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紙コップが教えてくれる、人生における大切なこと
もしあなたがコーヒーを飲むのなら、紙コップが良いか?それとも陶器のカップの方が良いか?
最近であれば、スタバのようなお持ち帰り型のカフェが増えた事もあり、紙コップで飲む事に抵抗はあまりないだろう。
しかしこれがVIPや重要な取引先などの、大切な相手をおもてなしする場合、やっぱり素敵なコーヒーカップでいただきたいと感じる。
とあるカンファレンスでのエピソード
以前にアメリカで開催されたとあるカンファレンスで、元国防副長官がゲストスピーカーとして呼ばれた。壇上に立った彼は、小さな紙コップに入ったコーヒーに視線を落としながら、軽く微笑んだ。そして、自身のプレゼンテーションを始める前に、ふと語り始めた。
私は、まだ現職の国防副長官だった去年も、こちらのカンファレンスに招いていただき、この場所でスピーチをさせていただきました。
今年と異なるのは、その際の飛行機はビジネスクラス、空港には係の方に迎えに来ていただき、ホテルまで送迎いただきました。
そして、滞在先となる高級ホテルのチェックイン手続きは事前に完了しており、こちらのイベント会場までも高級車にてエスコートいただいたのを覚えています。
会場に到着すると、VIPルームに招待され、高級な陶器のカップに入ったコーヒーで、最高のおもてなしをいただきました。
そして、今年もこのイベントにてお話をする機会をいただきました。
しかし、今年はエコノミークラスに乗り、空港からはタクシーでホテルに向かい、自力でチェックインをしました。
会場の控え室で係員の方にコーヒーをリクエストすると、セルフサービスのコーヒースタンドをご案内いただきまして、このように紙コップで自分で入れたコーヒーを頂いている次第です。
もう一つ去年と異なるのは、私の肩書きが「国防副長官」から「“元”国防副長官」に変わったことです。
そう、去年の手厚いおもてなしは、私自身に対してではなく、私の「肩書き」に対してのものだったのです。本来の私には紙コップこそがふさわしいのです。
上記のエピソードは嫌味でも皮肉でもなく、彼が純粋に伝えたかった人としての価値観である。
もし今あなたがVIPな待遇を受けているとしたら、それはあなた自身ではなく、あなたが現在与えられている肩書きに付随していることを忘れないこと。
与えてもらったことに対して、常に感謝をし、謙虚な姿勢でいるようにしたい。
というのが、この元国防副長官が伝えたかったのだろう。
では、もう一つの出来事を紹介しよう。
シリコンバレーの豪邸でのエピソード
数年前に、シリコンバレーに住む友人宅で開催されたバーベキューパーティーに参加した。シリコンバレー地域屈指の高級住宅街、アサートンに位置する彼が住むプール付きの豪邸は、彼の父親がビジネスで大成功を成し遂げた結果でもある。
家の入り口から中庭までは数百メートルはあり、真っ白な豪邸はまるで宮殿のようである。アメリカの中では比較的小さめな家が多いシリコンバレーの中でも、かなりの規模なのがわかる。
そして通常、バーベキューといえば参加者の誰かが肉を焼き、みんなでそれを食べるイメージがあるが、そうではない。専門のバーベキュー屋さんがトラックで乗り付け、器具の設営から、調理、盛り付けまでをしてくれる、至れり尽くせりなサービスなのである。
プールサイドでのひと時を楽しみ、夕暮れに差し掛かった頃、業者による会場の片付けが始まった。
その横をふと見ると、初老の男性が庭に落ちている枯葉を拾っている。バーベキューには直接関係ないのに、気の利いたサービスだなと思った。
その彼に対して「こんな家に住めるとしたら、どれだけ幸せなんでしょう?」と話しかけた。
その男性は、「素晴らしいワイフと息子たちのおかげでこの家を買うことが出来たことに感謝している」と答えた。
実はその男性こそが、友人の父親、そう、この家のオーナーであったのだ。
小柄な体格と、温和な口調、謙虚な発言は、自身の会社をNY市場に上場させた起業家のイメージとは大きく異なっていた。
彼が話してくれた内容のその多くは、奥さんや家族に対しての感謝、二人の息子への無条件の愛情と信頼。従業員に対してのリスペクトであった。
自分が獲得した一時的なステータスではなく、普遍的な存在に対しての愛情と感謝の気持ちである。
異なる3つの存在価値
この2つのエピソードにはとても考えさせられた。人間にとって、本当の意味の成功とはなんなのか?たとえ周りの人々があなたを成功者として認識したとしても、果たしてそうなのであろうか?
それを考えた時、おそらく大きく分けると、人間の存在には3つの価値基準がある事を理解しておく必要があるのでは無いかと感じる。
一つは経済的価値で、これはどれくらいお金や資産を持っているかという事。お金があれば当然高級店などで、かなり高いレベルのサービスを受けることができるだろう。
二つ目は社会的価値で、企業や組織におけるポジションや、政治家の先生やお医者さんなどのハイスペックなステータスも社会的価値が高く、周りの人々の対応もかなり丁重であると思われる。
そして三つ目が人間的価値で、その人が本来持ち合わせている周りの人々に対してのポジティブな影響力や、アクション、思いやりなどの価値で構成される。
重要なのは、それぞれが異なる価値基準で認識されるべきであり、それをごっちゃにしてしまうから、おかしな事になる。例えば、必ずしも「経済的に成功している = 素晴らしい人格者」ではない。
私には紙コップがふさわしい
冒頭のエピソードからもわかる通り、周りがちやほやしてくれるのは、あなたが与えられている肩書きや地位に対してであることが多く、一時的なものである。
空港ラウンジとか、高級車とか、高級なお店でのディナーなど、セレブなライフスタイルをついついソーシャルメディア上などで自慢したい気持ちもわかるが、それは決してあなた自身ではなく、あなたに与えられた一時的なステータスによるものなのである。それを普遍的にしようと、役職やステータスにしがみつくのはかっこ悪い。
同時に、異なる視点を持ち、面白いアイディアを出したいと思うのであれば、安い居酒屋でも高級フレンチでも、それぞれに対して、最大限楽しめる視点を持てることが重要だろう。
意外とイノベーションを阻んでいる原因は、このステータスしがみつき症候群かもしれない。覚えておきたいのは、たとえその地位を失ったとしても、悲しむことはないということ。なぜならば、自分にはそもそも紙コップがふさわしかったのだから。
どんどん高く上がるだけよりも、高くにも低くにも飛べる方が断然自由なんだぜ
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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【サイモン・シネック第二弾】周りがあなたをVIP扱いしてくれる理由はその地位や肩書き。間違っても人間としての価値だと勘違いしないようにしたい。そして、与えてもらったことに対して当たり前と思わず、常に感謝を忘れず謙虚な姿勢でいたいですね。人生における重要な教訓です。 pic.twitter.com/5WsEioI2yR
— Brandon K. Hill | CEO of btrax 🇺🇸x🇯🇵/2 (@BrandonKHill) January 31, 2023
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