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顧客体験を向上させる、Eコマースでの購買プロセスデザインと成功事例3選
近年ますます増えているEコマースの利用。なんとアメリカでは消費の半分がAmazon経由だというデータもある。
今回は、そんなEコマースにおいて、他のショップとの差別化要因になる購買体験を提供できる方法、そしてそれぞれをうまく取り入れている事例をご紹介する。
1) BOPIS
“Buy Online Pickup In Store”、通称BOPISとは、ECサイトやアプリなどオンラインで購入した商品を実店舗で受け取ることだ。
新型コロナウイルスの流行が始まってから日米で特に注目を集めるようになった。
自粛によりECサイトで買い物をする人が増え、「店舗に足を運んだとしても、短時間で済ませたい」「でもやはり、一回試着してから決めたい」「商品を好きな時に店舗で受け取りたい」などのニーズが生まれ、一気に普及したとみられる。
消費者としては、ECで品物を選んだ上で来店できるので、店舗を歩き回ってほしいものを探す必要がなく、かつ送料がかからず購入できる、という「いいとこどり」ができることが大きなメリットだ。
中でも洋服を取り扱う店舗では、ECで注文したのち店舗で試着をするなど、本当にサイズが合うものか、自分に似合うものなのかを見極めて購入できることもメリットとなる。
BOPISの成功事例:Walmart
Walmartはアメリカの大手日用品、食用品店。アメリカ大手企業のEコマースのシェアにおいて、Amazonに次ぐ2位となっている。
その要因として、BOPISをうまく活用していることも一因に挙げられるだろう。
2022年6月時点における、アメリカのEコマースでの企業の市場シェア (Statistaより)
Walmartは、オンラインで注文した商品を店舗の駐車場で車に居ながらにして受け取れる、Curbside Pickup(カーブサイド・ピックアップ)を取り入れている。
使い方はとても簡単。オンラインショップで必要な商品を購入したのち、支払いの際に「ピックアップ」オプションを付けるだけで、Walmartの従業員が商品をピックアップし、駐車場まで持ってきてくれるシステムだ。
車から降りることなくスムーズに買い物をすることができることで人気を集めている。
また、もう一つの取り組みとして、店舗にBOPIS専用の受け取りカウンター、通称「ピックアップ・タワー」も設置している。
ピックアップ・タワーでは、取り出し口近くにスマホのQRコードをかざすと、商品が運ばれてくる仕組みで、受け取りカウンターに並ばずとも商品を受け取ることができる。
ここまで読み進めている読者の方の中には、カーブサイドピックアップやピックアップタワーよりも、家に居ながらにして商品を受け取れるオンラインショッピングの方が便利ではないかと考える方もいらっしゃるかもしれない。
カーブサイドピックアップの最大の利点は、当日受け取りが可能なことであると考える。
オンラインショッピングであれば受け取りは最短でも翌日、そして最短での配送にする場合は追加の費用がかかるケースもあるだろう。
しか特に日用品や食品は、思い立ったその日に必要ということも少なくない。
そんなシーンにおいて、Walmartのカーブサイドピックアップは、思い立ったその日に、オンラインで商品を注文でき、その日のうちにレジに並ぶ手間などもなく商品を受け取れるため、重宝されているのではないだろうか。
2) カンバセーショナル・コマース
カンバセーショナル・コマースとは、販売業者がテクノロジーを使ってリアルタイムに顧客と対話して、購買行動をサポートすることを指す。
また、PwCの調査によると、カスタマーエクスペリエンスのうちで最も重要視する要素として
- Convenience(利便性)
- Efficiency(効率性)
- Friendly service(有効的なサービスであること)
の3つを挙げている。実はこれら全ての要素をカバーできるのがカンバセーショナル・コマースなのだ。
また、カンバセーショナル・コマースには、いくつかの種類がある。
代表的なものは、オンラインショップ上でのチャットボット、カスタマーサポートに直接会話をつなぐことができるライブチャットエージェント、パーソナライズされたプッシュ通知などだ。
今回は特に、その時の購買だけでなく、次の販促にもつながるさまざまなコミュニケーションが可能となる、パーソナライズされたプッシュ通知に着目したい。
例えば、ECサイトを見に来た見込み客がメルマガに登録すると、10%割引のオファーが表示されることや、メッセージングアプリと連携して、自分がお気に入りに入れたアイテムの在庫が少なくなると、通知が来るといったプッシュ通知などだ。
これの利点は、前回買ったもののデータから類似した、好みに合う可能性の高い商品を販売促進できることや、キャンペーンや商品の再入荷、新発売などの最新情報を伝えることができる点で、リピート購入を促せることだ。
カンバセーショナル・コマース成功事例:REN Clean Skin Care
REN Clean Skin Careは、ロンドンのスキンケアブランド。
オンラインショッピングでの決済取引の離脱防止にカンバセーショナルコマースをうまく取り入れている。
Baymard Instituteによると、オンラインショッピングで、カートに商品を入れたものの購入に至らないケースは実に69.82%と言われている。これは店側にとっては大変な損失だ。
REN Clean Skincareは、メールよりもカジュアルに確認できるSMSを使って、ユーザーにアプローチしている。
カンバセーショナルコマースにはメールが使用されるケースも多い。
しかし、SMSを使用することで、チャットボットのような即時対応のメッセージの返信にも、運営からのメッセージにも対応しやすいというメリットがあるだろう。スパムメールに振り分けられてしまうリスクも防げる。
絵文字を追加することやカジュアルな言い回しで遊び心を取り入れ、機械的なメッセージにしていないところがポイントだ。
また、ユーザーが最近閲覧した商品へのリンクを組み込み、購買意欲を再度掻き立てられるような工夫もなされている。
このようにして、カートに入れたままになっているユーザーに再度存在を思い出してもらい、購入に至るまでフォローアップするのに効果的な方法といえるだろう。
3) 開封体験
Eコマースの「購買体験」は、オンライン上での消費者とのコミュニケーションだけに止まらない。商品が家に届いてから、商品を「開封」する体験も購買体験の一部。
オンラインショッピングの利用が増えている現代において、届いた商品を「開封」するステップは避けて通れない。
そこで、届いて一番最初に目にするパッケージに工夫を施したり、箱を開けるとメッセージカードが入っていたりと、開封体験での差別化を図ることも、ブランドの第一印象を良くする重要な要素となってきている。
Youtubeには、オンラインショッピングで届いた箱の「開封」(Unboxing)動画も多数上がっており、開封体験自体がコンテンツ化されており、人々の注目を集めるだけの話題性を持っていることがわかる。
実店舗に勝る購買体験はない、という概念をひっくり返しうる可能性を秘めているともいえるのではないだろうか。
優れた開封体験を提供しているサービス事例:IPSY
IPSYは、毎月自分の元にパーソナライズされた最新のコスメが届くサブスクリプションサービス。
普段使っているメイクアップアイテム、肌の色、髪の色、目の色、肌質、髪質などの好きなブランドなどのアンケートに答えると、その回答をもとに好みに合ったメイク用品を5点つめたバッグ(Glam bag)が作られる。
月に一回(この頻度は変更可能)新しいバッグが届く仕組みだ。
入っているコスメは試供品のようなコンパクトなサイズ感のもの。ゆえに、月額$14と比較的お手頃な価格だ。
気軽に自分に合った新たなコスメとの出会いを求める人にはもちろん、メイクを初めて試してみたいティーネイジャーにも、自分に適したコスメを知るきっかけとなるサービスだといえるだろう。
また、Glam bagよりもさらにハイグレードのGlam Bag Plusも存在する。
Glam Bag Plusにもメイクアップアイテムが5点入っている。しかしこちらはGlam Bagと違い、通常サイズの品物だ。(参考)
おしゃれなポーチで、毎回開ける時のワクワク感があるだけでなく、自分に合ったサイズと使い方ができることも魅力だろう。
まとめ
今回はEコマースにおいて、購買体験を改善できる方法を3つ取り上げ、それぞれの事例をうまく取り入れているブランドをご紹介した。
参考記事: