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デザイン最優先のAirbnbがユーザー獲得のために行う3つのマインドセットと4つのコアプロセス
Airbnbは、空き部屋をシェアしたいオーナーと部屋を探している旅行者をつなぐオンラインプラットフォームで、ここ数年で世界中で急激にユーザー数を伸ばしている。いまや世界191カ国の人々が登録しており、日本でも一部の地域を中心に利用者が増えている。
Airbnbの成長度合いは凄まじく、ゴールドマンサックスも「ホテル業界を駆逐してしまうかもしれない」と示唆をしているほどである。創業者の2名が元々デザイナー出身という事もあり、彼らはプロダクトにおけるデザインを最も重要視している。
同時に、ユーザー数を増やす為のグロースハック施策にも注力しており、社内に凄腕グロースハッカーやデータサイエンティストを有し、日々ユーザー獲得及びコンバージョン向上を行っている。
Airbnbの成長を示すグラフ – provided by http://rentingyourplace.com/airbnb-101/
そんなAirbnbが定期的に開いている ”Tech Talk”というイベントが4月4日に同社サンフランシスコ本社オフィスにて開催された。私は初めてのAIrbnbのオフィスにウキウキして足を運んだ。果たして彼らの成長の裏にはどのような秘密が隠されているのだろうか?
イベント会場は本社の1階
Airbnbの創業者はAirbnb発足初期のユーザー数が伸び悩んでいる時、当時アプリに掲載されていた50件全てのユーザーの家に実際に出向きユーザーの方々を飲みに連れて行き、お互いの思いや感想を正直に伝えあい彼らの貴重な意見をサービス改善の参考にしたというエピソードを語る。
そんなユーザーとデザイン中心的な商品開発の考えを持つ創業者の元で働くAirbnbスタッフはどんな考えを持っているのか。今回のイベントテーマである”継続的なユーザー獲得”のなかで驚異的な成長をしているAirbnbのグロースチームが30分ほどで自分達のチームの取り組みとその考え方を語った。
たくさんの飲み物サーバーや食堂の開放。これが無料イベント。予想以上のおもてなし
この記事ではイベント中に紹介された話の中から、ユーザー中心的なデザインを作り上げる上でコアとなる3つのマインドセットと、4つのプロセスを紹介する。多くの企業が悩んでいる自社のユーザー中心的設計について見直す機会となってほしい。
3つのマインドセット
私の前回の記事「偉大なイノベータが持つ5つの発見力」でも触れたように、行動から得られる知識は何事にも代え難く、その行動の原動力となるのは心持ち(マインドセット)である。
Airbnbがスタッフ間で共有するマインドセットは次の3つである。
1. ”Listen to the users (ユーザーの声に耳を傾けろ)”
どんなに腕を組んで真剣にユーザーのことを考えたところで、生のユーザーの声を聞くことはできない。ユーザーがどう感じるのか、何を求めているのか知りたいならば、実際にユーザーの声を聞いてみるしかないと彼らは語っていた。
では、どのようにユーザーの声を聞くのか。
その内の一つこの後のプロセスにも入っている、ユーザーテストである。詳しくは後ほど話すが、例えばAirbnbではウェブサイトやアプリの文章を変更し、新規登録件数の動向を確認する。その動向こそがポジティブにしろネガティブにしろユーザの声である。その声を次のテストに反映していく心持ちを常に持っている。
答えはユーザーが持っていると彼らがスピーチで繰り返していたのは印象的であった。
2. “Zoom out before you zoom in (詳細の前にまずは全体像を見よ)”
考えれば考えるほどどんどん視野は狭まっていく。これはどんなに柔軟な考えを持っている人たちでも陥ってしまうようだ。Airbnbの答えは「なら視野が狭まってしまう前に広げちゃいなよ」ということである。この考えは世界で最もかっこ良いと表彰されたAirbnbのオフィス設計にも表れている。
オシャレなAirbnbオフィス
この開放的なオフィスで一人で塞ぎこむのは中々難しそうだ(笑)
こういった開放的なオフィスで会話が生まれやすい環境を作り出すことで、様々な考えがぶつかり合い、狭い視野に陥りにくいように心がけているようだ。
今回のようなイベントのように、経営者ではなくチームメンバーが外部にプレゼンテーションをする場所を与えることも、今やっていることを客観的に見つめ直す機会と考えているのかもしれない。
3. “Test often, be bold (もっと大胆にテストをせよ)”
ユーザー中心的デザインを作り上げるなかで、もちろんユーザーの立場に立って考えるということは大切である。だが、それは実際にユーザーで試してみないとそれが正しいかどうかはわからない。
今回このイベントでは、Airbnbの他にもゲストとしてPinterest、Uberもユーザー獲得をテーマとして話をしてくれた。共通してこの3社が口にしたのは「Experiment(実験)」という言葉だ。プロトタイプを作りそれをユーザーに試してもらって得られるフィードバックは相当な価値がある。
サンフランシスコのスタートアップがユーザー中心的に製品やサービスを考えようとしているかは、実験に対して惜しむことなく投資できていることからもよく分かる。
私はAirbnbの話を聞く中でユーザーテストは小中高校での理科の授業と似ていると感じた。数式で理論は勉強しても、それが正しいかどうかは実験をしてみないと実感できない。実験をした時数値にズレが生じる。その時になんで?と思うことで、空気抵抗などの公式にはでてこない他の因子に気づくことができる。
4つのコアプロセス
紹介した3つのマインドセットはいかにプロセスに反映されているのか。次に、Airbnbがプロジェクトの中で欠かすことはないという4つのプロセスを紹介したい。
1. ”Define Success (成功を定義する)”
何を持って成功とするのか。これ定義しておかないと実験をしても、結果をみてどこを改善すべきなのかということは見えてこない。自分達のビジョンやゴールを再確認し、成功を定義することはどんなプロジェクトを行う上でも欠かすことはできないステップだ。
この時、マインドセットの”Zoom out before you zoom in”を忘れてはならない。目標数値を達成できればいいということではなく、もっと広義に考えることが必要である。そうすることで、例え思った通りの結果にならなくても、その原因を追究して、次のアイディアに生かすことができるのである。
2. ”Identify Opportunity (機会を明確にする)”
ユーザーはいつあなたのサービスを利用するのか。これについて考えるときユーザーはあなたの製品で何を解決しようとしているのかが見えて来る。
これはピータードラッカーが「顧客は商品にお金を払うのではなく、商品が与える価値にお金を払うのだ」というように、自社が提供するサービスを見直すにはかなり有効的な方法である。
Airbnbは顧客の動向などを観察し、すぐに仮説をたてる。その後仮説を実証するためのデータを得ることに対して投資を行うのだという。
テストの結果、仮説が間違っていれば立て直してまた検証せばいい。仮説が間違うことは仕方ない。という考え方を共有できているからこそこの方法をとることができるのだろう。
3. ”Run lightweight test (簡単なユーザーテストを実施する)”
色んな機能を複合し、品質を高めてからユーザーテストを行っていては、テスト実施が遅くなるだけではなく、もしうまくいかなかった時に機能が多すぎて、どれがダメだったか特定することが困難になる。あまり機能を持たないプロトタイプをつくり実験を繰り返すことで、早い段階での軌道修正や、顧客が本当に求めているものを見つけ出す為の近道になると彼らは考えている。
例えば、Airbnbのグロースチームは、新規サインインの件数が上がらないという問題に対して、ユーザーがサインインするまでの文章に問題があるのではないかという仮説をたてた。そこで、インターネット業界では当たり前に使われている、sign up(契約する)という言葉がユーザーにマイナスの印象を与えていると仮定してsign up→continue (続ける)としてユーザーの動向を伺った。そうすると新規登録が9%増加し、仮説は正しいということを発見できたという。
このように、ユーザーインタビューからだけではなく、ユーザー自身の行動の変化にも”ユーザの声”は現れている。これをいかに有効に利用できるかどうかによって、企業が蓄えることができるユーザーについての情報の質には大きな差が現れるだろう。
4. ”Keep experimenting (実験をし続ける)”
現代社会は日々めまぐるしいスピードで変化している。つまり常にサービスを向上させていかなければ現状維持どころか衰退していってしまう。
なんどもいうように、エクスペリエンスやビジネスが与えるインパクトを向上したいと思うとき、実際に実験してみることで今のユーザーの生の声を聞くことができる。
Airbnbは上記のプロセスを何度も何度も繰り返すことで成長し続けている。
まとめ:すべての答えはユーザーにあり
この記事を読んで、何回ユーザーテストの話をするんだ、当たり前じゃないか。と思った人もいるかもしれない。しかし私は30分間至る所で出てきたexperimentという言葉こそがAirbnbの強みであると確信した。
答えはユーザーにあり。これはまさにユーザー中心的な考え方やデザインについて考えるうえで、忘れてはならない考え方ではないだろうか。
こうして文字にするとユーザー中心的に考えることは簡単に思えるが、もちろん企業にはそれぞれの状況や文化があり、実践するのは難しいかもしれない。しかしやってみないことにはどうすれば自分の企業にあったやり方で実践できるかという工夫もできない。
ユーザーのために商品を作るという当たり前のことを当たり前に行う。あなたの企業でこれは実践できるのか。実践する必要があるのか。一度考えてみる必要があるかもしれない。
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