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「サンフランシスコへの出発が1日おくれていたらGoodpatchはなかった。」【インタビュー】土屋尚史氏
「サンフランシスコへの出発が1日おくれていたら、Goodpatchはなかった。」
サンフランシスコで面接を受けるため日本をたった翌日に、東日本大震災が起こった。日本中で色んな人の人生が変わった震災であるが、その震災前日に渡米。その後、サンフランシスコでのインターンを経て、Goodpatchを起業。
今ではUIデザインの会社として広く知られるGoodpatch Inc, CEOである土屋尚史氏に起業までの経験を語っていただいた。
ウェブ制作会社の会社員だった
Q. サンフランシスコに行く前は何をされていたんですか?
大学を中退後、数年ほどWEB制作会社のディレクターをやっていました。
当時はtwitterが出てきて、iPhoneが出てきて、新しいサービスやプロダクトがどんどん出てきている。そんな中で新しいものはやらないっていうのが会社の方針でした。業務をこなしていく中で、会社と自分のやりたい方向性が違っていたので、自身で起業をしようと辞めるチャンスを伺っていたました。
空から500万円が降ってきた
そんなとき、一通の手紙が届きました。500万円の10年定期預金が貯まりました、と。でも全く身に覚えがないんですね(笑)。それで母親に聞いてもわからないと。
どうやら、当時既に亡くなっていた祖母が自分のために定期預金を作ってくれていたらしいとわかりました。これはもう、今こそ企業するタイミングだと天から言われているような気がして、起業を決意しました。ただ、当時はまだ起業のアイデアがなかったので、ヒントを得るために経営者の講演など様々なイベントに参加していました。
海外に行っちゃいけない条件が揃っていた
シリコンバレー行きのきっかけとなったのはDeNAの南場さんの講演でした。当時、生活の半分をシリコンバレーで過ごしていた南場さんの講演では、日本のスタートアップベンチャーとシリコンバレーのは成り立ちがまるで違うとっていう話をされていました。
シリコンバレーってのは、アメリカにあるんだけど、純粋なアメリカ人だけによって作られている会社ってほとんどない。
日本で成功することを考えて、その3年後に海外に進出しますとか、それでは遅い。最初から世界を目指していかないといけない、日本人だけでチームを作ってもだめだよってお話をきいて。
ただ、当時、海外に行っちゃいけない条件が揃っていました。まず、シリコンバレーに知り合いがいない。英語がしゃべれない。海外旅行に行ったことがない。パスポートがない。そして嫁と生まれたばかりの子どもがいる。会社を辞めて海外に行くなんてありえないような状況でした。
しかしここでシリコンバレーにいかなかったら俺の人生ないかもと思ってしまっていたんです。極度の思い込みの激しさですよね(笑)。でも、本当にそのとき思ってしまっていた。そして次の日にはシリコンバレーへ行く決意を固めていました。
Q. どういう経緯でbtraxで働くことになったんですか?
シリコンバレーで働ける場所を探して、働き口を知っている人を探しまわっていました。そんな時に、イベントで、現在はChatworkの代表取締役である山本さんとお会いして、シリコンバレーにはいないけどサンフランシスコなら一人一度ご飯にいったことがある人がいるよ、と。そんな経緯でなんとかBrandonさんを紹介していただき、レジュメを送りました。その後、面接でBrandonさんと実際にお話し、働けることが決まりました。
明日の家がない
住む場所は日本から色々頑張っても決まらないから、とりあえずサンフランシスコに来てから探せと、Brandonさんに言われていたこともあり、まずはホテルを1週間分とっていたんです。そしてサンフランシスコに到着後、自分は会社に行き、妻がホテルからメールを送り続けていました。
しかし、全然メールの返信が来ない。そんな中、ホテルチェックアウトの日がついに翌日という日をついに迎えてしまいました。明日にはホテルを出ないといけない。そこで、会社でBrandonさんに相談しました。すると
「お前なにやってんだ、ばかかって。こんなメールで来るわけないだろ。craisgslistで返信をもらうためには、英語特有のノリが必要なんだ!」
と言われ、知るかよって(笑)。しかし、その後Brandonさんの助けもあり、すぐに家が決まりました。Japantownのあたりのサブレットです。カップル2人がバケーション期間中貸してくれたんですね。
Co-working space – Dogpatch Labsとの出会い
Q. サンフランシスコの滞在中で一番衝撃を受けたものは何ですか?
サンフランシスコのオフィスに衝撃を受けました。これが本当にクリエイティブなオフィスなんだ!、と思って。様々なコワーキングスペースに行ったんですが、その中でも一番衝撃を受けたのがDogpatchLabsというオフィスでした。オフィスなのにソファーがあって、くつろぎながら仕事している人もいて。びっくりしました。
ランチ時になると、違う会社の人たちが集まって勝手にその場に要る人にピッチをし出すっていう環境があって。プレゼン後には積極的に聞いていた人たちが質問し、議論を行っていました。こういう環境だから、イノベーティブなプロダクトが出てくるのか、こういう環境が日本に必要だよねって強く感じました。
最初からUIに力を入れている
もう1つ大きな違いがありました。スタートアップのアプリの作り方が全然違いました。当時の日本では、iPhoneアプリをつくれることがすごい状態でした。つまりデザインは二の次。WEBサイトをそのままアプリにぶちこむことも普通にありました。そもそも日本ではUIデザイナーという職種すら当時ありませんでした。
しかし、サンフランシスコでは、ベータの段階からUIに力をいれてる。いらないものは極力そぎおとし、ユーザーがどういうシチュエーションで使うか、どういう体験をしてもらうかを考えてアプリをデザインしていました。
さらに、経営陣にデザイナーがいることにも驚きました。経営陣がデザインの重要性を理解している。これからは、日本からも世界中で使えるようなアプリを出して行くためにはUIをつくらないといけない。そう思ってUIに特化した会社を起業しました。
デザインの重要性がどんどん増してきている
ここ数年で日本のメーカーが海外のメーカーにどんどん負けていきました。これから日本のメーカーはもうスマホ作らないんじゃないかって思うくらい。彼らはここ十年間、機能やスペックに投資してきましたよね。1000万画素を1500万画素にしたり、そした定量的に測れる価値を上げるために大きな金額の投資をしてきました。
でもデザインってなかなか定量で図れるものばかりではないですよね。一方で、10年前にまだまだだったLGやSumsungといった韓国メーカーは、IDEOなどデザインコンサルティングファームと連携して、ユーザー中心にデザインする手法を学び、成功していった。
飾りとしてのデザインではなく、どういうターゲットにプロダクトを提供するべきか、どうやって価値を体験してもらうか、そしてどうやってお金を稼ぎ、どのようなマーケットのポジションを取っていくかなど、プロダクトを作る上での全てのフェーズでデザインが重要な役割を果たして行く必要があります。
今後はビジュアルデザインフェーズだけに関わるデザイナーではなく、プロダクトの頭からお尻まで関わって、プロダクトをより良いモノに推進していけるデザイナーが日本でも求められていくのではないでしょうか。
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