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btrax CEOによる2021年のイノベーショントレンド予想
毎年行っているイノベーション予測の中で、おそらく今年が最も難しいだろう。というのも、2020年初に想定していた未来はパンデミックの襲来でその起動が大きく変わってしまったから。変化と混乱の中で、時代は大きく変化している。
この急速な変化と不確実性の中で、新しいニーズがどんどんと生み出され、それに対して求められるソリューションも山積み。この非現実的とも言える新しい日常生活で、今年こそは、今までにないほどイノベーションが求められる年になってくるだろう。
リモートワーク採用の加速から消費者の行動の変化まで、2021年以降のさまざまな可能性についての見解と、私たちの未来の世界を形作る製品、サービス、体験を予測してみた。
高まるリモートワークで使えるDX系サービス
ここ一年で最も大きな変化が生まれたのが働き方だろう。これは表面だけの働き方改革ではなく、リモートワークを取り入れ始めた本当の意味で改革。そんな中で、リモートワーカーをサポートするために、新しい従業員体験をデザインする必要が出てきている。
リモートワークやハイブリッドワークへの急速な移行に対応するべく、ワークプレイスアプリ、特にコラボレーションや生産性向上のためのツールに対する需要が高まっている。最終的にはvSpatialに代表されるようなVRを利用したバーチャル空間に集まっての仕事も増えるかもしれない。
また、Salesforceによって買収されたSlackがグループの一員としてこれまでのイノベーションのペースを維持できるかどうかも注目したい。その一方で、Zoomに代表されるような、後発だけどより優れた体験を提供するサービスを提供するプレイヤーが登場する可能性も高い。生産性ツールを提供するスタートアップ、Memoryの新しいアプリであるGlueや、昨年プレシード資金を調達したAmieも注目だ。
あらゆる業界でリモート操作が導入される
リモートになっていくのは仕事だけではない。この時流に合わせて、外科医が遠隔地の患者に手術を行なったり、工場のオペレーションを遠隔から操作したりなど、さまざまな産業においてリモート操作が導入され始めるだろう。
5Gの高速インターネット接続の普及が進めば、より一層リモートの概念が進み、既存の生活の一部のリモート化が進み、新しいタイプのハイブリッドライフスタイルが始まるかもしれない。
求められる孤独感への対応
このリモートの流れの副産物として、メンタルへの影響があるだろう。バーチャルな非現実の中で生活の大半を過ごすことを余儀なくされることで、ユーザーは疎外感を悪化させる可能性がどうしても高まってしまう。
また、完全リモートコントロールを採用する産業が増えると、既存の社会的・経済的な分断が深まるか、まったく新しい分断が生まれてしまうかもしれない。
ニューヨーク大学の調査 によると、孤独が与えるストレスから人体が受ける影響の大きさは、1日に15本のタバコを吸うぐらいレベルであるという結果が出ている。そんな中で、孤独や疎外感を解消するためのユーザー体験が求められる。
現実離れした“盛り過ぎ”動画だらけに
インスタやTikTokなどのフィルター機能の高度な発達により、SNS上にはめっちゃ盛ったビジュアルで溢れかえっている。現実の人間や物体を撮影ものにもかかわらず、画面に映し出されるのはかなりかけ離れたものになりがち。
今後はオンラインミーティング等でもフィルターバリバリの美しい画像になってくると、実際に顔を合わせても本人かどうか識別できなくなる可能性だってある。
これは、発信者からしてみると心地の良いものかもしれないが、受け取るユーザー側からすると、何が「本物」なのかを問い直さざるを得なくなるだろう。
また、近い未来に生み出されるであろう完全に成熟したARシステムを介して適用されたリアルな「フィルタード」の世界では、奇妙にきれいで、奇妙に美しい人々で満たされた空間になってくるだろう。ブレードランナーの世界が「現実」になってくるかもしれない。
プラットフォーム化したもの勝ち
インターブランドによると、世界で最も価値のあるブランドのトップ5のうち4つがプラットフォームだという。Apple、Amazon、Microsoft、Google。Salesforceを加えれば、これらの企業は、今後数年間の技術的な方向性を示すプレイヤーだということがわかるだろう。
どのような業界であっても、優れた製品を作って販売するだけではもう十分ではない。人々が交流し、取引し、理想的にはお互いに学び合えるようなコミュニティやマーケットプレイスを作る必要がる。それがプラットフォームの力である。
それがどのようなタイプのサービスであったとしても、「プラットフォーム化」に成功できるかが勝負の分かれ目となりそうだ。』
高まるエシカルデザインへのニーズ
頻繁にインスタをチェックしたり、Amazonで必要のないものをついつい買ってしまったり、Netflixを延々と見続けてしまったりなど、プロダクトがどのようにデザインされるかによって、それを使う人々の行動や思考パターンが支配される。
デザイナー本来のユーザーニーズに対して最適なソリューションを届け、彼らをハッピーにするという役割の一方で、所属企業やクライアントのことも喜ばせるためにより“粘着性”の高い体験のデザインを急ぐばかり、倫理的な部分が失われることも起こる。
大きな視点で見ると、どのような体験を設計するかで、ユーザーの人生の時間をある程度左右するレベルの役割を担っていることにもなる。
2021年以降、特に消費者向け製品の設計と製造に関しては、よりユーザーを思いやった「エシカルデザイン」が企業の優先事項となってくるだろう。
もしかしたら今後は、世界中の国々で、GDPをその国の豊かさの指標として見ることから離れ、人々の健康や地球のような他の繁栄の指標に優先順位をつける指標を検討するようになるかもしれない。そうなってくると、デザイナーが担う役割はかなり大きい。
個人データの扱いがより繊細に
オンラインで過ごす時間が増える中で、プライバシーとデータの保護はますます重要になってきている。GDPRは2018年に一連の新しいルールを敷いたが、ユーザーは企業によるデータ利用の透明性を求めている。これは、2020年にGAFAに代表される大手テクノロジー企業に対しての政府からの圧力を見ても明らかである。
Googleは2022年までにChromeでのサードパーティ製クッキーの使用を停止すると宣言し、すでにePrivacy法を先取りしている。2021年を通じて、信頼を醸成し、消費者との距離を縮め、競争上の優位性を高めるために、データ倫理をブランドに組み込むことで、より多くの企業がそれに倣うようになるだろう。
その一方で、感染症をコントロールするために、政府が個人の行動データを獲得しようとする動きも出てきている。2021年は、政府と企業との個人データに関するせめぎ合いがより加速しそうだ。
グローバルサプライチェーンの変革
2020年は、地政学的な不確実性や経済的なポピュリズムがもたらす混乱のリスクにより、サプライチェーンには大きな負担を強いられているい。その急速な変化に伴い、企業は週単位、あるいは日単位での計画の適応を余儀なくされている。
既存のサプライチェーン・ツールは存在するものの、人工知能(AI)からデータ分析、モノのインターネット(IoT)に至るまで、最新の新技術を最大限に活用するには比較的時間がかかっている。
2021年には、多くのサプライチェーンのスタートアップ企業が、発注の合理化、無駄の削減、リスクのある領域の明確化、当事者間の関係の保護などのソリューションを提供して、その名を轟かせ始めることが予想される。
AIを活用してコンプライアンスを向上させ、不正行為を減らすContingentや、危機管理から事業継続、マスコミュニケーションまで対応できるレジリエンスのためのエンド・ツー・エンドのソリューションを構築しているKrizoに注目される。
金融サービスへの大きな変化
今後、DXの波を最も大きく受ける業界の一つが金融系だろう。数年前から多くのフィンテック系スタートアップが、既存の大手銀行に挑戦してきた。2021年は「ノンバンク」の金融業への参入が増加していることもあり、より激しい攻防となる可能性がある。
その先頭に立っているのはUberで、Uber Cashの立ち上げにより、金融への注力を再燃させている。GAFAに代表されるような、革新的なテクノロジー・インフラを持つ企業が金融サービスに参入にするケースが増えており、いわゆるBaaS(Banking-as-a-Service)は、今年の最も重要なトレンドの一つになると考えられる。
それだけでなく、BaaSプロバイダーは、他のフィンテック企業や既存の銀行の間でも市場を持っており、自社のプラットフォーム開発に時間と投資をかけることなく、提供するサービスを革新することが可能。そのため、solarisBankやBankableなどのBaaSプロバイダーに注目したい。
何かと忘れがちだった5Gもそろそろ普及し始める
数年前からテクノロジー業界の最も大きな話題の一つだった5Gネットワークの普及であるが、昨今のコロナ騒ぎでいつの間にか話題に登ることが少なくなってきていた。むしろ、5Gがパンデミックの拡大の原因であるとの都市伝説すら出るくらいの存在になっていた。
しかし、時代は確実に動いている。エリクソン社のレポートでは、2026 年までに世界人口の約 60% を5Gがカバーすると予測している。この技術は、接続速度の高速化や大容量化だけでなく、超低遅延を実現している。
IoTやエッジコンピューティングだけでなく、自律走行車やロボット外科医、ドローンなどのマシン・ツー・マシン通信など、リアルタイムで即時の接続を必要とするものにとっても変革的なものとなる。
また、ゲーム、メディア、エンターテイメントにおけるARやVR体験にも大きな影響を与え、これまで以上にスムーズなユーザー体験を実現するだろう。2021年には5Gを実用化したサービスがいくつかリリースされてくると思われる。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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■開催日時:
日本時間:2024年12月6日(金)9:00
米国時間:12月5日(木)16:00 PST / 19:00 EST
*このイベントはサンフランシスコで開催します。
■参加方法
- オンライン参加(こちらよりご登録いただけます。)
- 会場参加(限定席数) *サンフランシスコでの会場参加をご希望の方は下記までお申し込みまたはご連絡ください。(会場収容の関係上、ご希望に添えない場合がございます。予めご了承ください。)
- 対面申し込み:luma
- Email(英語):sf@btrax.com
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