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チームビルディングの重要性と押さえるべきポイント【Google, Pixar, Airbnb 事例】
企業にとっても最も重要なものは何か?多くの人がビジネスモデルと答える中で、サンフランシスコベイエリアの企業のその多くの回答は「カルチャー」。このことは、オフィスのデザインやワークスタイルにも色濃く反映されている。
そんなカルチャー重視の風土のサンフランシスコ市内にあるbtraxも例に漏れず、毎週チームビルディングの時間を作っていたり、サービスとしてもチーム内のカルチャーづくりを促進することも視野に入れたワークショップを行ったりしている。
カルチャー作りの第一歩 – チームビルディング
正しい企業風土を作り出す第一歩であるチームビルディングに関する活動は、今や会社のチームを組織する上で重要なイベントとされ、その意義の見直しやより多種多様なチームビルディングイベントの企画が見られるようになった。
その変化はここ数年でより大きくなっており、2020年以降パンデミックでリモートワークが広まったことをきっかけにさらにチーム内の繋がりを強めるための取り組みが増えてきている。
日本企業の社内飲み会もチームビルディングの一つ
日本でもコロナ禍以前から、チームビルディングのあり方が大きく変わってきていたように思う。賛否両論あるものの、皆で囲んで行う飲み会が最も典型的な例だった。
しかし、それに加えて、「お酒は飲めない」「夜遅くまでいられない」といった飲み会の弱点を補うように、山登りやキャンプ等のチームアクティビティが新入社員研修や既存社員の定期研修で行われている。
以前よりもより多くの種類のイベントに参加している実感がある人は多いのではないだろうか。
Googleも試行錯誤したチームビルディング理論
ベイエリアにある企業でもチーム作りに対する見方は過去数年で大きな変化を遂げている。
実はベイエリアを代表する大企業Googleも数年前までは「完璧なチームを作るには優秀な人材を揃える」という単純な考えをもとに、「内向的な人は一緒にさせた方がいい」といった迷信めいたものでチームを作っていた。
そのGoogleもついに数年前に社内でチームビルディングに関する研究を本格的に開始。
チーム内にいるメンバー個人の能力や特徴よりもチーム全体をまとめるカルチャー作りがより重視されるようになっている。
Googleのチームビルディング調査部隊:Project Aristotleとは
過去20年のビジネスのグローバル化と市場の複雑化により、よりチーム単位で仕事をこなすことが増えたGoogleでは2012年に「最高のチームとは何か」を探る目的として、心理学者、社会学者、統計学者から成る研究チームを編成。
それまで従業員個人のパフォーマンスが主に学者の間で研究されてきたが、チームとしてのパフォーマンスが重視されるようになった。
結論: 優れたチームのパターン化は不可能
研究チームはまず過去の研究を洗い出し、そこから実際にGoogleにあるチーム同士を比較。学歴、趣味、社交性、男女比、オフィス外での交流頻度まで注目してみたが、「良いチーム」と判断されたチーム間でこれらの共通点・パターンといったものはまったく見つからなかった。
最良のチームの共通点とは?その鍵を握る「集団規範」
そこで次に注目したのが、社会学や心理学で「集団規範 (Group Norms) 」と呼ばれるもの。これはチーム内で共有される、チームとしての行動や判断の規準となるものだ。集団規範の例は以下がある。
- ミーティングは決められた時間ぴったりに開始し終わらせること
- 基本的に受身の姿勢はなくし、何か不明点があればすぐに自分で調べるか同僚に聞くこと
- 何か問題についてディスカッションを行う際には個人的な感情を持たないこと
- 困っているときはお互いに助け合い、チームメンバーが困っている時にすぐ察知できるようになること
- 何かを理解する時にはまず”聞く”、教えてもらうことに関して否定から入らないこと
ミーティングスタイルも同様で、雑談から始まり誰が割って入っても構わないミーティングをするようなチームがあれば、議題に沿い話す順番を厳格に守るチームもある。
このように明文化されていないながらも共有されている「チームとしての行動規準・判断規準」が集団規範である。
ここで重要なのはこれが全て”規範”であり”規則”ではないという点。カルチャーづくりのポイントは、それが自発的なものであり、強制的なものではないという点である。
それぞれのチームで異なるべき行動スターダード
Googleで「良いチーム」と判断されたチームの集団規範は、ミーティング前に週末の予定について雑談するものからリーダーがミーティングを仕切り、話す順番を決めるものまで様々だった。
その結果から研究チームは、特定の集団規範をすべてのチームに応用するのではなく、それぞれのチームがメンバーを理解して適切な集団規範を設けることが大切だという結論に至った。
適切な集団規範を持つのはなぜ大切?:個人IQ vs. グループIQ
なぜ正しい集団規範を持っているチームが「良いチーム」となりうるのか。2008年のカーネギーメロン大学の研究によると、正しい集団規範を設けることでそれぞれのチームメンバーの意見が反映され、チームとして質の高い答えを出しやすくなるからである。
この研究では課題に応じてチームごとにベストだと思うアイディアを出す課題を実践。
結果、評価が高かったチームの共通点が「チームとしてのアイディアを出すために、メンバーがそれぞれベストだと思うアイディアをそれぞれが犠牲にしたこと」であった。
つまり個人の意見よりもチームとしての意見を優先させたチームが優秀な結果を残したのである。
なぜこのようなチームがグループを優先した意思決定をすることができたのか。それはしっかりした集団規範があったからである。
誰が割って意見してもいいチームにしろ、話す順番が決められているチームにしろ、チームとしての答えを出すプロセスが集団規範によって定められており、それがメンバー全員に共有されていることでメンバー全員の意見を総合して結論を出すミーティングが可能となる。
メンバー一人の意見を反映したものよりも全員で答えを出したもの方が本当に質の高い結論と言えるのだろうか。研究者たちはこの研究の中で個人的なIQとチームとしてのIQを計測していた。
今回個人の意見を犠牲にしてチームとしての意見をメンバー全員が納得できるものにした方がより良いという結果が出たことによって、チームとしてのIQ は個人的なIQよりも高くなると結論づけた。
集団的知性の高いチームに共通する2つのポイント
どのようなチームが高い集団的知性を持っているのだろうか。どのようなチームが「良い集団規範を持っている」と言えるのだろうか。実際にその研究で「集団的知性が高い」と判断されたチームに2つの共通点が見つかった。
1. メンバー全員に話す機会が均等にある
共通点の一つは話す機会がメンバー全員に等しくあるということ。すべてのタスクでメンバー全員がそれぞれ話すこともあれば、課題によってリーダーシップを取る人が変わることもある。
大切なのはその日が終わるまでに全員がほぼ同じくらい話していること。お互いの意見で刺激しあいながらチームとしての意見を出しやすくなる。
2. 高い「平均社会的感受性」を持っている
共通点のもう一つにあるのが、メンバーが高い平均社会的感受性(Average Social Sensitivity)を持っていること。これは相手の表情、表現、声色や身振り手振りから相手の感情を察する能力のことを指している。このチームほど集団的知性も高くなると考えられている。
他人と自由に話す機会が多くなるほど、他人の気持ちを察する機会は多くなる。メンバーの話せる機会が全員に均等にあるほど、チーム内の平均社会的感受性も自然と高くなる。
あなたは人の気持ちを察することができますか?平均社会的感受性テスト
社会的感受性のテストは比較的簡単にできる。下の写真の人物の目を見て、彼らの感情を当ててみよう。
上の写真はC. 動揺、下の写真はA. からかい、が正解となる。2つとも当てられただろうか。このような心理テストを例に、相手の表情を通じて感情を察知することができる人々が集まっているチームは全体的な心理的安心感が高まるとされている。
良いチームを作るのに最も重要な「心理的安心感」とは
まずメンバー全員に話す機会が均等にあり、そしてメンバーがお互いの気持ちを敏感に察することができる。この2つの要素は結果として「心理的安全性」となり、良いチームに不可欠な心理状態をメンバーにもたらしてくれる。
心理的安全性には次のような特徴がある。
- リスクを取るような行動を取っても咎められることがない
- どんなアイディアを出しても恥ずかしい思いをしない
- 「理解していないことを悟られないように黙っていよう」といったことがない
- チームの中でも「自分らしく」いられるという自信をくれる
こういった安心感を持つことでチームメンバーは自由な発想をより広げることができ、チームとして最良の決断を予知スムーズに下すこともできる。結果としてチームとしてのアウトプットはより高いものになる。
実際に行われているチームビルディングイベント4選
心理的安心感をチーム内で作り出すためにはお互いの信頼を築き上げなければならない。
上記のプロジェクトを始めたGoogle及びFacebook、Pixar、Airbnbといった企業が実際にどのようなチームビルディングをしているのか*。筆者が聞いてまわった中で特に興味深かった4つの例を紹介する。* コロナ禍以前の内容になります。今の状況下での実行は難しいかもしれませんが、部分的にでもぜひ参考になれば幸いです!
1. セーリング – Google等
ゴールデン・ゲート・ブリッジとベイブリッジで有名なサンフランシスコは良い潮風が流れる街として有名であり、ウィンドサーファーからも人気の街である。その風を帆を利用するセーリングはサンフランシスコでも特に人気のチームビルディングイベントであり、Google以外にも多くの企業が定期的に利用している。
メンバーには乗組員として一人ひとり役割が与えられ、それぞれがその役割をこなすことで船体が問題なく思う通りの方向に進むようになる。チーム内のコミュニケーション力、臨機応変に問題に対応できる解決力を養うイベントとしての人気が高い。
2. ゴーカート – Pixar等
ピクサーがカーズを制作する際に車をより知る目的とチームビルディングを兼ねてゴーカートをした話は知る人ぞ知る話。2人〜6人で成るチームでカートの乗り換えなどを工夫しながら合計タイムを他と競うことでグループ内のチームワークを養うことができる。
3. Boda Borg – Airbnb等
これは3-5人でチームを組んで、建物内の各部屋にある「クエスト」と呼ばれるアクティビティをクリアし、ゴールを目指すゲーム。日本でも一時期流行った「脱出ゲーム」のような感覚のアクティビティだが、頭よりもっと体を動かす感覚に近い。
4. インドアゴルフ – Faebook等
日本でも人気が高まりつつあるインドアゴルフはこちらでは人気のチームビルディングアクティビティの一つ。今までお金のかかるスポーツとされてきたゴルフのイメージを変え、手ぶらで行ってもできるスポーツとなってから老若男女多くの人が気軽に遊べるアクティビティになった。
チームビルディングの最終目的は”精神的な安心感”
チームビルディングは今でも研究が続いているが、何が良いチームを作るのに必要なのかはまだまだ謎が多い。多くの企業で様々なアクティビティが行われ、普段仕事を一緒にする同僚や上司と仕事以外での「非日常」的な空間に抜け出そうとしている。
無作為にイベントを行うのではなく、いつも一緒にいる人の違う一面を知ることで「心理的に安心できる」ようになるという目標を持ってイベントを開催するのが今後の課題であると個人的に思う。
まだまだチームビルディングに懐疑的な人や皆でやるイベントを好ましく思わない人もいるのは事実。そういった人たちにも「このメンバーなら安心して過ごせる」と思ってもらえるようにチームビルディングアクティビティが活かされればと願う。
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