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ブランドロイヤリティーの重要性と測定、向上5つの方法【ブランディング入門#2】
※この記事は2023年5月に最新の状態に変更されています。
ビジネスにおけるブランドロイヤリティとは、顧客、社員、株主、サプライヤーなどの企業を取り巻くステークホルダー (利害関係者) が、その企業に対して抱いている「愛着」、 「好意」、「親近感」、 「こだわり」といったポジティブな感情のことを指す。
各ステークホルダーの持つロイヤリティは相互に影響し合うため、その向上に取り組む事によって「ロイヤリティ」の好循環が形成される。
特に顧客からのブランドロイヤリティは企業にとって大きな価値を生み出し、ロイヤリティの高い顧客の態度や行動には、次のような傾向が明確に見られる。
- 総合的な満足度が高い
- リピート率が高い
- 自発的に第三者に紹介する
- 同じブランドの他の商品を買いやすい
- テストや調査に協力的
- 支払いの遅延がない (主にB2B)
- クレームが少ない
ブランドロイヤリティの構築に成功すればマーケティング費用を大幅に抑える事も可能になる。新規顧客を惹き付けるよりも既存顧客を維持する方が遥かに費用が安くなる。
また、競争相手に対しても相当な参入障壁になる。従って、企業にとってもブランドロイヤリティは大きな財産となる。
米国 Experian Marketing Services社の調査によると、現在アメリカ国内に住む人々の34%が最低でも1つのブランドに対してのロイヤリティを感じているとの結果が出ている。
その中の80%の人々は単純に値段が安いからといって知らないブランドの製品を購入する事は無いと答えている。
もちろん、ロイヤリティの高い顧客はキャンペーンに対しての反応率も高いし、アンケートのリクエストに対しての回答率も高くなる。
ブランドロイヤリティを計る3つの方法
継続率
自社の製品を複数回にわたって購入している顧客の割合を元にブランドロイヤリティを計る方法。
つまりリピート・オーダーの発生比率を調べて数値化する。
通常はこの数字に加えて、期間、頻度、金額、直近の購入日などの購入履歴もチェックする。
その結果、顧客継続率と収益性の相関関係を明らかにしてブランド力の高さに伴う利益率の向上を計る。
しかし、この方法には落とし穴がある。例えば、リピート・オーダーの全てがブランド力にもとづいているわけではない。顧客がブランドに魅力を感じていなくても、下記のさまざまな理由で購入し続けているケースもある。
- 他社に乗り換えるのが面倒
- 技術やプロセス上の制約から乗り換えが難しい
- 代金の回収が終わっていない
- 今は様子見だが、他社から良い製品が出次第乗り換える予定
離脱率
他社の製品に乗り換えた顧客の割合を調べる方法。この割合が低ければブランドロイヤリティが高いと判断される。
離反率は下記のような現状の何かしらに問題がある場合に上昇する。
- 製品・サービスの品質
- 顧客対応のプロセス
- 営業担当者の力量
- 社会的なブランドイメージ
この方法も実は継続率と同じく、たとえ上記の様な問題があったとしてもなんらかの理由で購入し続けている場合は分析しにくいケースもある。
オススメ率
実は、ブランドロイヤリティの高さを計る際に最も有効的なのは、オススメ率を調べる事である。
これは、顧客に対して、”この会社を友人や同僚に紹介したいと思いますか”と聞き、その割合を調べる方法。
このあまりに単純すぎて、にわかに信じられないような方法が実は、ほどんどの業種でこの質問に対する答えと顧客行動の間には明らかな相関性があり、ブランドロイヤリティ調べる際に最も効果的とされている。
特定の企業、あるいは製品やサービスを他人にすすめる行為は、ブランド力の高さを体現した究極の行動であり、企業にとってはこれこそが利益成長を高める最も効果的な方法である
この質問によって答えによって顧客は大きく分けると、下記の3つの種類に分けられる。
- とてもそう思う → 推奨者 (Promoters) : 頻繁に購買とクチコミをしてくれる顧客
- 少しそう思う → 中立者 (Passives) : ほどほどに満足はしているが行動は起こさない
- そうは思わない → 誹謗者 (Detractors) : 否定的なコメントをする可能性が高い
すなわちオススメ率が高ければユーザーがユーザーを呼んで来てくれるので、宣伝広告費を大幅に抑える事も可能になる。
これは、スティーブ・ジョブスが顧客のAppleに対するブランドロイヤリティの高さを武器にしていた点にも重なる。
ブランドロイヤリティを構築する5つの方法
ブランドロイヤリティを高める為には、オンラインでのコミュニケーション、オフラインでの購入体験、そして製品のクオリティの3つの要素全てにおいて高い満足度を得る必要がある。
これは、優れたユーザー体験 (UX) を届ける事にも直結している。
以前は広告メッセージを中心にブランドロイヤリティを高めて行く事も多かった。
しかし、現代ではインターネットを通じて情報が容易に獲得出来るため、上記の3つの体験内容は直接的なユーザー以外にも拡散されやすい。単純な広告施策だけでは限定的な結果しか求められない。
そして、一度顧客からのロイヤリティを獲得したとしても、顧客の心は移り気である上に、他社製品の情報も瞬時に届く為、ブランドは絶え間ない努力が必要とされて来ている。
その為には、顧客に対して本物の価値をとどけるために、企業は下記の3つの事柄を常に念頭においておく必要がある。
1. 優良顧客にフォーカスする
ターゲット顧客全員を喜ばせる事はかなり難しい。
まずは、自分たちのプロダクトを熱狂的に愛してくれる顧客にフォーカスする事。
それが例え100人に1人であったとしても、その顧客が友達などにプロダクトの素晴らしさを語ってくれる事で、徐々にではあるがブランドロイヤリティの高いユーザーが増えてくるだろう。
これはAppleが以前より採用している戦略で、時間は掛かるが確実に効果のある方法である。
2. ブランドプロミスを保持する
ブランドが発するメッセージと実際の価値を一定に保つ事で顧客への目に見えない「約束」を届ける事がブランドプロミスである。
言い換えると、消費者がそのブランドから受けるイメージと、実際に体験を通じて感じる内容が一致し続ける事が出来れば、ブランドからの約束が守られるので、顧客からのロイヤリティを勝ち取る事が出来る。
ブランドプロミス例:
- Coca-Cola: 楽しく愉快な瞬間を喚起します
- Apple: 最もクールで使いやすく先進的なプロダクトを提供します
- Fedex: ご安心下さい。お預かりした荷物は責任を持ってお届けします
- McDonald’s: 安定したスピードとサービスを提供します
- McKinsey & Company: 最高レベルの経営コンサルタント集団です
3. 顧客との対話を重要視する
顧客とブランドとの距離を縮める事はロイヤリティを高めるのに最適な方法の一つである。
無機質にサービスを提供するのではなく、人間的なコミニュケーションが重要なのは世界共通。
近年ではPodcastなどで、ブランドのメッセージを伝えると同時に、親しみやすい口調で伝えることで親近感を持ってもらう工夫をしているブランドもある。
特に顧客が求める内容に常に耳を傾ける事が大切。米国のサウスウェスト航空は「心の通ったエアライン」がモットーで、ロゴにもハートのシンボルが採用されている。
SNS等でのユーザーのコミュニケーションひとつとっても、企業から発されるメッセージとして「対話」ができているかを意識したいところだ。
4. なぜこのブランドが選ばれているかを理解する
自社を分析するのは競合分析よりも難しい。
自社ブランドが顧客に受け入れられ手いる理由を理解し、ブランドとしての強みを再認識する事で、ブランドロイヤリティをあげる為の戦略を考える事が可能になる。
そして、自分たちでしか出来ない価値を定義し、その価値を求めるユーザーに対して訴求を行う。
高級ブランドであれば富裕層に、カジュアルブランドであれば若者に「だけ」訴求すれば良い。一番良く無いのは全ての人々に愛されたいと考える事。
5. おもてなしとサプライズの合わせ技
ユーザが気づかないうちにブランドから最適なサービスを受ける、いわゆる「おもてなし」がブランドロイヤリティを高める。
例えばAmazonやNetflixといったサービスは、ユーザーが使う程に最適な商品やコンテンツが表示され、ユーザーにとってサービスの価値がアップする仕組みになっている。
これは、目に見えないおもてなしを提供している。
一方で、靴のECサービスZapposはユーザーにクッキーや花束を送ったり、配送方法を無料でアップグレードするなど、サプライズを通してブランド力を高めている。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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