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【澤 円 × Brandon 対談】「怒られない」から「褒められる」へ。日本企業のイノベーションを加速させる組織改革の方法とは?
日本企業が世界で成功するには、イノベーションを起こすためにはどのような組織変革が必要なのか。
この問いを深掘りするために、btrax サンフランシスコオフィスに澤 円さんをお迎えし、企業のリーダーシップや組織文化がどのように進化すべきかについてお話を伺いました。
本記事では、Podcastでの対談の一部のエッセンスを引用して、今日本企業が直面している課題とその解決策をご紹介します。対談フルバージョンはPodcast『San Francisco Design Talk』の放送でお聞きいただけますのでぜひチェックしてください。
最後には、澤 円さんとBrandonから特別なご報告がありますのでお見逃しなく。
本日の素敵なゲスト
ゲスト:澤 円さん
株式会社圓窓 代表取締役 / 元日本マイクロソフト株式会社業務執行役員 / 武蔵野大学専任教員 / 琉球大学客員教授 / 株式会社日立製作所Lumada Innovation Evangelist / SBテクノロジー株式会社社外取締役 DXやビジネスパーソンの生産性向上、サイバーセキュリティや組織マネジメントなど幅広い領域のアドバイザーやンサルティングなどを行っている。複数の会社の顧問や大学教員の肩書を持ち、2023年一般社団法人生成AI活用普及協会理事に就任。
MC:Brandon K. Hil
サンフランシスコ州立大学デザイン科卒業後、サンフランシスコでbtraxを創業。これまでに400社以上のグローバル企業に対し、サービスデザインや新規事業創出、ブランディングを提供。主な実績にMazda MX-30のコンセプト発案、ヤン坊マー坊のリデザインを含む、ヤンマーのグローバルブランディングなどがある。また、国際イベントでの登壇やサンフランシスコ市政府アドバイザー、経産省起業家育成プログラム「始動」のメンターも務める。
日本企業における「怒られないこと」が最優先の理由
Brandon:私たちは、日本企業にデザイン思考やイノベーティブなアプローチをワークショップで提供していますが、最終的には経営層やリーダーシップの変化が必要です。
若手が頑張っていても、最終的な意思決定をする上層部が変わらない限り、進展が止まってしまうことが多いです。特に、過去のやり方を踏襲することで、新しい試みが実現しないことが多いです。
澤 円:そのため、まず中間管理職以上の人に「自分の上に何層あるか」を聞くことが重要です。これによって、意思決定の流れを理解でき、最終的に新しいアイデアが採用されるかどうかが決まります。
聞いたことある?これ。
Brandon:ないです。
澤 円:信じられないぐらい上に何人もいたりするからね。
即答できないことが多いため、一度聞いてから次の休憩時間に調べるように伝えます。これにより、さあ、ここで日本企業で働く人たちが意思決定をするために1番重要なキーワードはなんでしょうか。クイズです。
Brandon:「失敗しないこと」ですかね?
澤 円:いいですね。それに繋がっています。 一番重要なのは「怒られないこと」なんです。
結局、上司に怒られないことが最優先になり、結果的に無難なデザインが選ばれやすくなります。過去の方法を守ることが重視され、新しいアイデアやデザインが採用されにくくなります。
上の人から怒られないことっていうのがトッププライオリティになっている。
結局そうすると、いいデザインじゃなくて無難なデザインっていうのが結局採用されやすいって、結局そうなるわけですよね。
Brandon:誰も傷つけないようにしようとしますね。
澤 円:そうそう。あるいは過去をちゃんと踏襲して誰の顔も潰してないもの。これだと重要視されるのが過去になっちゃう。 本当はデザインで未来を良くするためのものだと思うんだけど、過去を重要視するっていうことやるから大体おかしくなる。
Brandon:確かに日本のプロダクトとかでデザイナー目線で見ると、 ここの部分は多分誰かの顔を立てて妥協してるんだろうなって思う時がある。ウェブサイトとかでも、たまに特定のページだけ妙に古臭いページが残ってたりするのは、何々部署の何々さんのためにここは残してんだろうな思う時ある。
大切なのは「何をすれば褒められるのか」を言語化すること
澤 円:いずれにせよ、その上の人たちに怒られないようにするっていうのが、実は僕はイノベーションめちゃめちゃ阻害してるって常に思ってて。
Brandon:じゃあ1番上の人はどうなんですか?
澤 円:で、それがね、経営者は大体もっとアイデアが欲しいとか、もっと面白いことがしたいとか。だって、権利を持っている。権限を持っていて、 もっとアイデアを出してくださいとかって言うわけ。
で、むしろもっと変化が欲しいとかって言うんだけど、階層が深くなればなるほど上の景色見えないから。
経営者は新しいアイデアを求めているものの、マネージャークラスの人たちは、上に行くほどリスクを取れないというジレンマがあります。
Brandon:なるほど。それがイノベーションを引き出す鍵ですね。
澤 円:いきなり「褒めてください」と頼むのは難しいので、私はよく「何をすれば褒められますか?」と直接聞きます。そうすると、具体的な方法が返ってきます。
その褒められる要素には、トップに繋がるポイントが含まれていることがあるので、そのエッセンスを強調し、社長の意向と合わせて伝えると、上層部も納得しやすくなります。伝言ゲームで上の人も褒められたいと思うため、上層部との連携が重要です。
何をすれば褒められるのかっていうのを言語化するするのがすっごい重要
Brandon:素晴らしいですね。
シリコンバレーで日本企業向けのセミナーに登壇した際、参加者はイノベーションを推進するよう言われているものの、実際には中間層で止められてしまうと聞きました。そこで「社長に直接報告したらどうですか?」と提案したところ、「日本ではそれは難しい」と返答があり、社内の仕組みではメールを送っても読まれないことが多いとのことでした。
澤 円:そうそう。その前にゲートキーパーがいっぱいいるからね。
Brandon:アメリカとは随分と異なりますね。
日本の会社は社員を子供扱いする
澤 円:日本企業では、ジョブディスクリプション(JD)がないため、何をすれば褒められるのかが曖昧です。
アメリカではJDがあり、目標を達成すれば褒められるという明確な基準があります。日本ではこれを言語化することが必要です。
Brandon:JD(ジョブディスクリプション)にオブジェクティブズっていうのが書いてますから。達成してほしいことを記したものですね。
澤 円:で、それを満たして初めて人として認識されるみたいなところが明確にあるんだけど、日本の場合ってそれがなくて、かなり主観が入ったりとかするから、だからそれを言語化する必要があります。
Brandon:それはいい第1歩ですね。
澤 円:褒められることをやるのを手伝えば、最終的に皆が団結して頑張ります。
日本では、まずは怒られないことが最優先で、守りに入る人は褒められる意識を忘れがちです。しかし、褒められることを考え、デザインでそれをクリアするのは魅力的です。
Brandon:そっか、それは盲点でしたね。どうやってやるんですか。直接聞いたりするってことですか?
澤 円:直接聞いたり、過去に褒められたことを思い出してもいいです。
Brandon:子育てみたいな響きがします。
澤 円:本当そうなんだよ。いや、日本はね、アメリカのMBAのクラスでなんて言われてるかって前に言ったと思うんだけど。
日本の会社は社員を子供扱いするって風にMBAで教えてるわけです。
で、理由は何かっていうと、日本の大学ってのは、基本的に大学4年間をかけてパッパラパーを育てるっていう非常に効率的な教育プログラムを組んでるわけですよ。今ちょっと変わってきてるけどね。一応大学の教員だからちょっとフォローしとくけど。
そして、卒業後は企業が40年かけて育てるという昭和の経営スタイルが続いてきました。終身雇用が前提で、企業は社員を一生かけて育てる形です。
しかし、このシステムは徐々に崩れつつあり、若手が辞める原因になっています。
シリコンバレーだとリスクを取らないとクビ
Brandon:シリコンバレーでは、リスクを取らないとクビになることが多いです。逆に言うと、失敗しても新しいことに挑戦することが求められる文化です。
だからこそ、澤さんと一緒にサンフランシスコで、リーダーシップワークショップをやりたいなと思ってて。これって我々 やる時に東京だけじゃなくてなるべくサンフランシスコに来てもらうようにしてるんですけど、環境が与える影響って非常に大きくてですね、ここに来てそのプロダクト試すとか、あと他の会社に行ってみて、そのリーダーシップマネージメントどんな感じで行われてるのか見てみると、結構びっくりすると思うんですよね。
澤 円:大企業でも、デザインやイノベーションにリスクを取ることが重要です。日本企業でも、まずは「怒られないこと」を排除し、褒められる方法を見つけることが必要です。
ダメ出しじゃなくて、アイディアを褒めよう
澤 円:なんでもいいから出せっていうところにダメ出しをするんじゃなくって、面白い部分だけを指摘しろっていうんで。
そして、 言うのであれば、改善点を自分の頭で考えて提供しなさいっていうアドバイスを僕は常にしてる。
これね、「メタ思考」っていう僕の本の中にも書いてあるんだけど、欠けてる部分を指摘するの馬鹿でもできるんで。馬鹿でもできる作業を、権限持ってるあなたがやっちゃダメだよ。って。
Brandon:その考え方を浸透させることで、企業は一気にイノベーティブになると思います。
澤 円:イノベーションを促進するためには、リーダーシップ層が若手のアイデアを受け入れ、改善点を提供することが大切です。
リーダーシップワークショップ in サンフランシスコ
Brandon: 私たちは、リーダーシップワークショップをサンフランシスコで開催する予定です。参加者は、日本企業の未来を切り拓くための戦略を学ぶことができます。興味がある方は、お気軽にお問い合わせください。
上記のプログラムに関するお問い合わせはこちら。
この内容に関するポッドキャスト
変革をリードする次世代リーダーのためのサンフランシスコイノベーション研修プログラムのご紹介
シリコンバレーの最前線でイノベーション支援を手がけるbtraxによる、経営幹部、事業責任者、本部長・部門長・部長などの部門責任者向けの実践的イノベーションプログラムを提要しています。サンフランシスコの地で、先端技術やトレンドに直に触れながら、デザイン思考やスタートアップマインドを体得できます。
btrax CEO ブランドン K. ヒル、元・日本マイクロソフト株式会社業務執行役員 澤 円氏をはじめとする日米エグゼクティブの知見や実践的ワークショップを通じて、組織変革とイノベーション創出に必要なスキルを5日間で習得します。
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