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ブランドストーリーが日本企業にとって重要な理由
先日、総務省のキャリア官僚を辞してAmazonのシアトル本社で働いている竹崎孝二さんのインタビュー記事「日本は技術があっても、ビジネスで負けてしまう」元官僚が米Amazon社員になった理由 を読んだ。
そこで最も印象的だったのが下記の内容:
“日本の大企業の大量生産技術などはすごく良いという評価を得ていても、意思決定のスピードが遅いことや「何を考えているのか分からない」ところ、言葉の問題など、技術の価値とは違うところで負けてしまうんです。”
引用元:「日本は技術があっても、ビジネスで負けてしまう」元官僚が米Amazon社員になった理由 – ITmediaビジネスOnline
日本企業は意思決定スピードが恐ろしく遅い
そう。これまで何度も指摘されているが、日本の大企業は意思決定のスピードの遅さが現代においてはかなり致命的になっている。
一説には、実にそのスピードはシリコンバレーの企業の1/100.
もう一つとても重要な指摘
そしてもう一つの大きな弱点が「何を考えているのか分からない」という部分。
これはコミュニケーションが苦手という部分と、恐らく「良い物さえ作っていれば売れる」という20世紀な考えで、ブランドやプロダクトの後ろにあるビジョンやストーリーを伝えるのが苦手であるということだろうと思う。
ストーリーが無いと誰も興味を持たない
これだけネットやソーシャルメディアが普及した現代においては、企業が圧倒的な存在になるためには、プロダクトの魅力だけでは限界がある。
というか、むしろプロダクトの品質はビジネスを成功させるために最低限の要因でしかなく、ブランドの存在意義や、なぜそのプロダクトを作り出したかなどのビジョンをユーザーに理解しやすいストーリーで伝えていく必要がある。
さもなければ、他の企業が作っているプロダクトとの差別化は難しく、一気に価格競争に巻き込まれてしまう。
正確さよりもわかりやすさを重視する時代
現代の戦略に求められるのは、正確さよりも、わかりやすさとスピード。スタッフや関係者がちゃんと理解し、速いスピードで実戦に対応しなければならないためである。
そのためには、複雑なエクセルや、コンテンツ満載のパワポよりも、ストーリーを重視した動画やピッチの方が伝わりやすい。スタートアップでデモ動画が重宝されているのもこれが理由。
シリコンバレーのテクノロジー企業では、プレゼンの際にスライドを禁止しているところも増えてきている。(もちろんエクセルは厳禁!) AppleやGoogleなどのカンファレンスでは物語を重視したプレゼンが主軸になってきている。
「カタログスペック」の終焉
これがひと昔前であれば、カタログスペックの魅力である程度の人気を担保できたかもしれない。
カタログスペックとは、主に数字で表現できる商品の性能のこと。例えば、車であれば馬力とか燃費。スマホならCPUのスピードやHDのサイズ。カメラなら画素数など。
商品やサービスの魅力を語るときに、そのスペックを誇っていた時代があった。
しかし、多くのプロダクトが必要十分なスペックを実装した現代では、それらの数字の重要性が下がり、それよりも「で、結局ユーザーに何を提供してくれるの?」という部分の方が購入する際の重要なファクターになっている。
でも、日本企業が販売しているプロダクト、特にハードウェア系になってくるとスペック、ソフトウェアだと機能の多さを全面に打ち出しているケースが少なくない。
むしろ機能は少ない方が良い場合も
少し余談になるが、そもそも機能が多いことやスペックが高いことイコール、良いプロダクトなのだろうか?
利用するユーザーが使いこなせないレベルのスペックや、利用できる機能が多くなってくると、脳が処理しなければならない情報が増えてしまう。そうなるとハイスペックなのに使いにくいプロダクトが生まれてしまう危険性がある。
実際、ここ数年でヒットしているプロダクトやサービスのその多くが機能を “削る” 事を大きな魅力の一つとしている。
ブランドにとってブランドストーリーが重要な理由
企業にとってこれまでに無いほどにブランドストーリーが重要になってきている主な理由は
- 広告の衰退
- SNSの発展
- オンライン動画の普及
- スペックのピークアウト
などが挙げられる。プロダクトの性能で差別化が難しくなった時代に、ブランドに残された数少ない武器の一つがストーリーだろう。
その状態を逆手にとり、優れたストーリーを通じてブランドの本質を世界に発信することができれば、後発であってもユーザーの心を掴むことが可能になる。
ストーリーの重要さが理解できる統計
Origin and Hill Holidayによる研究 によると、商品や宣伝がストーリーとセットになっている場合、消費者ははホテルの部屋から絵画まで、あらゆるタイプの商品にに多くのお金を費やすことがわかった。
同様に、ニューロエコノミストのPaul Zak氏による2014年の研究では、キャラクターを中心としたストーリーがあると、消費者は56%も多くのお金をチャリティに寄付するというデータがある。
また、Headstream社による「Brand Storytelling Report」によると、消費者の79%がブランドにストーリーを語ってほしいと答えた。その一方で、調査対象となった2,000人の成人のうち85%が、ブランドが語る印象的なストーリーの例を挙げられないことも明らかになっている。
ストーリーはブランドと消費者をつなげる架け橋
人々の “つながり” がどんどん曖昧に広がっていく現代において、ブランド消費者の関係性もどんどん変化している。
そんな時代に企業が消費者と真に繋がるためには、ブランドストーリーを語るのが効果的。
ストーリーを通じて、ブランドを効果的に人間味溢れるものとし、どんな目的で世の中に貢献するのか、どのような方法でユーザーを助けるのかを伝えることができる。
ブランドストーリーを上手に伝えることができれば、市場での優位な地位を確立することができる。
ストーリーを最重要視するApple
ストーリーテリング力で世界を制したのが、Apple。時価総額2兆ドルを超えて、世界トップ企業になったAppleは、そのブランド作りにおいてストーリーテリングを最大の武器としている。
生前スティーブ・ジョブスは下記のように語っている:
“世界で最も偉大な存在はストーリーテラーだろう。
ストーリーテラーはこれからの世代の人たち全体のビジョン、価値観、そして進むべき方向を示す存在である。”
確かに、ジョブスのプレゼンを前にすると10万円以上するiPhoneもなぜか安いな、と感じるし、Appleというブランド、ひいては企業の価値を何十倍にも魅力的に伝える威力があった。
一方、現在の日本企業でストーリーを世界に発することができるトップ経営者はかなり限られている気がする。
ストーリーだけで魅力を伝えるアップルウォッチのPV
このストーリーを重視するジョブスのスタイルはその後のAppleにも踏襲され、先日のイベントで公開された新型アップルウォッチの動画にも体現されている。
この動画では、アップルウォッチがさまざまなライフスタイルに寄り添い、ユーザーをサポートする役割を、シーンごとにストーリーで表現。
宇宙のモチーフから始まり、心の中の小宇宙で完結する。最後のAppleのロゴとWATCHを表示することで、プロダクトとユーザーを繋げている。そこにはスペックの話は一切出てきていない。
でも、観終わる頃には防水であること、音声認識ができること、衝撃に強いことなどの機能的な魅力も自然と理解されている。
グローバル市場ではブランドストーリーが必須
我々はこれまで15年以上、数百社にグローバル市場向けのブランディングサービスを提供してきた。
その経験からすると、日本市場はもとより、海外市場においては、製品や業界にかかわらず、優れたブランドストーリーを伝えることが成功の重要な鍵であると自信を持って言える。
もし、コンテンツがうまくいっていない、あるいは、もっとうまくいくはずだと思っているなら、ストーリーを面白くするものは何か、そしてなぜそれが効果的なのかを考えてみる。
何故ストーリーは理解しやすいのか?
そもそも、なぜストーリーにすると伝わりやすいのか? その秘密を探っていこう。
我々は小さい頃から、昔話や童話など、何かしらの物語を聞いて育ってきた。大人になっても映画やドラマ、アニメなどを通じて情報を獲得し続けている。
それにより人間の脳は無味簡素な数字やデータよりも、物語の方が理解しやすいし、記憶に残りやすい。
人間の脳は良いストーリーに物理的に反応するという研究結果もある。
優れた物語は、脳を刺激してコルチゾール(ストレス化学物質)やオキシトシン(快感化学物質)を放出させる。ホラー映画を見ているときに不安になったり、本の最後に恋人たちがやっと結ばれたときに嬉しくなったりするのはこのため。
脳にとってストーリーは大好物なのだ。
SNS系のサービスがここまで大ヒットした理由もそこにあるだろう。文章でも、画像でも、動画でも、世界中の人たちが自分たちのストーリーをアップし、閲覧している。実際、インスタの人気機能は”ストーリー”と名付けられている。
みんな大好きディズニーにも「アイディアをストーリーにせよ」という社内戒律があるらしい。
大切なのはブランドのコアストーリー
まず重要になってくるのは、動画や画像といったコンテンツを作る前に、一度ブランドのコアストーリーをしっかりと押さえておくこと。
自分たちがなぜ存在しているのか?その役割は?どんな存在でいたいのか?どんなキャラなのか?などなど、ブランドコアを作り出すために、さまざまな角度からコアストーリーを紡ぎ出していく。
優れたブランドストーリー事例
それでは具体的にストーリーを上手に活用し、ブランド構築を行った事例をいくつかみてみよう。
The Northface: 過酷なチャレンジへのサポート
ノースフェイスは、カリフォルニア州サンフランシスコ発のアウトドアブランドである。日本でも人気の高いこのブランドの名前は、ヨセミテ国立公園にあるハーフドームの “北側” を意味し、ロゴもその形をモチーフにしている。
ブランドコンセプトの裏には、ハーフドームを登る際に最も過酷とされる北側ルートにちなみ、どんな過酷な状況でも果敢にチャレンジする人たちをサポートする存在である。というストーリーが存在する。
そしてブランドコピーは “Never Stop Exploring (冒険をやめるな)”
ほら、このストーリーを知った瞬間に急激にノースフェイスのジャケットが欲しくなりませんか?
Amazon プライム: おばあちゃんへのプレゼント
オーダーしてから商品が手元に届くまでの速さが魅力のAmazon プライムが、その魅力を優れたブランドストーリーで表現している。一人で暮らすおばあちゃんの若き日を知った孫がプレゼントしたものとは…。
Audi: 父と息子をつなぐもの
家に帰り、ソファで寝転ぶ引きこもりの息子の姿を懸念する父親。翌日車に乗ってみたら大音量のロックが。父親と息子をつなぐブランドストーリー。
Allbirds: 羊も喜ぶスニーカー
天然ウール由来のスニーカーを提供するD2CブランドのAllbirdsは、”素材元” である羊にフォーカスをあて、ユーザーと羊をつなげるブランドストーリーを届ける。
Uber: 散々失敗しまくった後の大成功
世界一のユニコーンから、現在では世界の移動インフラの地位を獲得したUber. 彼らのサービスの知名度が上がった大きな要因の一つが、創立者のそれまでの人生ストーリー。それは、ここまでコテンパンに失敗まくった起業家はいないほどのハードな内容。そこからの大逆転がブランド価値を一層高めた。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
【イベント開催!】Beyond Borders: Japan Market Success for Global Companies
日本市場特有のビジネス慣習や顧客ニーズ、効果的なローカライゼーション戦略について、実際に日本進出を成功に導いたリーダーたちが、具体的な事例とノウハウを交えながら解説いたします。市場参入の準備から事業拡大まで、実践的なアドバイスと成功の鍵をお届けします。
■開催日時:
日本時間:2024年12月6日(金)9:00
米国時間:12月5日(木)16:00 PST / 19:00 EST
*このイベントはサンフランシスコで開催します。
■参加方法
- オンライン参加(こちらよりご登録いただけます。)
- 会場参加(限定席数) *サンフランシスコでの会場参加をご希望の方は下記までお申し込みまたはご連絡ください。(会場収容の関係上、ご希望に添えない場合がございます。予めご了承ください。)
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- Email(英語):sf@btrax.com
世界有数の市場規模を誇る日本でのビジネス展開に向けて、貴重な学びの機会となりましたら幸いです。皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。