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ワークショップをするべきか?会議をするべきか? それが問題だ
- 会議とワークショップ、効果的に使い分けできていますか?
- 「無駄な時間」にしないために気をつけるべきこと
- 会議とワークショップ、それぞれの目的・役割・構造の違い
- 多種多様な会議 / ワークショップ、目的に合わせた実施方法
「ミーティングにするか、ワークショップ形式にするか。」
現代の企業におけるディスカッションや意思決定の方法は多様になっている。特にオンラインで行うシーンも増え、企業としてもどのような進め方をするのが良いのか迷いがちだろう。
我々もデザインワークショップやデザインスプリント、フォーカスグループなどを通じてサービスのアイディアをディスカッションしたり、素早い意思決定を促したりしている。
でも実際の現場では、ワークショップっぽい会議もあるし、会議になってしまうワークショップもある。全く意味の無い時間になることもありえる。
そしてこの状況は、それぞれの定義や適切な使い方が曖昧な組織で起こりやすい。
会議とワークショップの用途の違い
一般的に、会議では情報共有や議論を行い、目標設定や意思決定を行うのが目的。一方で、ワークショップは問題を解決したり、実行可能な目標を達成するためのもの。
ワークショップと会議の違いを理解することで誰もが時間を節約し、グループコラボレーションを最大限に活用することができる。
では、具体的に無駄になってしまう会議とワークショップの特徴を洗い出した上で、ワークショップと会議の目的、範囲、長さ、構造、準備時間の違いを比較してみよう。
無駄な会議とは?
まずは一つの結論として、どのようなミーティングや会議が無駄になってしまうのだろうかを考えてみる。通常、会議には複数人数のが参加するため、無駄な時間が発生してしまうと参加人数分の時間が失われてしまう。
そのこともあり、多くのアメリカ企業ではなるべく会議の数を少なく、時間を短く、参加人数を制限することが推奨されている。
無駄な会議になってしまう主な要素:
- はっきりとしたアジェンダがない
- 何も発言しない人が参加している
- 次のアクションが決まらない
- 10分で済む内容に60分かける
- 意思決定者が参加していない
- 無駄に参加人数が多い
などが挙げられる。
無駄になるワークショップとは?
ワークショップさえ行えば会議での課題が簡単に解決すると思っている人もいる。しかしそれは大きな間違い。
ワークショップをやったからといって全てがうまくいくとは限らない。その最も大きな原因は、そもそも達成したいゴール (目的) と手段 (ワークショップ) が合致していないことだ。
具体的には、目標がはっきりしていなかったり、参加者が活動自体が無意味に思えたり、何も達成できていないような気がしたりなど。多くの場合、適切なファシリテーターが不在であることが原因だったりもする。
無駄なワークショップになってしまう主な要素:
- 達成すべきゴールが曖昧
- プログラム内容が適切にデザインされていない
- ファシリテーター不在
- ファシリテーターのスキル不足
- 参加者同士の信頼関係ができていない
- 他の業務に中断され、内容にフォーカスできていない
- 上司の顔色を伺いながらのアウトプット
などが挙げられる。
ワークショップは万能ではない
ワークショップをやる目的でワークショップを開催する、手段の目的化が起きているケースもある。特に最近はデザイン系のワークショップが流行っていることもあり、とりあえずやってみたいという要望が後を絶たない。
長時間同じ部屋にみんなを集めれば魔法がかかると思っている人も少なくない。
しかし、我々のようにクライアントに対してワークショップを企画・実行するデザイン会社としては、とりあえずやってみる前に一度目的の設定や参加者の選定など、企画段階をしっかりと詰めることをオススメすることが多い。
これは、解決すべき問題があらかじめ定義されていない場合や、コラボレーションの必要性がない課題、または事前の十分な計画がない状態だとワークショップは時間の無駄になってしまうため、これらを未然に防ぐためである。
そして、内容が稚拙なため、意思決定者などの重役レベルの人もそのようなワークショップの招待を拒否することが多い。
会議とワークショップ: それぞれの目的と役割
会議は参加者が情報を交換し、ディスカッションをするための方法である。
それに比べてワークショップは問題を解決することが目的。アイデアを生み出すことに時間を割き、グループが実行可能なゴール達成するための実践的な活動である。
簡単に言えば、会議は物事を議論する場所で、ワークショップは物事を実行に移す場所である。
この違いから、会議では多くのトピックを浅くカバーするのに適しているが、ワークショップは問題を深く集中的にカバーするのに適している。
会議とミーティングのそれぞれの目的や方法
会議の目的と種類
出席者が情報を発信したり受け取ったりするための専用の時間と場所を設けるのが会議の主な目的となる。会議の中では、いくつかのトピックをカバーすることができる。
一方で、決定や行動項目は、必ずしも同じ集まりの中で定義されたり、その場で即座に行動に移されたりする必要はない。
会議の種類と目的には下記が挙げられる:
プロジェクトキックオフ
プロジェクトの概要や役割などの重要な情報を話し合うために、チームメンバーが一堂に会してプロジェクトに取り組む最初の集まり。
スタンドアップ
機能横断的なチームがプロジェクト全体の進捗状況や障害に関する最新情報を共有するために、毎日素早く(通常は15分程度)報告会を行う。
振り返り
定期的に行われるディスカッションで、チームがどのように連携して仕事をしているかを振り返り、プロセスを改善する方法を検討する。
1on1
リードやマネージャーが直属のメンバーと会い、プロジェクトや個人の成長、キャリアアップの機会について話し合うための時間。
リーダーチームミーティング
複数のサブチームにまたがる機能横断的なリーダーが集まり、進捗状況、学習内容、未解決のアクションアイテムについて議論する。
デザインチームミーティング
UXやデザインチームのメンバーが一堂に会して、仕事や知識、インスピレーションの源を共有する機会。
デザインレビュー
デザインチームのメンバーが進捗状況を発表し、デザインに対するフィードバックを受ける。
オフサイト
チームメンバーがオフィス外の場所に集まり、ディスカッションを行う。普段と異なるセットアップのカジュアルな雰囲気の中で、気持ちのリフレッシュにもなり、新しいアイディアが出やすくなる。
オフィス外でのミーティングを行うのも効果的
ワークショップの目的と種類
複数のチームからのインプットと同意を必要とする状況や、同じタイミングでのディスカッションと深い考察、そして意思決定が求められる状況においては、共同作業の実践的なワークショップ形式に適している。
ビートラックスが企業向けに提供しているデザインスプリントも素早いスピードでの正しい意思決定を一番の目的としている。
ワークショップの種類と目的には下記が挙げられる:
ディスカバリーワークショップ
チームメンバーと主要な知識保有者が集まり、現状を理解した上で今後のプロジェクトのマイルストーンや計画の方向性を決めていく。
チームビルディング
業務にあまり関係ないテーマを元にチームごとに一つのゴールを達成するために競うゲームなどを通じてチームの連帯感をアップさせる。
ユーザー共感ワークショップ
デザイナー、研究者、その他の関係者がサービスを設計する前に、ユーザーのニーズについての共通理解をするために行う。
デザインワークショップ
複数の部署から主要チームメンバーが集まり、様々な視点からのアイデアを迅速に生成し、議論する。
優先順位付けのワークショップ
チームメンバーおよび他の主要な意思決定者がどの項目が最も重要であるかを決定し、それらに優先順位をつけるために一緒に集まり行う。
アイディエーションショップ
ビジネスやサービスの内容をできるだけ多く出すことにフォーカスを当てたワークショップ。質より量を重要視する。
レビューワークショップ
デザインプロセスに不可欠な役割を担うメンバーが協力して、目的に照らし合わせてデザインを分析・改善する。
ビートラックスで行われているワークショップの様子
会議とワークショップの構造的違い
ワークショップと会議では基本的な目的が異なるため、それぞれの構造も異なるべきである。多くの場合、会議はワークショップよりも受動的なもので、参加者はほとんどの時間を話したり聞いたりしている。
しかし、最近の会議のトレンド、特にオンラインミーティングでは、より雑談を促進するためにあえて議題と異なる日常生活の話をしたり、クイズを出したり、普段無口なスタッフにあえて話を振ることで、チームワークを促進するケースも増えている。
もちろんワークショップでは、参加したメンバー全員からのフルコミットが求められる。話したり聞いたりだけではなく、スケッチをしたり、プロトタイプを作ったり、寸劇を通じてアイディアを発表することも多い。
会議における理想的なアジェンダ
スタンドアップ会議や1on1の会議など、日常的に行われている会議であっても、アジェンダを作る利点は大きい。
時間の経過とともに変化する議論項目に柔軟に対応できるようなアジェンダを導入するための効果的な方法の一つとして、会議の前に自由形式の質問を短いリストにして投稿者に提供する方法がある。
オンライン会議の場合は、チャットシステムなどを活用してリアルタイムで質問を送ることも可能。
例えば、従来の日常的なスタンドアップでは対話が軌道に乗るように、決められた項目に沿って質疑を行う。それにより短時間で求められる情報共有が可能になる。
スタンドアップで利用される質問リスト
- 昨日は何を達成しましたか?
- 今日は何に取り組んでいますか?
- 現在の取り組みの主な障害は何ですか?
1on1ミーティングで利用される質問リスト
- 最近の調子はどう?
- サポートが必要なことはありますか?
- あなたにとってワクワクすることや、今の抱負は?
- 私や会社に対して何かフィードバックはありますか?
このように会議にアジェンダを設定することで、トピックのフォーカスを定め、時間内で効率的な議論ができるようになる。
ビートラックスで提供しているワークショップ例
このように会議とワークショップのそれぞれの利点を生かして、クライアントに対してワークショップを多く実践しているビートラックスでは主に下記のようなセッションをオンラインとオフラインの両方で行っている。
デザイン思考ワークショップ
目的: サービスアイディアをユーザー視点で検証し、よりニーズに合致した内容にするためにソリューションの精度を上げる。
形式: 1チーム3-5人に分け、それぞれのチームごとにユーザー課題の仮説、サービスアイディア立案、ユーザーテストを通じてサービスの精度を上げ、最終的にプレゼンを行う。
利点: 技術視点ではなく、ユーザー視点でサービスの価値を考えられるので、何が求められているのかを実感しやすい。また、ボツになる場合でも少ない予算で決まるため、ダメージが少ない。
注意点: 研修なのか実践なのかの線引きが難しく、多くの場合はその両方を達成しようとしてどっちつかずになりがち。また、実践を狙う場合でも、そこに意思決定者がいない場合が多く、参加メンバーが下手に忖度してしまいがち。
デザインスプリントワークショップ
目的: 特定の問題を解決するためのアイデアをチームで共有し、それを試して学びを得て、サービスの方向性を決定する。
形式: 4-5人のプロジェクトチームメンバープラス意思決定者一人が参加。ビートラックスからはモデレーターとデザイナーが参加する。
月曜日から金曜日の5日間で、検証すべき課題(例えば、どのようなアプローチで新規事業を始めるべきか、新規顧客の離脱を防止したい、既存事業のDX化など)に対してデザインの観点から答えを導くプロセス。
利点: プロトタイプを利用しながら、短期間でサービスの方向性を決める事ができる。ユーザーの行動科学やデザイン思考などの考え方を体現したプロセスなので、サービスの品質にブレが出にくい。
注意点: 参加メンバーの熱意が一定のレベルになっていないと、脱落者が出てしまう。意思決定者が参加しないと結局何も決まらない。議論が右往左往しがちなので、ファシリテーターのスキルが求められる。
アイディアスプリントワークショップ
目的: 一つのチーム内における複数の事業アイディアを検証し、最終的にどのサービスアイディアの方向性で進めるかを議論、決定する。
形式: 10人のプロジェクトチームメンバープラス意思決定者一人が参加。ビートラックスからはモデレーターとコンサルタントが参加する。
5日間-10日間で複数の事業ミッションの洗い出し、ユーザーメリットの具現化、ユーザーフロー作成、ビジネスモデル作成を行い、最終的に一つの事業モデルに絞り込んでいく。
利点: リーンスタートアップのフレームをベースにしているため、短時間でのアイディア検証が可能になる。
注意点: 事前に事業アイディアを複数出しておく必要がある。ユーザーニーズよりもソリューション自体に議論がフォーカスしてしまうと、誰も求めないサービスアイディアが選ばれてしまうことがある。
ターゲットペルソナ会議
目的: そもそもどのようなユーザーをターゲットにしているのかを検証する。デモグラフィーだけではなく、潜在的ニーズや日常生活の行動パターン、価値観を理解する。
形式: 事業チームメンバーが参加し、それそれが思い描いているユーザー像をビートラックスが提供する項目に合わせて記入し、議論する。その後、よりターゲットに近いユーザーのランキングを作成し、コアターゲットを選出する。
利点: 年齢や性別などのざっくりとしたターゲティングになりがちな部分をよりニーズに合わせた分析が可能になる。よりコアユーザーが誰なのかを選定しやすくなる。
注意点: 製作者サイドがより客観的なユーザー分析が求められるため、ファシリテーターは定期的に議論の調整を行うことが必要になる。
フォーカスグループ
目的: 定量的なデータだけではなく「人間の感情に関わるような深いニーズ」を掘り起こすために、ターゲットユーザーからの生の声を聞く。
形式: 4-6名のグループとモデレーターの座談会形式。リサーチトピックに関して、参加者らに意見や体験等をそれぞれ話してもらったり、議論してもらったりする。
利点: 何かしらの共通属性を持つ人を集めたグループに対して行う場合、そのコミュニティの持つ共通の価値観や経験などをあぶり出しやすい。また他人の言葉に対する感情的な反応からその人の人となりを推測する助けになる。
注意点: グループとして活発に発言が出るように促す必要がある(開始前のアイスブレークの実施が効果的)。1on1に対してひとりひとりの回答に対する深掘りにかける時間が少ない。周りのメンバーに合わせたり流されたりして、1対1の場合に対して、本音を話してくれない可能性が高まる。
ワークショップを実施する前に決めておくべき基本項目
会議とワークショップの役割違いを理解した後は、それぞれに対して準備をする必要がある。特にワークショップ型で進める場合は、チーム全体でその意識を共有し、下記のチェックリストの回答ををドキュメント化し、チームに共有してから進めていくのが理想になる。
ワークショップの目標
何を達成しようとしているのか?なぜワークショップはこの目標を達成するのに適しているのか?
オーナーシップ
ワークショップの企画、進行、実施はどの関係者が担当するのか?
タイミング
ワークショップは大まかにいつ実施されるのか?ワークショップ実施時期に影響する要素はあるか?
解決すべき課題
ワークショップではどのような疑問に答えたいのか?どのような決断が必要なのか?
参加者
ワークショップに参加する必要があるのは誰か?上記の回答に役立つ知識を持っている人
の疑問、必要な決定権は誰にあるのか?
実施環境に関すること
ワークショップはどこで開催されるのか?どのような環境が適切な雰囲気を作り出すのか?
理想とするアウトプット
ワークショップの最後に何を決めたりアウトプットするのか?
成功の定義
ワークショップの成功をどのように判断するのか?
効果的なワークショップを企画・運営します
ビートラックスでは、新規事業開発や新たなサービス開発に取り組む方向けに、上記でご紹介したようなワークショップを提供しています。
その時々に合わせたプログラムを組み、オフラインだけでなく、オンラインでの実施も可能。ご興味のある方はぜひこちらからお問い合わせください。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax
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