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DXを推進する前に必要な5つのカルチャー変革
日本では企業のDX推進が急務とされているようだが、いまいちうまくできている感じがしない。それもそのはずで、DXの第一歩はテクノロジー導入ではなくて、カルチャー変革であるから。
例えば、まずは成功しているテクノロジー系スタートアップに共通している企業カルチャーを参考にし、実践するなどの取り組みがなければ、最近流行りのDXなんちゃらを実現するのは無理だろう。
イノベーティブな企業になるための5つのカルチャー変革
これまで日米の複数の大企業やスタートアップと仕事をしてみた結果、デジタルテクノロジーを活用しイノベーションを生み出している企業には5つの共通点があることがわかった。これらは、予測しにくい時代を生き残るために必要不可欠な考え方であり、DXを推進する前に導入する必要があると強く感じる。
- 利益 から 目的 へ
- 階層 から 繋がり へ
- 管理 から 能力開花 へ
- 計画 から 実験 へ
- 機密 から 透明性 へ
1. 利益 (Profit) から 目的 (Purpose) へ
これまで資本主義における企業の存在意義が利益追求であるのは当然とされてきていた。しかし、それだけでは業績、株価、スタッフの定着率の向上を実現するのには限界が出てきている。
これはスタートアップでも同じで、数年前までバズワードとして日本でも話題になった「ユニコーン」という概念も少しずつダサくなり始め、最近では会社の評価額だけではなく、その存在意義を大切にするゼブラ (シマウマ) という考え方が広がり始めている。
これは、会社の評価基準を純粋な利益追求や時価総額だけではなく、これから目指す方向や、存在する目的により焦点を当てていこうという考え方。ユニコーン至上主義だったシリコンバレー系のスタートアップにもこのカルチャーが導入され始めている。
2. 階層 (Hierarchies) から 繋がり(Networks) へ
組織としての考え方にも大きな変化が必要だろう。より迅速に動き新しい発想を促進するためには、部署間どころか、スタッフ同士の繋がりを生み出すための構造が求められる。
お互いをインスパイアしやすくするために、これまでの階層をベースとした構造ではなく、役職や部署を飛び越え、縦横無尽にやりとりしやすい、ネットワーク型の組織カルチャーを生み出す必要がある。
例えば、イーロン・マスク率いるTeslaでは、どのスタッフにでもいつでも彼に進言できる仕組みを取り入れている。
これは、彼がスタッフ全員に送信したメールにも明記されており、新しいアイディアから懸念点、苦情まで、企業のトップがいつでも聞いてあげられるカルチャー醸成に一役買っている。
3. 管理 (Manage) から 能力開花 (Empower) へ
エンパワメントとは、個人や集団が本来持っている潜在能力を引き出し、湧き出させることを意味しており、「権限委譲」や「能力開花」と訳される。
組織における社員の自律性の向上、社員が持っている能力の発揮、意思決定の迅速化などを実現するための重要なカルチャーとなる。
現代の組織においての上司の役割は、部下を管理するのではなく、彼らの能力を最大限開花させてあげることである。これは、時間で管理していた20世紀的な働き方から、クリエイティブなアウトプットが最も重要視される時代になったことによる変革でもある。
以前、リモートワークになったことに対して「部下がサボっているのではないかと不安」と語っていた日本企業のマネージャーがいたが、そもそもその考え方自体がずれている。
サボっていようがなかろうが、パフォーマンスをどれだけ上げてあげられるかがマネージャーとしての責務であり、部下のパフォーマンスが低いことに文句を言っている時点で役不足である。
4. 計画 (Plan) から 実験 (Experiment) へ
過去のデータをもとに綿密な計画を立てるスタイルの経営戦略は、デジタルの時代には全く役に立たなくなってきている。
テクノロジーの進化と、パンデミックに代表される予想不可能な社会的変革が進む中では、じっくり計画を立てるよりも、何が必要とされるかをどんどん実験できる環境の方がふさわしい。
市場の変化が激しい今の時代、中長期を見据えたビジネスプランは無意味に近い。特にデジタル系のビジネスモデルを考えた場合、6ヶ月より先のプランは単なる希望的憶測でしかない。1年後のプランを作るなど時間の無駄だと語った起業家もいる。
そもそも過去のデータを活用した予測をもとにした計画作成はAIにお任せして、人間は未来創造のために、実験を行う方が面白いサービスが生み出される気がする。
5. 機密 (Secrecy) から 透明性 (Transparency) へ
DXの大きなメリットの一つがスピードアップであるが、それを実現するためには、情報の透明性をアップさせる必要がある。
Zipファイルにかけたパスワードを次のメールで送るPPAPや、最初のディスカッションを始める前にNDAへのサインに数週間かけたりなどしていると、あっという間に時間が過ぎてしまい、企業としての競争力が下がってしまう。
ちなみに、シリコンバレー界隈の常識として、投資家に対してNDAへのサインを求めるスタートアップは相手にされないというものがある。これは、アイディアや情報自体には価値がなく、機密保持を気にするような人たちの話は聞きたくないという考え方。
本当に重要な機密事項以外は、なるべく情報を開示してスタッフがアクセスしやすくすることで、社内の透明性が高まり、信頼性がアップする。結果として、企業としてのスピード向上に繋がる。
DXなんちゃらの前に必要なもっと重要なこと
日本では、2020年ごろからDXに関してのブームが始まり、猫も杓子も「DXください」状態になっているが、本当に実現できているケースは多くないと感じる。これは、その下地となるカルチャーが醸成されていないからだ。
我々がクライアントとサービスのデザインを進める際にも、まずは正しいカルチャーの導入から始めることが多い。
これは、どんなに良いアイディアがあったとしても、企業カルチャーが追いついていないと、次から次へとボツになり、やらない方がマシだった、という結果を防ぐためでもある。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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