重要になってくる。販路開拓やユーザー獲得を営業と広告をメインに行うのがまだまだ一般的だ。
その一方で、海外向けに展開する際には、そのエリアの広さとチャンネルの多さが理由で、地道な営業をするのとマスでの広告を打つのが難しい。
そのため、プロダクト自体のクオリティーをあげたり、ブランドをしっかりと構築したり、デジタルマーケティングを上手に活用したり、イベント出店で派手に目立ったりする必要がある。
しかし、一回国内での顧客獲得手法に慣れてしまうと、その武器を使わずに顧客を獲得する手法がわからなくなってしまう。特にプロダクト自体の品質を高めることに意識が行かなくなり、世界的に見ても商品の競争力が低くなりがちになる。
チームメンバーが日本人だけになる
日本の企業なんだからスタッフが日本人であることに違和感はないだろう。まずは日本国内市場向けの商品を作るのだから、日本人のニーズをしっかりと把握しているスタッフである必要がある。
そして、同じバックグラウンドを持つスタッフ同士は共通点も多く、意思疎通が取りやすいし、仕事の効率も上げやすい。でもこれが実は海外展開をしようとした際の日本企業にとっては大きなハンデとなる。
現代の世界市場において異なる地域の異なるユーザーの気持ちを理解し、それに適したプロダクトを作り出すにはチームメンバーも多種多様である方が有利になる。逆に異なる文化や考え方を持たない人たちだけで構成させたチームは、創造力やアイディアの面で限界値が低くなりがち。
日本語のサービスができてしまう
これは本当に当たり前すぎる話なのだが、日本国内向けの商品やサービスは自ずとそこに記載される言語は日本語である。でもこれ、日本国外のユーザーにはほぼほぼ理解してもらえない言語。
世界の人口が70-80億人、日本の人口が1.2億人程度と考えれば、単純計算で、世界中で日本語を理解する人たちの数は全体の1.7%ほどだろう。
もしこれを最初から英語にしていたとすれば、おそらく世界の半分以上の人たちが、どうにか利用することが出来る。
それを考えてみても、日本国内向けに日本語だけが記載されているプロダクトを一回作っちゃうと、英語化させるのはあまり効率が良くないと感じる。
いずれは黒船にやられる
その昔、Mixiというサービスが存在していた。日本国内でトップのユーザー数を誇るSNSだった。しかし、時間が経つにつれ後発のFacebookにユーザーが移行。最終的に「マイミク登録して良いですか?」と聞く人はほぼほぼいなくなった。
そう。サービスの内容によっては、最初のうちは日本でヒットしていても、しばらくすると海外、特にシリコンバレー系のスタートアップが進出してきて駆逐される可能性もある。
メルカリは創業当初からアメリカ市場も同時に展開をスタートしていたが、その一番の理由が、最初からMixiのように類似の海外サービスと同じタイムラインで、互角に勝負できるようになっているためだった。
最適なタイミングを逃してしまう
変化のスピードが飛躍的に上がっているここ数年において、プロダクトがヒットするかどうかは市場への参入タイミングによることが多い。一旦日本マーケットヒットしてから海外に出すのは、既にタイミングがずれている可能性が高い。
また、もし日本国内で大ヒットしている製品があったとする。しかし、後発だったとしても先に世界マーケットをつかんだ方が成功しやすい。
例えば、オロナミンCやリポビタンDはレッドブルよりもよっぽど前から国内で発売された。しかし、レッドブルは、世界市場向けのブランディングとマーケティングで、後発ながら一気にエナジードリンクの代名詞になった。
“本場” の下手なこだわりが出てきてしまう
海外でヒットしやすいプロダクトの一つとして「日本っぽさ」を売りにしたものがある。以前からあるのが寿司、マンガ、ゲーム。最近だとラーメンとかだろうか。
その多くが、海外市場に合わせて結構ローカライズされており、生粋の日本人からすると少し「邪道」な感じのものもある。例えばカリフォルニアロールなどが挙げられる。
でも、それは決して邪道ではなく、海外の消費者が求める内容を追求し、臨機応変に対応した結果である。これが日本国内でじっくりと成長させすぎて、オーセンティックすぎる状態だと、海外で融通が効かない商品になってしまうかもしれない。
国内の株主/投資家からのプレッシャーが続く
これは日本でスタートアップをやっている友人から聞いた話なのだが、国内の投資家向けに資金調達の際に海外市場を視野に入れているという説明をすると、投資家から良い顔をされないという。場合によっては、そのスライドを削除するように依頼されたことも。
そう。経営を安定させるためにはなるべくリスク要因を減らしたい。となってくると、ある程度やり方が見えている国内市場でしっかりと売上と利益を上げて欲しいと思うのは当然で、投資家としてもそれを望むだろう。
最初から海外市場を狙うとなれば、そこにそれなりのコストと不確定要素が発生し、リスク要因が高まる。
確実にリターンを出したいと思う投資家からすると、夢を語るのは良いが、その前にしっかりと結果を求めるのは理解できる。
でも、ここには落とし穴がある。一回国内向けにビジネス展開すると投資家にコミットしてしまったら、その後は、ほぼ半永久的に海外展開はしにくくなる。彼らが求めるのは着実なリターンであって、世界制覇ではない。
まずは国内上場を目指してしまうことのハンデ
もし会社が未上場のベンチャー企業だったとすると、まず直近の目標は国内での上場だろう。そうなってくると多くの場合、なるべくコストを下げて黒字化を目指すことになる。
以前にシリコンバレーに進出し、海外展開をおこなっている数々の日本のベンチャー企業の方々にお会いしたことがあるが、その中で結構な数の人たちが予定より早めに日本に戻っていた。
その理由が、日本国内での業績が高まっていて、上場準備をするため。よりコストを下げ、利益率をアップし、IPOの価格を上げるために海外拠点をクローズするという。
まあ、上場したらまたチャレンジするとは言っていたが、その後も音沙汰がない。おそらく、上場してからはそれ以前よりももっとやりにくくなっているはず。やっぱ株価が重要だし、短期間で利益の出ない活動に株主からのメスが入りがちだから。
そして何より上場したあとは、完全に国内市場にオプティマイズされた経営戦略に集中せざるを得なくなる。
安易な逃げ場ができてしまう
やっぱり海外で勝負するのはかなりしんどい。時間もコストも国内とは比べ物にならないほどかかるし、何より誰も知らない土地で、一からスタートしないければならないことも多い。
そんな時に居心地の良い日本で安定した経営をおこなっているなら、どうしても戻りたくなってしまう。それが人間の本能だと思う。
でももし最初から海外向けに展開していて、戻る場所がなければどうだろうか?おそらく背水の陣で頑張れるはず。
一体何組の大物アーティストが海外展開を試みたものの、うまくいかずにこっそり日本に戻ってきていることだろうか…。
まとめ: 君が狙うのは世界の2%以下で良いのか?
国内にそれなりの市場と需要がある日本の場合、無理に海外進出をする必要はないと感じるかもしれない。今のところは。でも今後の変化を考えると、国内にとどまっているのは必ずしも正しい判断とは言えない気もする。
消費が萎み、物価は上がらず、労働力も減る。その上、海外からの類似商品がどんどんやってくる。
そんな中で、ユニクロやTreasure Dataのような企業はグローバルで消費者を獲得し、世界のブランドとしての展開を着実に進めている。
これからは最初から世界を目指す企業が増えることを切に願う。
我々も微力ながら少しでも多くの日本企業が世界で活躍できるためのサポートができればと思っている。世界人口の98%を逃さないために。