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【カルチャーショック】日本人スタッフがアメリカの職場で感じた10の企業文化の違い
「グローバル」という言葉がそこかしこで使われるようになり、日本企業でも社内の英語化や外国人採用などが積極的に進められるようになってきた。
ここサンフランシスコでも、日本生まれの製品やサービスなどが根付き始め、多国籍チームで成功を手にする例は少なくない。
その一方で、よくも悪くも日本に根付く企業文化や風土、慣習の中には外国の方からすると受け入れにくいものも存在する。これによるストレスは仕事効率を低下させたり、職場の雰囲気を悪化させたりする原因ともなり得る。お互いの価値観を尊重し、違いを理解することは、チームの成功のためには必要不可欠である。
以下の文章は、日本企業で働いた後ビートラックスのサンフランシスコ本社へやってきたスタッフによるものである。言語やジェスチャーといった目に見える違いの裏には、企業の文化や慣習による内面的な差異も存在する。「グローバル」の壁を乗り越え、互いを高め合える職場環境づくりのためにお役立ていただければ幸いである。
日本とアメリカの企業文化の違い
私は大学を卒業した後、日本国内のいわゆる大企業で4年間を過ごし、その後アメリカに渡ってきた。日本で就活をしたときは、まわりの友人と同じように「大企業志向」を貫き就職先を決めた。
でもいまは、アメリカ企業やサンフランシスコのITコミュニティの中で、そのスピードを感じながら働いている。アメリカで仕事を始めてから6か月が経ち、こちらでの企業文化や仕事環境と日本企業との違いに気づき始めた。日本とアメリカで私が経験した、双方のビジネス文化を比較してみる。
1. 意思決定のスピード
“決断の速さはアメリカに軍配”
アメリカ | 日本 |
アメリカ企業における意思決定は早い。上司は責任を持って部下に自由を与え、迅速な意思決定を促す。つまり部下にもリーダーシップや決断力が求められることになる。そのためまれに問題が発生することもある。 | 日本企業では、一般に役職(階級)を追って意思決定がなされていく。細部まで注意が払われる一方、多数のミーティングや書類準備に追われ、アメリカ企業に比べて決断が遅れる傾向にある。しかし一つひとつの決定はミスが少なく、品質や信頼性は保たれる。 |
2. 個人とグループ責任
“スピード感を作りだす個人のリーダーシップ”
アメリカ | 日本 |
アメリカ企業では、個人が独立して重要な役割を担う。企業の目的達成のため、個人単位での貢献が求められている。言い換えれば、上司に限らず全員にリーダーシップが求められる。 | 日本企業でもグループに対する個人の貢献が求められる。一方で評価されるのはグループ単位での成果であることが多く、それにつながらなければ個人の貢献度は評価されない。 |
3. 結果と過程の評価
“徹底成果主義のアメリカとプロセス重視の日本”
アメリカ | 日本 |
アメリカ企業では投資対効果(ROI:Return On Investment)または最終的な結果を評価し、そこに至る過程は軽視される傾向にある。ゆえに、プロセス構築に関しては時間や予算を遣わない。 | 日本企業においてもROIは評価されるが、結果だけでなく過程も重要視される。「プロセスを構築する」という過程にも時間や予算を割き、評価の対象となる。 |
4. リスク管理
“自信満々に「できます!」って言うけれど”
アメリカ | 日本 |
50-70%程度の可能性であれば「できる」と応える。そのあとで100%のアウトプットができるよう全力を尽くす。 | 100%近い可能性が無ければ「できる」とは言わない。より正確であることを重視するため、リスクに対しては慎重になることが多い。100%と言えばきっちり100%であることが求められ、誤差は悪とされる。 |
5. チーム構成とコミュニケーション
“ホウレンソウは世界共通”
アメリカ | 日本 |
アメリカという国の特性から、企業内にも複数の国籍や文化が入り交じっており、その多様性から様々な視点が生まれる。その多様性の中でコミュニケーションをはかるため、個人の主張・発信力が問われる。中国やインドなど、多民族国家では同様の傾向が見られる。 | 多くの場合、日本企業は日本人によって構成されている。単民族の特徴として、文化や価値観の共有が容易であることから「空気を読む」「あうんの呼吸」といった文化が存在する。一方でこれらは「なれ合い」や「保守」に結びつくことがあり、注意が必要である。 |
6. グループワーク
“三人よれば文殊の知恵?”
アメリカ | 日本 |
ミーティングを効率的に行うこと:少ない回数・短時間でより成果を出すこと—が重要視される。大人数のミーティングは避ける傾向にある。ここでも、個人のリーダーシップが重要視されるとともに、英語の特徴から、上下関係を意識せずに意見できる。 | ミーティングは多くの企業で一般的に行われる。多くの時間・回数を重ねることでプロジェクトの過程を一つひとつ評価し、関わる人びとの方向性を一致させる。日本語に根付く敬語の文化は人間関係の維持には有効であるが、会議の場では上下関係を鮮明に映し出し、活発に議論しにくい状況がある。 |
7. 会議の形態
“テクノロジーの導入には寛容か”
アメリカ | 日本 |
ビジネス環境においては、電話やメール、Skype等のツールがごく一般的に用いられる。ただ人間関係の構築という観点では、顔を合わせて話をすることの重要性は日本と同じである。 | 社内SNSやテレビ会議などが拡がってきてはいるものの、会議では「実際に会って話をすること」が礼儀として重んじられている。 |
8. 組織の体制
“アウトプットを意識したオフィスの配置”
アメリカ | 日本 |
働くスタイルに関しては、日本とほぼ同じである。時間もフレキシブルに決めることができ、家にいながら働くこと(テレワーク)等も一般的に行われる。オフィス内では、個人のスペースがパーティションで区切られ、一人ひとりに広いスペースが確保されている。 | 多くの企業では定められた勤務時間に従って働き、在宅勤務システムが整えられている企業はまだ少ない。オフィスは学校の教室のように配置され、上司をトップとしてそこに属するグループメンバーの机が並べられている。グループとして機能するため、個人スペースをつくる壁や通路などは作られないことが多い。 |
9. 転職/勤続と退職金制度
“いくつもの社を渡り歩く:その心は…”
アメリカ | 日本 |
アメリカでは、退職金制度(pension system)が見直され、確定拠出年金制度(401k)が一般的に適用されている。このシステムによれば、企業から退職金を受け取ることはないものの、転職しても(拠出)年金を保持することができる。すなわち1つの会社に長く留まることは(退職金制度を持たない企業が多いため)個人のメリットとはならない。 ※警察や消防、IBMなど、限られた職業では現在も退職金が存在する。 | 日本の場合は、企業が個人の退職金を100%出資する。この退職金制度のために、個人が1つの会社に勤続することは、重要な経済的なメリットとなっている。「早期退職」等の議論の根本にはこのシステムがある。 |
10. ワークライフバランス
“私と仕事どっちが大事なの?”
アメリカ | 日本 |
家族や友人と過ごすプライベートの時間は非常に大切にされている。仕事の同僚との交際はあるが、社内のグループ全体として集まるなどのイベントはまれである。最近はワークライフインテグレーションが普及し始めている。 | 最近になりようやく「ライフワークバランス」といった言葉が拡がりつつある。しかし日本では伝統的に仕事が生活の中心に据えられることが多い。花見や飲み会といったイベントが職場外でのコミュニケーションの場として重要視されている。 |
記事の原文はこちらから:10 Cultural Contrasts between US and Japanese Companies – A Personal View
まとめ
このように、日本とアメリカの間だけでもたくさんの違いがあることがお分かりいただけただろう。企業の種類は多岐に渡り、単純に一般化することはできないが、それだけにお互いをきちんと理解することは容易ではない。
一方で、強大な国家に生まれ、世界共通言語とされる英語を母国語として育ったアメリカ人たちに、日本の価値観を押売りすることも得策とは云えない。異文化理解および多国籍チーム成功のためには、個人の価値観で「違い」をはねつけるのではなく、正否をつけること無く素直に受け入れることが大切だと思う。
文・訳:井上 太郎
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