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【経営xデザイン】デザインオリエンテッドな企業が強い理由
物が溢れている現代の市場の中では単純に正確に動く、壊れない、だけではヒット商品を生み出す事が難しくなってきている。
消費者の心を引き付けるためには、美しい見た目や共感、遊び心などの「デザイン的要素」が重要になり、デザインの重要性を理解し、実践する事が、企業の業績に直接反映され始めている。
数字で証明された経営に対するデザインの重要性
2018年10月のマッキンゼーによる調査では、デザインを経営に活用している企業は平均と比べ、売り上げの伸びが32%もアップし、株主へのリターンも56%高くなっているという結果が出ている。
また、ロンドン・ビジネススクールの調査によると、製品デザインへの投資が1%増えるごとに、売り上げと利益は平均して3-4%増加するという。
過去にも、米国のコンサルティング会社Motiv StrategiesとDMIの調査によると、デザイン的考え方を経営の戦略にに積極的に取り入れている状況企業16社は、その株価の伸びがS&P 500全体と比べ2003年から2013年の10年間で228%高くなっているという統計を発表。
それにより「デザインを重視している企業 = デザインオリエンテッドな企業」は、そうでない企業よりも業績が著しく良いという事が数字で明確に示された。
ちなみに、このDesign Value Index指数におけるDesign-centric Organizationに選ばれるための評価項目は下記の通り:
- 過去10年間で上場している
- 経営とマネージメントの根幹にデザインを活用してる
- デザインに関する事柄に対しての投資と影響力が増えている
- 企業の組織構造とプロセスにデザインが浸透している
- 経営陣に15-20年のデザインバックグラウンドをもつ者が含まれている
- 経営トップ及び部門長がデザインの重要性を理解し実践している
参照: Design Can Drive Exceptional Returns for Shareholders
世の中が豊かになったからこそ求められるデザイン的価値
これまでは、どの企業も価格や機能、品質などの要素で勝負をしてきたが、全てのプロダクトのコモディティ化が進む中では、カタログには乗りにくい特性、例えば、斬新さや、美しさ、使い心地の良さなどで他社製品と争うことになる。
現代のような豊かな時代では、合理的、理論的、そして機能的な必要に訴えるだけのプロダクトでは、とうてい利益はあげられない。これからのビジネスの世界では、手頃な価格で十分な機能が備わった製品を製造するだけではもはや不十分である。
数字で表現できる性能の高さに加え、感覚的に美しく、ユニークで、意味があり、利用体験の優れたプロダクトでなければ、消費者の心を動かすことが難しくなってきている。
差別化の最後の砦となるデザイン的要素
むしろデザイン力を武器にすれば、大きな差別化要素を生み出すことも可能になってくる。
このことは、SONYの前会長、大賀典雄氏の下記の言葉からも推し量ることができるだろう。
SONYでは、同業他社の製品は全て基本的に同じ技術を使っていて、価格、性能、そして特徴に差はないと考えている。市場において製品を差別化できるものは、デザインをおいて他にない。
価格競争から抜け出し付加価値で勝負
特にアメリカでは、今日の供給気味の市場の中で、他社製品やサービスとの差別化を図るには、デザイン性やユーザー体験の品質が高く、消費者の心に訴えかけるようなものを提供するしかなくなってきている。
言い換えると、どれだけ付加価値を提供できるかが勝負のポイントになってくる。さもなければ、熾烈な価格競争に巻き込まれるのがオチであり、中国などの製造コストの安い国には全くをもって太刀打ちする事が出来ない。
「メイドインジャパン」の主戦力も付加価値ビジネスへ
世界市場において近年利益を上げている日本の輸出品は、車や電気製品ではなく、アニメやファッションアイテムなどの、ポップ・カルチャー産業関連に移行しつつある。
これは、今までその機能的な品質の高さが評価されていたプロダクトから、より遊び心や付加価値の高い内容の商材の魅力が増している一つのバラメーターであろう。
逆に考えると、デザイン的な要素がしっかりとビジネスに活用できていない企業、は世界市場では残酷にも置き去りにされていく現実がそこにある。
エンジニア至上主義からデザイナー重視の時代へ
20世紀までは、正確で耐久性の高い製品を作るだけで売り上げを上げることができた。そのような時代ではエンジニアの役割が最も重要である。
しかし、21世紀に入り、製品のコモディティー化が進んだことで、より差別化を生み出すためには、デザインの重要性が非常に高まってきているのである。
そもそも、幸か不幸か、Appleのおかげもあって、ユーザーのデザインに対する鑑識眼がかなり高まってしまい、ちょっとでも醜い、使いにくいプロダクトは一切使われなくなってしまった。
そこで求められるのが、優れたデザインであり、それを生み出すことのできるデザイナーになってくる。
動くだけから心地よさと楽しさの追求へ
これはまるで、Windows 95が一世を風靡した90年代と、iPhoneが世の中を変えた21世紀とのコントラストでもわかる。
90年代は、とりあえずちゃんと動作し、インターネットにつながる事が価値であったが、物が溢れている近年においては、それに加え、心地よい体験と楽しさを提供してくれるプロダクトが台頭する。
機能すれば良い、という時代はすでに終焉を迎えている。
テクノロジーオリエンテッドからデザインオリエンテッドへ
そして、テクノロジーの熟成とモジュール化が進んだ事で、多くのプロダクトが誰でも簡単に作れるようになり始めている。
その一方で、ここ数年でスマホに代表されるようなコネクテッドデバイスをはじめとした、複数のタッチポイントの出現により、今までにないレベルでユーザー体験の重要性が高まっている。
現代でヒットしている製品のその多くは、テクノロジーよりも優れたユーザー体験を武器にしている。
現在、自分が使っているパソコンやスマホの性能的スペックを知っている人は皆無に近いだろう。しかし、これがわずか十数年前までは、プロセッサーだの、RAMなどのカタログ数値とにらめっこしながら選んでいたのである。
企業側から見ても「誰がハイスペックのプロダクトを作れるか」から「誰が先にユーザーの心を掴むか」の競争に大きなシフトが起こっている。Appleがその勝者となった事は明白であるが、世界最高のテクノロジー会社のGoogleも今となってはデザインを最重要視してる。
これはアメリカ西海岸を中心に、テクノロジー競争に合わせてデザイン競争が進んでいる大きな理由である。「DESIGN Shift: これからのビジネスはモノより体験が価値になる」にもある通り、ユーザー体験 = UXがビジネスの根幹を握る時代になってきている。
求められるのは実用性と有用性の両立
これはいわば、実用性だけでもビジネスになった時代が終わり、これからは加えて有意性が求められてくるという事でもある。
この有意性を生み出すのが、紛れもなくデザインの役割であり、そこから生み出される付加価値の量と企業の利益は比例していくだろう。
ちなみに、プロダクトの優位性にの評価基準関しては「UXピラミッド – UXデザインの正しい評価方法 –」に詳しく記載されている。
心地よい体験のために、あえてローテクを求める消費者も
物質的な豊かさが満たされた現代においては、以前まではほんの一握りの人のものであった「自己実現の追求」を、ほとんど全ての人に広げることを可能にしたのである。
例えば、かつては贅沢品でもあった電球は、現代においてはどこでも安く手に入る。その一方で、アメリカではいまだにロウソクが売れ続けている。
米国内だけで、実に年間で約3000億円の市場規模を維持している。これはまさに、機能性は満たされているのに、よりユニークで心地よい体験を求めている消費者の行動パターンを示唆している。
大衆が喜ぶプロダクトは誰も熱狂しない
多くの人々になんとなく受け入れられるようなプロダクトは将来が危うくなってくるだろう。機能的に満たされている状態になると、消費者はよりマニアックな価値を求め始める。
以前に大衆向けのデザインを採用した事でファンが激減したフォードのマスタングというモデルがある。
この車はその昔、ユニークなデザインで一世を風靡したが、80年代の大量消費の時代の波に飲み込まれて、大衆車の一つと数えられるぐらいに丸くなってしまった。
そこで、フォードは大胆な「リブート」を通じ、デザインの大幅変更を行った。この変更は大衆から愛される車から、一部のマニアを熱狂させる事をゴールとした。
当時は売り上げが下がるのではないかとの声もあったが、結果は大きく異なっていた。そののちにデザイン担当者は下記のように語っている。
なぜデザインを大幅に変えるかって?そりゃ、その方が儲かるからさ
特に、ハイパーパーソナライゼーションが進む現代においては、ここの消費者はより”自分だけ”のプロダクトやサービスを求める。
そのニーズに対応するのも、デザインの大きな役割となってくるだろう。大衆的に当たり障りのないプロダクトの将来は危うい。
企業の価値は、何を「作る」かよりも何を「届ける」か
以前にBMWの前デザイナーであったクリス・バングルが現役時代に下記のように語っている。
我々は「自動車」を作ってるのではない。ドライバーの品質への愛着を表現するための動く芸術品を作っているのだ
全ての産業は今後「アート・ビジネス」に近づいていくことを示唆している。
例えば、BMWに代表されるような自動車メーカーであっても、今後はデザイン的要素、アート的要素、そしてエンタメ的要素が不可欠になるだろう。
ユーザーの心に響くプロダクトを作り出すことが最優先になり、そしてそれがたまたま乗り物であった場合、それが自動車メーカーと呼ばれるだけなのである。
このことは、ビジネスのカテゴリー自体は二次的要素であり、その裏に流れるフィロソフィーこそが差別化要素になっている事がわかる。
いけてる企業は重役にデザイナーを配置している
マネージャーや事業主任など、リーダーの役割をする人達にとっても、これからはデザイン的考えがとても重要なスキルになってくるだろう。
物事の捉え方や解釈の仕方、また判断を下すときなどにもデザイン的考察を入れる事で、結果に大きな差が生まれる。これは、変化のスピードがどんどん加速して行く中で、ロジックだけでは説明のつかない状況がどんどん増えていくのが理由である。
企業のエクゼクティブといえば、これまではCEO (Chief Executive Officer), CTO (Chief Technology Officer), CFO (Chief Financial Officer) などのビジネス系、もしくはテクノロジー系がメインであったが、今後はデザインを理解している重役が会社にいる事がその企業の成長に重要なファクターとなるであろう。
マッキンゼーやIBMなどのゴリゴリのビジネスコンサルティング会社でも、ここ最近ではデザインバックグラウンドをある重役を登用してる。そして、多くのデザイン会社が、コンサルティング会社に買収されている。(残念な事に…)
一昔前だとエンジニア出身が多かったスタートアップ界隈を見てみても、最近はデザイナーの活躍が目立つ。
AirbnbやPinterest, Dropbox, Lyftなどのサンフランシスコ地域のいけてるスタートアップのファウンダー達は、デザイナー出身が多い。
企業の最も大きな財産はクリエイティブ人材
これらの事柄からはっきりとわかる事は、今後の企業にとって最も大きな財産になるのは、クリエイティブ人材である。
すなわち、スタッフに求められるのは、創意、人間関係、共感、ストーリー作り、直感、遊び心、問題解決能力、リーダーシップといった、「機械では置き換えられない」能力である。
以前書いた「人工知能 (AI)や機械に絶対奪われない3つのスキル」でも紹介されている通り、クリエイティブ、リーダーシップ、そして企業家精神の3つのスキルは機械にはマネのできにくい数少ないエリアなのである。
我々btraxでも総合的なサービスを通じ、クライアント企業に対してのクリエイティブ人材の育成、新規ビジネスの創出、そしてグローバル規模での展開を今後ともしっかりとサポートしていきたいと考えている。
その具体的な方法がデザイン思考を活用したワークショップや、短時間で新規プロダクトを作り出すデザインスプリントのプログラムである。サービスに関するお問い合わせはこちらから。
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