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日米の声を聞くUXリサーチャーが気がついた、UXリサーチにおける日米の違い
弊社では、UXリサーチを日本市場とアメリカ市場の両方に向けて行っている。
最近、筆者は立て続けにイベントに登壇する機会があり、アメリカ向けと日本向けのイベントでそれぞれUXリサーチのメソッドを話す機会があった。
イベントで他社のUXリサーチャーと対話することによって、自分がぼんやりと感じていたことが、イベントで改めて言語化されて腹落ちした点もあった。
今回はそんな気づきも踏まえながら、自身が日米でリサーチを行った経験をもとに、UXリサーチに関してお伝えしようと思う。
UXリサーチのプロセス
まずUXリサーチにはどんなプロセスがあるのか?
ユーザーインタビューを行うことがUXリサーチのメインのメソッドになるため、今回はユーザーインタビューを行う場合のプロセスを簡単にシェアする。ユーザーインタビューは、主に下図の5つのステップに分けられる。
ゴール・ターゲットの設定
まず、どんな人を対象にしたサービスについてのインタビューなのかを明確にする。その上で、具体的にどんな人に話を聞きたいかを決める。年代や生活スタイルがペルソナと近い人を選ぶのが一般的だ。
ユーザーの募集・選定
ターゲットが決まったら実際にインタビューに参加してくれるユーザーを探す。
方法としては、
- 事前調査のためのGoogle Formに回答してもらった人の中から適切なユーザーを選定
- ユーザーインタビュー用のプラットフォームを使用する
などがある。上記のような手順でユーザーを集めていく。
スクリプト作成
ユーザーの募集とほぼ同時並行で行うのが、スクリプトの作成だ。インタビューの長さなどに応じて、ユーザーに聞きたいことを書き出していく。
インタビューでは初対面の人と長時間話すことになるため、相手が心地よく話してもらえるような工夫が必要だ。
筆者がスクリプトを作成する際は、最初はアイスブレイク的に簡単に答えられる一般的な質問をし、徐々に突っ込んだ話にすることを心がけている。
インタビュー実施
コロナ禍以降、Zoomを繋いでオンラインで行うユーザーインタビューが増えた。
最近はようやく少し落ち着いて、対面やホームビジットのインタビュー(ユーザーのお宅に訪問して行うインタビュー)もちらほらある。
インタビュー自体の時間は、ほとんどの場合が1時間〜1時間半程度だ。シンプルに1対1で対話する形式のインタビューを行う場合は、1時間で設定する場合が多い。
しかし、コンセプト検証や、アプリを実際に触ってもらいながら行うインタビューは1時間半程度かかる場合が多い。
分析・レポート作成
インタビューでユーザーから聞き出した内容をもとに、ユーザーが実際どんなことを思ったり感じたりしているのか、分析、まとめを行う。
方法としてはFigjamに一度ユーザーの発言を全て書き出してから考えることが多い。
そうすることによって、話の全体像が見えやすくなるため、分析がしやすい。また、チームでFigjam等のオンラインホワイトボードツールを利用することによって、複数人の視点をシェアでき、多角的な分析を行うことができる。
このフェーズで、様々な視点、角度から考えるのは非常に大事なことだ。上記の5つのステップがUXリサーチの主なプロセスである。プロセス自体は、日米間で特に違いはなく共通のプロセスだ。
しかし、大枠のプロセス以外の細かいところで日米間の違いが見られる。そこで今回は普段リサーチをしていて感じる、UXリサーチにおける日米の違いを3つ紹介する。
①「UX」や「UXリサーチ」に対しての認知度の違い
②インタビュー中の違い
③ユーザーの募集・選定方法の違い
UXリサーチにおける日米の違い3選
①「UX」や「UXリサーチ」に対しての認知度の違い
そもそも「UX(ユーザーエクスペリエンス)」というものに対して認知の違いがある。
一般的に「UXリサーチ」と言ったときに、日本の企業の場合、そもそもUXって何?UXでどんなことができるの?となり、それを伝えるところから始まることもある。
対してアメリカでは、一般的にUXという言葉の認知度は高い。デザイン系の企業の人でなくとも、UXがどんなものかはなんとなく理解している人が多いように感じる。
②インタビュー中の違い
違う国の人と話しているのだから当然と言えば当然なのだが、実際日米の違いが一番現れるのはインタビュー中だ。
今回はインタビューの実施中にわかる日米のユーザーの違いを3つご紹介する。
1. 話す量
個人差はもちろんあれど、日本人とアメリカ人という括りで見ても、双方かなりキャラクターや性格は違う。それは、話す量の違いに顕著に現れる。
アメリカの人は総じておしゃべり好きが多い。アメリカ人は、ひとつの質問に対して具体的な体験談なども交えて話してくれることが多い印象だ。
中にはあまりにも話しすぎてインタビューの時間配分が難しくなってしまうケースもある。とはいえ、体験談などを細かく話してもらえると、こちらとしてもイメージがしやすいのでありがたい。
日本の人は、聞かれた質問に対してきっちり回答をしてくれる。あまり脱線せず要点をまとめて簡潔に答えてくれる人が多いので、話を深堀るためには回答に対して「なぜ?」を繰り返す必要があることも多い。
リサーチャーとしては、「なぜ?」を聞いていくときに、誘導的な聞き方にならないよう注意が必要だ。
日本人の性質上、なんとなくその場の雰囲気に合わせてしまうというのはよくあること。
したがって、「それってこういうことですかね?」という聞き方をすると、「まぁそんな感じですね〜」という回答が来て、本当の答えを聞き出せないということが起こりうるためだ。そうなると、ユーザーインタビューの価値がなくなってしまう。
2. フィードバックの程度
また、インタビューでフィードバックを得たいサービスの評価の仕方にも違いが出る。
アメリカ人は基本的に陽気でポジティブだ。サービスの評価を聞いたときに、良いフィードバックをたくさん返してくれる傾向がある。
しかし、例えば、定量的な点数を聞きたいと思い、「そのサービスの満足度の点数を、10点満点で評価してください」と聞くと、「6点」と意外と低い点数が返ってきて驚くことも。
反応や話し振りとのギャップを感じる(反応よりも点数が意外と低い)ことが、日本人と比べて多い。
「4点の理由は?」と聞くことでようやくネガティブに感じている要素を聞き出せる、ということもあるため、質問の仕方には工夫が必要だ。
対して日本人は慎重派で、正確な点数を答えようとする人が多いように感じる。
リアクションはそこまで大きくなくても、定量的な点数を質問すると、リアクションで見られる素振りから想像するよりも点数が高めということもある。
3. ネットリテラシー
最後に、ネットリテラシーにもやや違いがある。
最近はZoomでユーザーインタビューを実施することも多いが、全体的な傾向として、アメリカ人は全体的にインターネットを使いこなしている人が多いように感じる。
オンラインインタビューのリンクのシェアや、検証したいサービスやプロダクトのテストアプリのインストールもスムーズに対応してくれる人が多い。
日本だと、PCをそもそも所有していないという人も一定数いるようだ。
他のリサーチャーが話していて驚いたエピソードとして、大学生が自分のPCを所有しておらず、論文を書くのにLINE上に書き溜めていたという話があった。
上記の場合はかなり稀なケースかもしれないが、そのような状況もあり、日本ではアプリを実際に触ってもらうインタビューのときには、直接コミュニケーションの取れる対面でのインタビューの方がやりやすい場合もある。
③ユーザーの募集・選定方法の違い
最後に、インタビューを実施するユーザーを募集するプロセスにも日米での違いを感じる。
アメリカの場合、インタビューを受けてくれるユーザーを探しやすい傾向がある。
というのも、ユーザーインタビュー用のプラットフォームが充実していて、そのプラットフォームの登録者数も多いためだ。そのため、自分のネットワーク以外の人をオンライン上で集めやすい。
そのプラットフォーム上にアンケートを公開し、回答してくれた人の中から、ターゲットとしてふさわしい人を選ぶ、という流れだ。日本と比べたときに、それだけアメリカではUXリサーチというものが一般的になっていることの一つの表れだと感じる。
日本でインタビューのユーザーの募集を行うときは、インタビュー用のプラットフォームはそれほどメジャーではないため、SNSでの募集が一般的だ。
SNSに載せたGoogle Formに回答してくれた人の中から、ターゲットに近い人を選んで直接コンタクトをしていく方法でユーザーを選定する。
まとめ
今回はUXリサーチにおける日米の違い3選をご紹介した。
リサーチを進める上でのプロセスは同じでも、感覚や文化的な違いはあり、国による違いを理解して上でやり方を合わせていくことが、より精度の高いリサーチを行う上で大事になってくる。
もちろん国による違いだけでなく、個人によっても性質は違うため、リサーチをするたびに新しい発見があるのがリサーチャーとしての楽しいところだ。
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