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アメリカのデザイン会社から見た中国企業の優位性
”中国製品”と聞いてどのようなイメージを持つだろうか?
恐らく日本製品よりも性能が低く、デザイン性も劣っていると感じる人は少なくはないだろう。その一方で、世界的な視点で見てみると意外とそうでもないことに気づく。
例えば、アメリカに住んでいると、電化製品を中心に様々なプロダクトが中国製であることが多いことに加え、Made in Chinaだけではなく、いわゆる”中国ブランド”も多く、その評価も決して低くはない事を日々感じる。
一昔前だったら日本製であることが一つのブランドになり得たのであるが、ここ最近では韓国、そして特に中国ブランドの躍進が目立つ。
むしろ、「あ、あれって元々中国の企業だったんだ?」という場合も少なくない。
グローバルな展示会でも目立つ中国ブランド
今年初めにラスベガスで開催されたCES でも、気づけば、アリババ、テンセント、バイドゥ、シャオミ、ハイセンス、ハウウェイ、ハイアール、レノボ、TCL, DJI, そしてXiaomiといった、”中国発”のブランドが目立っていた。
ちなみに、中国 ”企業” ではなく、中国 ”ブランド” としているのは、もともと中国発であったとしても、それぞれの役割ごとに企業の実態が他の地域もあるためである。そのあたりも戦略的にうまいなと思わせる。
成功のカギはグローバルブランドの確立
これらのブランドに共通するのは、そのグーロバルな感覚とデザイン性の高さである。
上記のイベントでも英語にキーノートやプレゼンを問題なく行っているだけではなく、複数の地域から採用した多国籍スタッフで構成されるチーム、アメリカ市場に違和感なく浸透しているブランドイメージなどは、グローバル化がうまくいっている成果でもある。
例えば、スマートTVで米国市場での急成長をしているTCLは自分たちを”America’s most loved TV brand”と呼んでいるし、以前にはAppleのパチモンと呼ばれてたXiaomiはMeta傘下のOculusと中国における独占契約を結ぶまでに至っている。
中国はここ数年でこれまでの”世界の製造構造”や”部品供給国家”から、続々とグローバルブランドを生み出す土壌に成長しつつあるとさえ感じる。
デザイン性も急激にアップしている
中国製品といえば、以前は”ダサい”、”いけてない”、”ちゃちい”、”使いにくい”、などのイメージがどうしてもつきまとっていた。
しかし、最近では見た目や使いやすさなど、そのデザインクオリティが急激にアップしていることを感じる。
プロダクトデザインから、アプリのUI, そしてUX面を取ってみても、グローバル水準を満たしているケースをいくつも目の当たりにしている。このような”デザイン性の高さ”も中国企業の成功の大きなファクターになっているだろう。
中国ブランド躍進の裏に隠された一つの流れ
なぜこのような成長が達成できているのだろうか?
この躍進の裏には、おそらく日本で生活しているとあまり気づくことの少ない、人材面での一つの大きな流れがあると考えられる。そのことに気付かされたエピソードを2つほど紹介する。
サンフランシスコでデザイナーを募集すると…
以前に「変わり始めたデザイナーの仕事内容と役職別の平均給与」でも紹介した通り、我々、btraxの本社のあるサンフランシスコには世界的にも有名なデザインスクールがいくつもあり、優秀なデザイナーを多く輩出している。
実際にデザイナーの募集をかけてみると、実に多くの優れたデザイナーの応募がある。例えば数ヶ月前にもVisual Designer職の募集をしてみたところ、数週間の間に100通近い応募があった。
その応募の中には新卒から経験者まで多種多様な応募があったが、実は一つのパターンがあることがわかった。
それは、応募の半分近くが中国出身のデザイナーであるということ。
そして、その多くが、”中国の美大を卒業” → “中国企業でデザイナーとして数年勤務”→ “アメリカのデザイン学校に入学”→ “修士課程でデザイン学位を獲得”のプロセスを踏んでいる。
したがって、上記の経歴を持った多くのデザイナーは、中国でデザインの基礎を学び、企業での実戦経験を持っている。
それをベースにアメリカのデザインスクールで、最先端のデザインと英語でのコミュニケーションを身につけ、アメリカの企業で働く。応募のあったデザイナーの半数がこのプロセスを踏んでいる。
ちなみに、今回のデザイナー募集で日本人デザイナーからの応募は1人もいなかった。そもそも日本から来てサンフランシスコ周辺のデザインスクールを卒業する人の絶対数がかなり少ない。
中国人デザイナーのキャリアパスとは?
そんな状況もあり、サンフランシスコオフィスでは、中国人のデザイナーを採用することも少なくはない。理由は単純で、彼らの技術力が高いから。彼らの多くは”現地”のデザイナーと比較しても引けを取らない実力を兼ね備えている。
そして、転職の多いアメリカでは、キャリアアップ戦略の一つとして転職を選ぶ人もいる。うちの会社を先月退職した中国出身のデザイナーに”次はどこに行くの?”と聞いたところ、あまり表情を変えずに”Googleです”と答えた。
自分の会社で働いてたスタッフがGoogleに転職!という嬉しいニュースに、”すごいじゃん!” と伝えたのだが、”いや、期間限定の契約社員なんで”と冷静に答えた。
通常アメリカで働く場合は、大学を出てから数年後は就労ビザがないと自国に戻らなければならなくなり、契約社員の場合は、ビザ受給の対象から外れる。
彼に、”え?じゃあ、ビザを出してもらえないじゃん。そのあとはどうするの?”と聞いてみた。
その心配に彼は、”いや、Googleでの勤務が終わったら中国に戻ろうと思ってる。これまでのキャリアがあれば、中国に戻っても、とても良い待遇の仕事を得ることができるから”と答えた。
そう、中国の企業は現在このような経験の人材を破格の待遇で迎え入れているというのだ。
中国で下積み → シリコンバレーで実務経験 → 中国企業で活躍
なるほど。これはどういうことかというと、アメリカのデザイン会社やGoogle, Apple, Amazonなどの一流グローバル企業で英語と経験を積んだデザイナーは、中国に戻ってからもとても明るい未来が待っているということだ。
まあ、これは至極ロジカルな話で、世界で活躍する企業でそのノウハウや技術を会得し、それもグローバルな感覚と英語力も備わっているような優秀な人材を中国企業は高待遇で向かい入れ、重要なポストにつけることで、その企業の大きな成長に繋げている。
特にデザイナーの競争の激しいサンフランシスコでの地域でデザイナーとして学び、企業で働くことができれば、英語力も、国際性も、最先端のデザインプロセスを得ることが可能になる。
具体的にいうと、UXデザイン、プロダクトデザイン、サービスデザイン、UIデザイン、デザイン思考、ブランディングなどの企業の成長に直結した技術を身につけることができるのだ。それも英語で。
このような人材を積極採用することで、中国の企業は見た目のいけてなさや、使いにくさ、ブランド力の低さなどの弱点をカバーし、グローバル性とデザイン性をどんどんアップさせている。妙に腑に落ちる感じがした。
日本の場合はどうなっているのか?
では、日本企業の場合はどうだろうか?
大企業を中心にそもそも”デザイナー職”を真面目に採用しているケースがまだまだ少ない。加えて、優秀なデザイナーを積極採用していることの多いベンチャー企業が大企業を脅かすケースもあまりみない。
となってくると、たとえ優秀なデザイナーであっても、そこまで良い待遇の仕事が見つかるとは考えにくい。
そして、最も大きな問題として、海外留学をした人材を正当に評価できない & 企業の成長に活用でききれていない問題がある。
例えば日本のデザイナーがアメリカで上記のようなキャリアパスを通ったとしても、おそらく日本に戻った場合に中国ほどの明るい未来が待っているケースは少ないだろう。事実、アメリカの大学を卒業し、新卒扱いで就職活動をする場合、そのオプションはかなり少ない。
本来であれば、英語力+デザイン力のある人材など、企業が高待遇でヘッドハンティングしても良いレベルだと個人的には思うのであるが、なぜか日本企業はまだそれを行わない。
結局そのような若者たちは、なんちゃらキャリアフォーラム的なイベントを通じて、非デザイナー職で内定をもらっているケースがほとんどである。これは非常に勿体無い。
驚愕の世界時価総額ランキング結果
これは日本に住む友人が以前にシェアしていたテレビ番組の画像。この番組では1989年と2017年におけるそれぞれの世界企業の時価総額ランキングが紹介されている。
これを見てもわかるとおり、現在のトップ5は全てアメリカ企業。そして5位と7位に中国のアリババグループとテンセントがそれぞれが入っている。トップ20には日本企業が一社も入っていない。
と、いうかむしろ1989年にはトップ5が全て日本企業で独占、トップ20のうち13社が日本企業であったこと自体がもすごい驚きなのだが…。
デザイナーだけではなくエンジニアも壊滅的らしい
先日、以前に何度か対談もさせていただいた大前研一さんによる「日本人エンジニアの給料が上がらない理由 -ファーウェイ本社の初任給83万円 – 」という記事を読んだ。
なるほど。この記事を読むと、このような流れはデザイナーだけではなく、エンジニアにも起こっているのだろうと想像された。
こんな状況を考えると「大丈夫か日本企業?」と思わずをいられない。
これからの企業に必要なのはグローバル性とデザイン性の高さ
やっぱりどう考えても、これからの企業が求めるべきはグローバルな視点を持ったスタッフと、デザイン的考えのできる組織のその2つであると思う。
世界の企業によるその地域と業界を超えてガチンコ勝負がどんどん始まっている中で、未来を考える、新しいものを作る、世界に挑戦する。
これらができない企業が生き残れるチャンスはどんどん下がる一方な気がして仕方がない。それをどうにか打破するためにも日本企業に対して、btraxでのサービス提供をより強化したいとより一層感じた。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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日本市場特有のビジネス慣習や顧客ニーズ、効果的なローカライゼーション戦略について、実際に日本進出を成功に導いたリーダーたちが、具体的な事例とノウハウを交えながら解説いたします。市場参入の準備から事業拡大まで、実践的なアドバイスと成功の鍵をお届けします。
■開催日時:
日本時間:2024年12月6日(金)9:00
米国時間:12月5日(木)16:00 PST / 19:00 EST
*このイベントはサンフランシスコで開催します。
■参加方法
- オンライン参加(こちらよりご登録いただけます。)
- 会場参加(限定席数) *サンフランシスコでの会場参加をご希望の方は下記までお申し込みまたはご連絡ください。(会場収容の関係上、ご希望に添えない場合がございます。予めご了承ください。)
- 対面申し込み:luma
- Email(英語):sf@btrax.com
世界有数の市場規模を誇る日本でのビジネス展開に向けて、貴重な学びの機会となりましたら幸いです。皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。