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デザイナー必見!知っておきたい10の認知バイアス
認知バイアスとは、思考のプロセスにおける系統的な間違いのこと。簡単に言い換えると、思い込み。意思決定や判断を行う際の精神的な近道として機能するが、間違った判断を生み出すこともある。
年齢、性別、文化的背景に関係なく、誰もが認知バイアスの影響を受けていると言われる。
これを理解しておくことは、デザインを生業にする我々にとってはとても重要だと思う。なぜなら、人間である以上は、そこに認知バイアスがあり、それを熟知しておくことで、より適切なデザインをすることができるようになるから。
認知バイアスが存在する理由
我々の脳は、日々信じられないほどの量の情報を取り込んでいる。同時に、できるだけ思考エネルギーを節約したいとも思っている。そのため、難しい判断を迅速に行うために、一般論や経験則(ヒューリスティックとも呼ばれる)に頼っている。
脳がより効率良く判断を下すための、一つの “チート” に近い。
また、認知バイアスは、情報に対するフィルター的役割を果たす。しかし、コーヒーの粉と水がコーヒーに変わるように、情報がフィルターにかかることで、その姿や味が変わってしまうことも多々ある。
知っておきたい認知バイアス Top 10
人間の脳は、感情的になっているとき、決断を急いでいるとき、社会的なプレッシャーを感じているときなどに、認知バイアスに頼りがちになる。しかし、日常の思考や意思決定にも、認知バイアスは存在している。
数ある認知バイアスの中でも、よくある10の認知バイアスと、それらを理解し、デザインにおいて正しい判断を下すための手法を説明する。
- 情動ヒューリスティック
- ハロー効果
- 集団浅慮
- サンクコストの誤謬
- 自信過剰バイアス
- 確証バイアス
- ダニングクルーガー効果
- 楽観バイアス
- 後知恵バイアス
- キャッシュレス効果
1. 情動ヒューリスティック (Affect Heuristic)
人が感情的な状態に基づいて意思決定を行うという傾向のこと。例えば、イノベーションという概念にポジティブなものを連想すると、新しいプロジェクトはリスクが低いと判断しやすくなる。
具体例:
- 好ましい感情を持っているときには高いメリットがあり、リスクは少ないと判断する
- 嫌な感情を持っているときにはメリットは低く、リスクは高いと判断する
このバイアスを避けるための問い:
- 特定のデザインに対して主観的な愛着が湧きすぎてないか?
- 感情が理性より優っていないかどうか?
- 感情に流された決断をしていないか?
2. ハロー効果 (Halo Effect)
外見が良ければ良いほど中身も良いと捉えてしまう傾向のこと。例えば、同じ犯罪を犯したのにもかかわらず、外見がいい人の方が外見が良くない人よりも罪が軽くなるという研究結果が出ている
具体例:
- 美しいデザインのプロダクトは性能も良い
- 見た目が劣っている自動車は性能が悪い
このバイアスを避けるための問い:
- この【人/場所/アイディア】のどこが本当に好きなのか?
- この【人/場所/アイディア】の外見が異なっていても同じ感想を持つか?
3. 集団浅慮 (Groupthink)
英語ではグループシンク。日本語で“集団思考”または“集団浅慮 (せんりょ)” と呼ばれる。集団の中にいる人は、意思決定について議論して反対意見のレッテルを貼られるリスクを冒すよりも、集団に同調した方が良いので、不合理な決定を下す傾向がある。
具体例:
- 会議の際に多数の人が自分の意見と違う場合は発言しない
- 世の中の多くの人が使ってるのでスマホはiPhoneが一番性能が良い
このバイアスを避けるための問い:
- チームメンバーと仲良くするためにこのアイディアを選んでいないか?
- 自分が正しいと思う選択より、周りからどう思われるかを重視していないだろうか?
4. サンクコストの誤謬 (Sunk Cost Fallacy)
悪いアイデアに投資した時間とお金を惜しむことで、それ以降の投資をやめることができない心理効果。
例としては、コンコルドという飛行機を作るプロジェクトにおいて、途中で採算が合わないかもしれないという状態にもなったのにも関わらず、巨額の予算と人員を投入していた為に後に引けない状態になっていた状態 (コンコルド効果) が挙げられる。
具体例:
- パチンコですでに3万円使っているが、ここで止めると損するので出るまで注ぎ込む
- もう少し掘れば出るのではないかと温泉を掘り続ける
このバイアスを避けるための問い:
- ここまで費やした仕事とはいえ、感情移入しすぎていないだろうか?
- もし自分が外部の人間で、今このプロジェクトを観察しているとしたら、このプロジェクトを止めることを提案するだろうか、それとも続けることを提案するだろうか?
- もしプロジェクトを途中放棄した場合、起こりうる最悪の事態は何だろうか?
5. 自信過剰バイアス (Overconfidence Bias)
自分の知識や経験は非常に優れていると過信することにより、状況の正確な判断や対応ができなくなる傾向。特に馴染みのないテーマではこの傾向が強い。このバイアスに関してコペルニクスは “知っていることを知り、知らないことを知らないと知ること、それが真の知識である。” と表現している。
具体例:
- 自分のデザインは他のデザインより優れている
- ターゲットユーザーへの理解が浅くても大丈夫だと考える
このバイアスを避けるための問い:
- 自分はこの分野にどの程度精通しているのか?
- 0%から100%の範囲で、自分が正しいとどの程度確信しているか?
- もし、この選択に対する確信が20%低かったら、同じ決断をするだろうか?
6. 確証バイアス (Confirmation Bias)
自分がすでに持っている先入観や仮説を肯定するため、自分にとって都合のよい情報ばかりを集める傾向性のこと。Googleバイアスともいう。事件が起こった際にSNSなどで自分の意見と同じコンテンツを優先して探しがちなのもこれ。
具体例:
- 「高齢者の運転は危険だ」という先入観から、そうした情報ばかりを検索する
- ロゴの色は青が良いと思ったら、青に関してのポジティブな意見を検索する
このバイアスを避けるための問い:
- 自分の信念について、相反する情報を探したことがあるか?
- 自分の立場を守るために感情的になっていないか、それとも理性的な視点を持っているか?
7. ダニングクルーガー効果 (Dunning-Kruger Effect)
未熟な人が自分の能力を過大評価しがちな傾向。自分の能力を客観的に正しく自己評価ができず、過大評価してしまう傾向。
具体例:
- 同期よりも自分が優秀だと思い込んで、能力を超えた仕事を請け負う
- 周囲の評価に耳を傾けず、自分のデザインを非常に良いものだと思い込み修正しない
このバイアスを避けるための問い:
- この領域について自分は専門知識があるのだろうか?
- この決断にどれだけの自信があるのか?
- このアイデアや決断を吟味するために頼れる専門家はいるか?
8. 楽観バイアス (Optimism Bias)
自分自身の行動や能力などを実情よりも楽観的にとらえ、危険や脅威などを軽視する心的傾向。都合の良い解釈をしてしまうのもこれ。
具体例:
- プロジェクトの見積額やスケジュールが全くトラブルが起こらない状態がベースになっている
- ユーザーがデザイナーの意図通りに使ってくれると期待する
このバイアスを避けるための問い:
- この状況の危険性を理解しているだろうか?
- 念のため、失敗を想定した計画を立てているか?
- 失敗した場合に起こりうる最悪の事態は何か?
9. 後知恵バイアス (Hindsight Bias)
事前に予測できることと、事後の確定事項を混同してしまうことで、予測できないことまで予測できていたかのように思ってしまう傾向。しばしば、「そうだと思った」「最初からわかっていた 」という発言と関連付けられる。
具体例:
- スタートアップサービスが成功した際に「そうなると思ってた」と感じる
- サービスが失敗した場合に「やはりデザインが良くないと思ってた」と感じる
このバイアスを避けるための問い:
- もし、自分が結果を予測するのが苦手だと思ったら、どのように意思決定のプロセスを変えればいいのだろうか?
- 何が自分の手に負えないことで、何が自分の手に負えることだったのか?
- 日記をつけ、予測と結果を比較してみる
10. キャッシュレス効果 (Cashless Effect)
現金ではなく、クレジットカードやデビットカードを利用した方が、お金を多く使う傾向があること。つまり、決済が目に見えるものであればあるほど、ユーザーとっては心理的な苦痛を伴う消費となるのです。
具体例:
- Amazonのワンクリック決済だとどんどん買い物をしてしまう
- 一万円札を現金で支払うことに躊躇してしまう
このバイアスを避けるための問い:
- オンライン決済のサービスの場合、ATMで現金を引き出し、その現金を商品購入するとしたら、どのような気持ちになるだろう?
- 現金で支払いを受け付けていたショップをキャッシュレス決済にした際に、ユーザーの心理的ハードルがどのくらい下がるだろう?
まとめ: デザインプロセスにおける認知プロセスを考える
認知バイアスの面白いところは、たとえ認知バイアスを自覚していても、自分の思考がどのようなバイアスに支配されているかを注意深く見守る必要がある点だろう。以下のようなプロセスを踏むことで、安易にバイアスに左右されにくくなる:
Step 1: 一般的に存在する認知バイアスを意識すること
Step 2: 意思決定プロセスにおけるバイアスいに対して注意を払う
Step 3: 自分自身に疑問を持つ。意思決定の際に自分の思考の偏りを取り除く努力をしてみる
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