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【イベント総括編】ブランディングに関する24の質問に一問一答
先日btraxは、「日本企業はなぜブランディングが弱いのか? – btrax Event Series 01 Brand Design」というオンラインイベントを実施した。
ブランディングに関するよくある誤解を解消し、経営におけるブランディングの重要性をより深く理解していただくことを目指して開催した本イベントは、多くの方にご参加いただき、大盛況のうちに終了した。
しかし、イベント内にて参加者のみなさまからはご質問やコメントを非常に多くいただき、その数は、時間内では回答しきれないほどだった。
そこで、イベント当日、時間の都合上あまり十分な回答をすることができなかった、もしくは、回答をすることができなかったご質問に対して、登壇したbtrax CEO, Brandonより改めて回答をもらい、記事にまとめる運びとなった。
Q1. 日本でのブランディングとアメリカでのブランディングのプロセスに違いはありますか?
A. おそらく日本のブランディングプロセスの多くが、20世紀から行われていたCIデザインと、広告中心の手法が踏襲されていると考えられます。
一方でアメリカの場合は、多くの企業がデジタルチャンネルの活用を10年ほど前から積極的に行なっているため、それらを活用したよりスピーディーで柔軟な形のブランディングが行われていると思います。
Q2. 最近アメリカで話題になっているブランディング手法やケースがあれば教えて欲しいです。
A. これに関しては、まさに上記の質問にも関連する「リーンブランディング」ですね。
今までのようにじっくりと作り込むのではなくて、素早くリリースして、改善していく手法です。以前に弊社のブログにて詳しく紹介してあるので、そちらをご参照ください。
Q3. ブランディングの非常に良いサンプルとして、AppleのSteve JobsがやったThink Differentが非常に印象的でした。
A. とても素晴らしいブランドキャンペーンだったと思います。
特にテレビCMやビルボード広告で全く商品を紹介せずに、世界を変えた偉人の写真と共に自分達の信念を語ったというのが、模範的なブランドメッセージの発信方法だと思います。
Q4. 営業やマーケティング活動がブランディングだ、と思っている人にブランディングを上手く説明するにはどうしたらよいでしょうか?
A. 営業をする際にもブランド力がある企業の方が圧倒的に成果が出しやすいと思います。
飛び込み営業や、メールでの営業をした場合でも、無名のブランドよりもブランド力が高い企業の方が返事をもらえる可能性が格段に高くなると思います。また、マーケティングをする際にも同様で、その効果が高まると考えています。
Q5. 日本国内で展開するブランドを前提とした場合、営業力に頼らないブランディングを上層部に打診するにはどうしたらよいですか?
A. ブランド力が直接企業の売上、利益、時価総額に影響することをデータと一緒にプレゼンすると良いかと思います。
Q6. 今は「パーパス」がバズワードですが、パーパスとブランディングについてはどう説明していますか?
A. 現代のブランディングにおいては、企業の掲げるパーパスはとても重要な役割を果たします。
自分達の存在意義と、世の中に対してどのような役割を果たしたいかをより明確にすることで、ブランドメッセージもより伝わりやすくなると思います。
Q7. ブランドを構築してからお客様に認知されるまでどのくらいのスパンを見たほうがよいですか?
A. おそらく最低でも半年、理想的には1年はかかると思います。例えばAppleが倒産寸前の状態からJobsが復帰し、ブランド力が高まるまで最低でも3年はかかったと考えられます。
したがって、企業がブランディングの効果をあまりにも急ぎすぎてしまうと、長期的には逆効果になります。
Q8. 中小企業のブランディングで重要なことはありますか?
A. 多くの中小企業は、大企業に比べて小回りが利きやすく、失うものも少ない、トップの一存で物事を決めやすいなどのメリットがあると思います。
ブランディングにおいても速いスピードでどんどん世の中に発信していけるのではないかと思います。
Q9. ベンチャー企業に対してブランディング提案をするポイントはありますか?
立ち上げの初期はあまり名前やロゴにこだわりすぎなくても良いと思います。それよりも優れたプロダクトとユーザー獲得に注力するべきだと思います。
Q10. ブランド価値の算出方法を教えていただけますか?
A. 企業のブランド価値は常に流動的であるため、非常に難しい質問ですが、一般的には下記のような手法が活用されています。
- 同じ市場における類似商品・サービスと比べ、そのブランドがどれほど高く売れているかを比べて算出する方法。
- 買収された類似ブランドの売却価格、もしくは買収する際の金額を基準にする方法。
- 収入、キャッシュフロー、コスト削減、将来の収益などの財務指標をもとに、どの数字がブランドの評判や認知度によって直接得られたものかを評価する方法。
- 現在の顧客数を評価し、将来の顧客数を予測し、それぞれに生涯価値 (LTV)を割り当てる手法。
Q11.ブランディングは、プロダクトアウトとマーケットイン、どちらの思考から考え始めるのがよいですか?それとも自社ブランドなのでプロダクト側だけで考えてよいのでしょうか?
A. ブランド力とプロダクト力は企業の成功においては両輪の関係です。ですので、プロダクトのUXとブランドメッセージの統一が重要になってきます。
特にデジタルサービスはプロダクト自体がブランド力を牽引する役割を果たすので、プロダクトのUXもしっかりと作りたいところです。
Q12. 会社がブランディングを意識すべきタイミングはいつ頃だと思いますか?
A. 業界にもよりますが、プロダクトがある程度完成し、ユーザーがつき始めた頃がよいと思います。
例えばTwitterは、これまでに5回ほどロゴをアップデートし、その度にブランド力を高めています。
また、Airbnbも軌道に乗り始めた頃にブランドを大幅に改善しています。
両者とも知名度が高まり、勢いに乗ったところで一気にブランディングに力を入れたようです。
Q13. 改めて体験デザインとは、具体的にどういったものですか?
A. これは世の中的にはUXデザインとかユーザー体験デザインと呼ばれているものです。商品やサービスを利用した際に、その利用者が受け取る体験の良し悪しを決めるデザインです。
また、UXデザイナーの仕事は利用者と提供者の両方が満足する体験をデザインすることになります。
Q14. 既存の商品やサービスをDX化、デザインする案件の場合、ブランディングと結びつけた事例はありますか?
A. 現在我々が行なっているプロジェクトのいくつかは、まさにDXとブランディングを掛け合わせたものです。
例えば、本業がアナログのものづくりの会社が、そのブランドメッセージをモバイルアプリ等のデジタルサービスを通じてユーザーに体感してもらうタイプのプロジェクトをいくつか進めています。
Q15. ターゲットが60歳以上の場合でもデジタルの手法を採るのでよいですか?
A. そうですね。現代では世代に関係なく、デジタルでのブランドコミュニケーションは必須だと感じます。
特に欧米の国々では高齢者でもパソコンやスマホを使いこなしているので、グローバル規模で考えるのであれば、サービスもデジタルメインで考えるべきだと思います。
Q16. アメリカのZ世代以下の世代はGAFAMのブランドをあまり支持しておらず、Web3向けの企業を支持していると聞きました。実際の現状はどうなっていますか?
A. そうですね。最近はGAFAM に代表される、いわゆる「ビッグテック」があまりにもユーザーのデータを所有して力を持ちすぎていることから、一部のユーザーからの不安と不満が挙がっているのは確かです。
一部の企業が独占するより、民主主義的に、Web3の概念に期待をしている人たちも増えてきていると思います。
Q17. ブランドの価値を与えるのはユーザーであり、ユーザーは「タダ」でその価値を提供するのは違和感があります。Web3の流れは必須ですね。
A. かなりレベルの高い質問ですね。ユーザーがブランド力を高めているのは間違いないですが、タダで行なっていることが必ずしも悪いとは思わないです。
また、Web3は今後どのような役割になるのかが未知数なので、ブランディングへの影響力に関しても楽しみに思っています。
Q18.国内事業を立ち上げていき、どこかのタイミングで海外進出を考える時に、ブランディングで注意して考えないといけないポイントは何ですか?
A. 既存の国内ブランドが海外展開する際には、特に社名やプロダクト名には要注意です。
例えば、カルピスが海外に展開する際にブランド名をカルピコに変更しました。これは、カルピスのままだと、英語圏では違う意味に捉えられるのが原因です。
また、ポカリスウェットも “汗”という単語が入っているので、英語の感覚だと少し違和感があります。
Q19. 日本企業のブランドロゴはなぜ会社名が入っているのでしょうか?アメリカはロゴだけが多い気がします。
A. これは以前にブログにまとめて、かなり色々な議論を生んだトピックですね (笑)。
僕としてはおそらく、日本の企業の場合、母国語ではないアルファベットを並べただけでも、記号としてのロゴとして認識がしやすいからや、アメリカの企業はなるべくスマホのホーム画面でも認知されやすいようなアイコン型のロゴに舵を切ってるからなどが理由だと思っています。
Q20. 日本や中国など、アメリカ以外でブランディングが上手だと感じる会社はありますか?
A. 現代においてはどこの国のブランドであっても、”非国籍感” のあるブランドが強いと思います。これはもともと、どこの国のブランドかに関係なく、支持者が多いブランドです。
例えばTikTokは、元々中国のサービスですが、アメリカではそれを知らない人も多いほどに、浸透しています。同じ意味で “スーパーマリオ” も良いブランドを確立していると思います。
Q21. 今の日本自体をブランディングするとしたら、何を強みにすべきだと思いますか?
A.「誠実さ」「正確さ」「安全さ」ですかね。世界を見ても、これほどこの3つを追求できている国はないと思っています。
Q22. インナーブランディングを実施する上で重要なポイントは何でしょうか?
A. 組織のメンバーに自分達のブランドの意味が自然と感じられるように、定期的にミーティングでその話をするとか、目につきやすい場所にブランドを表現したビジュアルや言語を掲示しておくなどがあります。
我々のサンフランシスコのオフィスには、自社のポスターを掲げていたりします。
Q.23. ブランディングに取り組むにあたって、ブランドディレクターや、ブランドプランナーや、ブランドプロデューサーなど様々な肩書きの人がいます。どう見極めるべきですか?
A. これはおそらく日米や組織によって肩書きの名前や定義が異なるため、僕には正確に答える自信がありません。ただ、ブランディングに関わる人たちはできるだけ経営に近いポジションにいる方が良いと思っています。
Q24. btrax自身のブランディングはどこに重点を置いていますか?
A. 我々自身のブランディングを行う際には、できるだけ世の中に対して有益な情報を発信していくことで、ファンの方々を増やすことに注力しています。
顧客獲得の前に、応援してくれるファンを醸成することが我々のブランディング戦略のコアとなっています。
終わりに
ブランディングに関する内容から日本とアメリカを中心とする海外との違いのほか、非常に多岐にわたるご質問を頂戴し、改めて感謝申し上げます。。
イベント本編のBrandonに「日本企業はなぜブランディングが弱いのか?」をテーマに掲げたセミナーは下記の動画よりご覧ください。
今後もbtraxはイベントを開催してまいりますので、引き続きぜひチェックをお願いいたします!