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新サービスの初期ユーザー獲得に意外と有効なオフライン施策
freshtrax読者の方ならご存知の通り、ここ10年程でサンフランシスコではサービス開発の手法が大きく変化した。ユーザーを中心に捉え、デザインのプロセスを通して課題解決を図るそのプロセスは数多くのサービス・プロダクトを生み出してきた。
そうして生まれた新たなサービス・プロダクトが必ず通るのが「初期ユーザー獲得」のフェーズだ。いくら問題を解決する革新的なソリューションを生み出したとしても、それを使ってくれる人がいなければ何の意味もない。しかしこうしたスタートアップは資金が潤沢にあるわけではないことから、かなり地道な方法でユーザー獲得に励んでいたのは「マジックなんてなかった!スタートアップ企業の初期ユーザー獲得方法」で紹介した通りだ。
また、このような新サービス・プロダクトを広めるにあたっては、従来のプロモーションのように大規模に予算をつぎ込んで行うという手法ではなく、デザイン思考のプロセスのように仮説⇒実践⇒検証という実験的なサイクルを複数回すことで、最も効果の高い手法を特定していくことが求められる。
btraxでもこれまで新サービス・プロダクトを広めるサポートをオンライン・オフライン問わずに広く行ってきたわけだが、その中でも意外に効果のある手法もあった。そこで、今回は、btraxが実践してきた初期ユーザ―獲得方法から3つご紹介したい。
意外と効果大 ポストに届けるダイレクトメール
まずご紹介したいのはダイレクトメールだ。と言ってもInsagramやeメールのことを言っているのではない。オフラインのダイレクトメール、ポストに届くアレである。
意外かもしれないが、ダイレクトメールを活用しているスタートアップはこの最新テクノロジーで溢れるサンフランシスコ・ベイエリアに結構存在している。頻繁にやっているところでいくと、自動車保険スタートアップのMetromileは筆者の家にも月1回程度のペースでダイレクトメールを送ってくる。封筒にチラシが入っているタイプのものである。
アメリカではUSPS(米国郵政公社)が行っているEDDM(Every Door Direct Mail)という面白いサービスがある。USPSのウェブサイトに行くと、各郵便番号内の細かいエリアごとに、指定した年齢層の割合と、平均所得を見ることができるのだが、このデータを基にターゲットが多く存在する郵便番号を指定し、ダイレクトメールを送れるのだ。
btraxでは高齢者層獲得に活用
実際にbtraxでは、高齢者層をターゲットとしたサービスのダイレクトメールをこのEDDMという仕組みを利用して送ったことがある。高齢者が多く、かつ所得の高い地域を予算の範囲内で複数指定し、クライアントが開発していた新規サービスへのサインナップを促すダイレクトメールを送ったのである。
実際オンライン広告に比べると1通あたりにかかるコストは大きいのだが、一方で高いサインナップ率を獲得することができた。計画段階ではオフラインで受け取ったダイレクトメールに記載されたURLをわざわざパソコンやモバイルに打ち込んでランディングページを訪れ、そこからさらにサインナップをしてくれる人が果たしてどのくらいいるのか不安だったのが、いい意味で裏切られた結果となった。ターゲットが高齢者ということもあったため、よりダイレクトメールに親和性が高かったこともあったのだろう。
スタートアップのためのDMサービスも人気
他にもShare Locial Mediaという、ダイレクトメールの制作・発送を行うスタートアップもある。ポストカードのようなダイレクトメールが、似たような他のビジネスの分と複数で1つの封筒に入って届けられる仕組みで、Blue Apron、Lyft、ThirdLove等のスタートアップがこれまでに利用している。まさにスタートアップのためのスタートアップだ。
Share Local Mediaがターゲットにするのは大都市部の高所得者層で、年齢は25~49歳が中心。ターゲットは5種類に分けられ、eコマース(ジェンダー共通/男性/女性)と、母親層、そしてその地域に新たに引っ越して来た層である。これらのグループの中から1つ指定し、自社のダイレクトメールを他社のものと共に届けてもらうことができる。
毎日山のように目にし、スルーすることに慣れてしまっているオンライン広告やeメールニュースレターと比べて、ポストに届いたものは1つずつ確認する人が多く、ターゲットにメッセージが届きやすいのだろう。そういう意味では、ターゲットリーチにおいて存在感を出す手段として多くのスタートアップがダイレクトメールを利用するのも納得できる。
実物を体感してもらう 草の根ポップアップ展示
もし新たなプロダクトのユーザーを獲得したいのなら、ポップアップ展示は非常に有効だ。もちろんb8taのような新プロダクトを展示するスペースに出品できれば大きいが、それ以外にも地道に草の根活動で展示する方法はある。
クライアント企業内に昼寝部屋を設置
btraxでは以前海外のマットレスメーカーの日本進出をお手伝いした際、ローンチ前のユーザー獲得活動の一環として、他のクライアント企業に掛け合い、各企業内に昼寝部屋を設置するという試みを行った。
日本の働き盛りのビジネスパーソンの就寝時間が短いことは有名だが、同時に仕事の生産性UPに対する昼寝の効用も認知されつつあったことから、マットレスのプロモーションとしても企業の生産性対策としてもちょうどいい施策となったのである。
実際には企業に会議室の1室をご提供いただき、その部屋を2週間の間「昼寝部屋」とし、マットレスを置いて社員の皆さんに自由にマットレスを体験してもらった。その後同フロアの社員の皆さんにアンケートを送付し、回答者には特別割引コードを差し上げた。
また、ある企業ではホワイトボードがあったため、体験した社員の皆さんに自由にコメントを書いてもらうようにしたのところ、非常に正直な意見を沢山いただくことができた。ちなみにbtraxのクライアント企業のご厚意で場所の使用コストはかからず、発生したのは運搬コストのみであった。
サンフランシスコのランニングイベントで靴下展示
アメリカでも同様の草の根ポップアップを行った事例がある。日本の靴下メーカーのアメリカ進出をサポートした際は、同社のランニングソックスの初期ユーザーを獲得するためにサンフランシスコのランニングイベントでポップアップ展示をした。
サンフランシスコは今年アメリカ国内170都市の中で最もヘルシーな都市に選ばれたことからもわかるように、健康意識が非常に高く、ランニングイベントも多数開催されている。そこでランナーたちにリーチし、実際にプロダクトに対するフィードバックをもらうことを実施。
ランナーの中にはサンフランシスコ・ベイエリアの住民が多いため、新サービスやプロダクトへの興味が強く、フィードバックを惜しまない。ローンチ後の今でもランニングイベントの主催団体と提携し、月に1度のイベントで定期的にポップアップ展示を行っている。
究極に地道だが有効 オフラインでユーザーをスカウト
気が遠くなるような作業に思えるかもしれないが、実は結構効果的なのが1人1人に声をかける方法だ。手作り商品のオンラインマーケットプレイスEtsyも創業当初はメンバーが実際のクラフトフェアに赴き1人1人のユーザーに対してピッチしたという成功例もあるが、どのスタートアップも一度は検討した方法なのではないだろうか。
なぜそう考えるかというと、btraxがとあるスタートアップのお手伝いでこの活動をしたときに、声をかけた殆どの人が非常に好意的な反応だったからだ。
ターゲットは小さな子を持つ親世代で、主に公園で活動していたのだが、声をかけると皆小さな子供がいるにもかかわらず、手を止めて非常に熱心に話を聞いてくれた。中には、「今どのステージにいるの?」とスタートアップの資金調達状況に興味を持つ人までいた。
実践方法は超シンプル
ちなみにオフラインでユーザーをスカウトする方法は至極シンプルである。用意したものはサービスのコンセプトを書いたチラシとサービスロゴを入れて作った粗品。これらを携え、公園に赴き、親子連れを見かけると「ちょっと今お話ししてもいいですか?」と声をかけ、サービス内容に関するピッチを繰り返した。
また、親をターゲットにしたミートアップイベントにも参加し、隣合わせた人から「何のお仕事をされているんですか?」と聞かれた際に「実はこういうことをしておりまして…」とサービスの説明を行った。
こうして獲得した彼らはテストユーザーとして、サービス改善に関する貴重なインサイトを提供してくれたのだが、この方法はもしかしたらサンフランシスコ・ベイエリアだからこそ成り立つ方法なのかもしれない。ここは街全体でスタートアップに協力的で、住人は新サービスが生まれる場に立ち会うことに慣れていて好奇心旺盛だ。
知らない人に声をかけづらい空気があり、初対面の人にネガティブなフィードバックを出すのを憚る日本では少しハードルが高いかもしれないが、やってみる価値はあるだろう。
まとめ
今回ご紹介した事例はどれも全く新しいものではなく、むしろ非常に古典的な方法だ。しかしオンラインで広告が溢れる時代に、意外と有効であるというのはおわかりいただけたのではないだろうか。btraxでは新サービス・プロダクト開発のみならずその後の初期ユーザー獲得まで一貫してサポートできるのがbtraxの強みだ。ご興味のある方は是非お問い合わせを。
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