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快進撃中-iPhoneがクレジット決済端末に「Square (スクエア)」
Randy Reddigという男が現れた。iPhoneをポケットから取り出し正方形のフリスクの箱のような物をヘッドフォンジャックに差し込んだ。そして一言、”これで誰でもどこでもクレジットカードの支払いを受ける事が出来るようになります.”
プレゼン後、直接彼に聞いた”どういう事ですか?” すると彼は、”君の1ドルをチャリティーに寄付してくれないか, 支払いはクレジットカードで。” AMEXのカードを差し出すと、そのアダプターにスワイプし表示されている画面に”1.00”と入力。画面上に指でサインをし、メールアドレスをおしえると、”これで完了。レシートはメールで届いているはずだ。” 彼の説明は実際のアプリ利用で完了した。
そしてそれは可能になった
それから約半年以上、最近ではこのSquare社のニュースを見ない日は無い程になっている。同社が提供するのはスマートフォンアプリ+ハードウェアで構成されるサービスを導入する事によりiPhoneやAndroidなどのスマートフォンがクレジットカードリーダーに早変わりする。
例えば出先での支払いを受ける際や、通常クレジット回線の無いような、屋台、イベント会場、ファーマーズマーケット等の場所でもクレジットカードでの支払いを受け付ける事が可能になる。場合によっては、個人的に物を売買する際にも使えるわけだ。
アメリカはかなりのカード社会で、10ドル以下の小さな額の支払いでもカードを利用するユーザーが多い。一方で、店舗にカード読み取り端末設置する為にはクレジットカード会社の審査をパスし、数百ドルする端末を購入し、初期費用を支払わなければならない等、個人はもちろん、小規模のビジネスをしている側にとってはなかなかハードルが高い。
また、設置後も月々最低でも30-50ドル+2.8%程度の費用がかかる。一方でこのSquareは審査プロセスも単純な上に、セットアップ費用や月々費用も無い。また、驚くべき事に、Squareアカウントを開設した場合、通常は別ルート/費用であるAMEXも全く同じレートでチャージ可能になる。もちろん携帯を利用するので、どこでも持ち運びが可能だ。
客の視点から見てもより多くの場所でカードが使えることにより、利便性がかなりアップする。例えば、ふらりと立ち寄ったフリマで気になるものを見つけても現金の持ち合わせが無い場合、ATMで現金をおろすかあきらめるしかなかったが、販売者がSquareを利用していればカードで支払う事が出来るのだ。
また、同サービスを利用しているレストランやカフェでも、伝票を受け取ると同時に支払いを済ませる事が出来るので、ウェイターが戻ってくるのを待ったり、レジでの面倒な手続きも不要になる。アップルストアでスタッフがカード端末を利用しているケースと同じ状態が実現可能になる。
Sauareサービス詳細
Twitter共同創設者の一人、Jack Dorsey氏が2009年からベータ公開をしていたSquare(スクエア)は、どこでも誰でも簡単にクレジット決済が出来る画期的なサービスである。
小さなサインアップすると無料でもらえるカードリーダーをヘッドフォンジャックに差し込み、専用アプリを開くだけの簡単設定で、スキャン・チャージ毎にかかる手数料(金額の2.75%)以外は、カードリーダーもアプリも無料。面倒な初期費用や契約料なども発生せず、手持ちのVISA、MasterCard、AMEX、Discover等の主要クレジットカードがそのまま使える。
実際にこのスクエアのサービスを導入しているレストランで食事をしてみると、会計がいかにスムーズになるかが実感出来る。 食事を済ませたころにウェイターが、専用カードリーダーを差し込んだiPadを持って颯爽と現れてその場でクレジットカードをスキャン、支払う側は画面上に人差し指でさらっとサインをしておしまい。メールで送られて来るレシートには金額だけでなくどこで何を注文したかやチャージが行われた場所+Google Map、商品の写真等も記載されている。
このスムーズさはレストラン側にとっても、お客側にとってもまさに’美味しい’ものである。支払う側にとってはシンプルで使いやすく、指でサインという動作がどこか新鮮で楽しい。店舗側にとっては高額なカード読み取り端末を新たに導入する必要がない。また両者にとっても、バリバリにハイテク過ぎないユーザーエクスペリエンス感が優しい。これが現在、スクエアが急成長を遂げている大きな理由である。
レシート例:
スクエア社について
Square社は2009年初頭ににTwitter共同創設者のJack DorseyとJim McKelveyによってサンフランシスコからスタートし、シリーズA時点で異例の1千万ドル(約8億円)の投資を受けた。投資家の例としてはTwitterの共同創設者Biz Stoneや投資家のRon Conway、GoogleのMarissa Mayer、Foursquare共同創設者Dennis Crowleyなどそうそうたる顔ぶれがあげられる。
2010年3月にサービスをリリース後、現在までの従業員は約70名。セントルイスとニューヨークシティにもオフィスを構える。
また、同社COOのKeith Raboisによると、今年の始めのシリーズB時にはSequoia Capitalを始め、VISA及びKhosla Venturesの両社から2,750万ドル(およそ22億円) のファンディングを獲得し、現在までのファンディング合計額は1億6,900万ドル(およそ150億円)。 更にはSequoia Captalの共同出資者でVCのRoelof Botha氏がSquare社の役員メンバーに就任したと公表した。同氏はPayPalのCFOを歴任した事でも知られている人物である。
さらに驚くべき事に2011年の6月中頃、同社は1999年から2001年までアメリカの財務長官をつとめ、最近ではオバマ政権の国家経済会議委員長であるLawrence Summersを引き入れる事を発表。これにより政府との太いパイプを作り、名実共に一躍メインプレイヤーとなる。この辺も日本ではマネの出来ない、ITがメインストリームであるアメリカだからこそ出来る技である。
スクエア社の今後
最近スクエア社が発表したCard Caseというアプリでは、クレジットカードをスキャンする必要もなくなっており、「購入からレシート発行までのプロセスをすべて1つにするべきである。」とDorsey氏が述べている通り、更なる一本化が実現しつつある。ちなみに現在このサービスを利用出来るのはニューヨークを始めとする、アメリカの主要都市サンフランシスコ、ワシントン、セントルイス、ロサンゼルスにある50店舗のみ。
同様に、ニューヨークとサンフランシスコを中心とした一部の地域においてではあるが、Google社がVerifone社と提携を結んで、Android端末を用いての支払いが可能になるGoogle Walletというサービスを展開し始めたのも記憶に新しい。これらサービスは日本で言う所のお財布携帯と同じコンセプトである。
iPhoneの累計出荷数が1億台を超えた事をはじめ、アンドロイド端末の急激な普及数拡大と、著しく拡大しているスマートフォン市場の波に乗って、今後のスクエアサービスのシェアは一気にひろがる事が予想されるが、実際にカードを使わずに名前と顔写真だけで決済が行われるCard Caseに懸念を抱く利用者も多い事から、まだまだN.F.C.リーダーに対する信頼度の方が圧倒的に高いのが現状である。今後のスクエアの成長はこれらのセキュリティ面に対する懸念をどれだけ払拭できるかにかかってくると言える。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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