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ビートラックスがリブランディングにかけた思い – ギャップを埋めるために –
ビートラックスはこの度、創業以来のブランドの大幅なリニューアルを行った。その背景には、イメージをアップデートするだけではない複数の要因があった。
今回のリブランディングでは、ブランド要素だけではなく、会社のビジョン、カルチャーバリュー、そしてサービスの内容も全て一新し、まさに新しいビートラックスとして生まれ変わった。
リブランディングに至った背景
それでは、ビートラックスのCEOとして、また、このプロジェクトのリーダーとして、リブランディングを進めたその具体的な理由とプロセスを紹介する。
コモディティー化していくサービス内容
ビートラックスは2004年にサンフランシコを拠点に、Webデザイン会社としてスタートした。その後、3-5年を目処にサービスをアップデートしてきている。というのも、変化の早いこの地域では、市場のニーズに合わせ、サービスの更新を行わないとすぐに淘汰されてしまう。
直近で言うと、2015年ごろよりデザイン思考をベースとしたワークショップ形式のサービスを提供してきている。これは当時、日本ではあまり馴染みの少なかったプロセスで、リーンスタートアップや、UXデザインなどの概念を取り入れた内容が日本の多くの企業に求められ始めていた。
しかし、その後、我々の想像を超えるほどに日本で“デザイン思考ブーム”が始まり、猫も杓子も “デザイン思考ください”、と言う感じになってきた。これは、顧客ニーズが高まると同時に、競合も増えるのが当然。
ここ数年でいうと、日本国内でデザイン思考のワークショップを提供する企業が増え、市場は飽和状態に。自ずと価格も下がっていく傾向になっていた。
元々はデザインサービスを提供する手段としてのワークショップだったのだが、多くの企業が”研修”を受けるためだけに依頼するケースも増えきていた。
その状況と会社のビジョンの整合性をしっかりとる必要があると感じた。
イノベーションという言葉の陳腐化
デザイン思考ワークショップのコモディティー化と共に変化してきたのが、“イノベーション”という言葉の概念。まあ、概念というよりは、単純に簡単に使われすぎていることが原因のように感じる。
我々もここ数年は、“イノベーションデザイン会社”というカテゴリーに自らを置いていたのだが、そもそもイノベーションという言葉自体が陳腐化されたために、その職種の存在意義やポジショニングが怪しくなってきていると感じていた。
イノベーションという単語が一人歩きし始めて、企業が自分たちの取り組みをよく見せるために、便利に使われてしまっているように感じる。これは昨今のDXブームにもつながる要因である。
それもあり、一度しっかりと自分たちの存在意義を見つめ直す必要があった。
“シリコンバレー感”に頼る限界
それらに加え、限界を感じ始めていたのが “シリコンバレー感”。これは、我々がサンフランシスコでスタートし、現在のUSオフィスも同じ場所にあることが理由で、“シリコンバレーのデザイン会社”が一つの売りになっている事実がある。
世界的にみてもスタートアップの中心地で、革新的なサービスが生み出される地域であることは間違いがない。しかし、シリコンバレーを拠点にしたことで自動的に凄い会社になれるわけではない。
もちろん、世界で最も競争が激しくコストの高いこの地域で15年以上生き残ってきたことに対する自負はあるが、それだけでは価値のあるサービスを提供できるという条件にはならない。
しかし、この“シリコンバレー感”を主な理由としてもらっている仕事は少なくなく、その期待に答えられるように、しっかりとしたサービス内容と結果を追求する必要があった。
言い換えると、シリコンバレーのイメージだけでビジネスを継続させていくのには限界があり、理想と現実のギャップを埋める必要があった。
世の中の急激な変化
そして、もちろん言わずもがな、パンデミックに代表される2020年における世の中の急激な変化である。これにより、人々の生活スタイルは大きく変化し、暮らす、働く、学ぶ、遊ぶ、に対しての新しいニーズがどんどん生まれた。
それらに対して、我々はどのようなカルチャーを大切にし、どのようなサービスを提供していくべきなのかもしっかりと考え直した。
チームの崩壊
求められるサービスが変化し始めたことで、会社としてのスキルセットやチーム編成も急激に変わった。また、リモートで仕事をすることが増えたスタッフは、自分と向き合う時間が増え、将来に対しての考えを新たにする者もいた。
具体的には、日本に戻るスタッフや転職を行うスタッフなど。ビートラックスという会社、ブランドも自分自身と向き合い、新しい存在にならなければならない事は明白だった。
経営者としての苦悩の日々
自分自身も経営者として、複数の急激な変化に対して苦悩する日々が続いた。それは、自分が求める経営者としてのあるべき理想と、現状とのギャップがかなり大きいことが理由だろう。
また、デザイン会社としての存在価値や、認知度、実績に対しても、まだまだ納得できておらず、全ては自分の実力の足りなさであると考えた。
デザイン会社としての覚悟
今回のリブランディングにおいてまず最初に行ったのが、会社の存在意義の再定義。ビジョンをより明確にし、自分たちがなぜ存在し、日々の活動を行なっているかをしっかりと考え尽くす必要があった。
その答えは、
btrax → We Design
そう、単純なことであるが、デザイン会社であることを忘れないということ。
解決するべきは世の中に存在する様々なギャップ
そして、自分たちが解決するべき課題を理解する。それは、社会や企業、ユーザーが抱えているギャップを埋めてあげる事。具体的には下記のようなギャップが存在している。
- 異なるカルチャー間のギャップ
- 達成したい未来と現在とのギャップ
- デザインとビジネスとの感覚的ギャップ
- 大企業とスタートアップの間の意識ギャップ
- ユーザーが求めるものと提供されているサービスとのギャップ
これらをデザインサービスを通じて解決するのが、我々の指名であると考えている。
今回のリブランディングにおける主なアウトプット
では、この背景をベースに、リブランディングを通じ、どのようなアウトプットを行なっていったかを紹介する。
ちなみに、今回のプロセスでは、ほぼほぼ全てリモートで、オンラインツールを駆使しながら、日本とアメリカのチームをつないで進めた。
新しいビジョンを定義
まず最初に行ったのは、ビジョンの再定義。自分たちは上記のギャップを埋め、より良い未来を作り出すのが最大の役割だと認識し、新しいビジョンを定めた。
We design the future by bridging the gaps.
(ギャップを埋めることで未来をデザインする)
カルチャーバリューもアップデート
ビジョンが新しくなったのに伴い、会社のカルチャーバリューもアップデートした。
btrax Culture Values
WE ARE ALL DESIGNERS
- Be a forward thinker – 未来志向であれ
Learn from the past to determine what’s next - Driven by creativity – クリエイティブでいこう
Always find creative ways to bridge the gaps - Empathize differences – 違いを理解しあおう
We value diversity and celebrate the uniqueness - Fearless in trying something new – 新しいことを恐れずに
For clients and for ourselves
ムードボード作成
ブランドのビジュアルを定義していくにあたり、ムードボードを作成した。今回は、会社名の由来でもある音楽、特にレコード版のイメージをもとに作成を進めた。ちなみに“btrax”はレコードのB面という意味。
新しいロゴアイディア
ロゴも新しくするために、複数のアイディアを社内で作成した。レコードをモチーフとし、よりモダンなイメージを想像できるスタイルがデザインテーマである。
新しいロゴを選定
幾度とないプロセスを経て、最終的なロゴが決まった。新しいロゴには、レコードのモチーフのほかに、下記のブランドコンセプトが込められている。
- ロゴタイプにはよりモダンなスタイルを採用
- ギャップを埋める存在になるため、以前のロゴシンボルにあったギャップ部分をつなげた
- 日本のシンボルである家紋を連想できるスタイルを採用
- DXが進む世の中において、あえて“ハンコ”っぽいシンボルを採用し、デジタルとアナログの両立を目指す
新しいカラーパレットはカルチャーバリューをベースに
カラーパレットも新しくした。今までのグレーを廃止し、白黒はっきりつけた。メインカラーである、アナログ版のレコードを想起させるモノトーンに加え、アクセントカラーの4色には4つのカルチャーバリューをもとに名前がつけられている。
タイプフェイスもデジタルに対応しやすいモノに
そして、サイトや名刺などに利用されるフォントも新しく設定した。今回はデジタルメディアとの相性が良いSans-Serif / ゴシックに加え、見出し用にSerif / 明朝体もあえて選択した。選択したタイプフェイスは、オフラインでもWebフォントでも手軽に利用可能なものである。
サービスを大幅リニューアル
実はリブランディングより前に、2019年の後半から市場変化に対応するために、サービス内容もアップデートしていた。現在ビートラックスがメインで提供してるのは下記の4つのサービス。
Business Idea Prototyping:
サービスのアイディアを可視化し、プロトタイプを通じて検証する
Future Concept Design:
5-10年の未来を予測し、必要とされるサービスのコンセプトを生み出す
Global UX Design:
グローバルユーザーに対応可能なユーザー体験をデザインする
Global Brand Experience:
デジタルとリアルを繋いで、グローバル市場向けにブランディングを行う
サイトもリニューアル
リブランディングの集大成はサイトのリニューアルである。このブログ (freshtrax)も公式サイトのbtrax.comも新しいブランドに合わせて全て新しいものを作成した。開発は社内スタッフに加えて、以前よりお世話になっており、インタラクティブ表現では日本ではトップクラスのSALTさんにも協力いただいた。
リブランディングに協力してくれたスタッフに感謝
今回のリブランディングプロセスには多くの社内スタッフが協力してくれた。結果として期待を大きく上回るアウトプットになり、とても感謝している。
主要なプロジェクトメンバーは:
- Aoi Omori: Content Development
- Chika Mori: Content Strategy
- Hiro Aihara: Content Design
- Jensen Barnes: Design Consulting
- John Hayato Branderhorst: Content Strategy
- Jonathan Chen: Identity / UI / UX Design
- Junshu Okamoto: Website Development
- Kuni Michishio: Brand Design
- Salina Phon: Project Management
- Shuhei Yoshida: Website Development
- Yu Tiffany Morimoto: UI Design / Project Management
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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