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人間の行動を誘導する、心理学に基づいたビヘイビアデザイン Part1
プロダクトを世の中にヒットさせる為に必要な要素は複数ある。その中でも最近は世界的にデザインの重要性が高まっている事は間違いない。人気のあるプロダクトは機能的に優れているだけではなくユーザーの心に響く見た目や操作性そして利用した際の満足感を与える。
一般的にユーザーエクスペリエンスと呼ばれる「利用体験」を作り出すのがUXデザインの役割である。
一方で、商品の知名度を上げ、メッセージに付加価値を加える事でより多くのユーザーを集めるマーケティング施策の場でもデザインの重要性は高い。広告を通し消費者に商品の魅力を伝え、購入意欲を高めるパッケージデザインを施し多くのユーザーを獲得する。
その一連のプロセスの中でデザイン、そしてデザイナーがビジネスに対して担う範囲は広がる一方である。
しかしながら、実際に見た目の美しさだけではヒット商品を生み出す事は難しい。見込みユーザーをうまく誘導し、しっかりとコンバートさせるためには、綿密に計算されたデザイン理論の元での正しい施策が必要とされる。
実は、ヒトの行動の95%は無意識で行われていると言われており、その行動を促すデザインが「ビヘイビアデザイン」と呼ばれる。UXデザインをより一歩踏み込んだビヘイビアデザインの研究がアメリカを中心に広がっている。
ビヘイビアザインとは?
ビヘイビアデザインとは、ユーザーの行動や習慣を導くようにデザインすること
21世紀に入り、世の中には星の数ほどのプロダクト、サービスが存在している。供給者よりも消費者にたくさんの選択肢がある「消費者優位」の時代に到来した今、企業側はいかに継続して愛好されるような商品を作るのかが課題となっている。
実際、ビヘイビアデザインによって、行動を導いて習慣の一部となるようなプロダクト、サービスを作ろうとする企業は少しづつ増えてきている。この記事では、ビヘイビアデザインの仕組みや方法について詳しく説明する。
ビヘイビアデザインを作る重要な3つの要因
スタンフォード大学のBJ Fogg教授は、FBM (Fogg Behavior Model) という人の行動を心理学的に分析、特定するモデルを作り出し、習慣や行動を作り出すためには3つの不可欠な要因があると説明している。
その3つの要因とは ”モチベーション、能力、引き金” である。これらの要因は互いに関連しており、プロダクトやサービスが3つの要因すべてを満たさなければ、ユーザーはそれを自分の行動や習慣の中に取り入れないと言われている。
モチベーションとは、ユーザーのプロダクトやサービスに対する意欲を、高さで表すものである。能力とは、あるプロダクトを入手したり、上手く使いこなせたりできるかというユーザーの力を高さで表すものだ。
引き金とは、ユーザーのモチベーションと能力が十分高くなったときに、それをユーザーの習慣や行動に組み込むスイッチのようなものである。
これら3つの要因がどのように機能するのか説明したいと思う。
縦の軸はモチベーション(動機)の高さを示す。モチベーションが高いときは、モチベーション点が上に位置され、低いときは下に位置される。横の軸はアビリティー(能力)の高さを示す。
能力が高ければ高いほど、右に点が位置され、低いほど左に位置される。能力の高さは、ユーザーによるターゲット行動( = ユーザーにしてほしい行動)の達成しやすさでもある。
そして、縦軸のモチベーションの点と、横軸の能力の点が複合したポイントが曲線よりも左側にあれば、ターゲット行動は発生しないと言われている。反対に、そのポイントが右側にあるとき、適切な引き金さえあればユーザーはターゲット行動を行う。
要因①② : モチベーションと能力
1. 低いモチベーション、高い能力のとき(図のAの状態)
FBMの1つ目と2つ目の要因はモチベーションと、能力である。
もしあなたが自分のwebサイトを作り、サイトを訪問するユーザーにメルマガを登録してほしいと思っていたとする。あなたにとって、ユーザーにしてほしい行動とは、”webサイトにあるメルマガの登録フォームにE-mailアドレスを打ち込む”ことである。このターゲット行動はシンプルで簡単なので、ほとんどの人にとって、この行動を行うための能力は高いと言える。
しかしながら、多くの人にとって、その行動のモチベーションは低いかもしれない。その理由は、アドレスを打つのがめんどくさい、コンテンツがつまらなそう、そもそもメルマガを普段から読まない、など色々あるだろう。
このとき、そのユーザーは、”webサイトにあるメルマガの登録フォームにE-mailアドレスを打ち込む”というターゲット行動における能力は高いが、モチベーションは低い状態である。そして、能力は高いがモチベーションが低い人は、E-mailアドレスを打ち込むことはほとんどしないだろう。人は可能なことでもよほどのことがない限り、したくもないことを無理にしようとしないからだ。
2. モチベーション、能力どちらも高いとき(図のBの状態)
ユーザーの中には、どうしてもあなたのメルマガを読みたいという人がいるかもしれない。つまり、そのユーザーは、そのターゲット行動に対する能力とモチベーション、両方とも高いということが言える。能力もモチベーションどちらも高い人は、”適切な引き金”があるときに、自分のアドレスを打ち込む傾向がある(引き金については後々、説明する)。
3. 高いモチベーション、低い能力のとき(図のCの状態)
あなたは先ほどと同じようにwebサイトのクリエイターである。しかし今度は、メルマガを登録するためにE-mailアドレスを打ち込むには、数学を使ったパズルを解かなければならないシステムを作った。そのシステムのせいで、登録したくて仕方ないが、数学が苦手でアドレスを打ち込むことができないユーザーが現れた。
このとき、あなたの設定したターゲット行動に対するユーザーの状態は、能力は低いが、モチベーションは高い、である。つまり、注意しなければならないのはいくらユーザーのモチベーションを高めたとしたとしても、ユーザーにその行動をする能力が低ければあなたの望むターゲット行動は起こりにくいということである。
よく、コンテンツを魅力的にするなどして、ユーザーのモチベーションを上げようとしている人はいるが、能力をあげる(ターゲット行動をもっとシンプルにするなど)ほうが目的を達成するには近道なのかもしれない。
反対の例(低いモチベーション、高い能力)を出すと、あなたが新しい車を買うことに対するモチベーションが低いとする。今は特に、車が必要でもないので買う気がない。
しかし、誰かが100円でクールな新車を提供してくれるとしたらどうするだろうか?あなたにとって100円はとても安く感じるので、おそらく購入するだろう。つまり、新車を購入することに対してのあなたのモチベーションは低いにも関わらず、能力は高い(値段的に購入しやすい)ため、購買という行動に至るのである。
モチベーションが能力を高める可能性
十分なモチベーションが能力を高める例1
あなたがwebクリエイターになって数学のパズルを作ったところまで戻る。そして、メルマガをどうしても登録したいが、数学がとても苦手な友達のB君がいたとする。彼はモチベーションはかなり高いが、数学ができないため、この場合での彼のE-mailアドレスを打ち込むという能力は低い。
しかしここで、数学のパズルを解いて、メルマガ購読のためにアドレスを登録できれば、10万円をプレゼントするとB君に交渉したとする。するとどうなるだろうか?B君はアドレスを登録して、10万円をゲットするために必死に数学のパズルを解く方法を探そうとするだろう。
つまり、B君はパズルを解くために自分の数学力をどうにかして上げて、アドレスを登録しようとするのである。その手段として、数学が得意な人にパズルの解き方を教えてもらうか、自力で勉強するなどして、アドレスを打ちこむための能力(数学力)を上げようとするのかもしれない。
この例のポイントは、人はあるターゲット行動に対してモチベーションが十分に高ければ、能力が低くてもそれを高めようと努力する傾向があるということである。B君は、自分にとって困難な数学のパズルの問題に直面しても、その状況を打開するために自分の能力を上げて、ターゲット行動を達成しようとするのである。
十分なモチベーションが能力を高める例2
今、あなたの持っているコンピュータが壊れたとする。そのコンピュータの中には、家族や恋人、友人の写真ファイルがたくさん入っていて、あなたはそれを失うことをすごく恐れている。そして、あなたはあまりコンピュータを扱うのが得意ではない(低い能力)が、どうしても写真を復元したい(高いモチベーション)と思っている。
このとき、たとえ低い能力しか持っていなくても、あなたは一生懸命、自分のできる努力をして写真ファイルを復元しようと挑戦するだろう。この例では、あなたは写真を復元するという行動の能力は低いが、モチベーションが高いので、なんとか能力を引き上げようと努力するのである。
ほとんどの場合で、人は少なくともある程度のレベルのモチベーションと能力を持っている。そして、そのレベルは変化させられる。Amazonの1-clickなど、シンプルで効果的に行動を誘導するテクノロジーを使えば、モチベーションや能力を引き上げることは可能である。
しかし、それだけでターゲット行動が必ず発生するということない。行動や習慣を作り出すためには、必ず引き金が必要である。その3つ目の要因、引き金はよく見落とされがちなものである。
要因③ : 引き金
FBMの3つ目の要因は、引き金である。モチベーションと能力がどれだけ高くても、適切な引き金なしではユーザーの習慣や行動を引き起こすことはできない。
引き金にはたくさんの種類がある。音によるアラーム、テキストメッセージ、セールが終わるというアナウンス、お腹が鳴る音など様々である。どのような種類のものでも、成功する引き金には3つの特徴がある。1つ目は、私たちが引き金に気が付くこと。2つ目は、ターゲット行動と引き金を関連付けること。3つ目は、モチベーションと能力がターゲット行動を起こすのには十分なレベルのときに、引き金が現れることである。
引き金のタイミングは、よく失敗につながる原因の一つである。実際、タイミングというのはとても重要で、人のターゲット行動を誘導するための最高な瞬間を的確に見極めなければならない。
図によると、絶好のタイミングとはモチベーションと能力の複合点が、ターゲット行動を引き起こす曲線よりも右に位置している瞬間である。もし左に位置していれば、引き金は起こらず、ターゲット行動も起こらない。
インターネット上には、いらいらするようなものがたくさんある。スパム、ポップアップなどの邪魔な広告などは、確かに引き金の一種ではあるのだが、それらがターゲット行動を引き起こすことはめったにない。
なぜなら私たちは、それらに対するモチベーションが低いからだ。ビープ音、E-mailアラーム、振動するアイコンなどのもっとハイテクな引き金だとどうだろうか?これもただの不快なものにしかならないのである。
もしターゲット行動を引き起こしたいなら、引き金は、ユーザーのモチベーションも能力も高い、絶好のタイミング現れるべきだ。しかし、モチベーションが低いとき、その引き金はただの迷惑なものにしかならないのである。反対に、能力が低いときに引き金が起こっても、イライラするだけである。
FBMは、ターゲット行動を起こすためのミスタイミングの引き金、迷惑で気が散るもの、イライラするようなものによる失敗も分析する。このフレームワークによって、なぜターゲット行動が起こったり、上手くいかずユーザーがネガティブな感情にしかならなかったりするのかがわかるのである。
以上のように、本記事ではビヘイビアデザインの概要とモチベーション、能力、引き金というビヘイビアデザインを作る重要な3つの要素をご紹介した。次回の記事では、さらにこの3つの要因を掘り下げて説明する。
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