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イノベーションの効果を測る方法とは
現代の企業にとって、新しい事業を生み出したり、仕組みを変えたり、革新的なサービス提供方法を考えたりなど、いわゆるイノベーションの重要性が高まっていることは間違いないだろう。
世界の企業時価総額を見てみても、トップにランキングされているのはそのほとんどが “イノベーティブ”な企業と呼ばれているものばかり。
そして、企業の平均寿命がどんどん短くなってきている現代では、むしろイノベーションを追求することは最も有効な生存方法の一つにもなってきている。
実感しにくいイノベーションの効果
その一方で、イノベーションの効果が実感できるまでにはかなり時間がかかることも事実である。
そもそも新しいビジネスや、やり方をスタートしてから、それに対して市場が追いつき、利益に結びつくまではかなりの辛抱を要し、その途中で我慢できずに諦めてしまうことも多々あるだろう。
その一方で、最初は赤字続きであったが、諦めずにじっくりと進め、市場のタイミングにしっかりと合わせてリリースしたことで大きな利益と社会的価値を生み出したようなサービスも少なくはない。
ここで難しいのは、どのようにしてイノベーションを“測定”するのか。きっちりとその基準を設けないと、社内から「ごくつぶしプロジェクト」と呼ばれてしまう可能性もある。
マッキンゼーの調査によると、米国企業の70%がイノベーションをビジネス課題のトップ3の一つと捉えているが、その測定方法を設けているのはわずか22%にとどまっているとのこと。
ここでは、btraxでもクライアントプロジェクトを進めていく上で指針にしている、イノベーションを測定する方法をいくつか紹介したい。
そもそもイノベーションとは?
まず問題になるのが、それぞれの人や企業によって「イノベーション」の言葉の概念がまちまちであると言うこと。
今までにみたことのない全く新しサービスがイノベーションであることもあるし、既存のビジネスの再編成を行うことでイノベーションが生まれることもある。では、世の中にはどのようなイノベーションが存在しているかを考えてみよう。
イノベーションに含まれる要素
- 新しい価値の創造
- 既存の価値の再定義
- プロダクト、サービス、プロセス、体験
- 絶対的な存在
- 大きな改革
- 徐々に変化
イノベーション≠技術革新
ここで注意したいのが、イノベーションは必ずしも技術革新だけで生み出される訳ではないということ。
最終的には、ユーザーや世の中に新しい価値を提供する事がゴールになるため、例えそれがすごい技術だったとしても、新たた価値の創造に繋がっていなければイノベーションとは言いにくい。
その一方で、既存の技術のアレンジやリミックスを通じて、新しい価値を生み出すことも多いに可能。
例えローテクだったとしても、見せ方、体験、そして売り方ひとつを工夫するだけでも、顧客に対して新たな価値が提供できていれば、十分イノベーションとして認識しても良いと考えられる。
ちゃんと測定しないとイノベーティブかどうかなんてわからない
では、これらの要素をどのように計測していくべきなのか。その基準をしっかりと決めないと、ついつい「なんとなく、感覚的に、面白い」ことがイノベーションであると結論を出してしまいがちである。
そして、最も危険なのは、実は企業にも顧客にも全く価値のないような状況でも「イノベーティブだから」という理由で評価されてしまう事。それを避けるためには、しっかりとした評価基準を設ける必要がある。
重要なのはプロセスとアウトプットそれぞれに対する測定基準
イノベーションを生み出すためには、それに即したプロセスと、アウトプットに対する適切な測定が不可欠だ。そして、定量と定性の両方の側面から測定する必要があるだろう。
では、それぞれに対して、どのような測定基準=KPIが考えられるだろうか?これはそれぞれの企業やプロジェクトによって調整が必要であるが、ここでは、ひとつの例として考えてもらいたい。
イノベーションのKPI例: アウトプット系
- 新しい商品/サービスからの売り上げ (n年)
- 新しい市場からの売り上げ (n年)
- 新しい顧客層からの売り上げ (n年)
- 既存顧客の新規商品/サービスへの変換率
- 新規ライセンスや知的所有権からの収益
- ブランド認知度変化率
- ブランドイメージ変化率
- 顧客満足度変化率
- 顧客ロイヤリティー変化率
- 従業員満足度
- 新規従業員獲得率
- 離職低下率
- 株価変化率
イノベーションのKPI例: プロセス系
- 年間新規ビジネスアイディア数
- 新規アイディアを提出したスタッフ/チームの数
- 年間プロトタイプ作成数
- アイディアからプロトタイプへの変換率
- 経営陣の新規に対するプランと日常業務との時間配分率
- 新規商品/サービスと既存の割合
- 社外とのコラボ事例数
- 現場スタッフへの適切な権限の分配状況
- イノベーション教育への投資額
- 顧客からのアイディア獲得数
- SNSから得られた新規アイディア数
- 顧客アイディアが新規商品/サービスに変換された事例率
- 既存作業効率に対するコスト/時間改善率
イノベーションが本当の効果を発揮するには時間がかかる
これらのKPIを設定する際に最も厄介なのが、どのような時間軸を元に考えるべきかという点。
実は、歴史的に見ても革新的なプロダクトやサービスが世の中に普及し、提供側に本当のメリットをもたらすには、結構な時間がかかる。しかし、どこかのタイミングでスタートしない限りは、その効果は絶対に生み出すことは不可能である。
イノベーションが効果を発揮するまでのタイムライン例:
- ペニシリンの発見 (1928年) 実用化 (1945年): 17年
- 現代パソコンの原型 (1973年) 一般的な普及 (1995年): 22年
- Apple Newton (1993年) 初代iPhone (2007年):14年
ことイノベーションの価値に関しては、短期的な効果だけではなく、長期的に物事を見極める辛抱強さも求められるだろう。
イノベーションは「面白い」から始まり「有益な」結果を生み出す
猫も杓子も「イノベーション」を連呼する現代において、本当の意味でのイノベーションの価値はどこにあるのか?それは、最終的なアプトプット結果と、それを生み出す経緯で獲得した、新たなプロセスのその両方であると考えられる。
これが会議室で話しているだけだと、ついつい画一的な結果だけにとらわれがちであるが、せっかく面白いコトを始めるのであれば、その結果を多面的に評価し、何かしら有益な結果を生み出しているかを冷静に測定する必要があるだろう。
そして、最も重要な結果の一つが「イノベーションを生み出すカルチャー」が醸成されたということではないかと思う。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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