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デザインの未来はどうなるのか? btraxのCEOが大胆予測
WeWorkの倒産やIDEOの日本撤退など、近年、私たちデザイナーやスタートアップを取り巻く環境は大きく変化している。
2010年代に大流行した「シリコンバレー×デザイン」を中心としたデザインとスタートアップのブームは、日本企業のデザイン思考への関心を高めたり、自由なワークスタイルの許容を広げたりするなど、ある種の漠然とした憧れを抱かせることには成功したと言える。
デザインに対する過度な期待値
振り返ると、当時はデザインへの期待が過熱気味で 「デザイン思考を会得すればイノベーションが生まれる」と考える向きも多かった。
しかしその熱狂は裏付けとなる具体的成果を十分に生み出せず「やってる感」の域を出なかったプロジェクトも少なくなかった。
デザイン思考を学んだり、デザイナーの真似事をするだけでは、具体的な結果につながりにくいのも事実。我々もデザイン会社としてその誤解を解き、より正しい理解を広げるための情報を配信したり、定期的にデザインに関するイベントを開催している。
デザインをとりまく環境変化に影響した5つの要因
この短期間でデザインを取り巻く環境が激変した背景には、複数の要因が絡み合っていると考えられる。主な5つの要因は次の通り。
1. ワークスタイルの変化
ここ数年間で最も大きな出来事といえば、世界的なパンデミックの拡大と、それに伴うリモートワークの普及だろう。対面を大好きな日本企業文化ですら、現在ではオンラインミーティングや、リモートワークが一般的である。
それまで「仕事」といえば社員がオフィスに出社するのが常識だった。それがモバイルデバイスの普及やクラウドツールの充実で、シリコンバレー型のコワーキングスペースが普及し、社内外コラボも加速した。WeWorkの台頭がそれを象徴している。
しかし、新型コロナウィルスの拡大で、今度は人と人が対面で会うことすらない状態での働き方が広がる。これは時間短縮や効率向上、フレキシビリティー的にはかなり有利だろう。
その一方で、雑談っぽいディスカッションから面白いアイディアを出したり、スケッチやホワイトボードなどでニュアンスを伝えるのにはかなり不向きになる。
特に新規事業作りやサービスデザインのプロセスでは、人と人が相手の温度を感じながら新らしいモノを生み出すプロセスが不可欠で、完全リモートになってしまった場合、「デザイン」をする方法が大きな課題となる。
2. “やってる感” の限界
シリコンバレーに拠点を置く日本企業は多い。その主な目的は “情報収集” と “新規事業づくり” だ。これは一見すると具体的に何をしているのかが理解されにくい。もしくは、本当に何もしていないのかもしれない。
多くの企業はシリコンバレー地域のコワーキングやアクセレレーターにメンバー登録をし、スタートアップを紹介してもらったり、VCに資金を預け、スタートアップとのコラボを期待する。しかし、多くのスタートアップは大企業とのコラボに興味がなく、その思惑は実現しないことが多い。
拠点を構えていない場合でも視察で訪れる企業も多く、オフィスの写真を撮って満足して帰って行かれる。
そのような活動がどのような結果に繋がったのか?その答えは、現時点ではかなり厳しいものだと言える。
だからこそ、短期間では周りや本社からはどうしても “やってる感” の演出にしか捉えられず、そろそろ売り上げにつながる具体的な結果を提示しないと、肩身が狭くなってくる。
そこで重要になってくるのが、新規事業作りにおけるデザインの重要性なのだが、デザイン思考を学ぶだけでは、やはりこの “やってる感” 以上の結果を生み出すことは容易ではない。思考だけではなく、実践が伴ってはじめて「本当の結果」につながることになる。
3. ユニコーンブームの終焉
ここ数年でスタートアップを取り巻く状況も一変した。その一つがユニコーンブームの終焉だろう。
ユニコーン企業というのは、未上場で評価額が10億ドル以上の企業を指す。上場前のUberやAirbnb, 最近だとOpenAIやSpaceXが該当する。数年前まではユニコーン企業になることが、スタートアップのステータスであり、成功のひとつのバロメーターであった。
しかし、そこには大きな落とし穴があった。評価額の概念が結構曖昧で、業界ブームで実態とかけ離れた高額評価がなされることも多い。冒頭のWeWorkも上場前の2019年時点での評価額は470億ドルにまで膨れ上がっていた。
同様に当時は実態が伴わないスタートアップでもユニコーンになる例が多かった。しかしその結果、AllbirdsやBirdといった新興企業は上場後株安に見舞われている。
そんなこともあり、世界の投資家たちは “ユニコーンであること” よりも、より堅実に売上を上げられるスタートアップに注目をシフトさせており、ユニコーンを目標にしているスタートアップも減少気味だ。そもそも、ユニコーンを目指すこと自体が少し時代遅れな響きさえある。
これは、デザインの側面から見ても大きな変化が求められる。
今までのようにユーザーニーズに対して最適な体験を設計するだけの仕事から、よりビジネス面でも結果の出せるプロダクト作りが求められる時代に入ったことを示している。
4. インフレと円安
ここ数年で一つ大きく変化したもの、それがインフレと円安の状況だ。
この世界経済を取り巻く環境変化は一見デザインにあまり関係ないように思われる。しかし、さまざまな影響がある。
まずポジティブな面。
円安は日本の製品が国外で価格競争力を持つことを意味する。そのため、海外での需要が増加すれば、日本製のプロダクトをより多くの海外ユーザーに使ってもらえる機会が生まれ、そこにおけるデザインの重要性が高まる。
一方でコスト上昇により、プロジェクト予算を圧迫されたり、消費低迷でデザイン需要そのものが変動したりするリスクもある。
人件費も上昇するため、海外からのデザイン人材の獲得の難易度は上がる。これまでのようにカジュアルに海外出張に行くのも難しくなっている。
今後は為替や経済の変動に対する適切な戦略や柔軟性を持つことが、デザイン業界においても重要になってくる。
5. AIの進化
そしてデザインに対する最も大きなインパクトがAIの進化だろう。
人工知能をはじめとする新しいテクノロジーが急速に台頭しており、デザイナーが手作業で行っていた業務の自動化が進んでいる。
例えば、UIデザイン領域では、FigmaやAdobe XDなどのツールがコンポーネント設計やスタイルガイドの自動反映といった機能を持ち、効率化を支援している。
一方で、DALL-EやMidjourneyなどの画像生成AIは、イメージ製作そのものを自動で行えるようになりつつある。この先数年でデザイナーの役割はこうしたツールの管理・活用を中心に移行していく可能性が高い。
これにより、近いうちにデザイナーの仕事内容やデザイン会社の役割が大きくシフトすることが予想される。
具体的にはデザインのアウトプット作業は今後人間が行うことは随分と減るだろう。これはまるで、そろばんを使いこなして計算してきた時代から、電卓で数字を叩き出す時代へ変化するようなものだ。
電卓が発明された後も経理や会計の仕事は残っているし、むしろ需要が高まっている。一方で「計算をすること」自体には価値がなく、それを利用して「どのような価値を生み出すか」に焦点が当てられる。
同じく「デザインをすること」自体の価値はこれからどんどん低下する。言い換えると、デザイン作業のコモディティ化が進む。
その一方で、デザインによって生み出されるビジネス的、そして社会的価値は今度より拡大するのは間違いない。
アウトプットする作業に費やしていた時間やエネルギーを今後はより目標に直結したデザインワークに向けることが可能になるだろう。
これからのデザインの未来はどうなるのか
このような時代の変革期において、今後デザインの価値とその役割はどのように進んでいくのだろうか?
そんなデザインの未来に関しては、来週12月6日のイベント「Btrax Design Day」にて下記のトピックを含むセッションを通じてお届けする。
1. キーノートスピーチ:Design for the Next Generation
AI, インフレ, 円安など、近年稀に見る環境変化においてデザインはどのような価値を提供できるのだろうか?btraxのCEOがグローバル視点で社会と企業にとってより重要になるデザインの役割を具体的にご説明する。
2. 若者に愛されるブランドとは? アメリカと日本のZ世代の本音
生まれながらにテクノロジーやデジタルの世界に囲まれ、これまでの時代とは異なる価値観を持つ若者は今、何を考え、どう暮らしているのか?若者に愛されるブランドや企業とはどのようなものなのか。日本とアメリカのZ世代の生の声を聞きながら、リアルな価値観を紐解く。
3. BtoBレガシー企業が世界に仕掛ける、新たなブランドデザイン
オリジナルアニメプロジェクトの本格始動を発表したYanmar。日本の伝統あるBtoB企業が今なぜ、ブランディングに力を入れているのだろうか?キャラクター・IPを活用した新しいブランドデザインの実例から、グローバルなブランド力を高めるために日本企業が活用できるアセットや、認知向上に留まらないブランドデザインの価値を考える。
4. ミニワークショップ
「Playable」をテーマに、アクティビティワークショップを実施。btraxのデザイン思考研修などで実践している内容をアレンジし、“本気で遊ぶ” ようにワクワクしながら仕事に取り組む状態を作るアクティビティを体感いただける。詳細は当日のお楽しみに!
5. AIと人間が共創する新時代のデザイン
生成系AIの登場により、デザインに求められる役割が変わりつつあることは先述の通りだ。生成系AIは、ビジネスやデザインの世界をどう変えたのか?今まさに世界中で法律や倫理面のリスクも論じられている中で、今後どのようにAIと共存していくべきなのだろうか?
6. アメリカ企業が語る、デザインドリブンなカルチャーの真髄とは
「カルチャー変革が急務」と言われる一方で、その価値や意味を理解しないままの取り組みが多いのも事実。実は、変革の鍵は、未来のユーザーに焦点を当てるデザインドリブンなカルチャーにある。デザインドリブンな経営を実践するアメリカ企業の生の声を聞きながら、サービスや意思決定、組織づくりにどのようにデザインの考え方を取り入れているのか、そのヒントを探る。
7. マイノリティ視点がイノベーションを起こす:インクルーシブデザインの力
新しいイノベーションの種として、これまで製品開発のターゲットから除外されがちだった多様な背景を持つ人たちの視点から新たな課題を見つける「インクルーシブデザイン」が注目されている。アメリカのIT企業で関心が高まる「ニューロダイバーシティ」などを切り口に、社会課題を解決するプロダクト創出の手法についてパネルディスカッションを行う。
8. ネットワーキングパーティー
カンファレンスの後は、ご参加の皆さまや登壇者の方々、btraxメンバーと交流いただける時間も。ドリンクを片手に軽食をつまみながら、イベントの振り返りやアイディアの交換、新たなビジネスの可能性について語り合いましょう!
またこのイベントに来ていただいた方には、btrax初の書籍である「発想から実践まで デザインの思考法図鑑」を筆者サイン入りで贈呈 (学割チケットを除く)。イベント詳細及びチケット購入は公式サイトより。
【btrax創立20周年】Webサイトリニューアル&サービス再編のお知らせ 🎉
いつもFreshtraxをご覧いただきありがとうございます。
弊社は今年、創立20周年を迎えるにあたり、Webサイトをリニューアル&サービスの再編を実施しました。今回のリニューアルでは、AI時代におけるクリエイティブ思考と革新的アプローチへのニーズに応える新たなサービスを紹介しています。
ビートラックス(btrax)の新たなサービスラインナップ:
- Global Branding(グローバル・ブランディング)
- Innovation Design(イノベーション・デザイン)
- Design-Led Transformation(組織のクリエイティブ・トランスフォーメーション)
私たちは3つの核となるサービスを通じて、『UI/UXデザイン』や『リサーチ』、『ワークショップ』などの単発アプローチを超え、持続可能な企業変革を実現するための包括的な支援を提供します。
特に、『Design-Led Transformation(組織のクリエイティブ・トランスフォーメーション)』は、クライアント企業が組織内部からクリエイティブに変革していくことを促進し、真のイノベーションを生み出せるようになることを目指したサービスです。
ビートラックス(btrax)はクライアントの期待を超える価値を提供し、企業の組織改革やブランディングを強力に支援してまいります。
新しくなった弊社Webサイトとサービスラインナップに、ぜひご注目ください。