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そろそろ資金調達の際に”おめでとう”と言うのをやめないか?
スタートアップ関連のニュースを見るたびに漠然とした違和感を感じている。
国内外の多くのVCが複数ファンドを立ち上げ、メディアは資金調達に関しての話題に事欠かない。
〇〇社XX億の資金調達に成功!
とか。
事実、友人や知人を含め、自分と近しい人々が資金調達や出資を行っているケースも少なく無い。
そのようなニュースを見た当事者以外の人々の反応に少々困惑してしまう。なぜならば、彼らはそれらの記事に対して、”おめでとう“や”凄い“, “今度おごって“, などのコメントしたりするから。
普段はアメリカで生活をしている事による文化的な感覚の違いかとも思うが、それらの反応に”ちょっと違うのではないか”と感じてしまう。
資金調達はスタートとであって、ゴールではない
シリコンバレーやサンフランシスコ界隈をはじめとして、こちらでもスタートアップの資金調達に関してのニュースは恐らく日本の何十倍もの件数で伝えられる。
そしてそのスケールも非常に大きい。しかし、それらに対して “おめでとう” と言う習慣はあまり無い。
なぜならば、スタートアップが資金調達を行う事自体は、一つのプロセスでしかなく、必ずしもそれ自体が “めでたい” わけでは無いからだ。
資金調達した事実より、その中身が大切
こちらでは資金調達をした事やその調達額以上に、“どこ”から調達したかや、その内容や条件などの方が重要であったりする。
確かに、Sequoia CapitalやAndreessen-Horowitzなどのいわゆる、トップティアと呼ばれる一流VCから投資を受ける事が出来ればその後への大きなステップにもなるし、PR効果も高い。
しかしそれだけで全てがうまく行く保証は無く、やはりスタートアップにとっては、成功へのプロセスの一つでしかない。
実は自己資金に越したことはない
逆に以前に”エンジェル投資家の裏側教えます“にてロン・コンウェイが語っているとおり、なるべく自己資金で進めて行った方が良い場合も多いのである。
実際に起業家の友達に自分の会社は外部資本を入れずに、自分が株式の100%を保有したまま続けている事を伝えると、”すごい!おめでとう” と羨ましがられる。
彼らはごくロジカルに考え、自己資金率を高くキープ出来ている事が重要である事を理解している。スタートアップ=資金調達が必要というのは完全なる都市伝説であり、必要の無い出資は受けないに限る。
資金調達 = 人のお金を頂く
例えば、友人の会社が1億の投資を受けたとしたら “めでたい” と思うかもしれないが、1億借金した人におめでとうとは言わないだろう。確かに出資を受けるのと借金をするのは異なるが、本質的には近い部分もある。
逆に借金は返済すれば良いが、一回投資を受けると一生コントロールされるという考え方もある。どちらが良いとは一概には言えない。
スタートアップ起業家が、頂き女子 or 男子になってはいけない。
根源にはVCのPR上手がある
ではなぜ日本では、”資金調達=めでたい“となっているのか。
これには恐らくVC業界の卓越したPR戦略が多少なりとも関係しているのではないかと考えている。彼らは当然、より多くのスタートアップが資金調達を希望し、その中で出来るだけ将来有望な優れた企業に投資したいと考える。
単純に考えると、世の中で資金調達を求めるスタートアップは多ければ多い程良いのだ。従って、”資金調達=良いニュース=めでたい“の方程式が一般常識となる方が良いといえる。
微妙な表現の違いが、印象を変える
事実、常識とされている表現一つとってみてもそれがよくわかる。スタートアップが資金調達を行った場合、日本語メディアでは、”◯◯社が◯億の資金調達に成功”や“達成” と語られるのが一般的であろう。
しかし、英語のニュースでは”XYZ, Inc. completes fundraising of $X million” など、資金調達を”Completes = 完了“と表現する。
それはまるで日本では大学に入学した際に “おめでとう” と言われ、アメリカでは卒業して初めて褒められるのになにか似ている。
従って、日本のメディアなどで資金調達自体を成功と表現するのは、とてもミスリードな気がする。
VCと起業家の微妙な関係
実際の場合、投資を行う方も受ける方もイーブンな関係であるはずである。
冷静に見て考えてみると、逆になかなか投資を受けてくれないような優良な企業に投資出来た場合、VC側にとっての方が”めでたい”とも言えるケースもあるだろう。
しかしなぜか特に日本では、出資を受けた側が何かを達成したような表現で溢れている。そして何も知らない周りの人達は、全く悪気無く、”おめでとう!” と言ってしまう。
恐らくこれには当事者達もやや困惑しているだろう。もしくは、周りの反応を冷静に受け止め、”わかってないな” と感じてる場合もあるだろうか。投資を受ける場合には、様々な理由やファクターが関係している。
資金調達の内情はケースバイケース
業務拡大の為に戦略的に出資を受ける場合もあれば、資金がショートしそうになり、泣く泣く受ける場合もあるだろう。
理由や内情に関しては、それぞれの当事者達にしか解らない事もいっぱいあるのだ。
スタートアップが資金調達を”完了”するのは、会社にとっての一つの大きな節目でもあり、新しいスタート地点に立ったと言う事でもある。しかし必ずしもそれが”成功”を意味するわけではない。
逆に本人達は大きなプレッシャーを感じている事であろう。なので、今度そのようなニュースを見た時にには、ふとその事を思い出し、是非”これから頑張ってね“と言ってあげてほしい。
そして忘れてはならないのは、出資を受けたからといって、その全額がファウンダーや社長のふところに入るわけではない。
内情も知らないうちは、うかつに “おごって” などと言わないように。言われた本人達も困惑しちゃいます。
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