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2018年はイーロン・マスクにとって地獄のような一年だった
今から一年ほど前の2017年中頃にイーロン・マスクは下記のようなツイートをしていた。
If you buy a ticket to hell, it isn’t fair to blame hell …
— Elon Musk (@elonmusk) July 30, 2017
日本語にするのであれば、
「みずから地獄行きのチケットを買ったのであれば、それに対して文句を言うべきではない」
と言う感じ。起業家になるって決めたのであれば、地獄をくぐり抜ける覚悟をしろ、といったところだろうか。
そして、翌年の2018年は、彼にとってまさに地獄とも言える一年になった。数々の困難が降りかかり、それをくぐり抜けていく様子は、下手なハリウッド映画よりもエキサイティング。
しかし、恐らく本人にとってはとても辛く苦しい道のりであった道のりであっただろう。もしくは、こんな困難も冷静に乗り越えられるぐらいに、稀代のアイアンマン起業家はタフなのかもしれない。
同じ起業家として、そしてシリコンバレーのイノベーターとして、最も尊敬する一人でもある彼の2018年の出来事を振り返ってみたい。
数々の困難に直面したイーロン・マスクの2018年
では、2018年だけで彼はどれほどのチャレンジを経験しているのかを紹介する。壮絶に見えるが、これらはたった1年間だけでの出来事である。
2月: バッテリー関係の問題が生じ、Model 3のリリースが (再度) 遅れる
2017年の7月に発表したTeslaの最新モデルであるModel 3は、当初年内のデリバリーを予定していた。しかし、何度となく生産が遅れ、今年の2月には、バッテリーモジュールの開発に関する致命的な問題が見つかり、またも遅れが生じた。
それに対して、事前に予約していたユーザーからは「また遅れてるのかよ!」といった辛辣なツイートを受けている。
Holy cow! Pushed back again, @Tesla?!? pic.twitter.com/g7yN8OViHe
— Zach Honig (@ZachHonig) February 8, 2018
4月: Model 3が生産目標に追いつかず工場で寝泊りをする日々が続く
Model 3の生産に関しての遅れを取り戻し、生産目標に追いつくために一時は元Appleで働いていたスタッフを主任に抜擢するが、状況は改善されなかった。事態を深刻に見たイーロン・マスクは、その原因を過剰な自動化と説明。
About a year ago, I asked Doug to manage both engineering & production. He agreed that Tesla needed eng & prod better aligned, so we don’t design cars that are crazy hard to build. Right now, tho, better to divide & conquer, so I’m back to sleeping at factory. Car biz is hell …
— Elon Musk (@elonmusk) April 2, 2018
製造に関しては、
「ロボットに頼りすぎた。全てが複雑になりすぎている。ここは人力を使ってでもプロセスを改善しなければならない。」
と説明し、主任を外し、自らが陣頭指揮を取ることになった。それにより、工場に隣接するオフィスに寝袋を持ち込み、24時間体制で製造工程のテコ入れを行なった。
Yes, excessive automation at Tesla was a mistake. To be precise, my mistake. Humans are underrated.
— Elon Musk (@elonmusk) April 13, 2018
この状況を彼は、Production Hell (生産地獄) と表現している。
ジャーナリストからの「状況を説明してもらえませんか?」と言うツイートに対しても、一言「は?こっちは自動車を作ることで手いっぱいだよ!」と返信。
Uhh, hello, I need to build cars
— Elon Musk (@elonmusk) April 2, 2018
6月: 生産地獄のため自身の誕生日を祝えず工場で過ごす
この生産地獄はその後も続き、6月の自分の誕生日も工場で過ごし、祝うこともできなかった。その後のインタビューでも、週120時間労働をし、2001年以来1週間以上の休みを取っていない、眠ることができず、睡眠薬服用している。
自分の誕生日も祝えていなかったし、自身の弟の結婚式にも工場からほんの数時間立ち寄っただけだったと語る。
6月: 従業員を業務妨害と機密情報窃取で提訴
そんな中で、イーロン・マスクがテスラ社内全員に宛て「社内に広範かつ大量の業務妨害行為をはたらいた者がいる」とする内容のメールを送信した。とある技術者の一人である従業員がTeslaの生産管理システムのコードを書き換え、大量の機密情報を社外に持ち出していたことがわかったと説明。
この従業員はMOSと呼ばれる生産システムをハッキングし、データを外部送信するようにしていた。そして、ハッキングは複数台のコンピューターに対して行なわれ、その技術者が解雇されたあともデータを流出させるようになっていたとされている。その後その従業員を提訴した。
7月: 上記の元従業員に告発される
この措置に対する報復なのか、今度はこの元従業員から逆提訴を受ける。同氏はネバダ州にあるTeslaのバッテリー工場が、不良バッテリーをそのままテスラModel 3用として供給しており、ドライバーに危険を及ぼす可能性があるとメディアに対して主張した。そして、この件を投資家に対する「重大な脱漏と虚偽の表示」だとして米国証券取引委員会に告発し、さらに欠陥品であるように見えるバッテリーや屋外に放置されたままの廃棄物の写真などをTwitterに公開した。
その後、この元従業員とイーロンマスクの間で以前にかわされていたメールで、その泥仕合いぶりが明らかになる。
8月: Teslaを非公開化するとツイート
おそらく今年の彼の最も”影響力”のあったツイートは下記であろう。
Am considering taking Tesla private at $420. Funding secured.
— Elon Musk (@elonmusk) August 7, 2018
内容としては
「Teslaを一株$420で非公開の会社に戻そうかと考えている。資金のめどはついた。」
通称”420”と呼ばれるこのツイートは、世間を騒がせ、大きな物議を醸し、その後も様々な事態を招くきっかけとなる。
そして一説には、彼がこのツイートをした理由は、”ガールフレンドを驚かせるため”だとも言われている
8月:上記のツイートが原因で複数の株主に提訴される
このツイートがきっかけで、Teslaの株は乱降下し、その上、実際は非公開かへの準備もプロセスも揃っていなかったとされ、株主から不当に株価を操作したといった内容などで提訴を受けることになってしまった。中には「株価を操作するために意図的に嘘をついた」と宣言する人まで出てきてしまった。
8月: 元従業員に不当解雇などに関して提訴される
そんな中でも、社内での問題も引き続き起こっている。8月には2つの内部告発がされ、その一つは不当解雇に関するものである。
8月: 4名の株主からそれぞれ証券詐欺の疑いで提訴される
また、4名の株主のそれぞれがイーロン・マスクに対して、米証券取引委員会 (SEC) 証券詐欺の疑いで告発を行った。そして彼らはその他の株主も巻き込もうとしているとされている。
8月:元社員に従業員盗聴行為と薬物販売で内部告発を受ける
ネバダ州にある電池工場「ギガファクトリー」の元社員が、SECに内部告発を行った。Teslaが従業員を盗聴しているとしたほか、メキシコの麻薬カルテルが工場内で麻薬売買を行っている可能性があると主張。
ギガファクトリーの外側に、勤務中の従業員の個人的な携帯電話を盗聴する装置を設置していると主張。またTeslaが2018年上半期に銅などの原材料3700万ドル分を盗まれたにもかかわらず、投資家に公表していないと訴えている。
さらに、Teslaの従業員がギガファクトリーにおいて、メキシコの麻薬カルテルの代わりにコカインなどの薬物を売っている可能性があるとする米麻薬取締局からの書面通知についてTeslaは公開していないと指摘している。
8月: 自身のキャリアの中で最も苦しい時期を過ごしているともらす
このような困難が続いたことで、New York Timesの取材に対して「この1年はキャリアの中でも最も難しく、痛みの多い時だった」「非常に苦しかった」と語った。そして、「時に3-4日、工場を離れられないこともあった。そういう時は工場の外にも出なかった。これで子どもとのコミュニケーション、友達つきあいが犠牲となった。」とも説明している。
しかし、このインタビューに関しても彼は下記のツイートで「言葉には詰まったけど、泣いてないよ!」と宣言している。
For the record, my voice cracked once during the NY Times article. That’s it. There were no tears.
— Elon Musk (@elonmusk) August 28, 2018
9月: 英国人ダイバーから名誉毀損で提訴される
タイ少年サッカーチームの洞窟遭難事故の際に救助にあたった英国人ダイバーをTwitter上で「ロリコン野郎(pedo guy)」と罵ったことが問題になり、一時は謝罪したものの、その後「訴えてこなかったのは自分がそういう性質だと認めたようなものだ」と発言したことで、提訴されるまでに至ってしまった。
9月: 生配信のポッドキャスト出演中にマリファナを吸う
マスク氏はテレビ司会者ジョー・ローガン氏との対談中にマリファナを喫煙。その後、ウイスキーのオンザロックを飲み、アルコールもまた、一種の麻薬だとコメントした。
9月: 米証券取引委員会(SEC)より証券詐欺容疑で提訴を受ける
8月の通称420ツイートに対して、SEOが非公開化ツイートで投資家欺いたと主張し、イーロン・マスクを提訴した。
SECの法規執行局共同ディレクター、スティーブン・ペイキン氏は「マスク氏が420ドルという価格にたどりついたのは、資金オファーの確約を得たとテスラ株主に信じ込ませようと、当時の株価に約20%のプレミアム(上乗せ)を想定した上で、マリフアナ(大麻)文化におけるこの数字の意味と、それをガールフレンドが面白がると考えたのが理由だ」と論じた。
9月: 和解のために2000万ドルとTesla会長の座を失う
ことを迅速に収拾させるため、SECとの和解に同意。その条件として、罰金として個人、Teslaそれぞれから2000万ドル、そしてTeslaの会長から退くことを受け入れる。
10月: SECと和解するも彼らを揶揄する内容をツイート
今度は仕返しとばかりに、SECを”Shortseller Enrichment Commission(空売り投資家裕福化委員会)”と揶揄するツイートをしてまた物議を醸す。
Just want to that the Shortseller Enrichment Commission is doing incredible work. And the name change is so on point!
— Elon Musk (@elonmusk) October 4, 2018
Teslaの非公開化発言が詐欺の疑いがあるとして米証券取引委員会(SEC)に提訴され、和解のために2000万ドルとテスラ会長の座を失ったイーロン・マスクCEOが、。
「ちょっと言っておきたいことがあるんだけど、Shortseller Enrichment Commissionは最近素晴らしい仕事しているね。この名前に変えるのがお似合いだと思うよ!」
10月: 問題のツイートを「2000万ドルの価値があった」と説明
これだけ散々な目にあった原因の420ツイートであるが、イーロン・マスク本人としては、それだけの価値があったと思っているらしい。
Twitter上で
「多くのLIkeを獲得したけど、2000万ドルの罰金払ってんなら、それにいくらかかってると思ってんだよ。」
と絡んできたユーザーに対して、一言
「その価値あったね」
とリプライしている。
Worth it
— Elon Musk (@elonmusk) October 27, 2018
11月: ポッドキャストでのマリファナの一件でNASAから厳重な検査を受ける
例のポッドキャストでのマリファナ吸引の一件がSpace Xの顧客でもあるNASAに問題視される。カリフォルニア州では合法といえども、NASAとの契約に抵触する疑いも受け、NASAは安全基準を満たしていることを確認するためにSpace Xの従業員に対してドラッグテストを敢行した。
それでもあなたはやりますか?
1年だけでこれだけの苦難を経験しているイーロン・マスクは、もしかしたら「Uber ファウンダー Travis Kalanick 驚異の失敗歴」で紹介されているトラビスよりも、かなり濃厚な人生を送っているかもしれない。
これを読んだ後で、もしあなたがイーロン・マスクのポジションにつけるとしたら、果たしてやりますか? 下記の通り、彼としては、ふさわしい人がいれば、いつでも席は譲る準備はできているみたいですよ。
They can have the job. Is there someone who can do the job better? They can have the reins right now.
参照元:
- https://mashable.com/2018/02/08/tesla-model-3-production-delays-q4-call/#5OI7RWPobkqA
- https://www.nytimes.com/2018/08/16/business/elon-musk-interview-tesla.html
- https://in.mashable.com/science/1292/elon-musk-wont-be-seen-smoking-weed-again-in-public
- https://japanese.engadget.com/2018/12/27/2019-4/
- https://www.wired.com/story/wildest-lawsuits-tesla-right-now/
- https://japanese.engadget.com/2018/12/12/189/
- https://wired.jp/2018/08/22/elon-musk-tesla-tweets-struggles/
- https://mashable.com/article/elon-musk-end-of-year-2018-tesla-twitter/?utm_cid=mash-com-Tw-main-link#sGVNhDSvbsq6
- https://japanese.engadget.com/2018/06/22/elon-musk-tesla-lawsuit-sabotage-model-3/
- https://jp.reuters.com/article/tesla-whistleblower-idJPKBN1L20FQ
- https://gizmodo.com/elon-musk-claims-420-tweet-with-20-million-sec-fine-wa-1830050362
- https://mashable.com/article/elon-musk-personal-year/#K0fqe1.rbOqT
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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