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スタートアップin大企業・YAMAHAが生み出すイノベーション
最近の日本はイノベーションが生まれにくい環境のように思える。しかし、それと同時に世界へ挑むスタートアップから、カルチャー、マインドセットを学びイノベーションを起こそうとしている大企業も少なくはない。スタートアップが持つスピードの早さや攻めの姿勢から学ぶ事は多い。大きな企業であっても常に新しい事業を創出するためには柔軟な考え方と起業家精神が不可欠である。
そんな日本企業の海外展開のきっかけ作りとして、btraxは2010年からグローバル市場向け英語ピッチコンテストである、JapanNightを定期的に開催している。そして、今年9月には、東京にて第7回JapanNightの予選開催が決定した。
今回の開催の決定にあたり、スタートアップのカルチャーやマインドセットを重要視しているYAMAHA発動機にスポンサーとしてバックアップをいただいている。
今回は、大企業でありながらも、イノベーションを造り出す事をミッションにシリコンバレーで活躍するYAMAHAの西城洋志氏にお話を伺った。
インタビュー日: 2014年8月20日
インタビュー場所: btrax office (San Francisco)
1.スタートアップのマインドセットを持って、社会問題を解決するYAMAHA
2. 自動運転カーが普及しても渋滞や駐車場問題は解決しない
3. ターゲットは非バイクユーザー
4. エスタブリッシュな大企業があえてスタートアップを目指す理由
5. 世界を目指す日本のベンチャー企業からインスピレーションを
1. スタートアップのマインドセットを持って、社会問題を解決するYAMAHA
川島聖巨(以下K)YAMAHAさんって昔からバイクを作っているイメージがありましたが、どういった経緯で新たなパーソナルモビリティを作り始めたんですか?
西城洋志氏(以下S)5年くらい前(2010年)ですかね。今までの乗り物の概念にとらわれず、2020年に本当に必要な乗り物を考えようと新しくチームが作られました。社内のいろいろな部署から若手30代を中心に15人ほどを集め、私もそのメンバーの1人でした。そのチームを3チームに分け、チームごとに欧州と東南アジアにて活動を開始しました。
社内の違ったマインドセットの人に今までのバイクに捉われずにマーケットを見てもらう。その中で本当にバイクでいいのか、そうでないならどんな乗り物なら良いのか、見て回りました。
私は欧州チームだったので、イタリアやスペインやフランスを見てまわったのですが、どこも都市の中の空間が限定されていたんです。というのも、昔からの歴史ある伝統的な町並みを保っていますから道が狭いんです。
駐車場もありません。それなのに、みんな自動車で移動したいものですから、どんどん渋滞と駐車場不足が発生します。でも都市空間自体をいじる訳にはいかないですから、これらの問題は全く解決されないんです。
そんな問題が深刻なヨーロッパでは、身軽に動けるスクーターは結構流行っていました。流行っていましたが、どれも同じようなスタイルで個性がない。しかし、新しいルックスの前2輪の3輪が出てきたが、それは鈍重で製品的魅力が少なかった。そこで、新たなパーソナルモビリティ製作を開始し始めました。
2. 自動運転カーが普及しても渋滞や駐車場問題は解決しない
K) 身軽さ、機動性が重要なんですね。
S) 今いろいろなメーカーが自動運転機能を開発していますが、それだけでは渋滞問題や駐車場問題は絶対解決しません。しかし、もし自動車のサイズを半分にすることが出来たら渋滞問題は大きく解決の方向に向かうと思うんですよ。アメリカの高速道路を想像してみてください。5車線あるとするとそのうち1車線がカープールレーンですよね。つまり残りの4車線にいる人は、1人で車に乗っているんですよ。なんでもっと小さく出来ないのか?もし車のサイズを半分にすることが出来たら、大きくスペースが生まれますよね。ローマの細い道も簡単に通れるようにもなります。Human Size Vehicle(以下HSV)が必要だと思うんです。
K) なるほど。車のサイズを半分にする上で重要なことは何ですか?
S) リーニングです。HSVを考えた時に、車両の専有面積を減らすと横幅よりも縦幅が長くなります。この形の車両は曲がるときにリーニングしないと倒れてしまいますよね。つまり、HSVを構成する上で、リーニングは必然になってくるんです。
K) 実際にリーニング技術を使ってどのようなプロダクトを製作しているんですか?
S)みんなが楽しめる究極のパーソナルモビリティを模索している中で、第一歩として3輪のパーソナルモビリティであるトリシティというプロダクトを開発しました。HSVであり、リーニングにこだわった結果、3輪のパーソナルモビリティが1つの手段として出来上がったのです。
3. ターゲットは非バイクユーザー
K) どのような層がトリシティのターゲットになっていますか?
S) 今までは、バイクユーザーでリーニングを知っている人が、より満足できるようなプロダクト作りを行っていました。つまり、加速度だったり、より良いフィーリング、そういったものを主に求めていました。しかし、今回は女性や昔バイクを乗っていたシニアの方にも乗っていただきたいという思いで作っています。傾けて乗る爽快感を知って欲しいです。
K) 日本の女性のバイクユーザーのマーケットはどうですか?
S) 大きくもないですし、拡大もしていないです。ただポイントが2つあります。
1つ目は、バイクってやっぱり、運転ミスをしたら転倒するかもしれないし、身体が囲われていないので事故が起きたときなどに不安なイメージがありますよね。だから、バイクに乗ってみたいんだけど、軽自動車を使っている人ってたくさんいると思うんですよ。その不安を持たずに乗れる小型のコミュータが開発出来れば、新しい女性ユーザーを獲得することが出来ると信じています。
2つ目のポイントは、そもそも日本だけをターゲットにしていないんです。プロジェクト自体がヨーロッパと東南アジアをターゲットにして始まりましたし、製造もタイで行っています。日本ではバイクに乗る女性は少ないですが、東南アジアでは非常に多いです。そこには大きな可能性があると感じています。
K) シニア世代に関してはどうですか?
S) 昔はバイクに乗っていたけど、今は何年も乗っていなくて諦めちゃっている人が多いんですよね。そんな方たちにトリシティだったら、と言われるようなプロダクトになれたらと思っています。
4. エスタブリッシュな大企業が今あえてスタートアップを目指す理由
K) どうしてシリコンバレーに出てこられたんですか?
S) シリコンバレーって、多産多死で新陳代謝が活発ですよね。YAMAHAもそんなカルチャーを持ち、世の中の潜在的ニーズを探し、独創的な技術や商品を創っていたと思うんです。昨年、シリコンバレーに調査に来て、そのエコシステムに触れた時に、このエッセンスを社内に取り入れ、当社らしい独創を生む基盤を再構築することができたらと思ったんです。モノづくりの原点に回帰しようというか。
K)どういった経緯でJapanNightのスポンサーになられたんですか?
S) お客様調査や広告、PRというのは今までに何度もやってきましたが、常にバイクユーザー市場が主なターゲットになっていたんです。今までにないお客さんの層にリーチしたい時でも、バイクユーザーという自分たちにとって身近な市場、お客様だけにアプローチしていたんです。もちろん、アプローチの仕方は変えていましたけどね。
バイクに乗ったこそのない人にもメッセージを届けたいのに。
そんなときにJapanNightのことを知りました。間違いなく我々にとって新しいチャネルだと思いました。
K) JapanNightという新しいチャネルを活用するかどうかの判断はどう行われましたか?
S) 普通の企業は、新しいチャネルを使ったメッセージ発信に対して慎重ですよね。そのチャネルを使った場合の投資対効果はどうなのか調べましょうというところから始まります。
でも、たいていの場合は新しいチャネルを使った場合の効果を測る物差しを持っていないので、結局よくわからないんですよ。で、わからないからやらない。特に日本企業はわからないことをやらない傾向が強いですよね(笑)。でも私たちは、分からないからこそやって理解しましょうと考えたのです。分かるためにはやることが一番ですから。
5. 世界を目指す日本のベンチャー企業からインスピレーションを
K) 今回のJapanNightに期待することはありますか?
S) 日本のベンチャーに頑張って欲しいですね。サンフランシスコで日本のスタートアップを見る機会はなかなか少ないです。そんな中で世界へ展開しようと奮闘している日本のスタートアップは心から応援しています。
実際私たちも彼らから様々なインスピレーションをいただけますし、私たちなりのアドバイスや提案も積極的にさせていただいています。特にハードウェアベンチャーの方に対しては事業化における協業や支援が出来ればいいなと考えております。特にリーン型HSVによるパーソナルモビリティ創造の部分ではアイデアソンの主催なども考えています。
K) リーン型HSVはまだまだ進化していくんですね。
S) はい。リーン型HSVにはいろいろな可能性、オプションがあると思っていて、ベンチャーの方々にもその部分の可能性にチャレンジして欲しいなと思っています。トリシティはリーン型HSVを開発する上でまだまだ第一歩ですし、これから進化していきます。そう考えるとYAMAHAだけでプロダクトを作っていくよりも、みんなでリーン型HSVを盛り上げた方が良いプロダクトが出来るんじゃないかなと思っています。
【イベント開催!】Beyond Borders: Japan Market Success for Global Companies
日本市場特有のビジネス慣習や顧客ニーズ、効果的なローカライゼーション戦略について、実際に日本進出を成功に導いたリーダーたちが、具体的な事例とノウハウを交えながら解説いたします。市場参入の準備から事業拡大まで、実践的なアドバイスと成功の鍵をお届けします。
■開催日時:
日本時間:2024年12月6日(金)9:00
米国時間:12月5日(木)16:00 PST / 19:00 EST
*このイベントはサンフランシスコで開催します。
■参加方法
- オンライン参加(こちらよりご登録いただけます。)
- 会場参加(限定席数) *サンフランシスコでの会場参加をご希望の方は下記までお申し込みまたはご連絡ください。(会場収容の関係上、ご希望に添えない場合がございます。予めご了承ください。)
- 対面申し込み:luma
- Email(英語):sf@btrax.com
世界有数の市場規模を誇る日本でのビジネス展開に向けて、貴重な学びの機会となりましたら幸いです。皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。