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AIに負けない新しい価値を生み出すために必要なマインドセットとは?
どうやってイノベーションを起こせばいいのか?日頃そんなことをお考えになる経営者や幹部層の方は多いかもしれない。
商品・サービスの開発において、イノベーティブな発想は企業の生命線にも成りうる。
グローバル化とAIの実用化が進む昨今、競合相手は日本国内だけとは限らず、世界レベルのイノベーションを起こすことが求められている。
よって、クリエイティビティを生み出す仕組みは以前より一層必要性を増してきたのだ。
我々btraxは、こういった時代の変化に適応すべく、いち早く行動を起こしたい企業を後押しする役目を担っている。
今回の記事はこういったbtraxのミッションの一環として、6月初旬に株式会社イトーキ様、そして関連会社様をサンフランシスコオフィスに招き、プレゼンテーションを行った内容をまとめたものである。
btrax CEOであるBrandon Hillはこのプレゼンにて、AIが普及し始めたこれからの時代にイノベーションを起こす仕組みやその重要性を説明した。その仕組みの根底にあるのが”イノベーションを生むマインドセット”である。
そもそも、なぜ、今イノベーションを生むマインドセットが必要なのか?
国際化社会において、世界で通用する商品・サービス開発を目指す企業は多いだろう。クリエイティブな商品を開発するために実践的に取り組んでいる会社も少なくないはずだ。
しかしながら、バブル全盛期に時価総額の世界上位に名を連ねていた日本企業たちは、いつしかアメリカや中国などの企業にその座を奪われ、今やTop 20に日本企業は一社もない。
時代の変化と共に躍進する産業は変わる
この変化で最も注目すべき点は、30年前と現代にて評価されている産業の違いだろう。
日本経済バブル期にはインフラ産業や金融産業などの、安定した成長や規模の大きいプロジェクトなどを請け負う、いわゆる”重厚長大”な会社が発展していた。
一方で、現代に大きな成功を収めている企業はどうだろうか。GAFAを筆頭に、絶え間ない変化に速いスピードで順応しながら、新しい事業をどんどん作り出して行っている企業が目立つ。
ちなみに、一説によるとシリコンバレーの企業と日本の企業では、その決断スピードに100倍の差があるといわれている。
では、現代の日本大企業はどうだろうか?恐らくそのほとんどが、いまだバブル期とあまり変わらない特色の企業がほとんどではないかと感じる。
単純作業は機械に奪われていく
「人工知能 (AI) ができる3つのこと – 消える職業と生まれる職業 –」でも言及したものがあるが、人工知能や機械学習、ディープラーニングなどの更なる進歩によって、多くの産業が甚だしく変わっていくことは誰の目からみても周知の事実である。
昔、教科書で習ったイギリス産業革命のように、現代の私たちも、AIによって仕事や働き方、生産性という概念の転換期に立たされているのだ。
ここ最近の事例では、2013年にAI将棋ソフトのポナンザがプロ棋士に勝利したり、2015年にはGoogleのAlphaGoがプロ囲碁棋士に勝利を果たしたりしている。
計算の上から成り立つ予測において、もはや人間の脳ではコンピューターに敵わなくなってきていることを存分に物語っている。
コンピューターが処理出来てしまう作業を人間がしていては、洗濯機が自宅にあるのにわざわざ川へ洗濯へ行くようなもので、まさに宝の持ち腐れなのである。
これからは右脳の時代
一般的に、計算や、パターン認証、情報処理などのロジカルな作業は主に左脳で行われているとされている。それらの作業は、現代のテクノロジーを活用すれば、わざわざ人間が行わなくても良くなってきている。
反対に、直感やひらめきなど、無から有を生み出す、クリエイティブな内容は右脳が司り、しばらくの間は簡単には機械で代替がきかない。
要するに、まだコンピューターでは難しいヒトの五感を使うクリエイティブな仕事こそ、人間に残された役割になってくるだろう。
マッキンゼーの調査によると、これから新たに創出される仕事の7割は「人間的な仕事」が占めている。直感的な意思決定、創造的な成果、芸術的なデザイン、顧客や取引先との複雑な交渉。企業にとって多くの価値創造は人間にしかできない仕事によって支えられている。
企業に必要なのは創造性を引き出すしくみ
そのためには、企業は今まで以上に右脳を活性化させるための取り組みが必要がある。もしかしたら、こういった”人間的な能力”を上手く発揮できない企業は、将来生き残っていけないかもしれない。
だからこそ、今一度原点に戻り、創造性を育む精神、マインドセットを理解し、クリエイティビティを最大限引き出す仕組みを、正しく理解してもらいたいのである。
では、どのようにクリエイティビティを生みだすのか?
クリエイティブな能力を最大発揮するためには職場環境と企業カルチャーの両方の変革が必要になってくる。
企業カルチャーの切り替え
しかしそれ以上に、今日本の大企業に必要とされるのは企業カルチャー自体の切り替えである。それは何故か?端的にいうと、時代が求めているものと、従来の日本企業における企業風土や価値観との間に乖離があるからである。
下の図は、これまでの企業に求められていたような価値観と、これからの時代に必要とされるカルチャーの違いである。
例:)
- 製品等の機能が求められる時代から、ユーザーの体験を重視するように
- 安定した企業や製品よりも、絶えず成長、アップデートしてくれるサービス
- 理論的な説明よりも、感覚に訴えかけるプレゼンやパフォーマンス
- 数字で見せるよりも、ストーリーを話すほうが説得力がある
- 実直な働き方よりも、遊び心から生まれる新しい発想が武器になる
左側に位置している言葉はそれぞれ、とても堅実で真面目な雰囲気を感じさせる。対して、右側に位置している言葉は伸び伸びとした、創造性を感じさせる。
これはまるで、左が日本の企業体質を彷彿させ、右はシリコンバレーやアメリカ西海岸の企業をイメージさせるようである。
クリエイティブなワークスタイル
一度過去記事で紹介したこともあるが、ワークライフインテグレーションというワークライフバランスよりも効果的かつ実践的な働き方もまず一つだろう。
仕事とプライベートが無理なく連動する仕組みで、シリコンバレーをはじめとして、アメリカの西海岸の多くの企業ではすでに主流になっていて、優秀な人材を獲得する材料にもなり得る新しい働き方でもある。
また、オフィス環境も重要なファクターとなるだろう。良い人材が伸び伸びと仕事ができ、状況と用途に合わせて使い分けられる空間の作りかたも、クリエイティビティを引き出す。
日本の社会は真面目さ、堅実さを求めすぎている
日本の鉄道は世界で一番正確だと言われており、世界的にみてもダイヤの乱れは少ない。一説によると、山手線の1日の誤差を10日間記録してみると、なんと累計の誤差が15秒しかなかったという。
「東京圏の電車の発着時刻は10秒単位、駅での停車時間は5秒単位で計画され、運転士たちは駅の通過時刻を1秒単位で認識している」(出典)
これは日本が世界に誇れることである、と同時に日本では少しの時間のミスも許されないといった社会通念を体現しているのかもしれない。
一方で、いくら正確性を追求し続けても、最終的に機械やAIには勝てない。そもそも、人間に正確性をもとめるには限界がある。
正確性よりも創造性
これまでの日本企業に多くみられた正確性や、失敗に対する減点方式が、新しいものに挑戦するカルチャーの妨げになっている。クリエイティブな企業になるためには、このような価値観は捨てなければならない。
そして、クリエイティビティ、イノベーションは失敗と表裏一体なのである。挑戦と失敗の繰り返し無くして新しいものが生まれることは非常に難しく、それは我々の歴史から見ても明らかだ。
いかなる創造活動も、はじめは破壊活動だ。- パブロ・ピカソ
失敗を恐れない仕組み
では、どのような環境が、優秀な人材が失敗を恐れずに絶えず挑戦させることを可能にさせるのだろうか。
失敗を恐れずにチャレンジする人材を育てたいのであれば、まずは、人事評価制度をそれに適応させるべきである。ミスの数がマイナス評価に繋がるようではイノベーションを起こす職場環境からは程遠い。
プレゼンテーション後のQAセッションにて、この人事評価制度を含めた本質に迫る質問が飛び交ったので、いくつかを抜粋して紹介したい。
Q: 結果が重視されるワークライフインテグレーション(詳しくはこちらの記事から)と失敗が許される職場環境づくりはどのように共存出来るのでしょうか?
A: これは、開発に特化し、成功している企業を見てみると分りやすいですね。例えば、Google Xという、Googleが新規事業開拓の為に設立した子会社なんですが、
この企業の評価制度がどうなっているかというと、失敗した数だけ評価されるようになっているんですね。
要は、小さい規模で新たな商品を展開し、それが失敗に終わったとしても、Googleにとっては重要なデータなんですね。
もうその商品に莫大な資金を投入して他の市場に参入する必要がないということをそのプロジェクトが証明してくれるわけなので。失敗を促し開発をイノベーティブに起こしていこうとすると、こういった評価制度が必要になってくるのだと思います。
Q: 今後どのような産業が発展していくのか?
A: 既存の産業に新しい価値を見出して提供出来るような企業が発展していく、と私は思います。例えば、全電気自動車で現在ものすごい勢いで市場を席巻しているテスラですが、産業でいうと、既存の自動車産業に属しています。
しかし、テスラのビジョンとして同社CEOであるイーロンマスクは、「機械による全自動運転を実現させ、テスラのオーナーたちが車を使用していない時にその車がタクシーとして働き、オーナーたちに還元される仕組みを作りたい」と言っています。
実際、自家乗用車の稼働率というのは驚くほど低く、平均で4%ほどだと言われています。通勤に片道1時間の運転を毎日していたとしても、1日に2時間しか運転しないので、約8%の稼働率。一年を通し365日運転する方はめったにいないので、平均するとこのぐらいであるということは理解できます。
車を売り切りする時代は終わり、車のオーナーの為に働く自家用車があれば、テスラ以外の車を買う必要は無くなりますよね。
このようにして、既存の産業ながら、全く新しい価値を消費者に提供出来る企業が今後発展していくと思われます。
*テスラは2018年中頃にアメリカ全土の新車販売台数で、初めてメルセデス・ベンツやアウディを抜いた。
Q: 失敗が許されるようにすべきだという職場環境の中でも、特に特筆すべき、ダメな失敗とは?
A: 作り手のこだわりが強すぎるばかりに、消費者の目線を忘れてしまうケースだと思います。
ここカリフォルニアにも日本レストランはたくさんありますが、残念ながら経営者の大半は中国人や韓国人です。日本人の料理人では味や見た目に対するこだわりが強すぎて、こちらの消費者目線になれないのではないかと私は思っています。
例えば、カリフォルニアロールの誕生には諸説あり、日本人か日系の料理人が開発したと言われていますが、なぜカリフォルニアロールが生まれたのでしょうか?こちらの人は海苔が巻かれた見た目を異色だと感じ、受け入れられなかったんですね。
ところが見た目やテイストをこちらの消費者向けに合わせることによって、爆発的な人気が生まれたというわけです。どんな商品、サービスでもそうですが、消費者の心を掴めないものは市場シェアを獲得することは出来ないですね。
非常に良い質問が飛び交い、オーディエンスと共に内容の濃い講演を実現することができた。企業風土改革の一因を担うことができれば、我々にとってこれ以上嬉しいことはない。
最後に
クリエイティビティを生み出す仕組みを作るには、正しいマインドセットを持って職場環境を変えていく必要がある。イノベーションを生む為の職場環境や、社員に挑戦的な失敗をさせる評価制度など、企業風土から一新していく必要性を強く感じて頂きたい。
我々、btraxは企業風土を上手くシフトチェンジさせていくことや、開発チームにイノベーティブな手法を導入するための手助けを行っている。詳しい内容はお問い合わせから。
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